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02. 労働者を捕獲せよ |
天国だって地獄だって。 そこに場所があれば、役回りというものがあって。 そう。死後の世界だろうと神様の世界だろうと、働き口というものがあるわけです。 【 side 夢主1 】 ドーモ。白澤なオレです。 そんなオレのもとにある日、来客が訪れた。 オレの楽園こと桃畑に客がやってきた。 客というよりは、働きたいらしい。 それを聞いたオレの感激具合といったらなかった。 最近は農業って廃れてくいっぽうで、誰かに手伝ってもらいたくても神として生まれたやつらは全員やるべき役割りがあるので手伝ってなんかくれないし。 じゃぁ亡者を雇おうかなと思って求人だしたんだけど、やっぱり無報酬だとなかなか働きたいと言ってくれる亡者もいなくて。 むしろ死後まで働きたくないと言われるわ、農業なんかださいとか、泥まみれはいやだとか。機械使えよとか。 最近の人間はだめだね。 楽することを覚えちゃってもう。 この世界に生まれる前は、オレは豊穣の神アマテラス(次代)だったから、そりゃぁ薬草だろうが桃だろうが作ったり、育てるのは得意だよ。 だけど、しってるかい? この世界の仙桃って、ウチの桃園でしか作ってないって。 そういえば、オレの苦労もわかるかな? ついでにいうと、オレの本来の姿は獣だ。 つまりハサミももてない、カマ持って雑草を刈るなんてできないから、桃園の手入れもできない。 畑仕事をするためには人型にならないといけないんだ。 ちなみにここでいう人型とは、一種の変身術で、無理矢理に力や体系やらをおさえこんで圧縮した感じで、オレからすると凄い窮屈なんだよ。 でも人型にならないかぎり植物の手入れとかできないときている。 おかげで人化がかなりうまくなってしまったけど、負担が半端なくてね。やっぱり本来の姿の方が何万倍も楽なんだ。 そこへこの「働きたいとやってきた人物」をオレが逃すわけないだろ! 鬼灯が連れてきてくれるなら人選も安心だし。 え?中国の方じゃない?それがどうした?! この際国籍這わないよ。 日本人! いいじゃないか。ワーカーホリックのたくさんいる生真面目で手先が起用な人種だろ。 字が読めるなら金髪の外人だろうが問題なしだ! どうせオレしゃべれないから、筆談メインだしな。 言語が違っても問題ない!なぜならオレはこの世界で何億、何千年と生きてるんだから。 どの国の言葉もペラペラよ!(しぇべれないけど) 日本語ぐらいなれたものよ! なに?ブサイク?どうでもいいよ! 農業にイケメンはいらない!むしろシャラシャラした細っこいイケメンは地獄で鍛えなしてもらえ。日本のあの世はとてもハードだぜ。 「それでどうしますか?」 もちろん即、採用!雇用で! お役所にずっと人員募集の手続きしてたんだよね。 いつも内容を説明中にバイトの子たちは逃亡しちゃって、どうしようかと思ってたんだけど。 今回の紹介主は、あの日本でブイブイいわせちゃってる鬼灯くんだからね!すっごい安心! 本当は連絡をうけて地獄までそのバイトの子を引き取りに行こうとしたんだ。 すぐに日本に行くよ!と、かけつけようとしたら、天界の子や地獄の奴ら全員が、地獄に出向くなんてダメですとひきとめてきて大変だった。 だからね、オレは別にひ弱なわけじゃないんだから、もう。みんな心配性で嫌になる。 オレはただ“しゃべんないだけ”なのに。 「はい、では雇用条件ですが、いぜんの申請どうりで?」 オレが天界から出ないようにか、最近(といっても時代的には数千年前)関所をもうけられちゃってね。 手続しないと国境越えられないし、境界こえられないし。すごく困る。 おかげでここのハローワークみたいな、職業相談所の人とは、すっかりお友達だよ。 ねぇ、君。オレともう何千年のつきあいになる? 「そうですね。ざっと二千年ちょいじゃないですか」 このひとと、他に創造主のレベルの最高神ぐらいしか、まともにオレのことみてくれないんだよ。 他の奴?あーだめ。鬼灯でさえ、なんかオレっは病弱だとか勘違いしてんだよ。 しかもオレってしゃべらないじゃん。そのせいで、オレの言い訳利かないし。 いやになる。 おかげで、この関所にいる職業相談所の受付の人、最近ではなんかいろんな国の手話覚えちゃって。 オレのせいですね。 いや、ありがたいけどさ。 筆談もなれたもので。 唯一の勘違いしないしないでくれている、このオレの話し相手さんはいまじゃオレの顔色だけでだいたいの言いたいことを理解してくれる。 かわりに愚痴を聞いてあげたりもきいてもらったりもするけどね。 「よかったですね白澤さん。これでご希望がかないましたね。あの広大な畑を1人じゃぁさすがにきついでしょ。 天帝やら仙人どもからあんたが働きすぎで心配だと苦情が酷くて。ならテメぇらが手伝ってやれと何度か申請だしたんですけどねぇ」 『わかるわかる。手伝えって言うと泥で汚れるっていうんだよなぁー』 「ええ、そうなんです。もう下っぱまじうやまえって感じですよー」 「ねぇー」っと二人で頷きあう。 中国語版の手話で、彼に会話を合わせていれば、雇用者用の書類なのでサインくださいと渡される。 「報酬とか変えてもいいですからね。後で用相談でもむこうはいいみたいですし」 『さすがは鬼灯の推薦者! そうだなぁ〜。なら労働条件は衣食住こみ!以前の奴らみたいに逃がしたくないから一緒のおうちで寝起きさせよう。 あとはこのあいだだした、求人広告と内容は同じで! あ!あと追加事項あった!薬とか仙桃とか、売れた分の利益の1割もつけちゃう!それが給料っていっておいて!』 ニコニコとして手を口のかわりに動かし意思を伝えれば、さすが年季の入った受付君。 さくさくと追加事項を記入してくれる。 ああ、早くこないかなぁバイト君。 * * * * * バイト君大歓迎! と、店の前でそわそわまっていれば、随分古風な日本の衣装を着た男の子がいた。 服なんかどうでもいい! ようやくきた労働力! 逃がすものかとニコニコとして迎えた むかえたら・・・ 『よ〜う〜こ〜そ〜桃源郷へ〜』 「鬼灯さま!?!あれ?でも角がない!?よりこわっ!!!!!」 っと、おびえられた。 次からは筆談にしよう。 あとで聞いたところ、手をあやしげな形で動かし、殺気まじりの笑顔で、オレはそうとう危機せまる形相だったという。 いやいや、そのあやしげな動きの手っていうのは、言葉を伝えようとした手話だかんね。 あやしいってなによ。 殺気は・・・はっきりいってすまなかったと思ってはいるが。 解せぬ。 顔が怖いっていわれたーと、閻魔に愚痴ったところ、「バイトくんに対する執念がみえるようだから、その鬼気迫る感じが怖いんだろうねぇ。だからバイト君に逃げられるんだよ」と言われた。 だって以前逃げられたんだもんバイトくんに。 今度は逃がすまいと思うのは普通じゃね? どうせなら閻魔のところみたいに、優秀な部下がほしいと嘆いてみた。 「え?!鬼灯くんいないと困るんだけど」 小野篁でもいいと言ったら、秦広王が困るからだめといわれた。 地獄はあいかわらず、人手不足のあげく忙しいらしい。 でもそれって罪の重さで地獄を細分化しすぎたのが原因じゃなかろうか。 「そうは言ってもねぇ」 思うに・・・。 閻魔、あんた優しすぎやしないか? アメの地蔵菩薩となんか雰囲気が似てるんだけど。 ムチはどこいった? 『とりあえずオレはムチとアメを使い分けれるようになろう』 せっかくの労働者です。 逃がしません。 |