09.白き世界からの脱出 |
その日はオレの中で、とても長く感じた。 とはいえ、しょせん2,3日という数日の出来事であるが。 まぁ、この世界がONE PIECEの世界だと仮定して話すのならば、 もしこの光景がアニメになったのなら、きっと一年近くはこの島でルフィたちは戦闘を繰り広げていたかもしれない。 アニメはながびかせるのがすきだからな。意外とローたちの邂逅は原作にあるのかもしれない。もしかすると原作の漫画でもまるっと1冊分は使ってるかもしれない。 つまるところ、何が言いたいかというと、今日というその日は、原作の濃度も上がってしまうのではないかと思うほど濃い日だったと告げておこう。 side [有得] 夢主1 ローのROOMによって移動してきたオレたちは、雪山にでていた。 オレは邪魔な麦わらを排除することを考えていたけど、ローは主人公を仲間に取り込む方針にしたらしい。 そのためローは麦わらたちとあって、これから《ジョーカー》をつぶすための取引をしたいのだという。 『オレは、どうしたらいいかな』 「隠れてろ。なにかがあったら俺がお前をとめる」 『ごめんね。でも・・・』 “彼ら”だけは、だめだ。 モンキー・D・ルフィ。 この世界の主人公。 そいつらと、その仲間となんて・・・会えるわけがない。 オレはローのコートの内側にもぐりこむと、しっかりと背中にはりつく。 どうも普通の人間にしてはオレは体重が軽いらしい(たぶんオレという存在が記憶の残滓にしかすぎないからだろう)ので、このままローにはりついていても問題はないはずだ。 麦わら一味の姿を見るのも怖い。 寒さとは違う震えで、体がこわばってしまいそうになる。 コートなかだからみえないのもわかっていて、けれどなにも見ない様に目を固く固く閉じる。 ローがでた場所はちょうど「イエティブラザーズ」と麦わらが戦っている最中だった。 フランキー(中身ナミ)を抱えたほうのイエティをローが斬り、上半身と下半身で分断する。 続いてやってきたイエティを電撃を与えてたおす。 「トラ男!?」 巨大なイエティがたおれる音共に、聞こえてきた声に、背筋がゾクリとした。 麦わらの、声。 それだけで怖くてどうしようもなくて、ローの服をつかむ手に、さらに力が入る。 ポンポンとコートの上から背中をたたかれる感触に、少しだけほっとする。 それでも怖くて、この安全地帯からでたくなくて、ローの服にしがみついたまま・・・聞きたくないけど、外の会話を聞いていた。 ナ「あ、ありがとー!・・・って!違う!あんた私の体返してよ!!」 ル「お前、ナミを助けてくれたのかー!!」 ロ「・・・・・・・少し、考えてな。・・・・・ようやく“黒筆の爺さんの許可がおりた”から、お前に話があってきた。麦わら屋」 この島で偶然麦わらたちと出会って、ローは彼らを“この先にいるジョーカー”を倒したいがために、戦力としたかった。 しかしオレがずっと“原作”と“主人公”を怖がっていたから、ローはためらっていた。 だけどオレはローがこの世で一番恨んでいる相手を知っている。 ローがこの世で一番倒したい存在が、“この先の海”にいるのをしっているから。 ここに来る前に「いいか?」と聞かれた問いに、「YES」とかえしたのだ。 オレが我慢すれば、いい。 がまん・・・がんばるから。 ローの力になりたかったから、オレはローが麦わらたちのもとを訪れるのに・・・頷いた。 オレの名は、黒筆字(クロフデアザナ)。 隠語のように、大衆の前でオレのことを指すとき、うちのクルーたちはオレを「爺さん」と呼ぶ。 だから周囲は気づかない。 ハートの海賊団には、ひとりの老人がいると思い込む。 ゆえに。オレという存在は、ローの切り札たりうる。 今回もそれだ。 まだロー一人で十分であること、この島にはローが狙う《ジョーカー》の息がかかっているため、オレは能力を極力使わないようにしている。 ただ手のかかるガキそういう設定だ。 「爺さんの許可」という単語には、麦わらの一味がいぶかしげな声を出していたが、それはハートの海賊団以外が知る必要はないことだ。 ロ「お前らは偶然ここへ来たんだろうが・・・・・」 ロ「この島には新世界をひっかき回せるほどの、ある《重要な鍵》が眠っている」 ナ「?」 ル「どういうことだ?」 ロ「――新世界で生き残る手段は二つ。〈四皇〉の傘下に入るか・・・挑み続けるかだ」 オレたちは後者。そして目的のためにローはあがき続け、世界に挑み続ける道を選んだ。 きっとそれは、あんたも同じなんだろう?なぁ、ルフィ。 ロ「とはいえ、誰かの下につきてぇってタマじゃねぇよなお前」 ル「ああ!おれは船長がいい!」 ロ「だったら」 主人公の言葉に、背中にいてもローが笑ったのが分かった。 ロ「“ウチ”と同盟を結べ!」 ル「同盟?」 ロ「お前とおれが組めばやれるかもしれねぇ」 ロ「〈四皇〉を一人、引きずり降ろす“策”がある!!」 それから麦わら一味がこどもたちと共に隠れている場所までつれられ、オレはローの服から外に出ると、しょっぱなから主人公と視線がばっちり合った。 オレは当然彼をみて、渋面顔。 麦わらの仲間たちは、「そんなところにいたのか」と驚いた表情をしていたが、興味なし。近づかないでくれるなら、いないものと思って無視するだけだ。 最初は「イヤイヤ」首を振って、近寄るな!と顔をしかめる程度ですんでいたのだが、主人公がオレをみたとたん「ちっこいのー!」と言ってせまってくるのだ。 主人公におびえるのは、主人公に触る=消滅という認識がぬぐえないのでしかたないこと。 原作恐怖症のオレからしたら当然のことだ。 だというのに、楽しそうに近寄って追いかけてきて、 なのに「こうやってみるとしゃべるこぐまだな!いいなー!おい!仲間になれよ!」とかニッシシと笑う主人公が迫ってくるものだから、 もうこのあたりからたぶん本気で泣いてた。 ローのせいで中身と身体が入れ替わっていた麦わらの一味が、「いやがってるだろ!」「やめなさいよ!」と 主人公をいさめてくれたが、そんなの関係ないとばかりに追ってくる。 ついでにいうと、耳つき帽子をかぶってるし白いもふっとしたコートきてるし白いもふっとした手袋してるけど、オレくまじゃないからねっ!!! グイーンっとのばされる主人公の手(物理)。 チクショウ!!ゴムなんてひきょうだぞ!のびるとか!!!!! ル「まてー!ちっこいこーぐーまー!!!」 字『同盟の話でもしてろよ!!なんでこっちくるんだ!』 ああ、もうだめだ・・・追いつかれる! もうだめだ! こわい 原作。それも主人公に触るなんて。触られるなんて。世界が許すはずがない。 どうしよう。 こわい。 ・・・ああ、また消されるんだ。 オレはここで死ぬんだ。 やっぱり世界はオレという異分子がいることを許してはくれなかったんだ。 こわい。 こわいこわいこわい・・・ もういやだよ。 死にたくない。 忘れられたくない。 こわい。 こわいよ。 まだ、生きてたいよ。 まだ・・・ たすけて・・・ すみにおいつめられ、主人公にのばされた手に、触れられているぬくもりにもうおしまいだとと思った。 近づく“主人公”のかげ。 字『・・・ぇて!たすけて!!もう、いやだ!!もう死にたくない!もう・・・・れたく・・・もっと・・ぃきて・・・もう・・・・・殺さないで』 だれかが息をのむ音が聞こえた。 あれ?だれかってだれだ? 傍にだれがいただろうか。 オレのか?それとも別の―― ふいに両脇の下に手を入れられ、小さなオレの体が持ち上がる。 “だれか”に、抱き上げられた。 ル「おい、ちっこいの!よく聞け!おれはモンキー・D・ルフィって」 字『・・ひぅっ!?』 ル「!?お、おちつけよこぐま!」 字『るふぃ・・しゅじ・・・ぅ・・・・やだ!やだやだやだっ!!!!!』 ル「おいまてって!おれはなにもしねぇ!」 ナ「まってルフィ!そのこおびえてる!」 ウ「はなしてやれよルフィ」 そのときにはもうパニックになってて、何を言ったかもわからないし、悲鳴を上げていた気もするし、暴れたような気もする。 視界の隅で黒いものが動いていたから、たぶん能力は発動しかけたのはたぶん間違いない。 ああ・・“おいつかれて”しまった。 ローじゃないだれかの腕の中にいる。 原作にかかわるであろう誰かに触れてしまった。 ピリと指を静電気が伝う。 字『――ッ!?いたい!!!!!・・・あ・・あぁぁあ!!!!』 瞬間、思考回路が一気にショートし、世界に捨てられたあの瞬間の光景と身体に走る痛みがぶわりともどってきたようにすべてがフラッシュバックする。 もう限界だった。 モコモコした服のせいか、静電気が一瞬手のうえをはしった。それだけ。 それだけのことなのに、もうだめだった。 これはなんの再現だ?とばかり、タイミングが悪かった。 痛みとともにフラッシュバックした映像と全身痛みのせいで、自分が今どこにいるのかわからなくなる。 体が痛い。これは世界に消される時の痛みと・・同じ? これも幻覚? それとも本当? ほんとうだったら・・・・・ "ジン"。 なぁ、そこにいるんだろう"ジン"。 いるんだったら、もう一度手を伸ばして。 オレ、こんどはちゃんとお前のその手を取るからさ。 ねぇ。 お願いだから手を・・・。 やっぱりさ、ひとりはいやなんだよ。 あ・・れ――? ねぇ、オレは、いま、どこに・・・いる、の? それとももう君の前にはいない? ・・い・・・な・・・い? そんなはずは。 そう思うのに、体は恐怖に縛られて動けない。 字『こわいこわいこわいこわいこわい!!!たす・・・ぇ・・ジン・・・』 親しい者に、あるいは今目の前にいる者に、目の前で自分を忘れられていく様など、自分が消えていく様子などもう見たくはなかった。 あの全身が針に刺されるような、細胞の一つ一つが砕けていくのを味わうあの痛みはもう嫌だ。 近づく恐怖に目を閉じ、耳もふさぐ。 けれど目を閉じてもそばにだれかがいるのなんてのは、気配でまるわかりで、パニックになって近づくものすべてに威嚇しながら、 なにかを喚き散らした気がする。 どうかお願いだからこの手を離してくれ。ちがう!違う!手を伸ばして!この手をとって!助けて!オレが溶けて消えてしまうまえに。どうか手を―― ロ「ROOM」 ふいに響いた声と同時に、安心できる領域が自分を包み込むように広がった。 そうして一瞬の浮遊感の後、トンと首浦あたりに衝撃がきて、オレの耳に騒音として届いていた何かの悲鳴がやんだ。 ああ、さっきのこどもの泣き声は、オレのものか・・・。 ロ「わるいな。こいつは極度の人見知りなんだ」 急所にきた衝撃のせいで、視界が暗くなっていく。 だれかのぬくもりがオレの身体を支えるのを感じながら、 最後にきいた声の主を探そうと視線をさまよわせたが・・・・そこまでもつことはなく、 オレの意識はブツリと途切れた。 どうやらオレが完全に能力の暴走を起こす前にことはすんだようだ。 * * * * * たまにふわりと、意識が浮上する感覚があった。 けれど催眠をかけるように、誰かが言うのだ。 「眠ってろ」と。 まだ眠っていていいのかな? 目を開けてもまだ自分は世界にいるのだろうか。 目を開けることが怖くて、目を開けられなくて。 目覚めを良しとしないその声に甘えて、もう一度深く意識を沈めた。 優しい何かが髪を撫でる感覚。 だきしめてくれるギュッとした温かさ。 そんなものを感じながら、何度も起き上がろうとしてそのまま暗闇の底に沈むを幾度か繰り返した。 * * * * * ロ「起きたか」 目を覚ますと、ガタゴト派手な音を立て列車(トロッコ?)みたいなものの上で、今までいなかった奴らも敵も味方も交えてわちゃわちゃしていた。 なにこれ? どういう状況? 話を聞くと、あれからけっこう時間がたっているという。 それもたぶん日をまたいでいる可能性もあるほど。 オレたちがのっているトロッコのすぐ背後に迫っている紫色のは、毒の霧だという。 それがこのトロッコ列車においつきそうで、、困っているのが現状だという。 話していた直後、まさにその毒ガスがせまり、追いつかれそうになった。とっさにオレが能力を使用してやろうとおもったが、スッととめる腕があった。 ローだ。 ローがもうたおしたというが、どこに《ジョーカー》の目があるからわからないから、まだ能力は使うなということらしい。 すでにやつの間者が、何人か、この島にいたらしい。 そのことから、いつどこでみられているかわからないからと、最初の打ち合わせ通り、オレは自分にただの子供と暗示をかけ、 能力はこの島にいる限り使わないことにした。 結果、洞窟をローが能力でぶったぎり、ことなきをえた。 無事にみんなで洞窟?かなにかの外に出たとき、火の光の下でようやくいろんなことにきづく。 今更気づいたけど、ローがすごい満身創痍だった。 やだ、本当にここまでの展開が分からない。 つか、どうやらこの島での厄介事もいつの間にか終わっていたとか。 いったいぜんたいオレはどんだけ意識がなかったんだと言いたい。 え?主人公も満身創痍? あ、ごめんなさい。ぶっちゃけロー以外はかなりどうでもいいです。 なにをどうしてここまでたどりついたかはわからないが、あの主人公である麦わら海賊団がこの島に来たことにより、 シーザーの第二計画が発動された結果がコレらしい。 ズバリ、島の住人および麦わら一味は、毒薬の実験にされそうになったであろうということ。 なにもオレやローがいる間に、麦わらたちがこの島に到着しなくてもいいと思う。 まぁ、そこはやはりルフィが主人公であるかぎりなにもかわらないのだろう。 事件ある所に麦わら(主人公のかげ)アリってことに違いない。 たとえ原作に、このパンクハザードでのできごとがあろうとなかろうと、それはそれ。なにせ彼は主人公。そしてここは漫画ではなく現実世界。 原作にかかれないシーンなどいくらでもあるのだろう。それでも時間は流れここで生きる者たちは動き続けている。 ――っと、まぁ。かっこいいことを言ってみたわけだが。 所詮現実逃避である。 だって、ケムリ海兵は、このあと子供たちをつれて島を出るらしい。 うちは・・・・ 字『なんてことだ』 ル「しっしっし!よろしくなちっこいこぐま!」 オレたちは、なぜかシーザーとともに麦わら一味と一緒にいかなくてはいけないらしい。 オレは絶望した。 思わず「orz」というポーズをとってしまったほど。 それから、あいかわらず主人公は笑顔だし、なんか「お、気づいたかこぐま!」と手を伸ばしてくる。 とっさのことでビクッと肩は跳ねるし、口からは悲鳴がでそうになったほど。 意地と根性で悲鳴は飲み込んだし、触れられる前にとっと安全圏であるローの服にしがみついて必死に隠れたので主人公の腕はよけたがな! ロ「アザナ。お前が寝てる間、お前の面倒を見てくれていたのは、麦わら屋だ」 眠っていたとき、どうやらオレは人質にされていたり、麻薬飲まされたり、いろいろ大変だったらしい。 驚いたことに、その間の奪還作業のときも、かばうときも、にげるときも。“ルフィ”が何度もオレを守ってくれていたという。 寝ているときに感じたあの頭を撫でるやさしい感覚や、安心する声は・・・まさかの。 あれがすべてルフィのものだったとか。 ・・・有り得ない。 きいたときは、背筋が冷たくなったものだ。 よく、オレ生きてた。 いろんな意味でな。 つまり寝ているときに主人公にべったべったに触られて(変な意味じゃない)たとか。 いや、そこは考えまい。 ローは「消えない」と保証をしてくれたが、オレはやっぱり“主人公”が怖い。 ルフィというより、“主人公”という存在ががこわい。 ルフィは、オレをかまおうとしてくるが、オレにはまだ勇気がない。 そういえば、オレは意識をとばす前、暴走しておかしなことを口走ってはいなかっただろうか。 ふいに不安になって、その場にいた麦わら一味の方に視線を向ける。 最初に視線が合ったのは、女性。オレンジ髪の・・・ ナ「ナミよ」 字『ああ、うん』 そう、そうだったな。原作で読んだはずだったのにな。 どうも自分の知る範囲内だが、原作と一致する人間を、オレは無意識に避けているようで、いまどうしてもオレンジの彼女へ意識がいかなかった。 目が滑るとでもいうのか。見てるのに、見ないようにしてたわ。 っで、その彼女は、やはりオレのあの状態を見て、「そんな小さな子に何があったの」とつぶやいたらしいが、 それにはうちの保護者はノーコメントだったようだ。 ローいわく「人見知り」「こいつは治療中の患者だ」ですましたらしいが、 絶対無理だろうとうろおぼえのオレでも思う。 後で周囲の輩にこっそりきいたところ、案の定、オレはとうてい"人見知り"という単語ではおさまらないような恐慌状態だったらしい。 思わず「だろうね」と頷いてしまった。 自分で言うのもなんだが、間違いなく"なにかが過去にあった"としか周囲は思えなかっただろう。 だというのに、ローってば、「人には言いたくないようなことのひとつやふたつあるだろ?お前は自分の過去を聞かれてすぐに答えるのか?本当のことを?」とかなんとか言って、 その場にいたやつらを見事に言いくるめたようで。 なんだかんだいっても、だれひとりとしてオレの過去を追及してくることはなかった。 たぶん。オレが勝手に、彼らに悪い印象持っているだけで、麦わらの一味は、他人の過去を無理やり聞きだそうとするような人間はいないのだろう。 彼らがいろんな過去を背負って、なお、立ち続け、歩んでいることからも、彼らが優しい海賊なのも。本当は"知ってる"。 それでもどうしても魂に刻み込むように植え付けられた恐怖はそう簡単にはぬぐえないのだ。 これからしばらく、この麦わら一味と寝食を共にしなければいけないらしい。 ローが麦わら野郎と同盟を結んだのなら、接触しないはずないなんてこともわかってる。 でも、まだ近づいてくれるな。 だから・・・ 字『もう少しだけ待ってね。いつか、慣れるように、がんばるから』 ロ「無理してなれなくていい。ゆっくり慣れていけば。いづれは」 パンクハザードに終わりが訪れる。 真っ白な雪の世界が、ローとの出会いを思い出させる。 ろーはきっと・・・"コラさん"。彼との別れを思い出しているかもしれない。 ここからでは火の領域は見えず、ただただ白が広がる。 雪に埋もれ、凍えそうな白の情景。 オレは出会いを。 きみは別れを。 麦わらたちなら、今日という激闘を。 フラッシュバックしたときもオレの目を覆うは白だった。 ――その白は、きっとすべての記憶に刻まれた色。 記憶を思い出させる白。 麦わら一味のコックのぐる眉の飯をくって、それから出港だ。 ようやく白一色の世界から解放される。 かわりにしばしひろがるは、空を映した青い海の景色だろう。 ん?オレかい? あのフラッシュバックがいたかったね。 パンクハザードをでて、麦わら一味の船に乗せてもらうときも。自己紹介をするときも。 ローにヒシッ!とばかりにくっついたままさ。 寝る時も、ローから離れられない状態が続いたね。 まだ、恐怖が抜けきらないんだ。 どんなに美味くて温かい飯をくおうとも、オレの心の仲間ではそのぬくもりは届かなかった。 むしろその飯さえ吐きそうになったけど、無理やり飲み込んだ。 他人の作るものは、やっぱり怖い。 麦わらたちの視線がこわい。 視線は優しく見守るように暖かいのに、彼らが主人公なのだと理解してしまえば、相も変わらずこの体は恐怖に震える。 とめようとしてもとまらない震え。そんな脆弱な身体を彼らの目から隠そうと、ぎゅっと目をとじる。 ときにはローの足にすがるようにしがみついて、顔をみえないようにローにすりつける。 そうこうしているうちに、ローに(片腕)で抱っこされた。 ポンポンと背中をたたかれれば、ほっと肩の力が抜けて、こわかったと涙がボロボロあふれだす。 字『ろー、オレ、まだ、ここにいる?本当にここにいる?』 ロ「ああ。しっかりここにいる」 まだ、オレはこの世界にそんざいしていますか? |