【 君は別の世で生きる 】
〜外伝:メインでふっとばしたハートとの暮らし〜



04.Ability





ローがオレにクルーたちを鍛えてくれと言ってから、実はずいぶん月日がたった。
しかしまだ実行には移していない。
なぜなら当時のオレはまだローの側から離れることができないほど弱くて、例え見知ったクルーであれ、たくさんの人間と長時間共に過ごすことができない状態だった。

それでもこの世界にきた当初は、ロー以外の人にも物にも触れない状態だったのを考えると、今の状態はかなりの進歩だろう。

今はロー以外の者とも口をきっくこともできるし、触れることもできるようになった。
あれほどこわかった床にだって、足をつけて歩けるようになった。
初めて床に足をつけたころは、それでもローに触れていないとだめだった。足の先から自分が消えてしまうのではないかという恐怖。
それも訓練を積み、恐怖を和らげることに成功した。

今ではロー以外の仲間でも触れていれば、どんな物も触れるようになった。船の中のどこへでもいけられるようになり、視界に船員がいれば手を離して側から離れることもできるようになった。

ただし、潜水艦の中からまだ一歩もでてはいないが。





:: side 夢主1 ::





随分オレもこの世界に慣れてきた。
とはいえ、まだこの潜水艦から外にでたことはないのだが。

それでもいまなら、以前ローが言っていたことも可能だろうとは思ってはいた。

さて、どこから手を付けたものか。
クルーたちをオレのもといた世界の方式で鍛えるには、まずは他人にもそれが使えるかが重要となるわけだが。

そんなことを考えていたある日、ふいにローが声をかけてきた。
あまりにオレと考えていることが同じだったので、思わず笑った。

『突然だなロー。世界の差異について調べる?なんで今頃』
「なぁに。そろそろいいころかと思ってな。
それに、以前言っただろ。クルーたちをきたえるって。いまのままじゃグランドラインにはいるなんて到底無理だっていうのは、あいつらも理解している」

やっぱりローもそろそろだって思ったんだ。

「どうせ近くには海王類や海賊の影さえないんだろ?なら今が絶好の機会だ。
できるだけ、グランドラインでもあいつらが通じるようにしておきたい」
『ん?ああ、まぁ、たしかに敵の気配は近くにはないな』

言われてオーラをひろげて、敵らしいものがないか探してみるもたしかにない。
それに頷き、オレも同じことを考えていたのだと告げる。

「だからこその世界の差異だ」
『世界のことね。オレのいた世界は、海がわかれていないとか、能力者が多いとか。そういった世界規模の誤差はだいたい話したつもりだったが。なんでそれがきたえると関係が?』
「おれもあいつらも、アンタよりはるかに弱い。おれたちにはまだグランドラインに対抗できるほど力はない。
だからこそ違う世界の住人であるお前の、お前という第三者からの視点がほしかった。その別の位置からの目線がいつかこの海で生きていく上に役立つとふんだ。お前の能力を知ること、この世界の能力を知ること。まずかはそこからはじめないと、お前の世界のルールがどこまで適用できるかわからねぇ」
『だろうな。ふむ・・・あとは細かい能力のことぐらいか』
「それでいい。そもそも一番知りたいのは、世界の違いよりもお前の世界とこの世界の能力のあり方の違いがしりたい。なにかしらの情報が、戦況という盤において、こちらの有利になりうる策につながるかもしれん」

潜水中は特にすることがないオレとローは、船長室にあるベッドをソファーがわりに腰を降ろして本を読んでいた。見た目は二、三歳でも脳みそは違う。外見に不相応な本を読むガキがいるからといって驚かないでほしい。

ローの横で小さな足をパタパタとゆらしながらペラリと本のページをめくっていた手をとめ、読んでいた本から顔を上げたローと視線が合う。

おもしろそうだなと笑えば、さっそくローがこの世界の能力、そしてローの〈オペオペの実〉の能力について細かく話してくれた。



それに頷けば、今度は――お前の能力を見せてくれ。
そう言われ、能力でまず側にあった水差しの中の水を墨に変えてみせる。

「〔練〕だったか?」
『そう。オレのオーラが触れれば水分が墨に変わる。この現象で作られた墨をオレは【夜の宴】と呼んでいる』

指を墨につけ、宙に絵を描くようにふれば、墨は落ちることなくその場にとどまり続け、一匹の蝶の絵が宙に浮かぶ。それはみるみるうちに実体化していき、瞬き一瞬後にはふわりと黒い蝶がとんでいた。

「絵を具現化する能力――【道化師の歪曲心】だな」
『正確には違う。オレのオーラがかよった墨、【夜の宴】を“操る”力。それが【道化師の歪曲心】。具現化するのはほぼオマケかな』

ちなみにこうして具現化したものは、能力を解除したり役割を終えると水に戻ってしまう。

「具現化ねぇ。こういうのは〈覇気〉のレベルじゃねぇな。しいていうなら〈悪魔の実〉の能力者に近いな。意外と〈スミスミの実〉とか実在しそうだな」
『だとしてもオレの能力は悪魔の実の力じゃないだろ。海楼石はオレにはなんの影響もなかった』
「そうだったな」
『〈覇気〉に近いのは、〈念能力〉ではなくて〈念〉の概念だな。あいつらを鍛えるなら、精神と感覚を重点的にやろう。それで武装色と見聞色に近いものが習得できる』

蝶を消すべく能力を解除すると、蝶は一瞬どろりと解けるようにその姿をゆがめるとパシャンと水となって消えた。
床に落ちた水を丁寧に雑巾で拭いて、オレの能力とローの能力についてふたりでいろいろと意見を交わしあった。
そうしているうちに聞き耳をたてていたクルーたちが集まってきて、オレとローによる能力講習会が急遽開かれることとなった。
まぁ、もともと今日からクルーたちを鍛えるという話が出ていたのだから、ちょうどいい頃合いだったのかもしれない。



作戦会議よろしく全員を食堂に集め、まずは能力や“気”について教えることからはじめた。
そこでさくさくと白板(黒板とチョークだと粉が飛んで衛星によくないという理由だ)をどこからかもってくるところは、さすが医療を扱う海賊船のクルーだけはある。

なお、余談であるが、この船では、インクの代わりにオレが能力でだした墨を基本つかっている。
ペンの中身もインクは大概そうである。
白板の横にも、手先が器用なクルーによってつくられたペンが用意された。


そうして鍛錬一日目は、まず能力説明が行われることとなった。

最終的には、異世界のオレの能力がどこまでこの世界で通用できるかというものにつなげるためだ。
オレだってただ絵を具現化するだけの能力者じゃない。
力にだってなりたいんだ。






**********





『まずこの世界の〈覇気〉についてだ。
これはオレもローから聞いた話だから、もし間違いがあったら訂正をいれてくれ』

「りょーかい」
「アイアーイ。おべんきょう?楽しみだね」
「しょっぱなから鍛錬かと思った。マジ助かったー」

『覇気とは生き物すべ・・・あ・・・』

「「「・・・・・・」」」

書かないと内容が頭に入らないし、いろいろ種類があるからと白板にマジックでグラフを書こうとしたのだが、白い板の部分にまで身長が届かない。
頑張って背伸びしても伸ばした手の先が、白い部分に微かにかする程度。あと何十pたりないんだっていう状況で、背伸びしてプルプルしたまま固まった。

あまりの静けさにいたたまれなくなって、恐る恐る振り返れば――

腹を抱えて音がしないように床にのたうちまわって転がっているクルーや、床をダンダンたたいているのに無音をキープしているクルーや、口を手でおさえ肩を震わせている者。顔をそむける者などであふれていた。

なんだか泣きそうになった。
オレ、これでも本当はお前らの数十倍は生きてるのに・・・。

『ろぉー・・・』

涙目で白板の横に座っていたローを見上げれば、ふいっと視線をそらされた。
お前も笑ってんじゃネェーよ!!!!

笑いたければ笑えよ!とオレが自棄になって叫べば、仲間たちは大声で堰のきれたダムのごとき大笑いをしてくれた。





「ではしきりなおすぞ」
「おー!待ってました!きれいにまとめろよ書記!」
『いいもんオレはどうせ子供だもん』
「あ、アザナさんがすねた」
「すねんなすねんな。話が進まないだろ」
「いや、あんたは中身ともかく本当に子供だからな」
「アザナはおれといっしょにいよーね」
『ベポに抱っこされても今日ばかりは嬉しくない!』

「いいから一応聞いとけおまえら。あとで使えるかもしれないからな。アザナ」
『うぅ・・・まずは〈覇気〉について』



〈覇気〉とは、世界の全ての人間に潜在する力。
「気配」「気合」「威圧」などとしてなんとなく感じるあれのこと。

この世界では、そのあやふやな物体を自分の意思で操れる者がいる。それが覇気使い。
理論よりも感覚重視だなこの辺は。
そしてこの覇気じたいを故意に引き出すのは容易ではない。



『――ここまではオレの世界の〈念〉と同じだ。違うのはここから』



〈覇気〉には大きく分けて三種類ある。
これは“気”の使用する方向性、いわゆるベクトルがことなるものをわけたにすぎない。

武装色・見聞色・覇王色。

現状、〈覇気〉にはこの3つのタイプが存在する事が判明しているが、覇王色を持つ者はとても稀であるため、一般的に〈覇気〉というと武装色・見聞色の2種類のことを指す。


『まずは武装色』

これは見えない鎧を纏った感覚に近い。
この“気”を「何か」にまとわせることで、その「何か」がコーティングされたように強度が増す。
この強度次第では、“気”というただのミエナイエネルギーは、鎧となり、また攻撃力としても転じることが可能だ。
一番のポイントしては、〈覇気〉は〈悪魔の実〉の能力者の実体さえも捉え、攻撃を加えられる。ゆえにグランドラインの後半の世界では、自然系能力者への代表的な対抗手段として挙げられている。


「グランドラインの情報って・・・」
「アザナさんの能力か?」
「うわーすごいねーアザナ。範囲ひろいなぁ。そんな能力者しらないよ」

『いや。ニュースクーが教えてくれた』
「「「ニュースクー!?おまえかよっ!!!」」」


『はい、ツッコミありがとう。
つづけていくぞ。
次は欠点。〈悪魔の実〉を抑える力があったとしてもそれは万能ではない。これはこの前、覇気使い同士の戦いを見たから言えることだが・・・どうやら武装色の覇気は、同等以上の武装色の覇気により相殺できるようだ』
「え。まじで?それって肉体的力差?」
「それとも能力の強度?」

『さすがにそこまではわからん』
「しいていうならグランドラインにはいったあとにはその詳しい情報も集める必要があるな」

ローの言葉に、全員が神妙にうなずく。
たぶん〈悪魔の実〉の能力者に対抗するということで真摯にうけとめたのだろう。


だが、そこをぶったぎる。
手をたたいて視線をこちらにあつめてから、続きを伝える。


『次は、見聞色な』

見聞色とは――相手の行動を読む。先読みともいわれている力だ。
これは“気”の動きを読み解く力。
さらにひとによって現れ方が様々なようで、生まれつきその力をもつ者もいれば、何かのショックで覚醒する者もいる。
それは同時に「声」として聞こえたり、「特殊な音」して聞こえるもの。「なにかしらが見える」者もいる。
千里眼や、未来予知・過去視などもこの素質をもつ者である可能性は大きい。


『簡単に言うなら、武装色は物体の強化。見聞色は行動を読む力。
そして最後に・・・』


覇王色。

〈覇気〉の中でも特殊な種類のもので、数百万人に1人しかその素質を持たない。これを持つ者イコール“王の資質”を持つともいわれている。
“王の資質”というだけあって、相手を威圧し、場合によっては気絶させる事も出来る。それだけ「覇王」と呼ぶにふさわしい存在感をその身に持っているということだ。
また、この覇気だけは、他の2つと違って、鍛錬による強化は不可能。当人自身の人間的な成長でしか強化されない。



「アザナの説明でだいたいわかったとは思うが、この世界であつかえる“気”の種類はその三種類。お前たちが鍛錬して習得できるとしたら前者の二つのみ。見聞色と武装色だ。三つ目は運だ」


『っで。本題だ。
オレの世界では、〈覇気〉ではなく、これらを〈念〉という。
“気”は生命エネルギー。オーラと呼ぶ。
通常、人間はこのオーラを放出する目に見えないツボのようのなもの、精孔(しょうこう)というものだが、これが閉じた状態になっている。
これを修行により開けることでオーラが身体をうまくめぐるようになり、〈念〉の体得が可能になるとされている。
はじめに覚えなくてはいけない基礎は四つ。四大行(ヨンタイギョウ)といわれ、意志を強くする過程の修行で、「テン」「ゼツ」「レン」「ハツ」の4種たぐいをさす項目を鍛える必要がある』

「ほら書記!バリバリかけよ!」
「わかってる!」



〔纏(テン)〕
通常はたれ流しになってしまうオーラを体に留めておく技術。
念の攻撃は纏でしかガードできない。

〔絶(ゼツ)〕
通常身体にまとわりつくように漏れ出ているオーラを完全に絶つことで、気配を消すこと。
隠れたりするときにはよいが、念攻撃に対しては全くの無防備になるので要注意。

〔練(レン)〕
纏で体に留めたオーラを一気に増幅させる技。
ここで練ったオーラを発につなげる。

〔発(ハツ)〕
四大行の集大成というべきもの。いわゆる「能力」を指す。必殺技といえば分りやすいかな。
これは個人の資質によって様々な効果を持つ。


『いまは軽く聞き流してくれればいい。
最後に〔契約と誓約〕とものがある』


契約と誓約。
念の集大成である〔発〕は、種類・威力ともに個人差があるが、能力の飛躍的な向上が期待できる方法がある。それが「制約」と「誓約」だ。

〈念能力〉を飛躍的に向上させるには「制約(ルール)」を決めて、それを遵守すると心に誓うこと。
そのルールが厳しいほど、使う技は爆発的な威力を発揮する。
制約と誓約は、麻雀やポーカーに例えられることがある。条件が難しい役ほど点数が高いという点においてだけだが。
ただし、〈念能力〉における誓約はカードゲームのように優しくはない。誓約を破れば反動で念能力そのものを失う危険がある諸刃の剣でもあるのだ。


『細かくいうと他にも分類訳はあって、要領に関してもいろいろあるけどとりあえずその辺は省くな』
「おねがいしまーす」
「ってか、もう十分頭混乱だよ!」

「こらえろ」
『そうそう。そのための白板だろ』

「船長もアザナさんもひどい・・・」
「なぁ、アザナさん。字がわかんねぇー」

『・・・よしベポ。台座くれ。オレが書く』



だれかが持ってきてくれた木箱の上に立ってようやく届いたが、もう一個椅子がないと一番上には届かなそうだ。
なんか悔しい。

腹がたったので、マジックで白板をめっためったにぬりつぶし、能力【道化師の歪曲心】で墨(インク)を操って、白板に文字を描いていく。
それをやったら、周囲からはじめからやれや、ずるいと言われたが、身長が届く方がずるいと思う。
そしてオレはしかたなくであって、ずるくない。ズボラでもない。
ずるいなんて言うぐらいなら、その身長をよこせと言いたい。


「うへー読めないってアザナさん」
「なにそれ?」
『コレは「ギョウ」と読む。
本来〈念能力〉には変化系とか具現化系とか、性質というものがある。だけどそこまで心を砕く必要はない。この世界で〈念能力〉を使えるのはオレだけだからな。だから性質はこの世界では意味がないからとばす。
ちなみに以下のものは、オーラを使えるものなら誰でもできるオーラの使い方だ』


〔凝(ギョウ)〕
・難易度1
・〔錬〕の応用技・練で高めたオーラを身体の一点に集中させる
・目に集中すると相手の能力を見破るなど可能らしい、戦いのときの基本技とされている

〔隠(イン)〕
・難易度2
・〔絶〕の応用技
・オーラを相手から見えにくくする方法

〔周(シュウ)〕
・難易度3
・〔纏〕の応用技
・物をオーラで纏い、強化する

〔円(エン)〕
・難易度4
・〔纏〕と〔練〕の応用技
・一般に自分の体を中心にオーラを半径2m以上広げ、1分以上維持するものをいう。これだけでも物凄い疲れる
・円の幅は個人の技量によるが、オーラの中へ進入した物などは瞬時に察知できる


「あ、わかった!これアザナさんがよくやってるやつだな」
『正解。オレは、防御も強化も苦手だが〔円〕だけはきたえたからな。船の中の失せ物探しなら任せろ』
「余分なものは見つけないでください」
「エロ本くらい船にあってもいいだろーが」
「ってかアザナさんの〔円〕ってのは半径何メートルまでOKなの?」
『2キロ』

「「「・・・」」」
「半径2mで1分以上が相当大変そうに聞こえるのに?え?アザナさんは2・・・キロ?」
『いや、だってもうマジで〔絶〕とかよりもそれだけを鍛えまくったもん。基本他の修練そっちのけだったし』

「・・・まぁ、見張りいらずだもんなーおれらの船の現状」
「アザナさんアザーッス!おれの仕事が減って少し楽になりました!」
「ってか、なんのためにそれだけを鍛えたんだよ」
「わかったー覗きだ!」

『バカいうなよ。そんなことじゃない。裏庭にいた恐竜にな、毎度毎度食われそうになって、それから逃げるためだ』

「え?恐竜って庭にいるのか?」
「森だろ?」
「いや島だろ?」

「・・・どちらにせよ」
「そうだな」

「「「アザナさんは安定のアザナさんだった」」」


「脱線しすぎだアザナ。それで続きは?」
『ああ、ごめんロー。次は習得難易度5な』


〔堅(ケン)〕
・難易度5
・〔練〕の応用技
・〔練〕の状態を維持すること
・全身を通常よりもはるかに多いオーラで覆う
・防御に利用することが多い

〔硬(コウ)〕
・難易度6
・纏、絶、練、発、凝を全て複合した応用技
・体中のオーラを全て体の一部に集める
・主に攻撃に利用

〔流(リュウ)〕
・難易度7
・練の応用技
・纏うオーラの量を変化(移動)させること
・戦いの時、全身を同じ強さでオーラが覆う〔堅〕の状態のままだと、互いに決定力に欠ける。そのため、攻撃の瞬間にオーラの量を変化させ攻撃力・防御力を上げる技


『オレの世界でいう〈念〉の概念は、ぶっちゃけてこんな感じな。
まぁ、オレの能力はな、〔練〕と、〔発〕である必殺技と、〔円〕しか基本使えないってことを理解してくれればいい』
「だったらそんな長い説明いらないだろ!」
『いや。残念ながらこれがいるんだわ』

「は?」
「なんでだよ。だってその〈念能力〉っての使えるのアザナさんだけっしょ?」
「おれたちにはあっちの世界の能力は使えな『どっこい。それが応用はできるんじゃないかって話になってさ』かぶせんな!」
「ってかいまなんて?」

「「「え・・・」」」

『ローが以前言ったこと忘れたのか?』

「どういうこと船長?」


全員の視線がローを見やる。
ローはニヤリとばかりに笑みを浮かべていた。

「この世界とアザナの世界における共通点があった。それが“気”だ。〈覇気〉も〈念能力〉も根本は同じ。生命エネルギー…というか、誰しもが持つものだ。ならば」
『たしかにオレの能力は主に三つなわけだが。
これからお前らには感覚を鍛えてもらう。殺気を感じ取れ。生き物の気配も分かるようになれ。生き物は気配に敏感だ。人もまた危機感があればその感覚を極限まで発揮する。火事場の馬鹿力っていうだろう?まさにあれだ。
そうしていまの〔絶〕とか〔堅〕とかの感覚も鍛えられるようにしようと思ってな。
それでローと相談して、体術にくわえ、“気”になじんでもらい、二つを組み込んだら意外とできるんじゃね?というのが、オレたちの総意だ』

つまり。


「『オレたちがこれからお前らを対能力者用に鍛える』」


ローと二人でいたずらが成功した子供の様に笑ってやれば、ポカーンとしていたクルーたちは次第に顔を青くさせ・・・

「「「「いやだぁぁぁぁぁっぁぁぁーーーーーーーーーー!!!!」」」」


雄たけびをとどろかせた。





さあさ、能力者講習はこれにて終了。
ここからは、オレの墨を作りだし、墨絵を具現化する能力、気配察知(2q)。そしてローのオペオペの実による――基礎体力作りと攻撃のしかた、うけながしかたの講習の時間だ。



諸君。
対能力者への心の準備は・・・いいかい?

―――なぁ〜んてな。








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