有得 [花悲壮]
〜 W花とその後の後×名探偵コナソ 〜
03.名前と大阪と
※『』…成り代わりがいる世界側のセリフ
※「」…原作より世界側のセリフ
【 side 原作よりの花 宮 】
連休二日目の朝は、とにかく説明しろの今吉さんの一言から始まった。
なぜか、前日の夜。
別の世界のオレが遊びに来た。
今度はこっちの気温を考えてか、しっかり真冬のかっこうをしてきた向こうの世界のオレことアザナ。と思っていたら、どうやらあちらの世界も冬になったらしい。
いわく「練習試合をやって誠凛に数点差で負けました」とのこと。
ショックのあまりその敵対した高校の火神クンに、平行世界に吹っ飛ばしてもらったとか・・・いろいろおかしい。
そんなわけで二日目は、今吉さんとアザナも交えての大阪観光。
大阪ははじめてだと告げたアザナは言葉の通りそれはもう楽しげだった。
オレと同じ顔でなければ気にもならなかったんだがな。
花「オレと同じ顔でバカ笑いすんな」
今「おん・・・そっちの花 宮は、ずいぶん笑いの沸点が低いんやなぁ」
たかが吉○の芸人が一言言っただけで盛大に噴き出していた。
さすがの今吉さんもひいていたほどだ。
道端の芸人さんもびっくりだ。
字『あはははは!!みろよマコ!!伊月クン以上のきれっぷりだ!』
今「ほんばやからなーここ。伊月って・・・たしか誠凛やったか?ふとんが吹っ飛んだ〜みたいな寒いダジャレ連発してるいう?え?そっちの花宮ってそれで笑えるん?なにそれ!?もしかして花宮が花見に行ったでも笑えるん!?」
字『ブッフォッ!!!!!!』
花「・・・笑えるみたいだな」
今「まじか」
花「きょうに、向こうの宮地さんがアザナは精神年齢が高いって言ってたけど。あれは嘘か?」
字『ああ、腹いたい。久しぶりに笑った。いやだって常識的に考えて笑いたいときにわらってると高尾みたいでうるさいって言われるのわかってるからな。普通は無理だろ。
それにいまはマコと今吉さんしかいないから、まぁたまにははめをはずしてもいいかと』
花「はずすなバカ。お前はただでさえ常識はずれなんだよ。そこから常識を外したら人災という言葉しか残らないからな」
今「っぷ!じ、人災って、花 宮ぁ〜、自分、なんであっちの花宮に業(ごう)わくってんや」
花「いや、オレが腹立ってんのはあんたの寒いギャグにだから」
*業(ごう)わく=腹立つ
同じ顔で爆笑されてる時点で、アザナの側にいるのが恥ずかしいのに。
だからむりやり引っ張って脇道へと入ったのだが、今度は今吉さんがボケ始めた。
今吉さんはの方言には字が不思議そうな顔をしていたけど、勘のいいあいつのことだ。どうやらすぐにニュアンスで察したらしい。
今「のうはなみゃぁー」
字花『「どっちをさしてんだよ」』
ってか、みゃーってなんだ。
字『今吉さんがボケても面白くないです。ボケていいのは芸人さんと伊月君だけです』
今「い、言うなぁ〜そっちの花 宮」
花「もういいですから今吉さん。どっちがどっちかわかりずらいから少し黙っていて下さい」
字花『「てかウザイ」』
そうしているうちにオレと字が同時に言葉を発し、顔を見合わせる。
視線で問えば、あいつも同じことを思っていたようだとわかる。
そんなオレたちに「ほんま双子みたいやなぁ」と笑うと今吉さんが、頭に手を伸ばしてオレたち二人を一緒くたに撫でようとしてきた。
っが、オレはさっと頭をそらして今吉さんの右手を回避し、アザナは一歩後退することで今吉さんから延びる左手を盛大にかわした。
今「ひ、ひどいわふたりとも〜」
花「なんのことですか」
今「向こうの宮地にはええんやろ!?」
字花『「だって清兄だし」』
今「なんやねんそれ!理不尽!」
なんか今吉さんががっかりしたようにブツブツ言っていたけど。
だってなぁ。なぁ、アザナ。
アザナからも賛同の意がこめられた視線が返される。
字花『「今吉さんに撫でられるんのはなんか嫌だ」』
キョー兄こと清志さんにならなんか許せる。そんななにかがあの人にはあるが、目の前の妖怪サトリにはない。つまり触られるとかまじで無理だ。
今「はぁ〜ならワシが勝手に呼び名をつけても文句は」
字花『「名前で呼ぶな」』
今「・・・・じゃぁどないしろと!?」
いや、だってなぁ。
うん。と横でアザナにも頷かれる。
理由ありの霧崎の仲間たちやキョー兄とは違って、あの今吉さんだぞ。
なんか、その呼び名にいたずら心を加えられそうで。可愛く可笑しく“ちゃん”付けとかもありそう。
三渕ならまだ許せるのは、あいつが“彼”ではなく“彼女”だからだろう。
今吉さんに呼ばれると、なんというのかな。もてあそばれた女の気分?
今「なんやねんそれ。ワシってどう思われてるん」
花「心を読まないで下さい」
字『うわ。まじで今吉さん超直感あるんじゃないのか?なるほど。これがマコが言っていた本場の妖怪サトリか』
たしかにそうアザナに教えたのはオレだが、アザナもわかってて言ってんじゃないのか?
まぁ、向こうの世界のオレだし。
しかたない。のか?
今「・・・なぁ、わし、もう帰ってもええ?」
字花『「え。いつ帰ってくれるんですか!?」』
今「そない嬉しそうにえげつないこと言わんといてや!」
字『えげつない?そこまでの発言したか?』
花「方言だ。東京風にいうなら“ひどいこというな!”か」
今「なんや、そっちの花 宮は、あっちのわしと接点ないん?」
字『いや、オレも今吉先輩の後輩です。ただし清兄も同中です。あっちの今吉さんはずっと関東育ちでした。親戚が関西にいてその方言がうつったから、正規の方言ではないらしいです』
今「へぇーそらおもろいな」
花「並行世界なんですが、微妙にあちらとこちらに差があるんですよ。
たとえば宮地家が一人っ子だとか、宮地家と花宮家がご近所さんだったり。
花宮一家全員健在とか。花宮家から霧崎までかなり近いとか」
字『そこは選択肢の違いだろ。しょせん並行世界なんて"分岐"した世界だからな。違いはいくらあってもおかしくない』
世界事の差異も大した事はないのだと字は断言する。
字にそう言われるとそういうもんかと、今吉さんも納得してしまうから不思議だ。
ただこれは自分たちが知りえない"世界"という規模における事象をおしはかるには範囲が大きすぎ自分たちで判断できなかったから、異世界について自分たちより詳しそうな字がそう言うならと、流れで信じたところはある。
字『まぁ、妖怪と言えば京都。だから妖怪サトリの出身地がこの世界では関西でもおかしくはない。離れがたいなにかがこの地にあるんじゃないか?』
花「へーいいこと言うじゃんアザナ。とはいえ、ここは大阪だがな」
今「ワシ妖怪ちゃうわ!!!傷つくで。ワシ、こないに後輩思いなんに」
花「後輩想いとか。自分で言うところがダメなんだろ」
字『フハッ。わざと煽るのもほどほどにしといと方がいいぜ。ま、あんたはそれでも人に好かれるだろうがな』
花「ちっ。字の予言かよ。よかったですねー先輩。こいつの言うことはかなりの確率であたるんで、オレ以外の可愛い後輩には嫌われてないようですよ」
今「ほんまに花宮は素直じゃあらへんな」
花「だからどっちの花 宮ですか?」
今「ああ、もう!
名前で呼ばれたないんやったら、こっちの花 宮はこのまま花 宮で。
向こうの花 宮は、こっちの花 宮より小さいから“ちー宮”や!もう変更はきかんから!」
花字「『まぁ、それなら』」
今「ええんかい!!?」
そんなこんなで二日目。
大阪観光中。
バカがひとり消えた。