【 君は別の世で生きる 】
〜海賊世界〜



08.お絵かきは内密理に





原作キャラは見ないようにしているんです。

さっきの・・・
トムヤンクン?ケムヤン?ケムイヤニの略?
海賊よりも悪い顔の煙のオッサンを海兵どもがなんて呼んでいたかは忘れた。

つまりなにがいいたいかというと・・・

もう名前忘れました。ってことだ。





side [有得] 夢主1





名前はともかく、あの煙になる海兵の心臓をローがうばった。
それをみて激昂した眼鏡のおねぇさん海兵をもあっさりたおしたローは、なんとあのいかつい煙野郎ときれいなお姉さんの精神をシャンブルズしてしまった。

倒れた二人が目を覚ましたらきっとびっくりするだろうなって、すっごい気になった。
後ろ髪惹かれる思いで見てたら、歩くことを忘れてしまって本当に立ち止まっていたらしい。

ロ「おいていくぞ」

と、いわれたので、とんでもないと首を横にフリフリ。
あわててローにとびついて、いつもより強くしがみついたもんさ。

フンと笑ったローは、たおれる二人の上司におどろき慌てふためき、ワラワラと岩陰から出てきてた海兵どもをおいて、研究所内にさっさと戻った。
もちろんオレはその背中にくっついている。

外に出る訓練を始めてから二年。
二年もたてばずいぶんなれたもので、誰の背中にオレが張り付いていようともハートの仲間の誰も振り払おうとしたり、切り刻もうとしたり、重いって言わなくなった。
ローが邪険にしないでくれるのがすごくうれしい。
とはいえ、彼らがそれでオレをかまってくれるわけではないが。
いるのが当然空気のようにスルーされているにすぎない。
というか最近では、船の外でもクルーが視界の中にはいっている状態なら、それほど不安もなく歩けるようになったのだ。

なったのだが。
いかんせんこの島には、ローしかオレの心の支えはいないし。
あげく原作キャラの煙男がくるし、主人公がいるし。
もうローからぶっちゃけ離れられそうにはない。
怖いもんは怖いんだからしかたないだろう。



そんな感じで。
現在オレは空気を読んで大人しくしています。
先程とってきたばかりのG5の煙男の心臓――をシーザーに渡すローの横に腰掛け、こどもらしく紙に絵をかいています。
前世の職業柄、絵をかくのはそこそこできるんだけどそれだとまずいので、ふつうのこどもらしく、ぐしゃぁ〜とした謎のものを描いています。
オレはこどもですし、話しかけられることもなければ、仕事をふられることもないので。本当にただいるだけ。まじで空気である。いっそオレの姿はみんなに見えてないんじゃないかと思えてしまうほど空気である。
シーザーなんか、もらった心臓がよほどうれしいのか、こっちを見向きもしない。

いいけどね別に。

暇なので、横のソファに座っていた勉強好きのモネさんから、新に書くものをもらう。
クレヨンにはあきました。ペンがつかってみたいです。黒色ください。

モ「はい、これでいいかしら」
字『ありがと〜』

いただいたのはオレにとって好都合なことに、ハネペン。つまりかならずインクを壺につけるタイプだ。
っていうか、この世界ではボールペンとかないから万年筆や羽ペンが主流なんだけどさ。
うけとったインクつぼにひそかにオーラを流して、中の水分を能力で“オレの墨”と入れ替える。
この世界では、オレがオーラを使えても、この世界の住人はオーラをみることはできないし、察知することもできはしないのだ。
ましてやオレはこの研究所に来てからずっと、外見にふさわしい子供らしい無邪気な子供を演じてきた。

疑われることなく、オレはスケッチブックをめくって新しい紙をひらく。
そのまま真っ白な紙に、ベチャリと墨を垂らす。
無邪気な子供を装って、鼻歌を歌いながらグリグリと絵をかく様は、大人が文房具を使うのとは違ってずいぶん汚らしく、あちこちに墨が飛び散っている。
ローはそんなオレをみてため息をついている。
モネさんはそんなオレをニコニコしながらほめてくれるし、頭もなぜてくれ、あげく何を書いているかまで聞いてくれた。
彼女、意外と子供好きだよね。

字『あのね!せんちょーをかいてるんだよ!ペンのインクは黒いから!』
モ「ふふ。そうねローって真っ黒だものね」
シ「ブフッ!!シュロロロロ!黒いからローって。それどこからどうみても毛玉に手足が生えたようにしかみえない!! 毛玉に手足・・・ローが毛玉・・・ブッ!!シュロロロロロロロ!!!」
ロ「・・・・・・」

シーザがなんともいえない笑い方でゲラゲラ笑っては、ローをチラ見しては噴き出して、ついには腹を抱えて苦しみだした。
こいつ、今後ローの顔を見るたびに爆笑すんじゃネェだろうな。
ローからは、殺意の混ざった視線を向けられた。
モネさんは内心「いいぞもっとやれ」とばかりにいい笑顔のままだ。

そんな彼らを見て、子供の振りして紙にぐしょぐしょと描いた絵をみつめてみた。

毛玉に手足。
たしかにその通りだ。

けれどそこで認めてしまっては、自分が子供とは違う感性を持っていることがばれてしまうし、こどもらしくないまっとうな絵なぞかいてみせたら、そく危険視されかねない。
これが本当の子供であるなら、自分が一生懸命書いた絵をバカにされてうれしいはずがない。
だからプゥーっとほっぺをふくらまして、『毛玉じゃないもん!ローだもん!』と、シーザーに汚れたいらない紙をまるめてなげつける。
でもオレも思うんだよ。ローってモコモコ好きだよなぁって。実際毛玉のような仲間や、毛玉のような帽子や、毛玉のような刀のつばをみていれば・・・ねぇ。
言わないけど。

モ「ふふ。あら。あとのはどうするのそれ?」
字『うまくできたからね、ろーにぷれぜんと!みてみてモネさん!ろーにそっくりでしょ』
モ「本当ねぇ。あら。帽子を描きわすれてるわよ」
字『ほんとだーありがとうモネさん』

モネさんにニコニコと見守られながら、おれは新たにぐりぐりぐりと白い紙を黒色で埋めていく。
舌足らずな口調も演技だ。
ちなみにあとで、この絵といいがたい物体が描かれたものは本当にローにプレゼントするつもりだ。 なにせローにとっては、《オレの墨》を持っているだけでも“便利”だろうから。
そんなわけで、大人たちの会話そっちのけで、モネさんにかまってもらいながら紙にへたくそな絵のような黒いものを描いていく。
まさかこれが能力をたくわえる行為だとは、誰も思うまい。
ついでに元来オレの能力は、描いた絵ではなくオーラでつくった墨を操ること。そして描いた絵に能力を与えること。このふたつだ。
ゆえに、本来のオレの画力はここまで幾何学的な幼稚な絵ではないと――弁解しておく。

ちなみにローは別のことに気を張っているせいで、笑って踊りながらちゃっかりなにかいろいろ言葉をこぼしているシーザーの“言葉の裏”に気づいてない。
オレはこうみえても二度死んでるわけで、もう精神的には老人なわけで。殺伐と世界で生きてきたこともあり経験豊富である。ささいな言葉のやり取りがわからないはずがない。
こういった観察、偵察、情報収集などを認められ、ハートの海賊団では副船長をやらせてもらっている。まぁ、新世界に入る前からの付き合いとなるしな。
とはいえ、表向き副船長はべつにいる。基本的にオレは留守番組であるため、留守番するときは最年長ということで指揮権を持っているに過ぎない。
まぁ、クルーは孫みたいでかわいいから守るためなら、どんな情報操作でもしますぜ。

っと、まぁ、言いたいことは、シーザーは口が意外と軽いなーということだ。
ローはきいてないし、オレはこどもだし。安心してるんだろうけど、本当に口が軽い。いいのかよそれで!?と思わなくともない。

まぁ、ローは、ローですべきことがある。
ローってば、はためには表にはださないし、焦っている風にもみえないし、みせないけど・・・・・“その目的”を達成するために常に神経をすり減らしているから、内心けっこう手一杯だったりすることもある。
その代わりに、いつもローにくっついているオレが、ローが見えない部分を見ている。

たいがいのやつらはオレの外見にだまされる。まぁ、成長して・・・ないようなしてるような、そんな速度の成長のため、外見はどこからどう見てもお子様だ。
だからオレが外見どうりの年齢のただの子供のふりをすれば、周囲はけっこうオレのことをスルーする。
このまま成長しないと、オレはスパイにでもなれそうだ。

ただし、仲間の一人でも視野の中にいないとパニック起こすので、一人きりでの潜入には向かない。
オレが一人で行動できるようになるのはいったいいつになることやら。

いや、でも初めのころは地面に足もつけなかったし、ローから手を離すことができなかったぐらいだし。あれを考えれば、今はまだましか。
だが、いつかはこのトラウマをなんとかしないことには、たぶんダメだろうなぁ。
本当にいったいそれはいつになるのやら。


字『はい、ろー!みてみて!』
ロ「・・・これは、俺か?」
字『そー!これかたなでね。ねぇもねさん。こっちがボーシなの』
モ「ええ。とても上手にかけてるわよ」
ロ「・・・そうか」

みせたら物凄い渋い顔をされた。
おいこらロー。お前、それを受け取らないつもりか?
お前なら、それが何を意味するか分かってるだろう?
ニコニコ笑って、おしつけるようにして絵を渡せば、物凄い嫌そうな顔をしつつも丁寧にたたんでそれを服のポケットにしまいこんだ。
フンと鼻をならして俺に背を向け、部屋を出ようとするローに、置いていかれてなるものかと翻るコートをあわててつかむ。
部屋を出ていこうとするローの服をつかめば、ローが足を止めオレを見下ろしてくる。
そこでオレのことを待っていてくれていたのだと知り、ホッと息をつく。
オレはローがいないとだめなのだ。それをしらないはずはない。それでもそのまま彼が部屋を出ていってしまうんじゃないかという恐怖に、足がすくむ。手が震える。恐怖に涙が出そうになって、そのまま「おいてかないで」と必死にローの服にしがみつく。
ローはやれやれとばかりにため息をつくと、けれど慣れた仕草さで「つかまっとけ」と服をつかませてくれ歩調を合わせてくれる。
オレはローが部屋を出るならと、「バイバイ〜」とモネとシュロロロロロ〜のシーザーに手を振って部屋を後にした。
意外と子供好きなのか、シーザーとモネが手を振ってくれた。





しばらくローと無言で廊下を歩く。
歩いて歩いて、人の気配がなくなったところで、オレは血の気の下った顔でローの服をひっぱった。

字『ろーどうしよう』
ロ「言葉が戻ってないぞ」



字『・・・て、敵が、子供なんかに鼻の下伸ばしてるんですけど』



あれでいいのかパンクハザード!?
あんなに子供にデレンデレンでマジでいいの!?
いいの!?
どうやってなりたってんのここ!?

思わず、敵を心配してしまったオレは、どうしたらいいんだろう。
いやだて主人公とその一味がいるってことは、きっとシーザーも巻き込まれるわけで、ローもシーザーも主人公の敵になる確率はあるわけで。
そうするとあのだらしない顔のシーザーが、主人公に勝てるのかとかという問題があって。
ちなみにオレたちの目的はシーザーの確保と、毒の建造工場の破壊である。
そのためにはルフィたちは邪魔・・・な?わけで?

え?どうしたらいいの?

パニックになっているオレに、ローは眉間にさらなる皺を寄せたあと、オレの頭をはたいた。


ロ「落ち着け馬鹿。いまから“跳ぶ”ぞ」
字『あ!?え?うん、わかった!って。え?えぇーーーーー!?』

ローが手を伸ばす。
そうして彼が能力を展開後、指をパチンとならせば。

次にはオレの目は、まばゆばかりの白に焼かれていた。








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