【 君は別の世で生きる 】
〜海賊世界〜



07.オレの生き様と、再会





やっぱり・・・


無理だ。

まだオレは、世界のすべてが。
君さえも。

怖くてたまらない。





side [有得] 夢主1





船から出ることさえできなかったころ。
自分が別世界から来た異物だから、この世界のものに触るのが怖かった ――あの頃は、まさか自分がそこまで重症だとは思ってなかったんだ。
よくよく考えたら、ローの潜水艦の中をべたべた触っていた時点で、 ものに触れたぐらいで、《世界》に拒絶されるでもなければ、消えるわけもなかったんだろうけどさ。
この世界は前の《世界》に比べるととても寛大みたいだし。
それでも。ローに拾われてすぐのころは、精神的ダメージが強すぎたんだろう。
恐怖で目が曇ってたんだろうね。

この世界に来た当初は、すべてが怖くて怖くてしょうがなかった。

もともとのオレは、面倒くさがり屋ではあったけど、人嫌いではなかった。むしろひとなつっこい方だったんだよ。
いまでは信じられないかもしれないけどさ。

だけど一度《世界》から消されるという体験をした後では、別の世界の人間に触れただけで消えるとも思っていた。
それが地面でも植物でも物でも同じ。

当時のオレは、ローとハートの海賊団以外の仲間以外のすべてが、オレという異物を消せる対象としてうつった。
外で初めて食事をするとき、ものを飲み込むことができなかったほどだ。
このままこの世界のモノを飲み込んだら自分は内側から消されるんじゃないかって怖くなってね。
結局外では食べられなくて、身体につられたわけじゃないだろうけど、申し訳なくなって大泣きした。
「ごめんなさい」って謝ったのは、ローたちにか。それとも料理をしてくれたコックへか、食材そのものにか。 食材を作ってくれている農家の方へか。 わからないまま「食べられなくてごめんなさい」ってずっと泣きじゃくっていた。

オレの存在をはじめに認めてくれたロー。
彼の側だけが安全な空間。
そこだけがオレを許してくれるようで、彼の潜水艦内のモノとかは触れたんだ。
とはいえ、クルーたちとやり取りができるようなったり、艦内でなら自由に歩けるようになったのはずいぶん後のことだが。



いやぁ〜。大変だった。
あのおっかない顔したローが今ではすっかり子供の世話になれるぐらいには、オレ、迷惑かけたよ。

ちなみにローは気づいてないけど、自分の腰より下の身長のぐらいのこどもをみると、視線を合わせるべくしゃがみこんだり、 頭をなぜたり、抱き上げたりと全部無意識でこなしている。
恐ろしいことに、あの隈がすごくておっそろしい顔で、さらにあの切り刻むのが好きだと公言してやまない《死の外科医》なのに、 だっこされた子供は全員すぐに泣き止み、あげく笑顔でなつくのだ。
本人は世話スキルがこの数年でものすごく上がっているのに気付いていない。

そしてその事実に、ハートの仲間のだれもつっこめなかったよ。
当然だよね。つっこんだら、きっと切り刻まれていた。


ベビーシッターにむいてるよな・・・・あ

「・・・おいアザナ。お前、今、何考えた?」
『!?』

いや、すんません。着込むのはアレですね。凍傷除けですね。はい。
別にベビーほにゃららなんて考えてないし!
そうですとも、雪なんかで怪我しないようにするためですよね!ね!!

だから睨むのやめて―!!!

いやいやいや!刀とかに手をかけるのやめてくれるかな。
ベビーシッターじゃなくて、えっと保父さんみたいって言ってごめんなさい!!
え?意味が同じだって?

ぎゃー!斬られた!腕、かえしてー!ゆるしてー!!



えーっと訂正しようかな。
オレのせいでい子供の世話がとんでもなくうまいとはいえ、こどもだからといってすべての子供にローが優しいわけじゃない。
子供がいたら無条件で手を差し伸べるような優しさがあったら、シーザーの研究所でこどもたちが飴を食べ続けるのをスルーしたりしなかった。
世話がうまくなっただけだよ。無意識だけどな!





さて。最近は外に出る前に必ず言われることがある。
でかけるひとに誰もが言う「いってらしゃい」のあいさつと同じように、オレにとってはすっかりなじんだ言葉。

ロ「ここにあいつらはいないから離れるなよ」

ローが言う。
あいつらってのは、ハートの仲間のこと。
このパンクハザードには、ハートの仲間はいない。オレのそばにいるのは、今はローだけだ。
だからそのローから離れたらどうなるかなんて――
わかりきっていて、いつも真剣にうなずいていた。
だってひとりになんかなったら、オレはきっとショックせいの心臓発作を起こして死ぬぞ。

だから今日も今日とて、ローのコートの裾をつかませてもらう。

ローはなれたようすで、「忘れもんだ」とマフラーをオレにかけてくれる。

ついでをいうと。
ローよりもオレが今モコモコの衣装を着こんでいるのも、過保護なローが、寒さを心配して着せまくったに過ぎない。
寒さで凍死するのが早いのは、大人のほうなんだよ。子供や赤ん坊のほうが脂肪が多いから生還率が高いんだそうだ。
まぁ、最期のは何でもない豆知識だが。





* * * * *
 




扉をあければそこは、極寒の冬ゾーン。
シーザーは毒の煙幕を張れば、島にはだれもはいってこないと言っていた。
だけどそうやってシーザーが張った罠をかいくぐって、たまに海賊や海軍がくる。
今回のたまにもそう。

なんと海軍のG5というのがきた。

そこには原作でもルフィとたたかっていた、煙の能力者がいた。
彼らのせいで雪ゾーンが騒がしい。
シーザーの信頼を得るために、それの対処にローが行くと言ったので、現在オレはローの黒いコートにしがみついているわけだ。


ローが煙男の質問に「シーザーがここにいること」「研究所がまだ稼働していること」をごまかすように、ここが自分の別荘だとかいろいろ嘘八百並べ立てては、G5をおいだそうとした。
オレは扉の陰に隠れるように、ローのコートをつかみんがら気配を消すので必死である。

なにせ目の前にいるのは、数少ないオレの原作知識でローグタウン編とか、アラバスタ編と。2回にわたり登場した“原作キャラ”だ。
寒さとは違う意味で身体が、震えた。


ローがやつの尋問をごまかそうとしているとき――。
なぜか背後の入り口から、麦わら一味のオレンジ髪の航海士と、シーザーの実験台にされていたこどもらがやってきた。


ロ「“麦わら屋”の?なんでいる?!」

ローもそう思うか。オレも聞きたいよ。
なんでいるんだ?お前ら・・・・。


煙「いまのは麦わらの・・・」

それからローは逃げようとしたナミ、ロボ、トナカイ、グルマユの4人の精神をランダムに入れ替えてしまい、見るに堪えがたいカオスを作り出していた。
そのまま麦わら一味の一部とこどもたちは悲鳴を上げながら騒がしく、ユータンしていき、建物の中に舞い戻っていく。


ああ、本当にびびった。
オレたちも麦わら一味がこの島にいるのを今知ったんだ。

オレはとびでてきた麦わら一味たちをよけるようにローの首に腕を回す形で背中に張り付く。
そのせいでローの顔を見ることはできなかったけど、“麦わら一味”を見た瞬間の間違いなくうちの船長の顔は引きつっていた。
G5の煙のおっさんまで、騒ぎながらひっこんでいった麦わら一味たちを顔をひきつらせて呆然と見送っていた。


煙「あれは麦わら一味だな。トラファルガー!貴様、かくまっていたのか!」

ロ「・・・俺もいまあいつらがいるのを知ったところだ」
字『ケムケムしいおっさん、あのね本当にオレたちいまはじめて知ったんだよ』

外見通りの、その年齢よりちょっとだけ口がたっしゃなこどものふりをして、ヒョッコリローの背後から顔を出す。
こどもの言葉ぐらいしんじてくれよ。と、思うが、やはり相手は堅物な海軍。

煙「海賊の言うことなど信じらるはずないだろが!あと俺はスモーカーだっ!ケムケムしいってなんだっ!!」
字『タバコ。からだにわるいってロー言ってた』

なぜかいた麦わら一味のせいで、ローの作戦がちょっと失敗しかけてるのが腹が立つ。
さすが主人公といったところか。
厄介ごとあるところに、主人公ありってか。

・・・・ああ、なんて理不尽だ。

そもそもごめんね煙男、あ、スモーカーだっけ。あんたは海軍だ。あんたが海賊であるオレたちを信じられないように、オレもあんたを信じてない。
むしろオレには近づかないでほしいぐらいだ。
まぁ、ローが戦うとなったら、オレは彼に張り付いてないと無理だから一緒に戦うことになるんだろうけどさ。

ってか・・・かわいい純粋そうなこどもの意見さえ信じないとは。
これもあれももう全部あいつらのせいに違いない!だから主人公は嫌いなんだー!!!

字『ケムケムがしんじてくれないの〜!ロー!!』
ロ「うるせぇ。耳元で叫ぶなアザナ」

それは俺の台詞だとばかりにローつっこまれた。
ローも本当は“麦わら屋”と会うの嫌いなんだよ。なぜって、主人公と会うと、オレが騒ぐから嫌なんだとか。
オレだけじゃなく、当の“麦わら屋”たち自身も騒がしいから気に食わないって・・・ローもそうとう辛口だ。

だけど本当に麦わら一味のことはしらなかったのに、スモーカーはそれを信じてはくれなくて、むしろ海賊のなんかの話を聞く気はないとばかりにピリピリしていて、ついに海軍G5さんが戦闘態勢に入った。
やだなぁ。短気なひとって。

扉をあけるとそのむこう側には御伽の国が広がっていると、絵本ではあるが。
現実はこんなもんだろう。
扉の先には海兵。
ローの背中にはオレ。
みたいな?


一瞬あらわれて一瞬で去っていた4人の麦わら一味と、研究所のこどもたちが嵐のごとく場を乱して去って行ってから。
海兵らがいちゃもんをつけてくる――とはいえ、いろんな意味で正論を言っていたがローは無視した――ので戦闘となり、ローはG5の船を真っ二つにしたり、能力で海兵どもを切り刻んでシャンブルしちゃったり。
それにきれたらしい偉そうな煙の海兵がでっかい十手をもって襲いかかってくるもんだから、ローの背中に張り付いてるオレは悲鳴もんだ。
とはいえ誰かに張り付いている限り、戦闘のときは自力で身を守らないといけないのは理解してるし、二年で慣れた。
だから突き出された攻撃にローが頭を引っ込めた瞬間、オレも身体を動かすのを忘れない。

煙野郎は、そんなオレがローの弱点だと思ってるようだが勘違いだ。

ようはカンガルーの親子(子は腹の袋ではなく背中オンブバージョンだとでも思って)だよ!
逃げるだけじゃなくて攻撃もしますよ。
ローがよけたあとに、オレがパンチします。蹴りだします!とは威力もないし手足の長さもないしでさすがにすることができないので、オレのもスキルといえばローと一緒に逃げるしか今のところできないけどな!


煙「戯言はその背中の小熊をとってから言うんだなロー!!」

字『こぐまじゃないし!』
ロ「ふん。こいつをなめないほうがいいスモーカー」

つか、また「こぐま」って呼ばれた。何年ぶりだそう呼ばれたの。

ローはにやりと笑ったんだろう。
その振動を感じつつ、ローのコートにしがみついたまま、期をはかる。

奥の手ってのは人に見せないにしたことはない。
オレたちはもともとシーザーの研究所をぶっつぶすために来た。つまりねらいはシーザー。あいつをつかまえるためなら、なおさらオレの能力が、シーザー一派にばれてはいけない。
彼らにとってオレという存在は、あくまでローのオマケだと認識させなければ意味がない。
なぜならそのさらに上にいる大物(シメ)は、オレがいただく予定だからだ。
だが今回のスモーカーも麦わら一味も予想外の出来事だ。
とはいえ、たかがこどもの振りをしている今のオレにだってできることはある。ローの作戦の障害となるなら、スモーカーさんをたたくだけ。シーザーにばれない程度に、こちらからも攻撃させてもらいますよ。
もちろんきっちり映像電伝虫のありかも調べてある。
それによってシーザーにみられない死角を狙っていた。
だからローは、“雪の中で”煙野郎と戦ってる。あいつの“けむる能力”。そして戦闘により雪が舞いあがるせいで、映像電伝虫から幾度も死角になる瞬間できる。
ローがうまく煙野郎を誘導してくれているのに感謝だ。
死角をきっちり計算して、オレは能力を発動した。


オレはこの二年で、さらにこの世界について学んだんだ。
何年この世界にいたとおもっているんだ。相方(ロー)と能力の研究だってしているんだ。
なめてもらっちゃこまる。

オレはこの二年間をただローにはりついていただけじゃない。

・・・張り付いて、いただけじゃぁ。
ないん、だからなっ!!!

シャンバールみたいに大きくなるにはどうしたらいい?な〜んて、おこさまぶって成長の秘訣を窺ったりなんてしてないんだからな!ローとかシャチとかペンギンとかシャンバールとかに、かまってぇー!とかだっこせがんだり、ぬくぬくしてたわけじゃないんだからな!!
遊んでたわけじゃないんだ!
それだけじゃないんだからな!

それにしても。
斬るのが自他ともに認めるぐらい好きだと思っていたあの“死の外科医”がねぇ。
ローが子供好き〜に進化したとか!
本当に二年(歳月が流れる)ってのは、すげぇよな。


ロ「・・・アザナ。お前、いま、何を考えた?」
字『え。なにも〜』
ロ「口を開いたらお前も斬る」
字『・・・・・・二年間幸せでしたってはなし、かなぁ?』
ロ「フン。さっさとやれ」
字『はいはい』


オレの能力は、水分を墨に変えること。
その墨で描いたものは―――具現化する。

ちなみに生み出した墨は、水分があればいくらでも作り出すことができる。解除すれば墨もただの水に戻る。 こちらはオレの体質的な能力とでもいうのか、とくにこれといって頭を働かせて編み出した能力っというわけではない。
前の世界で《念能力》という力を学ぼうとしたらできたのだ。いわば副産物である。
ふだんは自分で能力の範囲を決めて水を変換しているのだが、感情が爆発するとたまに暴走して周囲の水分が勝手に墨になる。
以前もそれで何度か人間を墨に変えるなんていうビックリ仰天をしてしまったことがある。

ローの黒いコートには、その生み出した墨で描かれた絵が、布にしみこませるように服の黒色に紛れこませてある。
それに《オーラ》をおくれば、絵は具現化する。

オレはしっかりローの黒いコートを握って、絵にオーラを流す。
コートというかその影から、オレは小さめのナイフを取り出す。
これくらいの武器なら、 いかにもローのコートに仕込んであったものを取り出したようにしか見えないだろう。
とはいえこのナイフのオオモトは墨であるため、強度の保証はしない。へたに払われると、形はすぐに崩れてしまう。

映像電伝虫もいるんで、オレが能力者であることを見せるわけにはいかない。
その瞬間を見せないようにする必要があるが、 探査能力に特出したオレの感覚はきちんとそれらの死角を認識しているので、まぁ問題はないだろう。

それにこのナイフでは、切りつけるのが目的じゃない。
本当の目的は別にある。

現に黒い刀身のナイフは案の定、すぐに煙野郎に「邪魔だ!」と薙ぎ払われ、その勢いでオレの手から離れてしまった。そしてナイフは――細かい水の粒子となって飛散する。

何度も言うがあのナイフは墨である。細かく細かく砕けた水分は霧となる。
この霧を産み出したナイフのオオモトは墨であるため、黒い霧となったそれは、スモーカーの視界を奪い、その足を一時的に止めさせる。
霧になるよう“そう仕組んだ”のではなく、そういうものなのだ。もともとが墨なのだから。

オレが服や肌に書いた墨をしみこませるのは、墨で絵をかくというロス時間を削り、能力の発動を短くする役割も果たしている。
だからローの黒いコートには、オレの能力で墨が大量にしみこませてあるのだ。

オレの服ではなくローの服にしみこませてあるのは、これは一種の誘導だ。
オレの能力を知る者が、オレが絵をかく隙を与えないように時間をかせごうと近づいてくるとき、そのまま絵を具現化してとらえてしまうための罠。
絵を具現化するオレの能力は、自分の服に絵が描かれているとその絵を警戒される。
だがオレの服が白いと、別に絵を描かなければいけないと相手は思い込む。
それを狙ってオレの服は白い。
かわりにそばにいるローが、オレの絵をすべて持っていることになる。
だから能力の発動時間はとても短い。そしてローに触れようとすればするほど、オレの能力が攻撃を仕掛ける。

二年でローの能力と組み合わせて発動するのも慣れた。
悪魔の実の能力に上掛けするように、オレの《念能力》をかさねられるようになった。
たとえばローの《ROOM》にかさねるようにして《オーラ》をひろげれば、ローにもオレが視てるものが見えるとか。視覚を共有できたりする。
悪魔の実と覇気、そして《念能力》。この三つの特性や性質をうまく混ぜ合わせたり。
この場で見せる気はないけど、ほかにもいろいろ使い道はあるのだ。


煙「なっ!?仕掛けナイフか!」
字『だいせ〜かい!たたくとスモッグがでます。オレのお気に入りです!』
ロ「能力者相手に常識なんか通じねぇからな」

ナイフをたたいたから黒い霧がでた。そういう設定だ。
実際ナイフごと霧となったのだが、瞬間的に黒い霧(スモッグ)が周囲に満ちたので、きっとオレの手の中にあったナイフがなくなったとか気付いた者はいないはずだ。
驚くスモーカーが「卑怯だ」と騒ぐが、そもそも能力者の方が卑怯だろうと言いたい。
それにこれぐらい麦わら一味のオレンジ髪のひとの武器のしかけにくらべれば、かわいいもんだろうに。


――はい。足止め完了です。


今回は10秒でもスモーカーの足を止められただけで十分だよなぁ。
墨臭いだろうけど黒い霧となったナイフ効果により、スモーカーが一瞬気がそがれる。その隙をついて、ローはニヤリと口端を持ち上げて笑うと手を突き出した。

ロ「《メス》!」

ポン!とスモーカーの心臓が抜き取られる音がし、ドサリと彼が雪の上に沈む。
もう用はないと能力を解除すれば、残っていた霧状の墨がパシャンとはじけてただの水になって黒色はその場から消える。
帰るぞと、しっかり背負いなおされたので、張り付きなおせば――



ルフィ「おーい!おーい!お前じゃんかぁ!おれだよ!おれぇ!あんときはありがとな!」



タイミングを見計らったよ縫い茶ひげを乗り物にした“麦わら屋”がきた。
“麦わらの一味”ではなく“麦わら屋”本人である。

タイミングが有り得ネェ。


ロ「“麦わら屋”か…」
字『でた!きた!きたぁ!またでたぁ!!』

なんだよあいつ!オレに恨みでもあるのかよ!?
オレはあいつに触られたら死ぬ!?ってびびってんのにさ!
だから原作キャラなんてものには会いたくないのにぃ!!

なんだこの遭遇率は!?

はっ!ま、まさか・・・まさか!
オレがしらないだけで、原作の中にローもでてきたのだろうか。
うちの船長、まさかの原作キャラ!?
有り得る。

・・・いや。それは考えるのよそう。


字『ローおいはらってよ!』
ロ「あれはお前にとってゴ〇ブリと同じ扱いか…」
字『もっとたちが悪い!逃げよう船長!オレが死ぬ』
ロ「はぁ…お前、まだそれ言ってるのか」

なんなの?なんなの?なんでいるの?なんで主人公がきたの?
むしろ麦わら海賊団は、噂じゃまだ入り口付近の魚人島をでたばっかで、その海上で海軍が海賊たちを一網打尽にしてるって聞いたけど。
なんで魚人島からの浮上地点よりもさらに奥のパンクハザードにいるわけ!?
まさか・・・これが主人公特権ってやつですか!?

字『主人公やだぁぁぁ!!!』
ロ「…だまれアザナ」
字『アレにさわりたくない』

なんか嬉しそうに仲間のもとから離れて先陣切って麦わら帽子の青年がこっちにかけてくる。

出た。主人公。
オレ、触ったら死ぬかも。
ためしたことないけど、超怖い。
能力者の海軍大将どもとか相手にするより怖すぎる。


思わずローの背から降りて、黒くて長めのそのコートをめくって内側にいれてもらう。
冬景色には寒そうなローのジンズにいつものようにしがみついて、主人公から身を隠す。
「邪魔くせぇ」とつぶやきが上から聞こえたが、しったことか。


ルフィ「おーい!こんなところで会えるとは思わなかった!あんときゃ本当にありがとう!
あ、あれ?しゃべる熊と、カエルの置物振り回すちっこいのとかは?」

ロ「・・・カエルの、置物を?」
ルフィ「ああ。それでちっこいのに二度殴られた」

ロ「おい、アザナ」

あ、あのやろうばらしやがった。
おかげでローがオレにドスのきいた低い声をむけてくる。たぶん今頃コートの上から鋭い視線が向けられていそうだ。

ロ「あのとき、“麦わら屋”は二週間は安静にさせろって言ったよな?」
字『だって…。死にたがりなんか嫌いだ。それに殴ってくるっていたらロー何も言わなかったし』


ルフィ「あ!おまえー!そんなところにいたのかぁ。シッシッシ。元気だったか!相変わらずちっこいなぁお前www」

字『お前が来たから元気じゃなくなったよ!』

ローのコートの中でモゴモゴやってたら、主人公にみつかった。
近づいてくる気配がないだけましだけど。


ローに邪魔くさいと服の中から引きずり出されたので、しかたなく定位置の背中に移動してまたはりつく。
ローの肩越しにこっそり奴の様子を窺えば、それはもうニコニコとした“麦わらのルフィ”とバッチリ視線が合う。

ルフィ「お互い賭けはまだ継続中だな」

とニカッと笑ってくるものだから、あわててローを盾にして視線から隠れる。
なんであの錯乱状態で、あの話覚えてるの!?
いや、もう死ぬ気がないならいいんだよ別に。
だからかかわらないで、オレに


ロ「よく、生きてたもんだな“麦わら屋”」

ローが語る。
二年前のジンベイと一緒にルフィを回収した時の話だ。
あの状態で暴れ続けてまた傷が開いたら、今度は助からない。そう診断を下されていたルフィ。
いや、ほんとうになんで助かったんだろうね。
やっぱし主人公補正じゃないですか。

ロ「…あのときのことなら恩に感じる必要はねぇ。あれは、俺の気紛れだ」

ルフィがローに感謝しようとしたが、それをさえぎってローが口を開く。

きまぐれといえば。オレがルフィをカエルで殴ったのも気紛れだ!
――な〜んて冗談言える空気じゃないし、もうこれ以上かかわりたくないからしゃべんないけどさ。

ロ「俺もお前も海賊だ。忘れるな“麦わら屋”」
ルフィ「にっしっし。そうだな。ワンピース目指せば敵だけど。二年前のことはいろんな奴に恩がある!そっちのちっこいのにもな」
字『ないない!感謝される覚えはオレにはないんだからなっ!』
ルフィ「ジンベイの次にお前たちに会えるなんてラッキーだ。ホントありがとなトラオ!ちっこいの!」
ロ「・・・(まさかトラオって俺の、ことなのか?)」
字『っていうかあいつの脳みその中のオレって“ちっこいの”固定されてるぅ!?』



それから茶ひげに乗った麦わら一味がわっさかやってきて。
海軍たちが戻ってきちゃって。
いやいや。その煙野郎は死んでねぇよ?女海兵さんはそのこと(ローの能力について)は知らないみたいで、怒りに身を任せてローめがけて襲いかかってくるし。
オレひとりでもなんとでもなったけど。ローが動くなといったので、背に張りついて、いないふりをする。

しばらくたたかって、今度は女海兵とたおれたままの煙野郎をシャンブルズ。
ぶふっ。ロー悪趣味だ。
そうしてたおれたG5のトップ二人。

そこでその隙にと、麦わら一味が逃走を始める。

ウソ「海軍が来る!ルフィ!いそげ!ここはやべぇ!」

長鼻が叫ぶ。
それにルフィがうなずいて、彼の仲間たちのもとへかけていく。
っと、ルフィがふいに振り返り

ルフィ「あ、そうだ。トラオ。ちょっと聞ききてぇんだけど」

きっと船のことだろう。
それを察したローが、研究所の裏を示す。

ロ「研究所の裏にまわれ。お前らの探し物ならそこにある。またあとで会うだろう。
互いに取り返すべきものがある」
ルフィ「ああ!」

ローってば自分の心臓を契約代わりにシーザーに渡しちゃうんだもんなぁ。
そりゃぁ、取り返さずにはいられないって。

ちなみにオレは心臓抜き取られてませんよ。
ローが「こいつは治療中の間者で、俺から離せば死ぬから不要だ」とかぬかして、まじで側から引き離してくれたので、久しぶりに窒息死しかけた。
シーザーはオレの能力を知らない。
船の外を歩けるようになった後も、外では力を見せないようにしてたしな。
だからあいつにしてみれば、オレはローのおまけでしかない。そういう風に見えるように演じてたから当然だ。
この研究所のやつらからしたら、オレは弱い生き物という認識らしく、人質代わりの心臓は抜かれてないのだ。
もちろんさっきの戦闘も画像を送る電伝虫の位置をすべて把握していたり、雪や岩やらでオレが能力を使っている瞬間はみえないようにしている。――普通はそんなことしてたなんて、オレの外見から想像しないよなぁ。


オレたちもまた、海兵どもの動きが止まっている間に、研究所の中に戻った。
歩いたのはローだけどね。















一応言っておくと。

麦わらの一味も。
主人公も。原作キャラも。

全員、まだこわくてこわくてしかたないからな!!!


近づいてくんなよっ!!








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