勝利は誰の手に A |
←「勝利は誰の手に1」 の続き。 誰が事件を解決するか…というオハナシ。 まだまだ続くよ!残り1ページ! ---------------------------- 原「あちゃー」 山「もう花 宮のアレ、本当に何とかならないのか?」 古「ラッキーフラグどこかにないか?」 原「しいていうなら、この場に花 宮がいることで、この事件はすぐ解決しそう。っていうのがラッキー?」 火『すいませんすいませんすいません。本当にアザナ先輩がやらかしてすみません先輩方。あれはどうしようもなく昔からなんです』 古「どっかの学校に謝り癖が酷い奴っていなかったっけ?」 山「いや、お前が謝るなよ」 火『でも・・・』 原「そうそう。世の中どうしようもないこともあるよ」 古「アレに関しては謝るだけ損だ」 霧レギュズ「「「「花 宮のあの不幸体質は」」」」 【 side 瀬戸 】 花 宮が服を一人で選べるようになりますように。 そう願って、原がうまく休日のショッピングに当の花 宮を誘い出した。 まぁ、待ち合わせの段階で一悶着あったんだけど、それはひとまず置いておいて。 いつもの面子が揃ったものの、そこで買い物に行くにしても山崎のサイフ事情が心もとないということが発覚し、俺たちはショッピングモールにいくの前に銀行に向かった。 銀行に足を踏み入れた俺たちを迎えのは、大柄な赤い髪の男。 そこにいたのは、たまたま来ていたという、誠凛の火神であった。 あれで一つ学年がしたというから、最近の日本人の成長具合には目を見張るものがある。 火神は、生活費をおろすために銀行に来ていたらしい。 さすが一人暮らし。いかにも主婦のような台詞だ。 そんな火神に、この後の予定をきけば、彼もまた特に用事はないらしい。 なにげなく「一緒に買い物にいくか」と誘えば、あっさり頷いた。 火神と花 宮は古い知り合いで、腐れ縁らしい。そのせいか、俺たちが誠凛とは犬猿の仲であろうとも、警戒心をむき出しにしてくるようなことはない。学年が違うというしがらみなど気にした風もなく、火神はきさくである。 そうしてオレたちは、火神もまじえて6人で、ショッピングにいくことになった。 俺たちに火神がついてくる理由として、火神もまた花 宮の服のセンスには危ういものを感じていたというのがある。 買い物の目的を告げたときの火神の反応と言ったらすごかった。ぜひ協力させてほしいと、それはもう真剣な顔で頷かれたのだ。 花『なんで火神まで誘うんだよ。 こんな大人数でいくぐらいなら、帰ってもいいか? なぁ、だからオレ、母さんの服でいいと思うんだよ』 「「「「「それだけはダメだ!!」」」」」 宮地先輩のじゃなくて花 宮母の選んだ服なんて。よけいダメに決まっている。 とりあえず「服を買わないと誠凛を呼ぶ」という宮地さんの脅しを花 宮に思いだたせ、しぶるあいつを原と古橋が再度説得にかかる。 その間に山崎と火神が、 ATMの行列に並んだ。 まぁ、身長が 180cm越えのでかぶつが3人(−花 宮)もいたら、さすがに邪魔だろうと、まだぶつくさいっている花 宮をひっぱって、壁際へよける。 壁際にあったベンチに座ったのは、俺達が立っているときっと周囲の客とか威圧感を感じてびびってしまうのではないかとの配慮だ。 けっして、部をわきまえない若造たちと同一視しないでもらいたい。 他に席が空いていなかったり、他の人が使うようならすぐに譲る気は万全だ。 それにしても今日は混んでいる。 なかなか ATMの行列が減らない。 これはそこそこ時間がかかりそうだ。 花 宮の説得が終わったのだろう。気付けば原と古橋は、スマフォで通信ゲームをしていた。 たまに「先生ここはどういう局面でしょうか?」「そうですねー。ここはひっぱるのが一番です」なんて、某 CMのマネをしながらキャッキャとばかりにゲームをしているからには、あの有名ゲームをやっているのだろう。 うめき声をあげた古橋を救ったのは、海女さんか?それとも高校教師か。横の原か。 あとで参加させてもらおう。 花 宮はそんな二人を微笑ましそうに見つめた後、ゲームには興味ない(有料制のゲームは後が怖いからやらないんだそうだ)と、本を取り出し読み始めていた。 やはり本は日本語ではなかった。 なんとか読み取れた文字を訳すと万能細胞とある。なんだ花 宮。お前、今話題となっているスタ○プ細胞を女史のかわりにみつけてやるつもりなのか? 瀬「・・・・・・」 なぁ、花 宮。 その資料、お前が読むといろんな意味で笑えないんだけど。 山崎と火神を待っている間、俺は眠気に負けて、花 宮の膝を枕に目を閉じた。 邪魔だと頭をたたかれたが、そのまま俺の頭は、花 宮の本立てがわりにされてしまったようだ。 そもそも花 宮は山崎によって、寝るときは直に寝ないようしつけられている。 そのせいか「寝るのに地べたはダメ」と言っては、頼めば気軽に膝とか肩とか貸してくれるのだ。 横で古橋が、微妙に殺気まじりの視線をよこしてきたが知らない。 ふぁ〜・・ねむ・・・。 山「わりーわりー。今日は随分と並んでてびっくりしたわ。またせたな」 火『おまたせしましたー・・・っていうか瀬戸先輩すご。ここでもアイマスク。しかももう熟睡ですか?』 古「花 宮の膝枕だとぉ!?瀬戸ばかり羨ましすぎる!そこをかわれぇ!!」 火『安定すぎてこわっ!』 花『ツボつけば起きるんじゃね?』 原「ぅえ wwwツボって、花 宮の声じゃないと起きないかと思ってら、なにしちゃってんのお花ぁ。瀬戸ちゃんかわいそー」 古「ツボというと、マッサージか?花 宮は本当に芸達者だな。今度教えてくれ」 花『いや、ツボはツボでも人体の急所的な?』 火『せんぱいぃ〜(涙)』 原「ぶふっ。それダメなやつだよ花 宮ぁ。瀬戸の額のホクロを押すより、押しちゃダメなツボだよ wwww瀬戸死んじゃうぅぇwwww」 火『原先輩、高尾みたいになってますよ』 古「ふむ。携帯のマナーモードいらずだな」 花『そろったな。そろそろ瀬戸起こしていくか』 遠くで原の笑い声が聞こえる。 ぼんやりとした意識の中で、花 宮達の声に意識が浮上する。 別に花 宮の声じゃないと起きれないわけじゃない。 花 宮って、起こすときマジでツボついてくるんだよ。 押すというより刺す感じ? あれは痛いというより、ブスリというかザクリという感じで・・・おかげで一気に目が覚めちゃう。 そうじゃないときは、名前と一緒に殺気を向けてくるから、嫌がおうにも意識が眠りから引き上げられるのだ。 ああ、できれば殺気も“気つけ”のツボとやらも勘弁してほしい。 だから眠っていても耳だけには神経を集中させていて、花 宮から攻撃が来る前に、名前の段階で起きるようにしているのだ。 花『瀬戸、いくぞ』 瀬「うー・・・おはよう花 宮」 原「ほんと瀬戸はよく寝るねー」 古「花 宮、今度俺にもひざまくらしてほしいんだが」 花『瀬戸はたぶんナルコレプシーなんだろ?この症状からして。あと脳みその使い過ぎな。 っで?古橋、お前は練習サボる名目か?』 原「そういえばいつ膝枕してもらうつもりだったの古橋?部活の時にはそんな時間ないよね?部活の時は練習さぼるわけにいかないし。遊ぶときは遊びたいから寝られると困るし wwww」 古「正論滅べ」 花『昼休みならいい』 古「本当か花 宮!」 山「待て!昼飯は食ってからだからな!膝枕ごと気のために飯はぬかすなよ古橋!バスケ部は体が資本だからな!」 原「わー、ザキうざーい www」 瀬「食べてすぐに横になると豚になるっていうけど、ブタはいいのか山崎?」 花『大丈夫だ瀬戸。ブタになる前に、こいつだけ練習量増やす。 こってりしぼってやるから安心して寝ろや古橋君(ニィ〜コリ)』 山「ならいい」 原「ぶっ!」 古「・・・・花 宮、せめて三倍で。五倍は無理だ」 原「さすが主将権限。連帯責任とかやめてよ花 宮ぁ。俺、通常量希望ね」 火『霧崎は相変わらず仲良しさんですね〜』 バスケはチーム戦だろ。 そう笑いの決着がつき、いざ、花 宮の私服選びに行きますかとベンチから腰を上げた。 まさにそのとき―― 「おとなしくしろっ!!」 覆面の男が、銃を持って銀行へ乱入してきた。 唐突のことだった。 相手は銃を所持していて、「あ、銃刀法違法」なんてのんきな花 宮のつぶやきが聞こえたが、それ以外の人間たちは、銃声を一発聞いただけでパニックになってしまった。 客たちはあわてて駆け出し、本能のままに入口へと殺到する。 俺たちは人の波からはずれた隅にいたので、その流れに乗ることはなく、逆にその場を一歩も動くことはなかった。 俺でさえ鈍く黒光りしている長い筒を目のあたりにしただけで、本能から背筋に嫌な汗が流れるのを止められない。 たとえどれほどバスケできたえていて運動神経がよかろうと、脳が銃の仕組みと銃弾の数、逃走経路の有無と生存率計算をはじき出す。 そんななかで、火神と花 宮だけが冷静だった。 「銃ぐらい問題ねぇ。取り押さえる」そう血の気が盛んらしい火神が目をぎらつかせて飛び出ていこうとしたが、「攻撃を食らった敵が、逆にパニックおこしてこの場にいる客が怪我を負う可能性がある」「他にも仲間がいると思うぞ。例えば裏口にと客の中にとか」と溜息をついた花 宮がとがめたため、火神だけでなく、それに続こうとした俺達霧崎のメンバーもおとなしく強盗犯の指示に従うこととなった。 実際のところ、感情のままに飛び出さなかったのは、花 宮の「嫌な予感がする」という一言が一番多きく、その一言に恐れをなして動けなくなったのは言うまでもない。 花『フハッ。さぁ、どう解剖してやろうか』 火『その名台詞は今はききたくなかった・・・』 花『わかってるようで。っというわけで合図したら動けよ』 火『ペルソナは条件がそろわないとむりでして』 花『しるか』 口端をもちあげてニヤリと笑う花 宮の小さな笑いに、火神が「俺の人生ここまでか〜」と泣きそうな顔で花 宮を見ていた。 そのまま二人は少し会話をした後、行動に移そうとしていた。 っが、しかし。 ドォーーーン!!!!! 花 宮の直感どおり、事態はさらなる悪化を遂げる。 派手な爆発音に、慌てて逃げ惑う人々の悲鳴と罵声、扉に向かう人で銀行内が騒然とする。 建物が大きく揺れる。 その爆発音が奥の方からしたことから、どうやら花宮のいうとおり裏口から入ってきた犯人の仲間がいて、そいつらが奥の何かを爆発したようだ。 そして気づけば逃亡しようとした客を遮るように出入り口に新たな覆面の男がいた。 いつのまにか犯人の人数が増えていることから、客に交じっていた犯人もいたようだ。 なるほどすべて花宮の言葉どうりか。 やはり花宮の勘は恐ろしいほどよく当たる。 どれだけIQが高かろうと、さすがの俺も瞬間記憶能力者ではない。客の顔なんて覚えてない。どいつが犯人の仲間で、いつからそいつがいたとか、むしろこの銀行内にいた人間の顔を誰かひとりも覚えてはいない。 犯人たちは、全員が覆面をしていて、荷物に偽装したものから銃を取り出す。 見えるだけで犯人の人数は、計6人まで増えている。 6・・・どんな偶然か、俺たちと同じ人数だ。 神様がいるなら、これは好機だと見てとり、一人ひとり相手をしろと・・・まさかと思うが、そういうことではないよな。 運命論を嫌う花 宮に言ったら、「だから運命の女神は」としぶい顔をされそうだ。 ――そこまではいい。 奴らは俺達全員を逃がす気がないのだろう。 用意周到な犯人たちは、火災報知器やら緊急用のシャッターが下りるよりも先に、さらに入り口を爆破したのだ。 ドン!という大きな音によって、大きく入り口周辺の天井や壁が爆発によって崩れ瓦礫の山を入り口前に築きあげてしまう。 それは構造上建物に大きな損害は与えず、入り口の周辺だけを崩し、入り口を見事に塞いでしまった。 ヒビが入った天井の破片がさっきからパラパラとふってくる。 シャッターはその衝撃で機能が壊れたのか、出口という出口にシャッターがガラガラと勢いよく“落ちて”きて、窓は格子でふさがってしまう。 壊れて閉まらなくなればまだ救いはあったのに。 出口を失った客が、さらに正気を失って悲鳴をあげる。 そのあまりの手際の良さと計算されつくされた鳥駕籠の状況に目を見張る。 その様子をただ見守るしかできなかった俺たちとて、予想外の急展開に恐怖がないわけではないのだ。 表情筋のあまり変化ない古橋とて、前髪で顔が見えない原とて、その顔がいつもよりひきつっているし、顔色もよくない。 それはきっと俺もおおなじなのだろうけど。 これでは逃げられない。 原「やだよこんなの有り得ないだろ」 瀬「ちっ!出口は・・・」 山「はは、まじかよ。むちゃくちゃだなおい」 火『うそだろ。爆弾まで・・・』 花『だから言っただろ。"嫌な予感"がするって』 びびるがままに心境がそのまま零れ落ちた俺達に、呆れたようにため息をつく花 宮だったが、その普段と変わらない態度に、思わずギョッとして視線を向けてしまう。 この場で何を言うんだと思って花 宮を見やったのだが、花 宮の顔色は通常運転だった。 余裕そうとでもいえばいいのか、それとも“場馴れしている”とでも表現すればいいのか。 焦りの色一つない普段の表情のままの花 宮に、少しだけ恐怖心が薄れる。 その深い色合いの鮮やかな色の瞳が、ギラリと一瞬犯人グループたちに向けられる。 花『オレのもんに手ぇを出したら潰す。誰だろうとな』 本人は心の声が漏れていることに気付いていないのかもしれない。 それは俺達に向けられたものではなかったが、その言葉だけで、俺達はホッと息を吐き出していた。なぜか“大丈夫”だと思えてしまったのだ。 少し心にゆとりが持てたからか、俺は花 宮の視線がせわしなく動いているのに気付いた。 周囲の状況を把握しようとしているのか。 花『瀬戸、ちょっとその IQ貸せ』 瀬「ああ」 IQを貸せということは、現状をとりあえず把握しろということ。 こういときの役割分担は、だいたい決まってるからな。 瀬「どこだ?」 花『いつも通りオレが外。お前は内側だ。見える範囲だけでいい。 ただしあいつらにしかけようとするなよ。まだ何か隠してるだろうからな』 犯人の行動予想や建物の外の動きはきっと花 宮が考えてくれてる。 そのための超直感と経験だと、花 宮なら言うだろう。 だからまず俺がすべきことは、現状を把握すること。 念のためにどこの状況を把握しておけばいいかと問えば、案の定、見える範囲でいいとおおざっぱな指示が返ってくる。 それにしたがって、目前に広がるものを的確に覚え、この後、ありうることを想定していく。 何があっても。犯人の誰がどう動いても問題ないがないように。動きがあってもそれに合わせて、冷静な思考を取り戻せるように。 今、客と店員は全員、ホールの真ん中に集められている。 全員手足をひもでしばられている。 ガムテープにしなかったのは、力任せひきちぎるやつが出る可能性を考えてか。 それにしても目隠しをさせていないところからして、客に紛れ込むという手段は選ばないようだな。 これでは本当に犯人の目的がわからない。 敵は窓に一人、カウンター、入り口、奥への扉。 そしていまや人質と称する俺たちを取り囲むように、二人。 リーダーはカウンターにいる体格のいい男だろう。 犯人たちの会話、ささいな身体の動きから計算して何万パターンと出てくる犯人の動きを予測する。 恐ろしいのは、犯人の動機と目的がいまだ見えないこと。 入り口をふさいだということは、裏口からの脱出を考えているのか。 または別のルートを確保しているのか。 考えたくはないが、最後の選択肢として自殺テロ・・・も、あげられる。 爆破の影響もあり、室内はどこかほっこりっぽい。 入り口付近などはいまだ土埃が舞い視界が悪いほどだ。 「うるせぇっていってんだろうが!!!」 バン!! 犯人が脅しのためにまた銃を撃つ。 言葉の通り、うるさかった人質たちをだまらせるためだろう。 いまはまだ脅しに過ぎないため、天井に向けて撃ったそれは、電灯を弾がかすめたためゆらゆらと数個危なそうにゆれている。 先程の爆破の影響もあって、天井からはさらに破片がふりそそぐ。 地震があったらこの場所はきっと一発でおじゃんだ。 状況をどう理解したのかは怪しいが、爆破による影響にも動こうとしなかった花 宮を抱き寄せ、俺も自分の頭を腕でかばいながら、花 宮に破片が当たらないように守る。 なんたってこいつは不幸体質だ。へたしたら花 宮直撃コースで一番巨大な破片が落ちてこないとも限らない。 それを理解しているから、火神もふくめ霧崎の仲間が花 宮を不安そうに見やる。 こいつ、なにかしでかすんじゃないかという――恐怖だ。 俺たちが言う“しでかす”とは、実際に花 宮が何か行動を起こすというわけではなく、不幸が花 宮に降りかかった瞬間側にいると巻き込まれるので、花 宮が原因という意味で“しでかす”と表現しているに過ぎない。 瀬「頼むから。お前も少しは逃げる努力をしてくれ」 花『逃げる努力?』 古「花 宮、瀬戸、大丈夫か?」 山「つうかよ。なんで定番の銀行強盗ってのは銃なんか持ってんだよ!ここは日本だぜ。銃刀法違反だろうが」 火『定番が銃・・・オウ。ジャパニーズ、クレイジー。日本は平和だってきいてたのに。日本こわい』 原「アメリカは銃とか普通でしょ!?なんで火神の方が怖がってんの」 他の客が騒然としているせいで聞き取りずらいが、山崎も天井からの破片から身を守ろうと頭をかばいつつ、憎々しそうに銀行強盗を見ている。 瀬「定番ね。ナイフで脅してもここまでみんなパニックにならないだろうね」 原「ああ、飛距離の問題ね」 古「ナイフなら近づかない限り自分に被害はないが、銃は遠くからでも殺せるからな」 原「ここにまつもっちゃんいなくてよかったねー」 瀬「まったくだ。松本はあまり花 宮の耐性がないからな。この場にいたら死んだ魚の目が増えるところだった」 火『あの・・・なんでみなさんそんなに冷静なんすか?』 原「冷静なんかじゃないよ」 山「怖いんだよ俺らだって」 原「でも花 宮が動くなっていうから」 花『目隠しされた場合を想定してあいつらの気配の色覚えておいたのに。 どうせなら客に紛れ込んで逃げるぐらいの面白芸を披露しやがれってんだ。 外に出た途端狙い撃ちしてやろうと思ったのに。ああ、クソ!せっかく覚えたの意味なくなったし』 さすがに犯人人心が全員顔を隠してるから、客に紛れ込むことはあっても初めからそれが目当てではなさそうだ。 火『・・・アザナセンパイだけは冷静ですね』 原「あ、うん。そうだね」 古「気配って覚えられるものなのか?」 原「むしろ見えんのって感じだよね〜。花 宮は視えてるみたいだけど」 山「安心感と同時に、犯人へ一瞬同情心がわいたのはなんでだ?」 そこまで読んでいたのに、天井の破片はよけてくれなかったんだな花 宮。 まぁ、いいけど。 さて。 ならば、犯人たちの逃走経路とはいったい。 もう一度周囲を見渡して、思考に潜り込もうとしたところ ここでついにきた!とばかりに新たな問題が起きた。 入り口は瓦礫でふさがれ、シャッターがおろされた銀行。 銃を手にしている犯人たち。 爆破をしたことで、犯人たちには爆弾の知識があり、銃の他にも人を殺せる手段を持つことを客たちにしらしめた。 そんな怯える客は全員一か所に集められ、身動きできないようにしばられている。 「そこのやつこい!」 っと、俺達霧崎メンバーと火神に囲まれていた花 宮が、人質に取られてしまった。 本人は意味が分からなそうにポカンとしていたが、それを好機ととったのか犯人の一人が花 宮の腕を引っ張りリーダー格の男のもとに連れて行く。 連れて行く際にコチラを威嚇するように他の仲間が銃を俺たちにむけてきたので、とめることさえできない。 縛られたままなので動きずらそうな花 宮の背を銃がつつき、せかすように歩かせ連れて行く。 その様に俺を抜かした短気なうちの霧崎のやつらが、いまにもかみつきそうな勢いで、ギラギラとした目で犯人たちを憎々しげに見やる。 IQをつかえといわれていた俺はもう一度周囲を見回して、いきついた結論になすすべがないなと、どうしよもなくなってため息をついた。 囚われた客のほとんどは女性。自分たち以外の客の年齢層は、主婦か老人ばかり。 なかには十歳未満の子供もいるが、人質にするには子供は騒がしい。 子供というのは、泣いて暴れて何をするかわからないだけでなく、その子供に手を出したことで母親がとちくるった行動をしかねない。 かといって老人は、逆に足手まといにしかならない。 大人の男を人質にしてしまえば、犯人の体格からいって、隙を突かれたり力で圧倒されることがないともいいきれない。 高校生ぐらいの年齢は自分たちしかいないが、自分たちはスポーツをやるだけあって、体格がそれなりにいい。しかも火神は 190cm。花 宮をぬかした自分たちは 180cm代。 そのぶん、暴れられると他よりも厄介なのを理解したうえで俺たちの存在を警戒して、犯人は俺達を他の客より念入りにしばっている。 霧崎レギュラーのなかで唯一170cm代(とはいえ179はある)なのは、松本樹だが、本日彼は不在である。 つまり、平均越えの自分たちに囲まれていると、ただでさえ日本人の平均を地でいく背の低さにくわえあまり筋肉が付きにくい花 宮は、さらにきしゃに見えるわけで。 さらに花 宮というのは、みかけだけは大人しそうな優等生のようにみえるのだ。動作も爺くさい中身のせいで、心に常にゆとりがあり、あげくどこでも変わらないマイペース感がまったりした雰囲気をかもしだす。それでいて小さな仕草一つ一つが整った顔や細い指や手のせいで優雅に見える。最大の特徴である麿眉が高貴なイメージをかもしだすのか、全体的に品があるようにみえるという――花 宮マジック。 しかも今日はハイスペックな蝶、ロジャーさんが大活躍をしているので、花 宮の頭が女の子の髪型の様に凝っていて、頭だけでもかわいいこと。 そもそも頭に蝶をつけた男子高校生なんて普通はいないから、犯人がいろいろ勘違いしている可能性もあるが。 花 宮が人質にされたのは意味がある。 こんな状況でもあわてることなく冷静、かつ、泣きわめいて怯える女のように暴れられることもない。 しかも見た目だけで言うなら小柄で、抵抗されてもそれほど力はなさそうときている。 あとは客の中で一番力がありそうな俺たちの中心が花 宮であることを理解して、俺達の動きを封じるため、俺達を牽制する役割もあるのだろう。 それらを統合したうえで出した結果の人質だ。 一瞬で客たちの状況、客同士の力関係を理解したうえで、花 宮は人質として連れて行かれた。 あせりか慢心か。それゆえに手近な奴を人質にするのであれば、もっと俺たちはいくらでも対処ができたのに。 そうではなく、客の中でもっとも条件に合う人間を選ぶだけのゆとりがあちらにはある。 同時に犯人がそれだけの知能犯であることもしめしていて、俺は気が重くなる。 瀬「犯人の中に知能犯がいるな」 火『 For real?』 原「これだけのことをするんだから当然じゃないの?」 山「バカ。花 宮を連れて行った時点で、相当あいつら考えてるはずだ」 古「おれたちへの牽制も兼ねてか」 本当に犯人にとって、都合のいい人質だよね花 宮って。 何度も言うけど。 見た目はね。 火『・・・牽制って。でも一番やばい奴連れて行ったのまちがいっすよね』 霧レギュズ「「「「まぁな」」」」 青い顔をして犯人に同情のまなざしを向けている火神が、その後どっかの謝りキノコのように「スイマセン」と謝ってきた。 山「もう花 宮のアレ、本当に何とかならないのか?」 古「ラッキーフラグどこかにないか?」 火『すいませんすいませんすいません。本当にアザナ先輩がやらかしてすみません先輩方。あれはどうしようもなく昔からなんです』 古「どっかの学校に謝り癖が酷い奴っていなかったっけ?」 山「いや、お前が謝るなよ」 俺達は花 宮とは高校からのことしか知らないけど、それよりもっと前から知り合いだった火神は、さぞ花 宮の破天荒具合と不幸体質に巻き込まれ続けてきたのだろう。 もうかわいそうなほど、火神の台詞が、友達とか後輩とかそういうレベルでなく完全に身内による謝罪発言となっていた。 瀬「きにしなくていいよ。もう俺たちも慣れたよ」 火『でも・・・』 原「そうそう。世の中どうしようもないこともあるよ」 古「“アレ”に関しては謝るだけ損だ」 霧レギュズ「「「「花 宮のあの不幸体質は」」」」 そうっすよねー。なんて、火神らしくない、どこか生気のないうつろな目が天井を仰ぐ。 火『俺もう……bounce‥ッス』 瀬「だめ。帰っちゃダメだから。がんばって火神」 原「あれ?いまのって帰るって意味なの?」 瀬「スラングだよ」 しばらくブツブツとなにか花 宮に対しての愚痴を英語でつぶやいていた火神だったが、なにげなく犯人の方に視線を向けたことで何かを思い出したように愚痴をやめる。 念仏のようなスラングの羅列が終わったことで、どうしたんだとばかりに火神をみやれば、が、火神は困ったような顔して首をしきりにかしげた。 火神はなにか考えるように、犯人と、その横で銃を突きつけられてなお平然とした顔でちょこんと座っている花 宮を交互に見て―― 火『この場合って、俺はだれを心配すべきですか?人質にされたアザナ先輩?あとでアザナ先輩にコテンパンに八つ当たりされそうな俺たちっすか?ここでひとまとめにされている客?それとも犯人ですかね?』 霧レギュズ「「「「犯人だろ」」」」 火『Oh,crazy…』 原「ってか今の会話の流れにちょっとデジャブ」 古「数十分前に似たような会話をしたばかりだな」 そうして全員が互いを確認しあうように視線をいきわたらせる。 俺ももうお前らの言いたいことよくわかる。 視線に促されるように頷けば、許しが出たとばかりに、みんなが一斉に口を開く。 原「俺。犯人がお花の禁句言って逆切れして潰される方に 500円」 火『じゃぁ、俺はアザナ先輩が論攻めに 100円ス、です』 瀬「花 宮が非常識発言して、それに振り回された犯人がパニックになって、その隙を突かれるに 300円」 古「俺が人質になると交渉してその隙に犯人が潰されるに 1000円」 火原瀬山『「「「え?」」」』 呆然とこの後の展開を予想して金額を上げていたら、おかしな発言が一つ混ざっていた。 そして 古「花 宮を離せ!!」 俺たちがとめる間もなく古橋が、縛られた手はそのままに気合で立ち上がって犯人に向けて駆けだした。 やばい、目がマジだ。 あれほど動くなって言われたってのに。あのバカ。 火『ちょ、古橋先輩!』 山「古橋の奴まじでやりやがった」 原「ねぇ、これもさっきなかった?すっごいデジャブだよ」 結果? そんなの決まってるだろ。 俺達は縛られてるんだぞ。 しかも俺たちは他の客より念入りに縛られているわけで―― 古「ぁ・・・」 ズベ! ゴン! 犯人たちがいっせいに古橋に銃をむけるなか、古橋は三歩目に到着する前にバランスを崩し、そのまま足を滑らして見事にこけ、顔面から倒れた。 見事なとしか言いようがない。 それは見事な滑り具合と、見事な激突音であった。 それに唖然とする客と犯人たち。 おかげで銃が発砲されることはなかったからよかったけど。 古橋はそのままもごもごとしていたが手を背後で縛られているせいでうつぶせ状態から起き上がれないらしく、床をバタバタゴロゴロと転がっていたが、何回か転がった後勢いよく柱に激突し、そのままタンスにゴンとばかりに大きな音を立てた後力尽きた。 その激しい音以降、あいつはピクリともしなくなった。 「「「「「・・・・・・」」」」」 所詮自滅である。 そしてさすがにこの展開は、俺にも予想外だったよ。 すまない花 宮。 花『お前らなにやってんだよ』 人質である花 宮から呆れたようなつぶやきがもれたのは、どうしようもないだろう。 犯人たちも花 宮に賛同するように激しく首を縦に振って頷いている。 犯人たちは覆面をしているにもかかわらず、なんとも言えないとばかりの憐れみ交じりの同情じみた空気が放たれている。 このとき客、犯人関係なく、全員の視線が床に伏してマグロ状態な古橋へとむけられていたのは間違いない。 犯人にまで同情されるって・・・。 ところで。 これ、どう収拾つけるの? ←BackUTOPUNext→U |