【 君は別の世で生きる 】
〜海賊世界〜



06.新たな物語





あれから二年後。
世界は再び動き出す。

モンキー・D・ルフィの手によって。





side [有得] 夢主1





グランドライン 後半の海、新世界にて。


字『なんだ。生きてたか』

新聞にはデカデカと、麦わら一味復活の記事がかかれている。
彼らはまたシャボンディ諸島でひと暴れしたらしい。
諸島の住民は無事だろうか。
いや、ふつうに無事だろうな。
あのあとちょくちょく電伝虫をとおして(オレの能力は所詮使い捨てなので長期間はもちません)レイリーと通信のやり取りしてるし。

頂上決戦から、二年。
ようやく麦わらたちは、新世界にきたのか。
ずいぶん時間がかかったな。

そして、オレがこの世界に来てからもうその倍の年月が経ったように思う。
どうやら前回同様に転生(はたまたトリップ)の影響か、成長速度が遅いようだ。いや、世界によって時間を奪われてしまった時点で、この体はもう成長することさえないのかもしれない。
医者でもあるローがよく健康診断をしてくれるので、mm単位の成長さえわかるはずなのだが、一向に身長がのびる気配さえないのだから、そろそろ肉体に関してはあきらめるべきだろう。
そんなわけで爺であるはずなのだが、まったくそうはみてもらえず、昔のままの服もデザインが変わっていないことから、相変わらずベポにくっついている。
いまでは外にも出れるようになったんだぞ。
だがそうすると、たいがい「こぐま」と勘違いされる。
そして何度も言うが、ベポはオス熊であり、オレは人間である。

そんでもってオレは相変わらずローにはりついている。
手を離しても過呼吸を起こしたりはしないが、側に誰かいないと寂しいのは相変わらずだ。
けれど仲間の姿が視界に入っていれば、ひとりで地面の上も歩けるようになった。他人に触れるのはまだ苦手だけど、錯乱したりはしないし、一瞬びっくりするけど――大丈夫。

大丈夫。大丈夫。
まだオレはここにいる。

自己暗示をかけて、深く深呼吸をして、ぶつかった相手に笑ってごめんねと声をかけられるくらいには、なんとか外でも動けるようになった。

ローが、ドフラミンゴを討つために、やつの取引商品の拠点となる島に向かうことが決まったとき、ローから離れないようにするためにも、一緒にいる戦闘訓練もした。
最近ではローの戦闘にも、彼にはりついてるのがデフォルトになりつつあるせいか、オレがはりつこうとローも何も言わなくなってきた。
昔はローにはりつくごとに切り刻まれていたが、あれはたまったもんじゃない。 組み立てなおしてもらうの大変なんだよアレ。たまに行方不明になる部品がでるから困りものだ。





* * * * *





字『ロー。・・・・これ、うっとうしい』
ロ「だまってろ」
字『いや。でもこれ着込みすぎじゃ?』
ロ「死にてぇのか?」
字『イエ、なんでもないです』

氷とマグマが一体化した島にいます。
表現がおかしいと思うだろうが、島の半分半分で気温が違いすぎるおかしな島なのだからしょうがない。
ここはあの頂上決戦の跡に、氷の能力者クザンとマグマのサカズキが戦ったという曰くつきの島だ。

ハートの仲間たちはとある事情で、先にゾウっていう島に行ってもらっている。
なのでいまここにいるのは、島に始からいた囚人とシーザーというマッドサイエンティスト。そしてオレとローだけだ。

本当はゾウに向かえと一回言われたが、うっかりいつものようにローのコートにしがみついてくっついていったら、そのままローとともに島に滞在するはめになった。
そうなるとクルーの姿が見えないと不安になるオレは、常にローと行動を共にすることになる。
だからローとオレのコンビネーションの戦闘訓練をしたわけだけど。

今からシーザーの研究室の外に出るらしい。
オレはツナギをきてたんだけど、この島の半分はものっ凄い寒くて、どこからか調達したのかローが子供用のコートをもってきてくれた。
しかも帽子に合わせてくれたのか、白いふっわふわっなコートだ。
いま、それを着せられてる。
ツナギの下にもさらに温かめの長袖を着せられたので、モコモコ度がハンパナイ。
オレの白い帽子はベポっぽいいつもの熊耳付のモコモコ帽子だったので、冬の環境にはちょうど良かったのでいつも以上にしっかりかぶる。

最近周囲の皆様に「白い子熊」といわれるゆえんである。

そういえばローも夏であろうとあのモコモコ帽子をかぶってるんだよな。
お互いモコモコすきだよね〜。
というか、オレのもそうだけど、オレたちの帽子って冬向きだよな。

ロ「いくぞ」
字『ラジャー!』

モコモコ帽子とコート。白い手袋に、モコモコマフラーをしっかりまいて。
ローの黒いコートにしがみつく。
ジャンバールやベポ以外の奴らは、ちっちゃなオレのためにしゃがんでくれる奴はいない。
嬉しいことに基本オレは対等であるらしく、子供だからという彼らの優しさはない。
なのでローがいくぞと言ったら、ジャンピングダッシュで勢いをつけて突撃するように飛びのらなければ背中にも抱き着けない。
背中におんぶにだっこが最近の定位置(体格が全く変わってないので問題なし)であるため、待っててくれるだけありがたく、そのまま飛びつく。
他人になれるための訓練をはじめたころは、慣れろという理由からよくさけられてなぁ。
もしオレが成長したら、おおんぶにだっこはきっと申してくれないのだろう。
というか、成長するかも怪しいがな!

そんなわけで肩に腕を回して、ブラブラとあしをゆらしつつ背にはりつく。



この島こにきてからそこそこたつが、ここは本当に変な島だ。
島の表面はマグマの熱射地獄。氷の極寒地獄。
中の研究施設には、元囚人たち。あとはどこから連れてきたのか、ふつうの子供から巨人のこどもまでいる。
オレの感覚からすると、子どもたちに違和感があるが・・・まぁ、ローが彼らに会いにいかない限りは、そばを離れることができないオレが調査などできるはずもない。
たまに。本当にたまにだけど、ローがこどもに会いに行く。
そういうときもついていく。
気配を消して。ローが司会にはいる範囲にいるのならば俺も手を放すことができるので、こどもたちが保護者とともにいるオレの姿にホームシックになってしまわないように。人を恨むことがないように。そのときだけはローから手を放し、そっと、ついていく。

たぶんあの子供は、ここにいる研究者が、研究対象として攫ってきたこどもたち。
こどもには何が与えられてる?なぜつれてこられた?
きっとあの子供たちが何かの薬の実験を知らずにされているだろうことは、簡単に予測がつく。
シーザーという研究者が、オレにも飴をくれたが、残念ながら甘いものが嫌いなオレは断った。
こどもが好きなのかなとおもうけど、違うとオレの今までの経験がシーザーの笑顔を否定する。
どうしたものかと思ったが、ローがもらっとけと言ったからうけとったものの、その飴はあとでローがもっていった。

だから後でしったことだけど。
こどもたちの中に巨人子供はいないらしい。
飴はどうしたのと尋ねれば「お前もああなりたいのか」と、大きくなった子供たちを示しながらローが言ったので、あの飴は巨大化の実験に使われていた薬と中毒性を呼ぶ麻薬は入っているのだと知った。

ぶっちゃけ「チビのままでいろ」と言われた時は、ちょっと愕然としたけどね。
いや、たしかに小さいままの方が、側に長い間いてもこどもだからと何も言われないんだけど。 人間として、チビとか童顔とかいわれるのはもうなんというか、泣きたくなるんだよね。
ジャンバールの肩に乗せてもらったことがあるので、あの視線から見れる景色はわかるんだけど、何年もこの低い視線でいると前回の世界での視線が懐かしいと言うか。ジャンバールの視線がいいなぁっていつも思うんだ。
これぞ浪漫。男の夢だろ。

字『せめてペンギンとかベポとかじゃないまでも、いや、ジャンバールみたいに大きくなりたいなぁ』

いや。まてよ。
言葉がおかしいか。
“ジャンバールじゃないまでもペンギンぐらいにはなりたい”――が、正しいかな。


ロ「・・・・・・」

ローの背に張り付きながら、ボソリと願望が漏れた呟いたオレの言葉に、なぜかローの足がピタリととまった。
翼の女性モアさんに凍らされちゃったかのように、ピクリとも動かかない。

字『ロー?』

ロ「・・・なんでもない」

ローの足の速度が上がった。
顔が若干ひきつってるよ。
どうしたんだよ我らが船長?挙動がおかしいぜ。
なんでだろ?だってオレはただ夢を語っただけだろ。
この世界は海賊世界。みんなが夢を持って海に出るだろ?夢を語って何がおかしい。
はっ!?もしかして敵でもいましたか!?















あーうん。これは、敵・・・といえば敵なのかな。

『なんでいるの?』

ローと完全防寒対策をして外に出たら、そこで“オレの敵”もとい麦わらのルフィがやってきました。



なぁ、なんで麦わら一味がこの島にいるんだよ?
あんたらまだもっと前の方の海にいるんじゃなかったのか。
シャボンディで、麦わら一味復活!って話題になったのつい最近だったよな。
え?魚人島にいって、そのあとに海底の海流に巻き込まれてここまで来たって?
おいおい。
魚人等からどれだけ距離があると思ってるんだ。
主人公補正ってのはどんだけだ。

まぁ、それも・・・きっと世界に愛された証なのだろうけど。








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