有得 [花悲壮]
++ 二人の花 宮と・その後 ++
02.ごめん、つづいたwww
※『』…成り代わりがいる世界側のセリフ
※「」…原作より世界側のセリフ
花「きよしさん、アザナさん・・・」
清『どうしたマコト?』
字『マコがオレにまで“さん”付けとか!?なんかあった!?なら、はっきり言ってくれ!オレはマコの言葉は聞くぞ』
花「・・・なら、ハッキリ言わせてもらうが」
花「
なんでお前らがこっちにいるんだ!!!!!
異世界ってそう簡単に超えられるのかよ!?超えられたとしても超えてくんなっ!!自分の次元から出てくるなっ!!」
っていうか、お前らいつまでいるんだ!!!
とっととひきとりにこい火神ぃーーーーーーーー!!!!
と、いうことがあった。
【 side 原作よりの花 宮 】
花「おまえはなにがしたいんだ」
字『・・・なにも。なにかしたかったわけじゃないんだが』
清『不運だなぁ〜www』
花「もうやだ。オレ、この電車に乗れない」
字『オレ・・・彼女になにかしたかな?顏赤くしてたよ。怒ったのかなぁ?』
花「アザナ、おまえは被害者の女じゃなくて、オレにわびろよ!」
《向こうの世界》から遊びに来たもうひとりのオレである「アザナ」が、部活の練習風景が見たいと言った。
どこも同じだろと言ったのだが、《向こうの宮地清志》こと「キョー兄」になだめすかされ、つい軽い気持ちで許可を出してしまったのがいけなかった。
――それは電車での移動中。
字の不幸体質が派手に発動した。
電車が止まる?そっちの方が百倍増しだ。
あいつの不幸が、オレに半分ふりかかったのだ。
電車は休日ということもあり、昼間だというのにいつもより混み合っていた。
そこでアザナが痴漢に間違われた。
ついでに言うと痴漢にあったのはちょっとかわいい感じの女子高生と・・・・・・・・オレだ。
まず並び順だが、電車の進行方向を左手に、左から女子高生・オレ・字の順である。俺はレギュラーはってる最近のバスケ選手どもに比べれば若干身長は低いが――いいか!若干だからな!若干だ!――179cmもあるわけで、平均日本男児よりは少しでかい。
そのため電車のつり革ごとゆれるわっかをつかむには腕の高さがじみにきつい。
なのでつり革をぶるさげているポールのほうにつかまってオレは立っていた。
なお、きょー兄や火神ぐらいばかでかいとそのポールさえきついらしくでかいやつらは連結付近や扉付近に寄り掛かっていることが多い。
字は「これがちょうどいいんだ」とふざけたことをぬかしつつ、ポールをもつ「俺の右腕」をわっかの代わりにつかんで立っている。この無精もんめが。自分の高さにあった場所に行けよと思ったが、混雑している中ではしょうがない。体感のいいオレに感謝しろよと、空いている方の左手でチョップをくらわしておく。それによってやつのアホ毛がばいぃんとゆれた。やめろアホ毛め!はねかえってオレをたたくんじゃない!じみにいてぇわこのアホ毛!オレのアホ毛のほうがまだ威力は弱いぞ。
その後、電車内ではさすがの字も静かだったので、そのまま右腕に字をぶらさげたまま、前にもってきていたボディバッグから小説を取り出し、空いている左手で本をさせつつ読み進めていく。
おいこら字、オレの本だのぞくんじゃねぇ。アホ毛がくすぐったいんだよ。じゃまくせー。おまえ片手空いてるなら、オレの代わりにページめくれよ。字をおしやりながら本を読むのは若干大変だった。
そんな無言のやり取りをしつつ、しばらくして・・・
最初は鞄か何かが当たっているだけかと思った。
のだが、はっきりとけつをさわられ、なぜられ、背筋がゾワリときた。
怒りのままに背後にいるであろう犯人を死ぬほど後悔するように徹底的に精神ごとたたき潰してやろうとしたら、オレの右横にいたアザナが動いた。
止める間もなかった。
花「まてアザ」
「このひとです!このひと痴漢です!!!」
花字「『え』」
突如響いた声。
犯人と思われる男の腕をつかもうとした――そのアザナの手を女子高生がとらえて、悲鳴を上げたのだ。
字『まじかよ』
花「・・・アザナ。おまえ、同じ顔の奴襲ってたのしかったか?」
字『バーカんなわけねーだろ。ってか、なんでオレが痴漢容疑かけられてんだよ。なに?彼女もやられたのか?』
花「みたいだな」
思わずお前が痴漢だったのかと、アザナを凝視してしまう。
こいつさっきまで、あの女子高生とはオレをはさんでたんだよなぁ。手、届くか?そもそもこいつ、両手が塞がった俺の代わりに本のページをめくっていたが…。
いや、疑ってるわけではなく、冤罪をどう晴らすか考えてるだけだからな。
それにしても。ぐっ。アホ毛がピョンピョンはねていてくすぐったい。なんて邪魔なハネ癖だ。
ハネ毛を無理やり押さえつけるように頭を押さえれば、呆然としていたアザナもオレの視線に気づき、オレよりちょっと下にあるアザナの視線とあう。
頭から手を離せば、ハネ毛がピョンとはねる。そのままアザナは「有り得ない」とばかりに首を横にふる。あ、また一か所ハネた。くそっ、なんて強情な毛だ。
「え。同じ顔・・・双子!?」
そこでようやくアザナの腕をつかんでいた彼女が、アザナと彼女の横にいたオレの存在に気付いたらしい。
女子高生はオレとアザナを交互に見て顔を赤くしている。
勘違いに気付いた・・・というわけではなく、人の顔見て見惚れていると言ったところか。
アザナは、そういう人の顏とか判断できないらしいから、彼女の表情に興味をしめすこともなく、つかまれた腕を所在なさげにみているだけだ。
花「わるいけど、そいつ離してくれるかな?そいつなら、さっきまでオレの右側で、オレによりかかっていたから、君まで手は届かないよ。むしろ犯人を捕まえようとしてただけだし」
字『オレじゃない。マコの両手が塞がってたからかわりに犯人捕まえようとしただけだし』
両手が塞がってた原因の半分はお前だがな。
アザナに関しては、混みあった身体をひねって移動しようとしたおかげで目立ったせいで、あいつが腕をつかまれるまでどこで何をしていたか目撃証人が数人出た。
あと字がつかんでいた俺の腕にくっきり字の手痕がついているのもついでに見せて証拠を確実なものにする。
ちょうどオレたちの前に座っていた方も俺たちが並んで立っていたと証言してくれた。
これにより、アザナは解放され、女子高生が先程とは違う意味で顔を真っ赤にして、謝罪してきた。
この騒動で、とりあえずよかったのは、周囲のみなさんの視点がオレにむくことはなく、オレが痴漢にあったことはばれずにすんだようでほっとする。
男臭くない顔立ちだとはよく言われるが、私服だからとコレはない。
襲うならまずオレより童顔っぽいアザナを襲えってんだクソが。
いや、ぶっちゃけオレと同じ顔のやつを襲っては欲しくはないが。
何をみて人のケツを選びやがった?オレはこれでも179cmはあるんだぞ。普通の平均よりは高いわボケが。
アザナは低いがな。
もしかしてあいつの方が身長低いから人ごみに埋もれて、誠凛の11番のごとく影が薄くなって見えなかったとか?だから気づかれずオレが被害にあった‥とか?なんて理不尽。
・・・・・・ッチ。くそが。
なんにせよ犯罪者はガラクタにすべし。
天才だろうが詐欺師だろうが、関係ねぇな。
馬鹿な女は嫌いじゃないが、屑はだめだ。特に男の屑はもっとダメだ。
人間の屑は死んで詫びろ。
内心ギリリと歯をかみしめるほどいらだってはいるが、せいぜい社会的地位の抹殺で堪忍してやろうと、本当の犯人を捜す。
被害者をもう出さないため?善意?どちらもちがうね。
奴をつぶさないと気が済まないんだよ"オレ"が。
顏はみていないからわからない。でもこの騒動できっと犯人は動くハズ。
周囲の顔をあらかた把握する。視線の動きがおかしい奴の顔は要チェックだ。
それにアザナが犯人をきっと覚えてる。
たぶん。
花「アザナ、犯人のことはみたか?」
字『みたことはみた。掌の生命線が長かった。あとエロ線がくっきりあった』
女子高生「・・・・・・」
周囲「「「・・・・・・」」」
花「・・・・・それだけか?」
字『顏はみてないぞ』
花「先にそれを言わんか!!」
思わずいつものように漫才のような展開になってしまった。だけどそれもまたわざとだろう。
実際、アザナの視線が微かに何かを追うように動いていた。
そこでふとアザナの動きが扉付近で止まる。
視線の先にはすっかり慣れた蜂蜜色の髪。
キョー兄に、アザナがなにか合図を送ったのだろう。
誤認逮捕へつながりかけた被害者の女子高生は、ごめんなさいという謝罪と共に、そこらへんはアザナがうまく流していた。彼女は被害者だ。その彼女に対して周囲がいちゃもんをつけたり、変なまなざしがをむかないようにと、乗客の感情を違う方向に向かうようにうまく誘導していた。
同時にアザナが騒ぎを大きくしてくれたおかげで、オレが女子高生と同じ被害者だと思われずにすんだのは心の底から感謝した。
そうこうしているうちにようやく駅に着いた。
雪崩のように人が出口へと押し流されていく。
人混みがホームへとでたところで、一人の男に待ったの声がかかる。
清『ああ、おっさんはちょいまち』
「え」
自分とアザナが無条件で信頼する人物の声。
聞こえたそれに思わず振り向けば、ホームにハニーフェイスの蜂蜜色の長身がいた。
キョー兄だ。
キョー兄の手が、一人の男の腕をがっちりつかんでいるのを見て、アザナが声を上げる。
字『あ!きょー兄!そいつだ!そいつ!逃がすなよ』
花「キョー兄、オレがいくまでつかまえといてくれ!オレが徹底的に潰す」
混雑のせいでいったん社内の奥川に押されてしまったが、このままだとキョー兄だけこの駅においてけぼりになってしまう。オレとアザナはあわててしまりかけの扉を潜り抜けて、ホームに降り立つ。
悪を許せない、正義のヒーロー・・・・・あの顔でそれはないな。
キョー兄は、相変わらず物騒な顔をしていて、背後に般若がいる。
絶対悪が本当に悪なのかなんて思ってない。困っている人がいたから無条件に助けたわけではない。ただ身内に甘いだけで、すべての人類を守りたいとか思うようなひとではない。
花(だから“向こうの宮地さん”は嫌いになれねぇんだけどな)
ぶっちゃけ、会ったことないから、こっちの宮地さんはわからないがな。
清『なぁ、おっさん』
キョー兄って童顔だけど、それで優しげに見えるってことは絶対にない。なにせかもしだす雰囲気が尋常じゃないことに加えて、身長が190cmあるから、でかいぶん迫力がある。
そのぶん威圧感がそうとうだろう。
案の定、犯人らしき男が振り返って相手を見てすくみ上っている。
「ひぃ!?ど、どけ!おれはいそがしんだよ!」
窮鼠猫をかむ。といったところだろうか、キョー兄におびえてはいるものの、それでも逃れようと懸命にばたついている。
もちろん現役バスケ部のレギュラーでがたいのいいキョー兄が、そう簡単に腕を離すわけもないのだが。
「な、なんだ君は!おれは仕事が!」
清『だまれ!パイナップル投げんぞ?』
花「ないからな」
「っ!さっきの双子!?」
キョー兄のもとにおいついたオレたちを見て、男の表情が変わる。
男のハッとしたようなそれをみて、キョー兄の眉がさらに吊り上る。
清『やっぱりお前か!この痴漢やろう!アザナのバカにするならともかくマコトに手をだすとか』
花「ん?」
字『あ、もしかしてやばい・・かも?』
清『うちの弟どもが美人だからって手をだすなんてよぉ。ええ?そんでただで逃げようとか・・・刺されてねぇのか?あ゛あ゛?轢くぞ』
「ひっ!?」
字『あちゃー』
花「ちょ!?キョー兄!?何言ってんだよ!!アザナがぼかしてたのにぃ!!!」
清『うっせぇだまってろ被害者は!
おい、きいてんのかおっさん!うちのマコトになにしてくれてんだっってんだよ!!
てっめぇ。次やったら、そのくそ汚ねぇ手ぇちぎって埋めるぞ。××××して××××さらして×××××したあげく、海に放り投げてやろうか?俺の身内に手ぇだすなら容赦しねぇからな。あいつらに触りたければ俺の屍をこえていけ!!!』
花「おい!そこのブラコンやめろよっ!あんたはヤクザか!!!」
清『誰がヤクザだ!つか、アザナはいいんだよ!からまれんのにはなれてる!』
字『へえーキョー兄も言うねぇ。事実だけど。
そうだなぁ、オレならその場でひねりつぶすから大丈夫ってことかな。間違ってないな。
フハッ。にしても、マコトにからむとはな。よほど社会からおさらばしたいと見える。
そうそう、社会的地位と物理的にと精神的、ああ、それともその"不要なもの"をどうやって潰すか一緒に考えようか?うん?(ニコリ)』
花「お、おまえらいいかげんにしろ!!」
すでに電車はもうさってしまったからいいとして。
せっかくアザナがごまかしてくれたのに、痴漢だ。マコトに手を出した。などなどキョー兄が大声で言うものだから、“マコト”と呼ばれているオレにいっせいに視線が向けられる。
しかもこっちをみるなり納得したように、同情のまなざしを向けてくる周囲って・・・。
絶対おまえらなにか勘違いしてるだろ!
同情もするな!そしてその目をやめろ!!!!
オレはいたたまれなくなって視線をそらす。たぶん耳まで赤くなってる自信がある。
あーくそ!恥ずかしい。
もうやだ。
そうこうしている間も、キョー兄が怒気まみれの笑顔で痴漢を脅している。
言葉は物騒だし、本当に実行しそうな雰囲気を出しているけど、それらの物騒な発言が実現されたことがないのを知るのは、オレとアザナぐらいなもので、そんなことさえ知らない相手さんは、雰囲気におそれおののき顔色を蒼くしてガタガタ震えている。
その横では、アザナがお得意の超直感で、痴漢やろうの素性を暴き、あげくいい笑顔で耳元で何かささやいている。
痴漢にあったとか、オレの精神も死んだけど。
あの痴漢やろうも死んだな(精神的に)。
それからすぐに痴漢はかけつけてきた駅員と警官に引き渡され、あのまま電車に揺られていったのかすでにホームを去ったのかわからないあの被害者の女子高生・・・ではなく、やっぱりオレが被害者って扱いで、駅員さんにも物凄い同情のまなざしを向けられ「気を付けてお帰りください」「きおちしないようにね」などと見送られた。
ぶっちゃけその間中、オレは顔をしたにうつむけたままだった。むしろキョー兄の背中に張り付いて顔を隠すのに必死だった。なにこの羞恥プレイ。死ぬ。
応対はすべてアザナとキョー兄がやった。
普段だったら、痴漢にあうなんてことないのに。普段だったら、キョー兄の立ち位置がオレの位置なのに。
捕まえた痴漢痴漢やろうを言葉で徹底的に精神ダメージを与えて堕ちる瞬間の歪んだ顔を楽しみつつ拝んでやるのに。駅員や周囲に絶対にばれないような猫をかぶるぐらいはしたのに。
キョー兄たちがばらさなければオレはいまこんないたまれない思いをしないで済んだのに。
清『まぁまぁ。おちつけって』
花「バァーカ。キョー兄のバーカバーカ。これが落ち着いていられるかよ。もうマジ羞恥地獄。死にたい」
清『あー・・・お前のこと言っちまって悪かたって。
とりあえずマコトはあれだ。霧崎のやつらに笑われても次からは一緒に下校しろよ』
字『きょー兄のせいだけどな』
花「いや、間違いなくお前の不幸体質に半分巻き込まれてるからなオレ!?・・・キョー兄ぃ。オレもうやだ。いっそ自転車で通学しようかな」
清『馬鹿。おまえんち“向こうの”おれらの家より学校が遠いいだろ。自転車なんか無理だって』
花「穴があったら入りたい。そのまま誰か埋めてくれ」
* * * * * *
瀬「遅かったね」
山「てめぇらしっかりやれよ!真がきたらどうするって。言ってるうちにきたし!?」
古「ロジャーさんはアザナさんのところにいなくていいのか?」
原「あ、真だ!まこぉーとぉー!ザキがいじめる・・・って、あれ?なんかやつれてない?」
花「聞くな」
ようやく学校までたどりついたときには、もうオレのメンタルはやばいことになっていた。
もう下の下の方に位置して、なんとかメンタル値が消えかけるのを防いでいた感じだ。
なぜならなら、向こうの世界のオレの存在が原因である。
向こうの世界のオレこと花 宮字は、ぞくにいう不幸体質である。
それはオレとアザナがある事件が原因で入れ替わった時に、嫌というほど実感させられ、味合わされたので、オレが一番あいつの不幸体質についてはわかっていると断言できる。
自分にとって不幸だと思うようなことがおきれば、周囲でなにかしらラッキーフラグがたつという・・・はっきりいって自分にはメリットはどこにもない、ものである。
秀徳にいるキセキの世代の緑間は、おは朝のラッキーアイテムを持てば不幸に合わないらしいので、それを思えばあちらの方がまだかわいげがあるというもの。
っでだ。
アザナの“それ”は、もちろんこの世界でも有効で。
その不幸が同じ存在であるせいか、あるいは周囲も巻き込むタイプの不幸体質だからか、異常なまでにオレにまで不幸が舞い降りていた。
来る最中の電車での痴漢騒動もその一つだろう。
――あの電車の時ほど、死にたいと思ったことはない。
女子高生の名誉と次の被害者がでないというラッキーをもたらすかわりに、オレは痴漢の被害者にされてるし、アザナは犯人扱いされるしまつ。(ああ、なんて地味に嫌な不幸だ。
クソやろうがっ!あとでやつの証拠集めて社会的地位をはく奪してやる!!そもそもあそこでこっちの素性を聞かれたら、アザナとキョー兄をなんと言ってごまかせばいいんだ!・・・ああ、やっぱ犯人クソだな。あいつが全部悪い)
他にも階段の下で、アザナがこけた。オレはそのたおれたアザナにつまずき、しりもちをついた。その直後・・・頭上から悲鳴が聞こえて、二人そろって何事だと見上げれば、階段から転がり落ちつつ人がふってきた。そのひとが無事なかわりに、オレとアザナはマットがわりに踏みつぶされた。
(転落した人を受け止めた青年として拍手をいただいた。勇気ある青年!とか、ナニソレうぜぇ。まじで地面に落ちればよかったのに。そしたらいい顏がみれたのに)
不幸が重なったあげく、あまりの憂鬱さに、自販機で飲み物を買おうとすれば、コーヒーだけ全部売り切れだった。
ちなみに気付いたのが金を入れた後で、返却用のボタンを押してもおつりがありませんと表記された。しかもなぜか千円は戻ってこない。(クソ!!オレの千円返せよ!!とおもってたら)それをみて横からヒョイとキョー兄が、つづいてアザナまでスポーツドリンクやらアイスココアやらのボタンを押してしまう。
清『ごちそーさん』
字『あとで返す。ん?って、やべ。ボタン押し間違った』
ココアは望みの物ではなかったらしく、キョー兄がスポドリと交換していた。
しかたないからオレも買ったけどな!!!しかもそのあと当たりが続いた。その結果、部員全員分のあたりがでて、その分をもってくことになったけどな!めちゃくちゃ重ぇーよ!!これもあれもおつりがなかったのがいけない!!
(体育館についたときはそこにいた奴らにめっちゃ喜ばれたがしるか!あとでキョー兄とアザナからふんだくってやる!)
腕にはいりきらない量(持てても重すぎて全部は運べない)の飲料を前に、近くのコンビニにアザナが菓子とビニール袋を買いに行った。
そうしたら土砂降りの雨が降ってきて、十分たってもやまないのでスコールじゃないのかと溜息をついて、しかたなく菓子の他に傘も買った。ら、やはりただの通り雨だったようで、傘をさしたら晴れた。
チラリと背後のレジをみれば、店員はそれは素敵な笑顔で「お買い上げありがとうございました」と返された。返品はできなかった。
っで、しばらく荷物を掲げて歩いていれば、アザナが飲み物の重さに耐え切れずよろけ、そのままかたむき頭をそばの電柱にぶつけていた。
その衝撃で電柱に乗っていたものがふってきて、オレの頭を直撃した。
ふってきたのは、一匹の子猫。猫は頭を押さえてうずくまっているアザナにすり寄っている。(オレだって頭を押さえてうずくまっているのに、なぜそっちにばかりいく!?オレも触りたかった)
そこへかけつけてきたのは飼い主だという近所の家の女の子。登ったはいいがおりれなくなっていたという。(降りれないとかふざけんなバァーカ!だったら外に離すんじゃネェよ、クソガキが)
なんてことが多々あり、慣れの影響で石頭になってるアザナやその不幸を利用してラッキーフラグをかっさらってくキョー兄はともかく、オレはあいつの不幸に慣れていない。これ以上頭に衝撃が来たらオレは死ぬ。そう思うレベルでやばかった。
しまいにはアザナの髪の毛にくっついていた蝶のロジャーさんがオレの頭に移動してきた。どうやらアザナに巻き込まれたオレを不憫に思ったか、心配されたらしい。
それによりアザナの不幸がオレに襲い掛かる前に、ロジャーさんが髪をひぱったりして事前におしえてくれたため、不幸に巻き込まれずに進めるようになったのだ。
アザナと入れ替わった時のトラウマ再発ものだ。だが、今回は不幸の根源であるアザナ本人がいるため、降りかかる不効率は半減していたのが救いである。
その救いがなければ、もう怖くて外を歩けなくなっていた。
本当にマジでロジャーさんが事前に危険を教えてくれないと、霧崎第一の体育館までたどり着けた自信がない。
“向こうの世界”の二人がいる間、これに慣れなければいけないのかと、気が重くなる。
ここまでくるまでの道のりを思い返し、はぁーとオレがため息をついたそのとき、クイっと前髪を微かにひっぱられる感じがして、思わず足を止める。
それとほぼ同時に
字『あ・・・っと』
清『よけろ!マコト!!』
ちょっと離れた位置にいたアザナが、なにかをよけるように身体を動かし、そのままこけた。
顔面から地面と熱烈なキスをかましている。
その脇をなにか茶色い物がかけていく。
猫だ。
茶虎の猫はそのまま逃げるようにオレの方へきて、オレが先程いた場所を駆け抜け頭上を飛び越えていくっが――
ビタッ!
バリバリバリ!!
何かから逃げてきたらしい猫は、ジャンプしようと地面を蹴ったところ失敗し、そのまま壁に爪を立ててずり落ちてきて、手を差し出したオレの腕の中におこってきた。
そのまま猫はジタバタと暴れていたが、モフモフ具合が気持ちよく喉をなでてやったら、おとなしくなった。
猫・・・今日で何度目だ?
おかげで今日だけでネコの扱いにずいぶんなれてしまったぞ。
っで、これで誰が不幸になってラッキーフラグがたったかって?
猫だよ、猫。
オレが猫をキャッチしたその直後、体育館からノーコンのボールが飛んできて、ロジャーさんの指示でその場から動いていなかったらネコとオレはボールが直撃していただろう。
ボールは、さっきまで猫がいた塀におもいっきりあたって、そのまま跳ね返っていった。
こっちにとんできたボールはうまくよけた。オレはな。
ちなみにオレの背後にいたアザナにボールはあたってたけど、しったこっちゃない。