有り得ない偶然
++ 花火乱舞 ++




君に決めた!
※時の政府事情。審神者について。刀剣男士と霊力について。などにいろいろ捏造設定あり!!

<あらすじ>
花宮成り代わり主が、審神者になって十年目。
字さんのネーミングセンスはひどく、どの刀剣たちも正規の呼び方をしていない。
性格もみんな個性的。
そんな花宮字本丸に見習いとして、転生仲間の火神大我成り代わり主がやってきて〜。
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「なんと面白い人の子か」
「いや、なんもおもしろくねぇーから」

朧月夜の淡い光に照らされた姿が幻想的で月下美人って言葉が頭に浮かんだ。







< side 火神 成り代わり主 >







火神大我だ。
おっと、あぶないあぶない。真名はタブーだったな。
あらためて。審神者見習いの「火凛」だ。
久しぶりだな!

俺は、はじめてのトリップ以降、色んな世界を旅している。
そのせいか、怪(幽霊)が見えて、触れるようになった。
そもそもこうしてトリッパーとなる前のただの“神崎零”は、字先輩のような零感はなかった。
たぶんトリップを繰り返した結果、審神者になれる程の霊力がついたのだと思う。

霊力。零感とでも呼ぶべきもの。 今の俺は、それにくわえ、他の世界の能力も引き継いでいるので、【P4】世界で主人公に成り代わった影響のままペルソナが使え、あげくそれが霊力に加算されているときてる。
おかげでこうして審神者としてスカウトされたわけだ。


現在、異世界前世持ち仲間である審神者の花宮字のもとで審神者見習いとして日々を送っている。
字さんの本丸に来て審神者として勉強するも、どうもあの人の側はいつもツッコミ三昧。
最初から真名を名乗ってるとかしておかしい。
字さんを神隠しできるような存在はこの世界にはいないようだが、念には念を入れて、普段は《字》ではなく、苗字の「花」でよばさせてもらってる。

そんな花さんのいる場所は次元も世界も変わっても変わらなくて、ここでは時間がゆっくり流れるような感覚がするほどに、穏やかな日々がすぎていく。





火「うーん、買い出しはこれで全部か?」
狐「全部ですな。しかし粉ものや果物が多い気がするのは気のせいでしょうか?」
火「あー、花さんがケーキ作る気でいるんだと」
狐「ぬしさまのあの南蛮菓子!?そうと分かれば火凛殿、急いで帰らねばっ!!」
火「そーだな」

本日は、おつかいとして(ココさんではない大きい方の)小狐丸と万屋に行った。
この万屋、何でもそろってるし、品ぞろえがマジですごい。

小狐丸は荷物持ち兼俺の護衛らしい。
字さんに頼まれた材料を見るに、スタンダードなショートケーキかフルーツケーキ、チョコケーキの可能性もある。
甘いのが苦手なのによく作ってくれるのが嬉しい。
あのひと、原作の花宮によく似てカカオも濃度高いの美味いと言って食べるし、生クリームに吐き気がすると豪語するような人なのに。
うん、ありがとう先輩!
今度は字先輩に何かお礼をしたいな。

ああ、今日もうちの本丸は花びらまみれでも刀剣たちも俺も平和です。



火「はぁ?」



――っと、思っていたのは昔の話。

んで、万屋の帰りにゲートを通ったら一人どこぞの夜の山中に飛ばされてしまいました。←イマココ!

ああ、うん。意味わかんねぇーよな。
いや、ゲートに入った瞬間何かバチバチっと音がしてさ。
気付けば山の中にいたんだよ。

火「こいつは驚いたな」

なぁ〜んて、鶴丸の口癖を言っても状況は変わらない。
隣には小狐丸が居ない。
後ろを見てもなにもない。
ゲートが無くなっている。
え、小狐丸が迷子だったらどうしよう。

おいおい、待ってくれ。
嫌な予感がするぞ。
そもそも

火「ここどこだ?」


つか、迷子ってもしかして俺か?


周り見渡しても見事に木ばかりの自然しかない。
見たことない山の中で呆然としてると後ろから足音が聞こえてきて、振り向けば・・・

火「oh」

敵もとい検非違使と遭遇。
なんてこった。

時間は夜だし禍禍しい姿とか、なんてホラーじゃぁありませんかこと。
もしやこれは、あれか?
俺の体質――怪(負の存在)ホイホイ発動ですか?
明らかに刀を構えてる辺り俺のことをロックオンしてるっぽいし。



ならば、やることは1つだ。

火「こい、ペルソナ!」

手を正面に掲げて、そこに力を込めるようにイメージする。
それとともに掌に集まっていく青い光。
青い光とともに現れたカードを――

パキィーン!


火「《マハジオダイン》っ」


握り潰すのみ。



なぜか、審神者でも刀剣男士でもない俺と敵さんとのバトルが始まった。
見逃してくれよ。あ、だめですか?そうですか。
っと、いうわけで、強制戦闘が始まった。

俺は花宮先輩が持たしてくれた木刀を振るう。
しかし木刀をふりまわすも敵さんのかたさに、木刀はバキリと壊れるわ、攻撃を必死でかわすも怪我を負ってしまうしまつ。
こういうときに特殊能力(ペルソナ)とか使えると便利だよな。
特大雷とか放ってやる。

っが、しかし。
直撃を食らったはずの敵さんが動くとか。なにこれ、有り得ない。

なに、お前らはペルソナでのトラウマ物件の刈り取る者かよ!?
クリアしたら装備貰えんのっ?
あ゛あ、刀剣男士をドロップでしたね!!!

火「くそ!」

頬の側を何かが掠め、ぬるっとした感触が頬を撫でる。
舌打ちをするも、いまは必死に敵の攻撃をよけるしかすべがない。
自分のほうが分が悪い。戦況が怪しいのを改めて認識する。

普通に堀川とか兼定さんを本来の刀の姿にもどしては、そのまま検非違使や歴史修正者をたおしてしまう「戦う審神者」字先輩がおかしいのだと、このとき改めて実感した。
やっぱ字さんって、「普通」からもっともかけ離れてる存在だわ。



そこまで考え、ふと字さんの言葉を思い出す。
あのひとなら「生き残るために、常に冷静であれ」というのだろう。
短気すぎて、バスケの試合の時、身長を気にして暴走したくせになぁ。

戦いながら、そんなことを思い出したら、少し肩の力が抜け、焦りが消える。
たしかに。ここはひとまず冷静になるべきだ。

そうして教わった審神者見習いとしての知識と、自分の能力について比較する。

火「えっと、確か検非違使の強さは部隊の刀剣男士の一番に合わせたレベルなるんだったよな。
ん?・・・・・この場合、まさか俺の?ペルソナって確かイザナギがレベル99のカンストだから」

そこまで言って冷や汗が流れる。

火「え・・・まじかよ・・・」

まさかこいつらが異様に強いのって、“俺自信の審神者レベル”ではなく、“俺のペルソナ”にレベル合わせちゃってるぅ!?
レベル99の検非違使複数を相手にしろと!?
ただでさえ検非違使に泣く部隊がいるのに、一人で捌くのは限界がある。

火(Jesus!こんな時に陽介達がいればっ)

ないものを言っても仕方ないが、即座に【P4】での特捜隊で編成や作戦が浮かぶとか・・・これはもう一種の現実逃避に近い。
マジでクマか、りせをplease!!!



火「――って!諦めるとか冗談じゃねぇ!!」


半分になった木刀を握り直し大きく深呼吸。

火「大丈夫。守られて逃げ回るだけの時と違う。
俺は誰だ?俺は・・・火神大我だ。
女の時より恵まれた体躯がある。力がある。戦う術がある。武器だってそこらのものでなんとかなる!」

そうさ、俺は火神大我。
俺は強さを求める。


ああ、そうとも――


火「“勝てねぇぐらいが丁度いい!!”


勝てねぇぐらいが…なんて、本来はバスケでのことだが、自分を鼓舞するために敢えて口にする。

ああ、でも。俺が今火神大我なせいか、戦闘に気分が高揚する。
強い敵を前にして、怪我を負いながらも、思わず口端が持ち上がるのを止められない。


火「《刹那五月雨撃ち》!!」

半壊の木刀を検非違使の胸に打ち込んで、検非違使の刀を逆に奪って武器として斬り伏せる。
ほんと、両手剣慣れしといてよかったわ!

刀を振るう。

振り下ろされる刀を避ける。
攻撃を自分の武器でいなす。
袈裟がけで切り捨てる。
こいつらの弱点は?急所はどこだ?
急所を狙え。

ザシュッ!
不気味な炎のようなものをまといつかせた骨のような存在が、悲鳴を上げ、チリの様になって消えていく。



火「あと、2体っ」

バスケの時みたく息が上がる………慣れない場所の戦闘、ペルソナのSPの減り、空腹感、いや全部が疲労となる。
合間合間に、回復スキルを使って無理矢理傷を癒す。
怪我をするなんて。
そんな戦いは久しくしてなかったからか、どうも感覚が鈍っているようだ。
今度字さんに頼んで、回復薬など万全の用意をした上で難易度低いところ(戦場)で鍛え直させてもらおう。


それにしても夜というのもあってか、視界が悪い。

火「あと1体」

しかしそれを倒したと同時に、ゾワッとした殺気を察した。
しまった!まだいたのか!?
気を抜いたのがまずかった。
気付いたときには、もうそれはすぐ背後にいた。



「なんと面白い人の子か」



ふいに声が響く。

俺の攻撃の範囲を掻い潜ってきた検非違使の槍が俺に迫る―――それを切り裂いたのは、一陣の閃光。
刀剣男士の刃だった。

俺をかばうように、俺に背を向けてたち、敵との間に身体を滑り込ませた相手の第一印象は、“紺”。
花宮先輩の本丸でよく目にする色合いのそれは

火「……三日月…宗近」

あれほど俺が苦戦したのに、三日月宗近はないごともないかのように、敵の間に割り込んで、その攻撃を防いでいた。
さすがは天下五剣。

月「ふむ、面妖な術や札を使うものよな。そなたは陰陽師の者か?」
火「陰陽師って・・・(そういや平安の刀だったか)」


〜ジャカ♪ジャカ♪〜〜

 解剖は〜すんでいるんだ♪
 ジ〜ワジワ〜 なぶり殺してやるぅ〜♪
 クモの巣は〜できてるぜ〜
 STEAL YOUR BREATH♪
 始ってる〜そ〜ろ〜そ〜ろ効いてきた頃だろ♪
 気付いても〜遅いぜ〜♪


pi。
繁々と俺を見つめる三日月宗近と俺の空気を割って入った携帯の着信音に、思わず何も考えず無意識にボタンを操作して通話をオンにする。

火「あ、はい俺です」

無意識の動作だった。
なんだか修羅場のような緊張感漂う中で鳴り響くおかしな着メロ!場違いすぎるwwwが聞こえたが、手が勝手に動いて口が勝手に返事しただけだ。
俺の意識と俺の視線は、三日月にくぎ付けだった。

花 《かが、火凛。聞こえてるかっ?》
火「うわっ、花宮先輩!?」

突如耳元で響いたイケメンボイスな怒鳴り声に驚いて、携帯を落としかける。

すっかり忘れてた。
………なにかあったときようにって、ポケットに携帯を入れてたんだった。

そもそもあの「悪童」まるだしの“STEAL YOUR BREATH”な着信音は、わざわざ字さんに歌ってもらって、高校時代にいれたものだ。
あんな悪質な歌詞の着メロは花宮さん専用だったというのに。
電話イコールでるものだというのはあたりめすぎて、三日月との会話の途中だったのにきにせず電話でちゃったじゃないか。

花 《おい火凛、無事か?いや、無事だな。どうせ検非違使とやりあってんだろお前》
火「さすが超直感。大正解っす」
花 《ったく。しょうがねぇーな。いいか!そこから動くな!いまゲートを繋ぐ》


俺が花宮さんとのんきに電話している間にも・・・。
あっさり三日月が敵を倒していました。

その後、花宮さんを持っている間、三日月に現在地がどこなのか尋ねたら、【厚樫山】という単語が。

はは。
道理で苦戦するし、三日月宗近がいるはずだわ。







* * * * *







あのヤバイやつとの遭遇後、しばらくして目の前にゲートがひらく。
開いた先は、桃色で、GATEをくぐれば相変わらず桜の吹雪が視界に溢れかえる。
安心安全を約束された字さんの本丸です。

火(今日ほど字さんの本丸だと認識できて感動するとはっ)

火「やっと帰ってこれたっっ!」
月「ふむ、これが審神者の本丸というものか。
膝まで浸かる桜の海など初めて見たことないぞ」
火「いや今日はまだ量がすくないほ・・・」

ん?


火「なんで三日月がぁ!?」


GATEが閉じた後。
ふりかえれば何故か、俺の隣には綺麗な笑みを浮かべた三日月宗近(厚樫山産)がいた。

月「はっはっはっ、面白いことを言うな。そなた先程、俺を拾ったであろう?」
火「拾っ?!え?」
月「拾われてやったぞ」
火「oh……」

つぅか、俺、ただの見習いっす。

ってことはあれか。
字さんとこのツキーズのせいかレア感ねぇぇぇぇいや、今回ので6体目じゃねぇか?っつ!?また増えたっ!

火「どうしたらあの状況をドロップしたことになるのかっっ?!花さぁーん!!大変っす!!!」


ついてきた三日月を戻そうにもお山へのGATEはとじているし、なんか三日月が離れないし。

ぎゃぁー!!!どうしよう!?
とりあえずこの本丸の主である花宮さんを大声で呼んだ。

花『火凛、おかえ………ん?』
堀「ぶっふぉぉwwwwwと、とううとう火凛ちゃんまで三日月連れてきたーーー!!」
火「いや、連れてきたというか付いてきた」
月「うむ。“憑いて”きたとも言うな」
火「ナニソノ表現コワイ」
切「むしろ俺は火凛殿が厚樫山にいって五体満足で帰ってこれたことを疑問に思う。あんた、本当に人間か?刀剣男士じゃないんだよな?あるいは主の同族とか」
雪「・・・三日月宗近を連れて帰ってきたなんて。・・・・見習い殿まで・・。この本丸おかしい。小夜、早く来てください」
青「あ、また江雪くんの目が遠くみはじめちゃったよ。大丈夫かい雪くん?」
鶴「はは!こいつぁ驚いた。
ボロボロとはいえ、刀装やお守り無しで検非違使と当たって五体満足で帰還するとは。木刀なんて見る影もないじゃないか」

花『フハッ。勘違いすんなよお前ら。オレとてただの人間だぜ。
それにこいつは付喪神よりすごいもん憑けてるやつだから、まったく心配はしていなかったがな。
まぁ、あれだ。



――三日月お持ち帰りは想・定・外だったがなっ!!もういらねぇよ!!!



そうでしょうとも。
鍛刀するたびに4という数字を出す貴方ならば、そういうと思ってました。
そんでもって、俺つれてきてねぇっす。
憑かれただけだ!
無罪を主張する!!


狐「ああああ、火凛殿よくぞ無事で!この本丸ゲートで待てど暮らせど火凛殿が戻って来ずに厚樫山に居ると聞いて、この小狐丸、どれだけ肝を冷やしたか!」
火「あ、うん。すごくまっとうな反応thank youな小狐丸。護衛役なのに悪かった」

月2「あなや……新たな俺をまさか拾って帰るとは」
月1「火凛よくやったぞ!!」
月5「昨日の鍛刀で4の数字で水をかけたばかりだというのに・・・ああ、俺なんかふやして経費が…」

堀「ぶwwヤバイwwwチカさんだけ喜んでるwwwwwwwwすごいガッツポーズだwww」
伏「チカ殿は同族が来たから喜んでおるのではないと思うぞ。この本丸に新たな仲間が加わるのが嬉しいのであろうな」
月1「うむ!新たな仲間は何年ぶりだ?ああ、まずは名はなんとするか?六番目の三日月(俺)ゆえ、“六(ロク)”か“六(むつ)”とかはどうだ?むつ・・・ふむ。“睦”でもよいな。だが、しっくすなどという英数字では収まりが悪い」

火「・・・・・・ここにめちゃくちゃ審神者のネーミングセンスのなさを受け継いじゃった刀剣がいるんだけど!!!」





そんなこんなで。
出迎えられた三日月宗近(六と命名された)。

なのだが―――

火「えっと、六(むつ)?なんで花さんじゃなく俺のところばかりくっついて回るんだ?」

ここの本丸の主は、字さんなのに。
何故か、俺の傍から離れない。
ここの刀剣男士たちは、花宮さんと始終くっついてる訳でないけど、比較的主の側にいることが多い。
そういうもんだと思ってたけど、なぜに俺にくっついてるんだこの三日月は!

流石に不思議に思って当人に聞けば、三日月(六)は目をパチクリさせて小首を傾げる。

月6「おかしなことをきくな。主の側に居て補佐するのが近侍の務めであろう」
火「what?は?主って誰が?」







* * * * *







不穏な単語が聞こえたので、政府の役人を一人召喚した。

やってきたのは、これまたサングラスに黒スーツをピシっときこなしたどこにでもいそうなサラリーマン風の中年男。
ごめん。語弊があった。
なんかゆるい感じにくたびれきったようなスーツを着ているおっさんだった。
ボサっとした白髪交じりの髪の毛に、ぶしょうひげちょびちょびっと残ってる。
本当にどこにでもいそうなくたびれきったサラリーマンのような雰囲気の人だ。
ただし、政府の役人というだけあって、顔を隠すためなのか俺のドリフな担当さんと同じくサングラスをかけているが。

花『こちら俺の担当。レイヴンさんだ』
火「あ!わかる!そんな感じ!!TOVのレイヴンそっくり!」
花担「誤解です。黒井です。鴉ではありませんし、そのゲーム花さん知らないようですよ」

いわれてみると、たしかに花さんの担当さんはレイヴンによく似ていた。雰囲気が。
だが、当の字さんはTOVをしらないようで、首をかしげていた。
ならレイヴンって名前はどこからきたんだ!?また字さんのネーミングセンスがおかしな連想ゲームをして積んがったのか。

花担「花さんのネーミングセンスは、この本丸の刀剣出しの皆さんにも影響を与えていて。
もう一度言いますが、自分は黒井です。
ちなみに火凛さんの担当さんは赤井さんというコードネームですよ」

堀「黒に、赤って。わぁもしかして戦隊ヒーロなのかな?」
兼「黒井さんと初めて会った当時、主の横に鶴さんがいたのがダメだったなー。鶴丸から連想したのか。黒から連結して鴉。それでレイヴン…おかげで主のネーミングセンスのなさがさく裂して、それで主の中では担当さんの名前が定着してるからなwww」
花担「平成○○年代出身の審神者につく担当者は、色がコードネームに使われているんですよ。
青井さんに緑井さん、桃井さん、黄井さん、ちなみに我々のリーダーは灰井とかいてグレイさんですねぇ。目が大きくて、灰色のひとです」

火「・・・え?」
花担「グレイさんですよぉ〜」
火「エ、エイリ」
花担「エイリアンではありませんよ。グレイさんです。れっきとした人間だねぇ」

いい感じで区切って、もち上げて、人の言動を操り、リアクションをとらせるのが得意だ。
この政府の役人、あの花宮字の担当である。
普通であるわけがなかった。

兼「黒井のおっさんwwwwwあんた、言葉遊びやめろよwww」
堀「そうだよwww火凛ちゃんが呆然としてるwwwwwww」
明「きまじめなツッコミに見せかけておちょくるとか、酷いおひとやわぁ〜」
鶴「はは。気をつけろよ火凛。我らが担当殿は、うちの主と同等の会話をこなすおひとだ。あれはあんな凡庸なみてくれをしちゃぁいるが、相当のやり手だぜ」
堀「ふふ。あーおかしいwwwでもうちの見習いさんであそばないでよね担当さんwww真面目な子が逃げちゃったらどうしてくれるのさwww」

花担「刀剣様方にはばれてしまいましたか。
ああ、安心してください火凛さん。グレイさんはショタガールですよ。ロリータ系少女のような容姿なので、化粧後の彼女はそれは人形のように目が大きくて可憐という意味で言ったのですが、勘違いさせてしまったようですね」

愛「勘違いも何もあんた確信犯だろ」
蛍「愛染、しっ!こっちまで飛び火てきたらどうするのさ」
鶴「はは!驚くことにあのグレイという童は、うちの主同様に年齢と外見が一致しないがな!」
堀「鶴さん。それは言っちゃだめだよ。女性に年齢きくのは野暮ってものだよ」

花『おいおい鴉よ。お前、相当この本丸において恐怖の対象になってんぞ。フハッ。なんだ、オレの本丸乗っ取ろうってのか?くれてやるわけないだろうバァーカ』
花担「いやですね。いりませんよ。それに自分には霊力もありゃぁしませんしねぇ」

だから審神者にはならない。
なれない。ではなく、“ならない”。
さっきまでのやり取りを見ているに、その言葉一つにも裏がありそうで、空恐ろしくおもえてくる。

凡庸なはずのおっさんは、慣れた仕草で自分のあごひげをなで、興味深そうに俺をみやり――

担「ああ、そういえば火凛さんは、よき相棒がいらっしゃるんでしたよね。彼の名前に似ていますし、〈クロ〉と呼ぶのは抵抗があるかもしれませんね。まぁ、このコードもあってないようなものです。黒井でもいいですし、花さん同様に〈鴉〉とでもよんでくださってかまいませんよ」

火「なっ!?なんで俺の相棒の」
花『火凛、言葉遊びだ。のまれるなよ』

さすが花宮さんの担当者だ。
いままでののほほんとしただらしないスーツのおっさんが、背筋を伸ばし不敵にニヤリと笑った瞬間、その最後の時だけはなぜかさっきまでののほほんとした雰囲気は消え去り、ただ物でない雰囲気をまとっていた。

やだ。このおっさん。
言葉には必ず裏に意味があったり、チートな能力ないくせにチートになりはてる情報戦とか。
まんまアザナさんの同類って感じの人だわ。

窓際サラリーマンにみせかけて、実は・・・てきなひとだ。
本当の役職は幹部か、はたまた御庭番か、裏では名の知れた暗殺者と言われてもあの笑顔を見た後なら、こいつならやりかねないと納得できてしまう。
そういう隠密行動以外にも情報の攪乱や操作とかこのひと余裕でこなしてそうだ。
お前はシュヴァーンか。と思わず突っ込みたくなった。

鶴丸の言うとおり、こいつできる。かなりのやり手だということがよく分かった。


な〜んて緊張していたのも一瞬で、すぐにヘラリと笑うと、ボサボサの髪をかきつつ、おっさん担当さんは、「それで?どうして自分は呼ばれたんです?」と首をかしげた。
彼から一気にやる気のなさいださいおっさん臭がただよう。
ほにゃ〜っとした緩い笑みは、敵なんて何もありませんとばかりに無害そうだ。
別人すぎる。

花『火凛が、刀剣を連れてきた』
花担「んん?ですが火凛さん、見習いですよね?」

現在の制度では、審神者見習いは初期刀を五振りからえらぶことはない。
見習いは、本丸をもつまえに、卒業試験と同時に刀を一振り鍛刀鍛刀する。それが初期刀となる。
だがそれを研修先につれていくことは禁止されているため、見習いが鍛刀をするのは、研修後だ。
俺のような見習いが、本当の意味で己の刀剣を手に入れるのは、学校の卒業試験。本丸への就任が決まった者のみとなる。
これは花宮さんによる時の政府の改革にもとづくルールで、五振りから選ぶことによる様々な弊害を考慮して、最初から一振りとは傍にいることが義務付けられた。
長く共同生活することで、人間としての暮らし方を刀剣は学び、ひとは刀剣男士といることになれるためだ。
なお、研修先に、見習いの刀剣を連れていくことはできない。
これは刀剣をつれていくと研修先でもめ事が起きたり、あとで自分の本丸を得た時に刀剣と不仲になったりと問題が起きたことがあるらしい。
そのためのルールだった。

だが、俺の場合は・・・

花『ゲートの故障が原因だ』
火「買い物にでかけたとき、GATEの異常で厚樫山にとばされたんだ。だぜ、です」
花担「ああ、別に敬語抜きでいいですよ。
そうですか、厚樫山に。よく無事でしたね」
火「ええ、まぁなんとか三日月がかばってくr」
花担「ペルソナでしたっけ?あれのおかげですね。よかったですねぇ火凛さん」

火「・・・・・・」

なんなのこの担当。
何でも知ってますよ的な雰囲気は!!
桃井さつきよりこぇよ!
雰囲気が緩いおっさんなのに、言葉の隅々に漂う“やればできる子なんですおっさんは”な感じのデキスギル感がこわすぎる。

花『用件わかってるなら話が早い。みてやってくれ』

もういろいろ俺について知っているらしい担当さんは、「そうだねぇ」とホヤホヤ笑うと、桜こんのすけと六番目の三日月を呼び出し、桜こんのすけに指示をだしパソコンの機材やら様々な装置をつなげていく。


花担「これは・・・」

蛍「結果でたのー?」
明「雪はんみたいな状況なん?」
愛「なんでそこで雪?」
堀「あれ?愛染くんしらなかった?江雪さんは、うちの主と契約を交わしてないあずかりっこでね。本当の主が別にいるんだよ」
兼「筋肉隆隆でとにかくあつくるしいマッチョの軍団をひとりでおさえこむほどの、それはもうムキムキの筋肉馬鹿の審神者がなwww」
雪「・・・あそこには帰りたくない。
筋肉はもういやです。プロテインなんか、まっちょなんて・・・筋肉つけたくない」
岩「切実だなぁ。っが、筋肉は悪くないぜ」
伏「修行もいいが、掃除をお勧めする」
月1「フシよ、掃除は修行にはならぬ」
月4「おーよしよし雪よ。泣くのなら、このじじいの胸でよければかすぞ」
石「そう言って、わたしを突き出さないでください〈シイ〉」
鶯「まぁ、細かいことは気にするな。雪よ、茶でもどうだ。茶を飲めば落ち着くものだ・・・っと大包平なら言うだろうしな」
堀「気分が明るくなるように雪さんの袈裟にお花を刺繍してあげようか?パッチワークならまかせてよ!兄弟の布の花は僕が縫ったよ!」
太「おちつきなさい。途中から雪をなぐさめるにしても話がずれていますよ」

江雪左文字を慰めるはずがあれやこれやと自己主張しているうちに、なんだが話がそれている。
あずけられっこも。鍛刀の子も、ブラックからのもらわれっこも、ドロップの子も関係ないといったふうな彼ら。
この本丸の皆さんはとても仲良しのようです。
そのくらい知ってましたけどね!

自分も審神者になったら、こういう家族みたいな本丸を作るんだ。


っで、そうこうしているうちに、でた結果に、担当さんと一緒に、あのCoolな桜こんのすけでさえ、アリアリとわかるほど目を丸くして驚いている。

火「なにか問題でも?」
花担「すごいですねぇ、火凛さん。あなた、この三日月宗近と契約してますよ」

ん?
けいやく?

なんのだ?
つーか、誰がなんだって?

火「………pardon?」
花担「この三日月宗近と契約してますよ」
火「花さんの、三日月宗近6体目としてではなく?」

思わずもう一度訪ねるも首を横に振られる。

花担「ほぉらみてくださいよぉ、ここ。こんのすけが調べてくれた、刀剣男士と審神者の霊力波長供給パターンがここ。
六番目の方のパターンは、火凛さんの物と同じでしょう?
これは六番目の方が、火凛さんの刀剣男士として、貴方の霊力で生かされてる証ですよぉ」

字さんの担当者さんにみせられたモニターには、まるで心電図のような波長の波が表記されている。
そのパターンが俺と目の前でニコニコしている三日月と一致しているということは――

火「えっと・・・つまり?」
花担「つまり。もうがっつりしっかり縁が結ばれてるってことなんです」

さらには花宮先輩と刀剣男士の関係まで図式で説明された。
その図式の分離するように枠がとられ、俺と六が追加される。

え、なんで俺と三日月のところだけ異常に塗るんですか?
線の部分をグリグリと太字で書き過ぎてません?
まるで花宮先輩のまゆげのよう・・・
あ、先輩と目が合った。

花『火凛(^ ^)』
火「いえ、なんでもないっす!

その間も担当さんが紙にかいてくれた、図式に謎の絵が追加されていく。
よそみをしていれば、刀剣たちがらくがきで余白を埋め始めていた。

花担「それでですね」

あ、刀剣たちの落書きはスルーするんだ。

花担「カガ、じゃなくて火凛さんの場合は、みて分かるでしょうがこの太さぐらいの縁がガッツリと結ばれてるんですね。言え、これは別に花さんの眉毛をイメージしたわけではなく。このくらいの縁という意味で・・・。
あ、もちろん。三日月様が初期刀になられたという報告はさせていただきますよぉ〜。申請しないと、審神者になって本丸行くとき連れていけないですしね。
そうそう。言い忘れてました。おめでとうございます火凛さん。これで政府は、あなたへ初期刀の支給をしないで済むことになったので、あなたを“できる見習い”と判断したことでしょう。気を付けたほうがいいですよぉう」
火「は?」
花『見習いの段階で、初っ端から三日月様をひきあてた審神者。 すなわち“霊力がある=お仕事ができるやつ”。しかも新人であるお前は、“自分の本丸がまだない”』
花担「ついでにいうと、あの政府の改革者である花宮字の本丸に見習いに行った。これはもうできるよな。・・・っと、政府は判断しているかと」
火「へ?」
花『つまりだ。どんな本丸になげこんでもこいつ大丈夫だよなって政府は思ってるわけだ。
この先お前がどこへ連れて行かれるかもわかったもんじゃないし、“新人”だからと政府があることないことお前に吹き込まないとも限らないって話だ」
花担「ですね。う〜ん、トキノセイフってなんだかんだいって、グレイ企業なんですよね〜。
ひとによって黒か白かかわるので。
三日月を初期刀になんて、この先のあなたの未来が見えるようですね〜。
政府にいいように扱われても気を落とさないに気を付けるんだよ火凛様」

堀「長く今の主と政府にかかわる仕事してるけど。見習い段階で、ってのはともかく。初鍛刀をすっ飛ばして初期刀が三日月宗近とか。さすがに初めて見るかな」
蛍「まぁ、この本丸よりましじゃない?ここに最初に来た時ほど驚いたことはないよおれ。さすがに三日月さんの他にレア刀しかいないってのもね」
鶴「はは、この本丸は驚きであふれているからな。さぞ驚いたであろうwww?」
青「たしかにね。三日月さんが5体も顕現してる時点で目を見張ったよ」
雪「たかが同じ顔が五人。その程度がなんだというのです。私のいた本丸には・・・本丸には・・・う・・筋肉ダルマなタヌキ殿と山伏殿しか・・・・・宗三か小夜に会いたい」
火「なんて筋肉な本丸!?」
明「ひゃー、やる気にあふれてそうで、いややわぁその本丸。
堪忍な花はん。自分は、なぁーんもやるきがおきんのですわ。期待したらあきまへん。特に筋肉は」
堀「ブッフォ!!!!!だれもカシさんに筋肉つけてほしいとか求めてないよwwww」
蛍「やめて国行!おれ、いまのままの国行が大好きだよ!だらけた国行のままでいいいから!マッチョはやめてぇ!!!」
伏「ふむ。人には部分相応という言葉があってだな。あ、いや、向き不向きだったか?」
山「兄弟、どっちもにたようなものだ」

火「・・・え?」
兼「まだわからないのか」
石「わからないというより混乱してるようだね」
火「え!?えっとどういう」
花『おちつけ火凛』

内心俺はパニックになっていたら、話題の六番目の三日月が近寄ってきて、俺の手を取ってにっこりと笑った。

月6「気分はどうだ主よ」
火「ある、じ?え?俺がか?」
月6「いかにも。先程から俺は、そなたを主と呼んでいように。
しかし、主には俺とは違う次元の縁も結ばれているようだな。
これが先の戦いでの《ペルソナ》とやらか。つよい式たちまでみかたにつけるとは、さすがは俺の主よの」
花『へぇ、ペルソナを認識できてるのか』
花担「え。視えるのですか?さすがは平安刀のお方ですねぇ」

火「まじか」


呆然としていると、「まじ」とはなんだ?と六に首を傾げられた。
その説明をしたあと、三日月は「さすがは俺の主。物知りだな」とカラカラと笑った。



それから。
ふいに思い出したように三日月は俺の手を放すと、一歩距離を取り――

月6「ああ、口上が遅れたな。親しき仲にも礼儀あり。まずは俺の話を聞いてはくれぬか?」

ちらりと周囲を見渡せば、他の五人の三日月たちも鶴丸もニコニコして、聞いてやれとばかりに促してくる。
これをきいたらまずい気がするが・・・。

花担「ご老人を待たせるものじゃないですよ」
花『早くしろ。今日は赤飯作ってやるから』

怖い人たちにせかされ、ついには頷くしかできなかった。
三日月はそんな俺に嬉しそうに笑いかけ――


月6「俺の名は三日月宗近。
打ち除けが多い故、三日月と呼ばれる。
まあ、天下五剣の一つにして、一番美しいともいうな。
十一世紀の末に生まれた。ようするにまぁ、じじいさ。ははは。
これからよろしく頼むぞ。



――我が主、火凛よ」



慣れた仕草で首を垂れると、ニカッとばかりに笑った。



堀「はい、三日月げっとだぜ〜wwwおめでとー火凛ちゃん!つぎはオタマロゲット頑張ってね!」
兼「ホリー、おまえというやつはwww」
花『っけ。人をなんだと思ってるんだお前らは。
そもそもオレは、あんな人面魚より進化した奴の方が好きだ』
花担「そういう問題ですかねぇ〜。カエルならニョロトノが好きですな」
火「え!?オタマロの方がかわいくねぇっすか!?あとゲッコウガ!」

どうやら俺は見習いなのに、初期刀をゲットしてしまったようです。
しかも三日月とか!?
え?いいのかこれ?
月難民にいじめられそうだ。










―――おいでませ!一番目にして六番目!?















【オマケ】

鶴「うらやましいうらやましいうらやましいうらやましいうらめしいぃ!!」(ハンカチギリィ!)

石「おやおや。鶴丸はどうしたんだい(苦笑)」
堀「あ、砌さん。実は六にあだ名をつけてるのを見た鶴さんが・・・」
石「綽名?」
堀「うん。鶴さんだけ主からかわった綽名をもらってないって。自分の呼び名はそのまんまでひねりひとつなくて愛を感じられない!普通すぎてつまらない!・・・って、すねちゃって」
鶯「とはいうが、あだなもなにもないやつらもいるぞ」
鶴「一期は拒否したからだろ!あいつらはそれでいいって言ったんだ。俺とは違う!」

火「いや、でもあの字さんだぜ!?変な名付けされるよりいいんじゃ・・?」

青「センスといえば、主の呼び方は変わっているよね。僕は普段は“青”だけど。たまに“ニコ”ってよばれるねぇ。名前のことだよ」
兼「まぁ、主は・・・前からあんなだな。あまりネーミングセンスがな。
江雪のことパッツンって呼ぶし、三日月たちの呼び方の安直さ。それに一期を苺とかベリーってよぼうとするわ。まぁ、一期の場合は斬られかかってやめてたがな(遠い目)」

鶴「それでも!!!愛称!綽名がいいんだ!!主から別の名前をもらう。それすなわち主の愛情表現っ。俺に驚きの名前を待ち望んだのにっ(;ω;)」





鶴「あるじぃーーーーーー!!たのみがあるっ!!!」



花『は?あだ名をつけてほしい?』

鶴「俺も主がつけてくれた特別名前がほしいんだ!」
花『綽名とか、今更だな』
鶴「別の審神者の三日月にはつけてたのに?俺にはないのか・・・(´・ω・`)」

花『あーじゃぁ、白いから・・・・・』





鶴「きいてくれみんな!主に新しい名をたまわったんだ!今日から俺のことは“鶴さん”ではなく〈ましまろ〉とよんでくれ!!」胸はってドォーン。



堀「鶴さんがさらにカレーとオムライスの敵に(^^)ボソリ」
兼「鶴さんってほら狂犬だし、そこから“キョウ”とか。犬っぽいから“ポチ”とか、白いから“白”とか“白丸”とか、そんな変なもんつけられるよりましじゃね?」
蛍「それ普通に選択肢の中にあったよ。俺、鶴さんがとびこんできたとき近侍で、主の横にいたんだけどさ。
キョウ、ポチ、シロ、ハク、マシロ、白丸、しろくまアイス、シチュー、ましまろ、わたあめ、雪色2号、雲、羊、大福、雪だるま。あげるときりがないんだけど、主が出した候補の中から、鶴さんが一番驚きがあって、なんか響きがかわいいからって・・・“ましまろ”を選んでたよ。 っというか主さん、なんで一瞬であそこまで白いものの謎めいた名称がでてくるの?
とりあえずさ・・・選択肢の中にまっとうなのがないんだけど!?って、思わず心の中で突っ込んだよね」
火「花さんのネーミングセンスぅ・・・orz」








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