有り得ない偶然 SideW
-だれかの短い日々-




宮地さんがドルオタだとしったその後の黒子
【SS side1-16】チェシャネコは頂点を望まない
と、微妙につながっています。
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そこは力を持った強気女王の独裁国家
ハートの女王が治める赤の国

なかにはハートの国などしったこっちゃないと
悠々自適に生きる霧の国がありました

歪で不思議なふしぎな物語

霧によって隠されたのはなんだったか



迷い込んだアリスは――





【 side 黒子 】





『だー!!!遅刻だ遅刻だ!』
「え?火神君?」

パチリと音がするように、意識が覚醒した感覚。
けれどこの場所に覚えがなく、キョロキョロとあたりを見渡せば、そこは深い森の中。

『どいてくれ!試合に遅れちまう!』


迷子の水色のこどもは、白いジャージに身をつつむ赤い目のうさぎに声をかけますが、 時計を手にかけていく赤目のうさぎはあわてすぎて聞こえていないようです。
赤目のうさぎは穴に飛び込み、アリスはうさぎを見失わないように追いかけます。

「まってください火神君!」



アリスが迷い込んだ先は、霧がかかったようにすべてがあいまいなふしぎなふしぎな世界。
常識の届かない非常識な世界――。



“みんな”と同じ扉がくぐれなくて、孤独に泣いたアリス。
その涙で海がうまれた。
おぼれてしまいそうになった海は、それはそれは光が降り注ぐ青く美しい水中の世界が広がっていました。
しかし青い世界は、大きな波となってアリスを飲み込み、白い光が視界を切り裂いた。


アリスは気付けばたくさんの鳥たちに囲まれていました。
彼らは水浴びから岸に上がると、今度は体を乾かすためにグルグルっと動きをはじめました。
コーカス・レースのはじまりです。

どうやら鳥たちは、バスケットをして身体を乾かすことに決めたようです。
緑の鳥だけが、ボールを手にシュート練習にひたすら時間を費やすしています。
鳥たちは一向にバスケをやめる気配がありません。

「・・・あの」
「なんなのだよ」
「あの、緑間君。身体はもう十分乾いたのではないですか。 もう何十時間もそのままです。そろそろ休んだらどうですか?手も怪我をしています。 もう日が暮れてしまいますよ」
「なにを言っているのだよ。勝つために手を抜くことなど考えられん。“あいつら”の側にいるためには人事を尽くす必要があるのだよ」
「でも・・・」

困惑するアリスでしたが、鳥たちはバスケコートから離れません。
溜息をついてアリスは先に進みます。



アリスは岸から離れ、森の中に入って行きます。
っと、そこで。

『あーくそ!試合会場はどこだー!!!』

森の中。そこでアリスは、また赤目のうさぎをみつけます。

「ちょ!火神君!待ってくださいよ!!待たないとイグナイトかましますよ!!」

しかしアリスの体力では、あの足の速い兎に追いつけそうもありません。
それでもアリスは必死にうさぎをおいかけます。



しばらくして眼鏡をかけたいかにもあやしげな細目のイモムシと出会いました。

「なんやぁおたく迷ったんか?アリスはわしに用か?」
「あ、いえ。そういば今吉さん。青峰君はどうしていますか?」
「海は綺麗やったなぁ〜。わしな、そろそろ蝶になってあのお空へ飛びたいねん」
「あ。そっか芋虫は蛹になってそのあと蝶になるんですもんね。今吉さんならいつかいけますよ!」

「ふ〜ん。せやなぁ、わしの場合は“いつか”なんやなぁ」


意味深に――
その言葉を繰り返した後、イモムシはまた空を見上げてしまいます。

アリスは人間の子供です。
イモムシが望んだ“その先”にあるものが、どういったものなのか理解することはできません。
イモムシがそれほど空を望む意味も分からず、アリスは首をかしげるばかりです。

それからアリスが何度声をかけても、もうイモムシはアリスを振り返ることはありませんでした。



『フハッ!やぁ、ようこそアリス。なにを首をかしげてるんだ?』

どこにいたのか、今度はニヤニヤと笑うチェシャネコがアリスを出迎えました。

『ああ、イイコちゃんにはあいつらの気持ちはよくわからないかな。
今吉さんはイモムシさ。いつまでたってもとべやしない。だってあのひとは蝶じゃないんだからな。
すべてのイモムシが蝶になるわけじゃねぇんだよ。
わからないって?
そりゃぁそうだろう。 この世界で〈ふつう〉なことは、“お前”には〈異常〉なことなんだから。
ひとは自分自身にとって〈異常〉なことを理解しようとする方が無理なのさ。
それはお前がこの世界では〈異常〉だからだ。
けれど聞いてみればいい。この住人なら「何が〈異常〉なのだ?」と言うだろう。 だってそれが彼らには〈日常〉で。彼らにはこれが〈ふつう〉なのだから。
ほら、おかしなところなどなにもありはしないだろう?』

――望んでも。望んでも・・・得れるとは限らない夢。

この世界に生きる彼らにとってはそれこそが「普通」で。
これこそが自分にとっての普通なのだ。

そのチェシャネコの言葉に、アリスは彼らの常識がますます理解できず、首をかしげるばかり。


「やれやれ。ずいぶん難しいことを考えてんなぁ。花 宮の戯言なんかに構ってないで、ま、少し休んでいけよ」

頭を使ったなら甘いものはいかが?
チェシャネコの側にオレンジの頭の目つきの悪い帽子屋が現れました。
帽子屋は苦笑を浮かべて、チェシャネコとアリスをティーパーティーに誘います。

「おい花 宮。あんまりアリスをいじめてやるなよ」
『なんだよザキ。オレはいじめてない』
「お前の言い回しは回りくどいからね」
「おー、瀬戸か。ようやく起きたのかよ」
「うー・・・おはよう花 宮、ザキ」
『おはよう瀬戸』
「おそよーさん瀬戸」

会話に割り込んだのは、ねむりねずみです。
額のホクロが特徴的なねむりねずみは、大きく欠伸をするとアリスを一瞥し――

「ねむくなりそうな色だね」
「ねるな!!!」
『いま、目覚めのあいさつしたばかりだろうに…』

水色具合がほんわかした暖色で眠気を誘うんだと、ねむりねずみはそのまま机につっぷして大きないびきをかき始めました。
帽子屋が怒鳴りますが、まったく起きません。
チェシャネコは呆れたのか、肩をすくめています。


チェシャネコが席につこうとしたところで

「おいこらアザナぁ!!てめぇ夕飯の買い物すませてねぇだろうが!!埋めんぞごらぁ!」
『やべぇ』

癇癪じみた公爵夫人の怒鳴り声が、パイナップルの香りとともに森の奥から聞こえてきました。
声が近づいてきてもうじき公爵夫人の姿が森の間からから見えそうになりました。
森の緑に紛れてオレンジ色のジャージが見えます。
チェシャネコはそれに慌てて立ち上がると、側らにある椅子をなぎ倒す勢いで、公爵夫人の方へと駆けていきます。

「おせぇ!!みゆみゆのでる生番組が始まんだろうが!!あ゛ぁ?おまえにどれほどみゆみゆみの時間が大切かまた語ってやろうか?」
『待って清志!みゆみゆ攻めはやめて!!』

『あ、じゃぁ。清志が呼んでるからまたな』

チェシャネコは公爵夫人の飼い猫です。
大声で物騒なことを怒鳴り散らす公爵夫人に、チェシャネコはご機嫌を損ねてなるものかと不気味な笑顔を残して姿を消してしまいます。


「花 宮は相変わらずだな。そんなところもいい」
「っげ。古橋、おまえいつからそこにいたんだよ。せめて瀬戸が寝るまえにこいよ」
「いつからも。なにも・・・花 宮がアリスをいじめるべく木の上までよじ登っていた段階から録画はばっちりだ。 どんくさそうに一生懸命木をよじ登って、登場シーンを演出する花 宮。イイ」
「キモォッ!!」
「zzz」

アリスが振り返った時には、いつのまにか片手にビデオカメラをかかげた三日月うさぎが腰かけていました。
帽子屋のティーパーティー。
テーブルの上に用意されたいたって普通そうな、クッキーや紅茶やらは帽子屋が用意したのでしょう。
あのチェシャネコが用意したらきっと予想の斜め上を行く料理の数々が出たことでしょうから。
そしてねむりねずみは夢の中。
三日月兎はあいかわらず欲望に忠実なようで・・・頭を激しくハリセンで殴られていました。

ハートの女王の手の届かないこの茶会は霧の国と呼ばれているらしい。
そんな霧の国の彼らは今日も騒がしいようです。





アリスはまた白ジャージのうさぎを追いかけていきます。
そうして迷い込んだのは、ハートの女王の治める赤い洛山の国。

オカマ口調のトランプの兵隊が、赤色にバラを塗り替え。
テンションマッハなトランプの兵隊が、バラを白に塗り替え、大騒ぎ。
そんな二人を牛丼を食べながら色黒のトランプの兵隊が、水をかけてバラの色を元に戻していきます。

やがて喧嘩をはじめた三人にあきれていれば、赤いハートの女王が、鋏を振り回し「首を刈れ!」「オヤコロだ!」と叫んでいるではありませんか。

女王の身長よりもでかい巨人いえトランプの兵たちが、どっちものイヤダヤダイ!と駄々をこねます。
そのでかさゆえの威力に、他の兵隊たちがどうこうできそうにもありません。

しかしアリスはハートの女王と話がありました。
うるさいトランプの兵隊たちをだまらせようと、足をひき掌底の準備を整えたところで

「うるさい。だまれ。せっかくのラノベに集中できないじゃないか」

どこにいたのか影の薄いトランプの兵が、他のトランプの兵をたたきのめしてしまったのです。
トランプの巨人は駆逐されました。
これに満足したハートの女王は、鋏をしまいます。





その後なんだかんだと先へ先へと進んだアリスがみたのは、赤がオレンジに塗り替わるところでした。
それはアイドルの生放送番組が、 ハートの女王によって突如「世界のルールを改定します。僕に逆らうものは親でも殺す」という臨時速報に変わったためである。
それに激怒した公爵夫人が、ハートの女王に反旗を翻したのです。


そうして生まれた新しい王国はオレンジカラーがメインの明るい国となりました。
そうして赤いハートの女王はやぶれ、オレンジジャージのトランプの兵隊が・・・

『清志、こーやってあたまの後ろの毛をもちあげると。ほらパイナップルヘアー』
「その髪型いいなっ!よし採用!兵隊達を皆それにしようぜっっ」

「みゆみゆを崇め奉れっ!緑間ぁ!そこの足元甘いぞっっパイナップル投げんゾッ!!」
「まて宮地。もうなげたあとに言っても・・・」
「ひぃー!!ぶっふぉ!!真ちゃんそこ手足逆!!ぶっふぁ!がんば!!」
「わらうんじゃないのだよ高尾ぉ!!」

オレンジの兵隊は、みゆみゆに合わせたような素晴らしい笑顔で笑っています。
そしてみんながみんな楽しそうに踊っています。


アリスは思わず目をこすって、トランプ・・・ではなく、パイナップルの兵隊たちを呆然と見つめます。
アリスの脳にチェシャネコの言葉が蘇ります。

――これがこの世界では普通。


「あのぉ緑間君。これはいったいどういうことでしょうか?」
「邪魔をするなアリス。うまく踊れなかったら最高級パイナップルが飛んでくるのだよっ!」

「宮地、戦車もバッチリ用意してあるから引き回しの刑も可能だ」
「おぅし!やれぇ!高尾!!」
「りょーかいですっ!高尾ちゃんいっきまーすwwwwww」

「っと、こうやって人事を尽くしていない(サボリ)がばれれば高尾が率先して戦車(チャリアカー)で轢いてくるのだよっ!!」


緑色の彼はあっという間に自転車のついたリヤカーに・・・のせられて、どこかへ運ばれて行ってしまいました。
むしろ轢かれてませんね。

アリスは思います。
本当にこれは普通なのでしょうか?

「・・・・・」

やはりアリスは理解に苦しみました。



そして
太陽のような色をした女王様のいる国は
太陽のようなトゲトゲをした
太陽がたくさん当たる場所でしか生えない南国の食べものを主食とし

だれもがみんなあの太陽の様に明るく笑って踊っているのです



その太陽の国の最高神の名を

みゆみゆ

といいました。





 









:: オマケ ::

黒「――と、いう夢を見ました」


火『えーっと?DREM?え?それともdesire、願望?黒子、お前ついにチュウニb』
ドス
火『ぐっふぉ』
黒「だまれください火神くん。そんなボケはいりません」
火『・・・黒子てめぇイグナイトはないだろうが!』


花『いったいぜんたいどこからどうつっこめばいいんだ?』



火『黒子、それ、宮地さんに何を望んでるんだよ』
黒「きっと昨日、宮地さんがとみゆみゆのおっかけをしているというのを聞いたせいでしょうね。そうに違いないと、僕は思っています。 僕だって変な夢を見てしまったと思っているんですから。 ちなみにジョーカーは黄瀬くんです」
火『おふぅ。キセキ総出演か』

花『オレがなぜパイナップルヘアーを知っていると知っていた!?』





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