有り得ない偶然 SideW
-だれかの短い日々-




真相は霧の中
一年前 誠凛VS霧崎第一
木吉が足を痛めたときのこと。
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パチン。

あまりにその音は綺麗に響いた。
それに周囲の人間たちが、驚いたように振り返る。
コートの上にいた選手たちも、観客たちも。その視線がただ一か所へと向けられる。

コートの上をはねた音。
その音ひとつで、ひとつ“動作”がずれる。

そうしてねらった合図は、それを実行した人間の頭脳の中で描かれたシナリオ通り、劇的に場を動かした。

もつれる二人の選手。
足を抑えて苦痛にうめき、床に倒れる選手。
コートの外で、この時を待っていたばかりとに笑みを浮かべ、しかし次の瞬間には怪我人を心配するように悲鳴を上げる金色の髪の少女。
音の根源を見つめていた眼鏡の青年が、悪の権化に怒鳴りかかる。

そして。
特徴的な眉毛の選手は告げる。

“ソレ”は不慮の事故だと。





【 nots ide 】





主「はーなーみーや」
花『してません』
顧「あーあーやっちゃったねぇ、花 宮くん」

花『やってませんよ、オレ。ラフプレーなんか』

主「こういう感じになるのわかってたから最後の最後まで花 宮出さなかったのに」
霧「最後の最後で“やらかす”とは思わなかった」
霧「わかります。花 宮の不幸体質ですよね」
霧「俺らの苦労が」
霧「ついにラフプレーのレッテルはられちゃったな」

花『なんでオレや先輩がラフプレーしたことになるんですか。
そもそも先輩のおりるタイミングがずれてたとか、どんな言いがかりですか。理不尽です。 空中停滞時間を操作できる人間がいたらぜひ見てみたいぐらいですよ。先輩がその空中を歩く技をつかえてないと不可能な言いがかりですよあれ』
霧「それはわかってんだよ」
花『だーかーらぁっ!ラフプレーなんてしてない!!』
霧「おちつけ花 宮」

霧「だけどそう勘違いされなかねないから、“その癖”をやめろって言ってんだ!」

花『そこまでわかってるなら、先輩たちもなんであそこでこっち振り返るんですか!!おかげで人にぶつかってラフプレー扱いされたじゃないですか!』
霧「「「それをお前が言うか!」」」

花『つまり?』


霧「「「試合中にスナップはやめろ!!」」」


花『え?』
霧「えってなに?もしかして花 宮気付いてないのか?」
花『まじっすか?』
霧「まじだ」
霧「本当に今日もすごいひやひやしたんだからな!」

霧「どうすんだよ試合中に“姿が変わった”ら!!」

霧「そうそう」
霧「ほんとだよー」


霧「そういえば、花 宮が最初にしでかしたときも学校の練習ときだっけ?」
霧「あのときはマジびびったわー」
霧「花 宮が指パッチンしたら突然ワンコが目の前に現れたときの俺の心境、誰か理解してくれ」

霧「来年後輩ができたら、花 宮のびっくり体質のことどうやって隠すんすかキャプテン?」
主「んなもんっとっととばらせ!ただし他校にはばらすな!絶対に!だ。こんな奇想天外な生き物をよそ様には見せられるわけないだろ!」

霧「「「花 宮ですしね〜」」」


主「いいか花 宮!興奮するとすぐその指パッチンする癖を直すまではお前は試合に出んじゃネェ!!」
花『やべ。すいません、気付いてませんでした』
霧「「「はなみゃ〜・・・」」」


霧「じゃぁ、あれもわざとじゃないのか。花 宮、練習の時たまに性別入れ替わってるよ」

花『ふぉわっ!!!!すませんでした!え。オレ女子にも変身できるんですね!?初めて知りました。っというか女子か。そうですよね突然背が低くなったら点取れないですもんね。気づいませんでしたすみません!』
霧「なんかちげー!!」

霧「ッフ。女の子ってちいさくてかわいくてさ。小柄な子が大きめのシャツ着るあれって彼シャツって言うんだっけ」
霧「あー言いたいことはわかる」
霧「あれ、さ。目のやり場に困る時たまにあるよな」
霧「・・・いや、うん。俺彼女いるけど、花 宮のあれな、うん」

霧「さすがに慣れたよ」

霧「花宮の動物かもかわいいけど、たまに女の子になるのも謎。慣れると大丈夫だよな。たまに目のやり場に困るけど」
霧「こいつに色気とかないから。なんていうか、あー・・・結局さ、目の前にいるのはどこまでいっても花 宮字だって感じしかしないんだよな」
霧「うん。なんとかなれたよ」
霧「まぁ、花 宮だし」
霧「花 宮だしな」

主「でも今年からは女子マネいれよう。ほんと、マジで」


花『なんかわかんないけど切実ですね』



霧「「「お前のせいだ!」」」





+ + + + +





秀徳にて

清「そういえば・・・」
大「どうした宮地」
清「ああ。いや。なんでもない」

清(中学校前は小学時代からの奴らばっかだから、全員事情は知ってたけど。
高校はだれもしらないんだよなあいつのこと。
指パッチンであいつ姿変わるんだよなー。
そういえば、今日は誠凛ってのと試合だっけか。大丈夫かな霧崎のやつら)



清「らんま1/2の方が条件がしっかりしててわかりやすくかったかも。水にかからなければ問題ないもんなあれ」





+ + + + +





霧「そういえば、今回誰がラッキーフラグ拾った?」
花『オレはラフプレイヤーのレッテルがはられましたー』
霧「俺、そんな花 宮の指パッチンにびびったせいで、タイミングはずして、あげく花 宮指示のもと木吉にラフプレーしたことになってまーす。ものすっごい不服です」
顧「それ、今回の花 宮君の不幸だね。○○君は巻き込まれた系だね」

主「ん?そうなると今回のフラグは誰に立ったんだ?」
霧「さぁ?」
霧「だれか幸せそうな顔してたやつみたか?」

花『幸せそうな顔した奴は見てないけど、たぶん運を拾ったのは木吉だろ』

霧「なんで?」
霧「逆に今回の一番災難なのあいつだろ」
花『どこ・・・っていうと。そうですね。怪我の具合ですかね』
霧「怪我ぁ?」
霧「怪我したことがいい事なの?なんだそれ?」
花『オレの診たてですが。あの足、あれ以上酷使したら二度とバスケできなくなってた感じです。それどころか足とお別れなんて結果がついてきたかもしれません。 それもいまから治療すれば、歩けるようにもなるし高校卒業後にはバスケができる・・・かも?』
霧「あ、でた花 宮の超直感」
主「花 宮がそう言うなら、“そういうこと”だろう」
霧「つまり今回早めに木吉が隠していた故障に気付けたことがラッキーフラグか。 ここであいつが周囲に故障のことを気づかせないまま無理していたら、あいつは二度とバスケができない体になっていたと」
霧「うわー、そうきたか」
霧「生涯二度とバスケができなくなるか。無理して高校の仲間とバスケをするか。か。究極の選択だな」
霧「たしかに高校の仲間とバスケがやりたかったなら、高卒後じゃおせーわな」
霧「それ、いいこと?」
主「なんともいえねぇラッキーフラグだな」

花『だから、あれほど病院行けって言ったのに・・・人の忠告無視するような馬鹿は自業自得だ』





 


:: オマケ ::

相「なんですって!?」
木「なにか変なこと言ったか俺?」
相「花 宮に病院行けって言われてたのに、でた・・・って。どういうことよ!!」
木「ああ、本当に自業自得だよな」
夢『ちがうわ!花 宮なんかが木吉くんを心配するわけないじゃない!木吉くんをはめたのよあいつ!木吉くんは優しいからあんなやつかばうのよ!かばう必要ないわよ!』
相「・・・ちょっと十九子ちゃんそれは言いすぎじゃ」
夢『ちがうわ!しっかりしてリコちゃん!リコちゃんだって見たでしょ!花 宮がラフプレーの合図をしたのを!』
相「あ。ええそうよね。鉄平、あんたはめられたのよあいつに」
木「ん〜でも。あいつが直接攻撃してきたわけじゃないしな〜。ホントにたまたまいろんなことが重なっただけかもしれ」
夢『リコちゃんも木吉くんもだまされちゃだめ!“花 宮真”は嘘つきなの!あいつは“悪童”だから人が嫌がることも平然とやるのよ!』
相「だまされてる?そう・・・そう。そうよ。鉄平は“花 宮真”にだまされてるのよ。 同じ無冠だからって、次に会っても“花 宮真”には無暗に近づかないようにね鉄平。 あの“悪童”に何されるかわかったもんじゃないもの」
木「そうか?いや、・・・そう、そうかも。そうだったな。十九子が言うならそうだよな。俺の足を壊したのは“花 宮真”だったな。うん」

夢『ふふ。そうよ。み〜んな“悪童 花 宮真”が悪いんだから』


少女は笑う。
嗤う。

少女の言葉に惑わされた者たちは、その目に怒りの灯をともす。

間違った火をともされたろうそく。
本来ろうそくで輝いていた火はなんだったのか。
少女の声で吹き消されたのは、花の小さな親切心という温かい灯だった。





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