有り得ない偶然
++ 花火乱舞 ++




短刀といえど刀ですから
※時の政府事情。審神者について。刀剣男士と霊力について。などにいろいろ捏造設定あり!!

<あらすじ>
火神成り代わり主は、【モノノ怪】薬売りの弟子→【P4】主人公→火神。
火神成り代わり主の審神者名「火凛」。
「六」という名の三日月は、火凛の初期刀。
火神成り代わり主は、見習いからついに審神者になりました。
現在、勘違い系女子にからまれています←New!
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その目に映るものすべてをうたがえ――

目に映るすべてが正解とは限らないのだから。
そう。たとえば付喪神である刀剣男士がいいれいだろう。
彼らのように短刀たちがどれだけ幼い姿であろうと、短刀は太刀の子らよりも年をくっている者が多い。それこそが目に見えぬ真実であるのと同じように。
見えるものだけが正しいと思い込んではいけない。
その目にあるものが、真実であると考えてはいけない。
正しいという思い込みは、牙となってときに己が身にふりかかってこよう。
その真の姿をさらして。







< side 火神 成り代わり主 >







何度目かの演練。
ずいぶんと面で顔を隠してのこの狭い視界にも慣れた。
同じ顔がたくさんいる光景も、まるでコロシアムのようだと思った演練も。
見習いを卒業して、審神者になって、ずいぶんといろんなことになれた。

火「あー・・・空が青いな」

なげやりに空を見やれば、面の向こうに高校時代の相棒の髪の色と同じ色をした空が見えた。

「きいてるのですか!」

思わず空を見てしまったのも仕方ないと思う。
いろんなことに慣れたとはいえ、こんな慣れはいらない。
むしろつねにブラック本丸と勘違いされまくっている花宮さんじゃないんだ。初体験だ。初体験で、なれとかあるはずがない。
何が言いたいかって?

俺、現在進行形で、いわれのないいちゃもんをつけられてます。



ただ演練に来ただけなのに。

なにがどうしたら俺がブラックになるんだ!!!





* * * * *





刀という無機物な武器であることには変わりなく
神の末席とはいえ神様であることには変わりなく
人の形を得て個々の感情があることには変わりなく

なんと厄介な存在だろう


審神者の数だけ刀剣男士達の接し方がある
これだという正解はない

人間として接す者
神様として敬う者
道具として見る者

それに関しては各々の価値観だ。
勿論、こんな極端ではなく大半は3つを複合してどれかが優先だと思う。

そんな前置きしつつも俺がそのタイプだからだ。
普段接する時は感情ある故の人間(時々神様)として
戦場では一振りの刀として見ていた。


「前田くんを戦わせるとか。それも一番先頭でなんてよけい信じられません!どうしてそんな非道なことができるんですか。貴方は幼い子供達を戦場に出してなにも感じないのですか?!」

演練前に言われた言葉だ。
声をかけて・・・というか、怒鳴りつけてきたのは、女審神者。
その外見や口調からわかる通り、慈悲深い優しい女性だと見て取れる。
ちょっと行き過ぎ感はあるけど。
慈悲が深すぎるのもどうかね。
言っていることも行動もなにもかも甘い。
人によっては頭の中は花畑かよとつっこみたくなるであろう。
花宮先輩なら「戯言だな」と笑う…いや、“嗤う”んだろう。
たぶんこういう甘い考えの人、ひとによってはけっこうひくかも。 だって見た目だけで物事を見てるし。考え方がなにもかも甘い。今は戦時中だというのに。戦場に出すな?やるなら演練にしろ?意味が分からない。
甘い考え押し付けてくるところもあれだし、正義こそが絶対的な正だと言わんばかりで。さらには少しでも彼女の思想から外れたものは、悪。悪は絶対に悪いもの。 まだ人はみな本当はいい人という性善説うとか持ち出されないだけましなのか。だが彼女式正論だけを一方的に正義だといいはり、それ以外を悪と定める――まぁ、なんというか、思い込みがちょっとはげしい典型的なイイコちゃんだ。
嫌がりそうなひと絶対いるよこれ。

彼女を一目見て、嫌がりそうなひとねぇ。ああ、そういえば身近にいるわ。
とくに俺の見習い研修先の先輩とか。
うちの先輩さ。ぶっちゃけていうと、まじいろんな意味でやばいぜあのひと。正義ふりかざしてるひとが大嫌いで。 あげく自分は悪でいいと言い切って、「悪童」とかよばれても平然としちゃってるようなひとだからなぁ。

――なぁ〜んて。
つい現実逃避のように先輩の運の悪さとか非常識具合とか思い出しているあいだも、彼女の彼女なりの正義論は続いていたようで・・・

火前「・・・すから、戦場で戦うことこそが」
女「戦場!?かわいそうに。なんてひどいの。そう。大柄の体格だから怖くて逆らえないのね。安心して前田君。私がしっかり言ってあげるから」
火前「いえ、ですからそうではなく。話を」
女「あなた。いまの前田君の話を聞きましたか?どうして短刀の子に無理をさせて戦場につれていくの?」

外見だけしかみず、あげく「刀剣男士」にかんする基礎知識を丸っとどこかに投げ捨て、頭の中は砂糖で埋まっていそうな・・・そんな目の前の女審神者は、きっとその脳みそこそ砂糖でできてるに違いない。 砂糖のような思考の、あーもうめんどいから・・・砂糖さん。ん?あ、サトウ。うん。なら佐藤(仮)でいいや。
その佐藤(仮)さんが、うちの前田君との会話になってさえいないやり取りを負えてこちらを振り返る。
そしてまだなにかわめている。

火前「主、このような者にかまうことはありません!」
火燭「そうだね。こんな場所で立ち話もなんだよね。せっかくの演練のなのに時間がなくなっちゃうよ」
火月「で、あるな。
主よ。前田と燭台切の言うとおりだ。はよう試合の申し込みにいこうではないか。やりあう時間がなくなってしまうではないか(ニコニコ)」
火「あ、ああ。そうだな(やりあうって・・・うちの爺さん、なんて戦闘狂wwwにあわねーwwww)」

佐藤「話はまだ終わってはいません。どうしてそんな小さな子までださせるの!!」

火「え?ちいさいって・・・身長のこと?なにそれ。花宮先輩泣かせだぜ。俺は笑う」
火前「花の宮に小さいは禁句ですよ主。花の宮をけなすと、あちらの堀川と和泉守がだまっていないでしょう」
火月「ああ、たしかになぁ〜。
ふふ。それにしても花の宮審神者といえば、それほど時間はたっていないというのになつかしいなぁ。またワンたちと会いたいものよ」

脳みそシュガーな佐藤(仮)さんの話を真っ正面から聞いてるのに疲れて、思わず会話が続かないように別の話題でそらしてしまった。
いや・・・だってねぇ。
俺の耳を疑うわけじゃないけど、さっきから彼女「小さい子たちを戦わせるな」って言ってたり・・・
ははは。そんなわけないよねー。
・・・しないよな?
そうだよな。そんなわけないよな。
いやー俺の勘違いならいいんだ。

佐藤「どうしてそんなひどいことができるの。誰だって傷ついたら痛いのよ。それは彼らだって同じなのに」

・・・・・・言ってる。
本気で小さい子はダメよ!って言ってった!!!!

しかも長いまつげをバッサバサゆらして、大きい目には涙をためて、フルフルふるえるようにして俺にうったえてくる。
みためははかなく、可憐に涙をこぼす聖人の絵だ。
言ってることおかしいけど。
かくいう俺は顔は隠してるけど、190cmの男であるのは一目でわかる。
この構図ってどう見ても第三者からしたら、俺が彼女を泣かしたようにしか見えなくね?
ってか、涙でなきおどしとかひどくない?
え?俺が悪役ですか?でも周囲の皆さん同情するように俺を見てくるんですが。これってもしかして、この子、常習犯?

火「おふぅ・・・ツカレタヨクロコ。俺、現世に帰りたい。むしろいまなら花宮先輩のゲス顔みてもなごめる自信がある」
火燭「主さん・・・。ところでなんで“黒子”だい?劇とかの黒子さんがどうかしたのかい?」
火「光忠。うん。知らなくていいことも世の中にはあるんだよ(やっべぇうっかり真名言ってたわ。いまのはアウトだよな(汗))
つか、本当にもうこのひと無視してもいい?いいよな?」
火月「主よ。残念ながら今もあのおなごは、短刀がかわいそうとか金糸雀のようにわめいておるぞ」
火「NO−!!《俺にふるな!原先輩の言葉じゃないけど脳みその中にお菓子入ってるひとなんかしらねーよ!!!》」

思ず頭を抱えてその場にしゃがみ込む。
そのままパニックになった衝動で英語で叫んでしまった。
だというのにうちの三日月さんから「ははは。《ミスター原はずいぶん愉快とごじんであるな》」と見事なヒヤリングをしたあげく、見事な発音の英語で返答が来た。
この三日月やりおる。
俺が顕現したからか?だから英語もすっらすっらなのか!

まぁ、それはそれでいいんだけど。だって通訳いらず。

それはさておき。
この砂糖ででいたような人はどうすればいいんだろう。
そろそろ演練始まるし。
むしろ野次馬どもみてるなら助けろと言いたい。
俺もあっちいきたいです(ノД`)・゜・。

佐藤「どうしてみんなそんなひどいことができるの。前田君たちがかわいそうよ。彼らは大人が守ってあげるべき存在なのに」

いや。かわいそうなのは貴方の頭の中だと思った俺は悪くない。
ニコニコしていた三日月が、その笑顔のまま袖で口元を隠し、英語でこっそと「《このおなごは頭がおかしいのか?》」と俺にささやいてきたが、それ俺も思った!とか絶対言わないから!!
むしろ佐藤(仮)さんが、悲劇のヒロインだかなんだかを熱演中で聞いていなかったのは救いだ。
というより、頭の中に佐藤でできた花がつまりすぎてて英語まで入る容量なさそー。
ちなみに。
「みーとぅー」っとシカリとばかりにうなずいていた前田君がいたのは・・・みなかったふりをしよう。
うちの初期の子らは、英語に精通している。

佐藤「よそ見なんかして早く彼らを解放してあげてください!」

あれぇ?いま、なにかおかしな言葉が聞こえたような・・・。

まさかな。
信じたくはないが。
いや、まさかのまさかと思うけど・・・有り得ないだろ。

解放って何?
これってつまり、佐藤(仮)さんは、本気で短刀こと弱いと思ってるのだろうか。
それは短刀を組み込んで編成している者たち全員に喧嘩を売っているってことだろうか?いやいやいや、そんなわけないよな。

ちらっと彼女の後ろに控えてる刀剣男士へ視線を向ければ、中に脇差でにっかり青江と大太刀は石切丸が居る………所持していればだが、もし彼女が蛍丸も所持していたら、 やはり幼い姿だからと戦に出さないのかな?
審神者の間では蛍丸は演練の悪魔と称されるほどその性能から恐れられているけど。

まぁ、見た目だけ見るなら、彼女が主張する言葉も分からなくはない。
見た目はどうみても短刀の子は子供だからね。心配にもなっちゃうし、刀の長さを考えると接近戦しかできないから、ついやられてしまわないかと不安になる。
でもその見かけ通りではないのが神様だ。
そもそも外見通り、精神も幼子なら、俺だって止める。むしろこの戦場に政府もそんな戦に役に立たないだけの神をよびはしない。
何度も言うが、彼らは神だ。
けっして、ふつうの生き物と同じように外見=年齢だと考えてはいけない。
なにせ彼らは歴史からして目の前の娘より俺より遥かに年齢や経験を重ねた者なんだ。
こう見えて短刀達のほうがぶっちゃけ太刀より強い。
ましてやただの人間の子供ではなく戦うのが目的の刀。
そこを否定したら刀剣男士と審神者の本懐は何であるかと問いたい。
彼ら刀剣男士を呼ぶ理由は、本丸でかっこいい男達と日々過ごす。そんなことが目的ではないんだぞ?
刀そのものが戦闘を拒否するんなら認めるけど。
彼女の言い分はあんまりだ。

火前「戦えないあなた方人のために僕らは刀を振るう。それでも僕らに戦うなと貴方はいうのですか?なら、貴方が戦うのですか?」

今尚、短刀達の接し方を主張する佐藤(仮)さんに、いままで怒鳴ることも怒ることもなく根気強く話を聞いていた俺の前田藤四郎が、俺より進み出て彼女へ言い放った。

火前「貴女は外見で判断する人のようだ。僕が人の形をとらず刀の姿のままであればそのようなことを言わなかったしょう。むしろ護身刀として持たされれば、貴女自身が僕等を使っていたかもしれませんね」
佐藤「え?」

まさか前田くんからそんなことを言われると思ってなかったのか、もしかすると彼女は言葉の意味を理解できてないのかもしれない。
困惑する彼女に、前田君はなおも言葉を続ける。

火前「演練は初めてですか?ならばあの場であなたに我らが刃の切れ味、とくとお見せしましょう。ですよね主」
火「あ、ああ。そうだな。
あー・・さとう、じゃなくてお嬢さん。悪いな、うちのが喧嘩吹っ掛けるみたいなこと言って。
うちの前田藤四郎は俺が鍛刀したせいか、敵が強いほど嬉しがる好戦的な面がある。 俺の本丸内じゃ練度の高さは一・二を争う。
練度が高いから強いなどというつもりはないが、だからといって幼い姿だからというだけでこいつをなめないでほしい」

演練で見せつけてやると宣言した前田君の背を押すように、俺は「演練でそれを証明しろ」と言ったら、前田くんは可愛い顔から想像出来ない不敵な笑みを浮かべた。





* * * * *





それから淡々と組み合わせ通り演練は進み、ついにあの砂糖審神者とたたかうこととなった。
ちなみにここまでくるあいだにわかったことだが、彼女は演練初心者ではないようだ。
むしろ演練にしかだしてないとか。
たぶん初っ端のチュートリアルでトラウマでも負ったのだろう。
たしかに彼女のチームは短刀はいないが、そこそこレベルがあり、平均的にはうちのメンバーよりレベルが高い。
ただし彼女のセリフと刀剣男士たちの行動をみるに、本物の戦場には出ていない気がする。
勝機はありそうだな。


ホラ貝が鳴り響き試合が始まった。

そして――

火前「倒れなさい!」

佐藤「嘘でしょっ」

火月「はっはっは、流石は前田。このじじいものんびりしておれんな」
火燭「それは僕もだよ。いつまでも守られる側とか格好良くないよねっ」
火太「こちらも視界を空けましょうか」
火堀「太郎さん、ナイス!確かに外見で判断は困るな」
火安「首落ちて死ね!ーーーすごい、僕も練度もっと上げなきゃ」

火前「『主君のために!』」

火「あ。前田くんの真剣必殺出た」

宣言通り、うちの前田くんは、先陣を切って切りかかって、しょっぱなから太刀を一つ重傷へ追い込んだ。
彼女との演練で前田くんはその力をいつも以上に発揮し、他の太刀も涼しい顔をして一撃重傷にさせた上に誉も取っていった。あいかわらずとてもイケメン君である。





その後、甘く砂糖のような佐藤(仮)さんがどうなったかは・・・





 




< 注 釈 >
前田藤四郎
レイの初鍛刀。レイが審神者になってから来た
主の気質を受け継ぎ、良い笑顔で『勝てないくらいが丁度いい!』というような男前。
その好戦的なところは本丸内に置いて一番。(二番目が三日月)
今のところレイの刀剣男士は殆どブラック本丸出身引き取りのため手入れや練度優先で鍛刀するのが少ないが、今後鍛刀すればもれなくこの好戦的な気質が現れる。








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