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01. 口のきけない獣 |
【side 夢主】 オレは前世で狼の姿をした神アマテラスというものでした。もといチビテラスです。 これだけでも聞き覚えのある方はいるでしょう。 そうです。 「大神伝」というゲームの主人公に成り代わっていたのです。 その成り代わり人生もあっけなくおわり、今回また新たに生まれることとなりました。 よく二次元のお話にあるでしょう? そう。まさにあれ。 オレは転生者なのです。 オレは前世の能力を引き継ぐタイプの転生者だった。 しかもその能力をもったままいろんな世界に生まれては死んでを繰り返した。 そして、前世の次期アマテラスとしての墨の能力を持ったまま、今世に誕生してしまったわけです。 次の転生先では白い獣でした。今回は目がたくさんあって、角もあって、もこもこした大きな獣だ。狼の姿ではない。色は同じなのに残念。 生まれたときは親もおらず、名前なんてなかった。 むしろ人間さえいなかった。 白亜紀ってやつだね。自然発生したらしいオレ。 まだ人間も生まれていなくて、墨なんて概念さえないのに、墨の能力が使えるとか意味不明すぎた。 誕生から、長い年月を経て――恐竜がいなくなった後、この世界でちらちら人間種がうまれはじめた。 人間たちは、みてるまにどんどん進化し文明を気づき始めた。 中国や日本の原型ができあがってきて、そこでようやくオレは「白澤」という名を人間につけてもらった。 オレのことを吉兆の象徴の神獣と、人間たちはさだめたらしい。 長生きしているから神様と同列の扱いをすることにしたんだってさ。 そういえばオレがこの世界に発生してから数億数千年後のある日、ふと気づいた。 どうやらこの世界は、オレの前世の世界の地球とはまったく別の平行世界のようだということ。 だってあの世がある。 桃源郷やら極楽や地獄がある。 それにアマテラスと呼ばれ日本の神様は人型をしていて、他の神々も獣の姿をした神様はいなかったためである。 ちなみにオレは、そんな神々に合わせて、人の姿にもなれるようにした。 とはいえ。 いや、もうね。こう何億年と生きていると、獣のままでもいいかなぁっておもうんだよね。 もちろん二足歩行だってできるし、人の姿にもちゃんとなれるし、その時はちゃんと服を着てる。 本音を言うと、獣のままだと小回りが利かないから、人の手足をのぞんだら、あっさりなれたわけで。 まぁ、そんなはなしどうでもいいかな。 それからなんだかんだあり、我が国は日本のあの世とも交流を持つようになった。 国際交流万歳だね。 「白澤さまはとてもお体が弱いの。無理をさせてはいけませんよ」 国際交流の結果、うちの国の神様が他の国の神とかにオレを紹介するときに、いつのころからかおかしな名言が生まれた。 なんでオレ、体が弱いことになってんの? え?しゃべんないから? いつも寝てるから? どうしてそうなった!!! いやいや。それ、全部事情があんのよ。 ほら、オレが口をきかない理由は、本体獣よ!神獣って言われるくらいだから獣なの!しかも前世も人外だったわけで。 ぶっちゃけウン万年と口を開く相手がいなかったんだよ!しゃべれるはずがなかろう。 そもそも人間ってどうやってあんなたくさんの音を使い分けてるんだ?人型になる方法を学んだとしても人体の仕組みまでは知らないので、内部まで魔法はできなかったんだよこの人家の術。そんなオレが言葉の発し方なんて知るわけないだろう。もう一度言う。オレの本体は獣なんだ! っと、いうわけで、人語は話せません。 獣唸り声や吠えることぐらいはできるぞ。人語が無理なだけで。 つまり。しゃべらないのは、"しゃべれない"わけではなく、体の声帯の仕組みの違いだよ!だれか気付け! あと、ただのコミュ障。 だって万という月日を一人で過ごしてきたんだよ。同族もいないし、人間も生まれてなかったし。 なんなら人類の進化の過程まで見届けちゃったよ。これで誰とおしゃべりをしろっていうんだよ。コミュ障ぐらい患うわ! 寝てるのは、仕事が忙しくて疲れてるの。 桃源郷の桃園を一人で手入れってすごい大変なんだよ! あとは普通に昼寝してるだけ! 本当に理由はそれしかないんだよ。 あと曲がりなりにもオレってば神とあがめられる神獣ですからね、いったん寝ると数百年ぐらいあっという間で。というか人間と時間感覚が違うせいで、つい寝すぎちゃうんだよ。 わかってる。それが具合が悪いって、今の生物たちからしたらみえるんだろう。 身体が白いから、人の姿が目見麗しいとか…なんかいろんな事情が交差した結果、生き物たちがオレを儚い認定してくる。 はぁ〜。かれらはちょっと心配しすぎじゃね? まぁ、オレがしゃべれない理由をしるのは、ごく一部の最上神にあたる天帝やら上の神々だけだ。 基本、他国のやつあてにも、オレに無茶させるの禁止とお触れがでているくらいだ。 当然だよな。 あそこまで病弱?清廉潔白すぎて正常な場所でないと生きてけない、とか。弱いとか。体力がないとかとか……あそこまでいろいろか弱い設定つけられちゃうといまさら訂正とか面倒すぎるもんな。 だから「白澤という生き物は、驚かすのもだめだよ」と、「超デリケートで繊細な生き物なんだから」と。 そういうことにしておいたほうが、事情を知る上層部もオレも楽だと思えたのだからしょうがない。 わかる。いちいち白澤について色々と路訂正するの面倒だもんな。 結果――周囲にオレはガラス細工でできている獣のように扱われている。 なんか最近では勘違い具合が、加速しているというか、おかしな方向にむかっている気がしないでもない。 それは現在もかわらず爆走中で、新しく生まれる神やあの世の住人にまで気を使われる始末。 おかげで基本的にあまりひとと関わらずにすんでいるが。 さすがにちょっとたまにさびしくなるんだよね。 しかもたまにひとをみつけたとおもえば・・・「白澤さまだ!話しかけちゃだめだぞ!話しかけただけで驚かれて死んでしまう!」っと、逃げられるし。 どこまでオレの噂は増えていくのですか。 ひねくれもいいだろうか。 これはひどいとため息がでたもんだよ。 ちなみに、そのため息のせいで、さらに勘違いした殿上人たちが、オレが病気だとかほざいて触れ回ったせいで、一時天界はパニックになった。 どんだけ勘違いが捻じ曲がればいいんだ。 あと間違ったうわさにビロンビロンとばかでかく広がり続けているこの尾びれは、いったいいつになったらなくなるのやら。 誰かどこかで訂正入れろよ。 え、オレには無理ですよ。 前も言ったけど白亜紀前の生物なので、今の世界に生きる者たちと声帯が違うので人語話せませんから! そんなにオレに話してほしいなら、白亜紀を生きている恐竜に人語を話せさろや。それができたらオレも考えてやろう。 そんなこんなで、虚弱と勘違いされてるオレが通りますよ。 まぁ勘違いのおかげで、そこそこまったりと日々を生きているわけだけど。 なんかいろんな意味で疎外感感じるし、ちょっと寂しいけど。 まさしく怠惰な日々に万歳だ。 そういえば、最近ではどこのあの世も騒がしく、現世もそうとう文明の利器が発達し、人間たちはせわしなく生きいそいでいるが、 天界のさらに辺境までは、さすがにその喧騒は届かない。 オレにあてがわれた桃源郷というテリトリーは、いたって時間がゆっくり流れている気さえする。 日々をまったり過ごせるって本当ステキ。 よき今世である。 あの世だけど。 |