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09. なにが失礼か理解すべきだ |
side P4主なのにティアな『夢主2』
「二日前に起きた第七音素異常、超振動の反応は、キムラスカ王国王都方面から発生。マルクト帝国領土タタル渓谷にて収束――」 眼鏡は言った。 超振動を起こしたのがあなたたちならば、不正に国境を越えマルクト帝国領内に侵入したことになりますね。と。 連行イベントは免れないもののひとつらしい。 ********** ライガクイーンとの騒動の後、ブスブス焦げながらも奴は言ったのだ。 「捕えなさい」と―― そんなこんなで、私とルークは今タルタロスに乗っている。 ハイ。ありえないですね。 さて、この現状を見て思うことが一つ。 この目の前の眼鏡の男は、本気で和平する気あるのだろうか? 「…何故、彼の隣りに座らないのですか?」 不思議そうに言われた青い奴からの言葉に、私は笑顔のまま動けなくなる。 あまりのことに体が動かないかわりに、心の中は暴風雨のごとく荒れ狂っているが。 (馬鹿名代ぃぃ!!!!) 私(正確には身体の人)は襲撃&誘拐犯。向こうがそれを知らなくても、例えここにいるのが“赤毛の”少年でなくとも私の方が従者だと気付くはず。 常に一歩下がって立ってるだろうが! それを隣に座れとは。 さらにいうと今の現状では、目の前のインケンメガネは、確実に『ルーク』が“だれ”であるかわかっている。 そうでなくともこの現状における人間関係は、大佐でなくともひとめでわかるはずだ。 元々一般人であろうが、貴族様付きの使用人だったとしても、とにかく“赤毛の貴族のご子息”につき従う人間が、彼と同等であるほうがおかしい。 立場が違いすぎる。 “赤毛の貴族のご子息”など、この時代には、一人しかいないのだから。 まじで身分も何もかも一目瞭然だ。 だというのに、こちらが『ジェイドがルークの身分に気付いていない』と、この眼鏡はまさかとは思うが思っていたりするのだろうか? それほど私やルークはなめられているのだろうか。 どちらにせよ。 行動一つ一つが腹正しい男だ。 これでよく和平を ましてや“導師”イオンを立たせたままだ。 なにより今一番気にしすべきことは、それが一番駄目だろうと思うのだが。 だってまだルークがキムラスカの『役立つご子息』とは限らない現状なのだ。だったら一番この場で気にしてあげるべきは、和平を遂行するための両国の中和剤である導師イオンのはずだ。 立場も身分もしかり、身体の弱さも顔色もしかり。やはり優先順位はジェイドでもルークでも私でもなく“導師”イオンであるべきなのだ。 本当になんだこの陰険眼鏡は。 まずは椅子の数を数えて、あるべき人に椅子を進めるのが普通じゃないのか? わたしにではなく、あの緑っこに椅子を勧めるべきだ。 ってか、あああああああ・・・・・イオンの顔色さっきより悪くない!? ど、どうしよう!? “導師イオン”という存在は、私というか“この肉体”にとって縁がある。 ダアトに辞表を送った(受理されたか判らん)けど、その最高指導者。つまり元大ボス。上司様だ。 いや、それ以前の問題だ。 一目でやばそうなほどに体の弱い子を無視して座れるか。 どうしたものかな。 この場にはアニスだっているし。 ってか、彼女は本当に『守護役』なのか?どこをどうみたらイオンを守護しているのだろう? それにまがりなりにもアニスもジェイドも軍人で、アニスなんかはダアトの人間で守護役。 いつかアニスからイオンの不調ぐらい、言うよね。 まぁ、いまはさ。彼女のこともイオンのことも本人や目の前の陰険軍人が気にしていないのだから、申し訳ないが見て見ぬふりをする。 簡単にいうと、自分から立っている導師にかまっているゆとりはなく、私は私とルークの身の安全を勝ち取るので忙しかったりするからだけど。 私の額…いまごろ見事な青筋、もといムカツキマークでも浮かんでるんじゃないだろうか。 それでも冷静さを絶やしたら負けだと自分に言い聞かせる。 いちおう演技は続けた。 続けてやったさ。 「私は使用人ですので、主と同席は出来かねます」 「ほう…。“使用人”、ですか」 「ええ。それが何か?そのようなこと一目でおわかりでしょうに」 「そうですね。それで失礼ですがあなた方の名前を聞いても?」 ニヤニヤとせんばかりの…ひとを見下す目だ。 やはり、既に正体は嗅ぎつけていたらしい。 しかたない。あのライガクイーンのときに、すでにルークの髪の色を知られてしまっている。 いまだって包帯も何もなくそのままだ。 本っ当に、面倒な所には頭が回る男だ。 ああ、いやだいやだ。 失礼もなにもないだろう。その目も態度も…むしろあなたの存在そのものが、むかつくし失礼だよと言ってやりたいほど。 『たおれそうな子供』にして『導師』、そっちのけで、名前とは――。 まがりなりにもわたしは、ダアトに所属していたことなっているわけだし。 元ダアトの軍人でした〜っとでも名乗るべき? しかし、困ったことが一つ。 私、“ティア”の所属覚えてない。 (たしか神託の盾騎士団って、モースの部下……なんだっけ? あんまり覚えてないなぁ。六神将たちがタルタロスを襲った理由は、導師が誘拐されたから救いにいけと豚に言われからじゃなかったけ?) モースの地位は『大詠師』。 なにを“詠”むのかしらないが、“大”とつくぐらいだから相当偉いのだろう。 現に導師が最高指導者で、その次あたりぐらいの地位があった気がする。 ・・・認めたくないが、そのモース大詠師というハム肉が、現状わたしという存在の上司にあたるわけで。 ゲームの認識があるとはいえ、それは随分昔のこと。 もうメロンの階級なんて覚えてないわけだ。 てか、長くて覚える気もなかったし―――ダアト辞めたから必要ないやと思い直した。 ジェイドに尋ねられた質問とし、身分を名乗るべきだろうか。 名乗るべきなんだろうな。 でも思い出せないし。 どう――名乗れと? う〜ん。身分証明は…どういえばいいのかなぁ。 (本人は無意識だろうが)助け舟を出してくれたのは、ルークだった。 「おれはルーク・フォン・ファブレだ。んで、こっちが レイ」 ルークが簡潔な紹介をしてくれたので、それに感謝しつつ頭を下げるだけで済ました。 そこでルークが「おまえらが誘拐に失敗したルーク様だよ」と若干不機嫌そうに付け加えた。原作の“我儘ルーク”なら言うだろう嫌味。私がいたことで少なからず“よく話を聞く聞き分けのいい子”に成長した彼の口から出るとは思わなかったその嫌味に、思わず驚いて視線を向ける。 立ったままの私の前の椅子に座っていた彼の背からは、かすかな怒りが伝わってきた。 あ〜怒ってるなぁ。 でもその気持ちは、わからないでもない。 むしろ私も同じ気持ちだったので、十分共感できる。 これにより、今更知ったとばかりにジェイドが「『ファブレ』の名に反応し、そこでなされた「キムラスカ王室と姻戚関係にあるファブレのご子息…というわけですか」と説明口調の言葉に、今度はアニスが目をハートにさせている。 なんか―― もう、嫌だこのひとたち。 全員腹立つ。 で。 話は続き。 ネチネチっとした会話が続く。 いちいちイラッとくる言い回しで、あの『誘拐』という単語を境目に、ジェイドはまじめったらしく世界情勢やらなんやらを語りだす。 「…敵国の王室関係者とその使用人が共謀しての不正入国。いよいよただの物見遊山とは思えませんね」 「超振動で飛ばされたことのどこが“ただの物見遊山”などと…。あなたたちにとって超振動とは“それぐらい”の評価なんですね」 「それにしても誘拐とは?穏やかではありませんねぇ」 あ、こいつ。今の私の発言を、眼鏡を押し上げて鼻で笑った挙句無視したし! 今度はなに?「使用人に話すことは何もない」とかそういうこと? 鼻で笑っていこう一切こっちを見もしなくなったのがいい証拠だろう。 本当にっ!腹立つ!! 「互いに互いが第七譜術師だと知らなかったがゆえに起きた『事故』です。 たったふたりの、それも王族と使用人でどうやって、敵意があると考えるのか。 戦争を仕掛けたことになるのか、教えてほしいものですね」 「そんなことですか。スパイという可能性だってあるでしょう?」 眼鏡が眼鏡をもちあげて、こちらをあざ笑う。 案にバカもほどほどにしてほしいものです。ってことはニュアンスからわかる。な〜んていうセリフは、こっちが言いたい。 そう、だけど言えない。だって私、今、使用人なんだもの。 たしかにこれ以上口を挟めるほど私はえらくもない。ましてやそんな立場とかぶっ壊せるほど原作破壊できる力も勇気もない。そんな自分が悔しい。 けどジェイドの考えは、どう考えても間違いだと思う。 これだけは訂正しなきゃ。 そうじゃなきゃ、アニスやイオンが、絶対なにかしら誤解する。 「スパイなんて危険な役目をただ一人しかいない男の王位継承者にさせるバカな国はないと思いますよ」 聞かせるように。でもつぶやくように言ったら、お前は黙っていろとばかりにジェイドにらまれた。 眼鏡の下の赤い目がなんか怖くて、思わず『ヒー!!!!せ、せめて先輩のような勇気(という名の“破壊力”)が私にあれば!!』とか内心、もう泣きそうだし、しっちゃかめっちゃかだ。 とりあえず原作のティアのように「神託の盾騎士団も無関係です」なんて言う気はいっさいがっさいない。 だってそいつらが一番の主犯だし。 それでルークもわたしたちも誤解されるのは勘弁だからね。 なにより私inティアは、もうダアトから離脱しましたから! 「まってくださいジェイド!彼らにそのような類の敵意は感じません」 助け来たー! イオンのおかげで、なんとかあの陰険な視線から外れてほっとする。 でもあんまり釈然としないのはなぜ? 「イオン様…」 ふー ジェイドはイオンの言葉に深いため息をついた。 っが、そのままこちらに視線を戻し、肩をすくめる。 「まぁ、そうでしょうね。とくにご子息様の方は、温室育ちで世界情勢にはうといようですし」 「……」 ルークは無言だ。 あんなにおちょくられているというか、馬鹿にされたような態度をとられたら、さすがに「悪かったな!」とか「馬鹿にするな!」とか怒鳴るかと思ったけど、私の目の前にいるルークは(背中しか見えないが)いらだちを声には出していない。 「ここはむしろルークたちに協力をお願いしませんか?」 は? 今、なんか聞こえたような? ふいに聞こえたイオンの声。 それにさすがのルークもそちらに視線を向けていた。 っと、いうかそのままあの子は、なにかどうでもいいこの世界の戦況を語り始める。 って、いうかね。 え? 『お願いしませんか』って…それって、どう聞いても『お願いします』と同意語じゃないよね。 なんで頼みたい側(ルーク)への確認じゃなくて、拉致してる側(ジェイド)に「協力しろ」と問うの? お願いすること前提? こっちの意見聞く耳なし? そのまま小難しい始めるし。 ローレライ教団が中立の立場から協力を要請されたとか。 それって軍艦でくる言い訳?と思わなくもないことを生真面目な顔でイオンは語っていく。 ルークは相変わらず無言だ。 何か考え事でもしているのかは背後で立っているだけの私にはわからない。 しまいにはあの眼鏡、言いやがった。 あなたの地位だけが必要だと――。 それにルークは、今までにないほど低い声で言った。 「人にものを頼む時は頭を下げるのが礼儀じゃねーの?」 うんうん。そのとおりだよね。 本当にむかつく。 ネチネチネチネチと・・・ そしてジェイドは、原作で有名な“あのムカつく跪き”をした。 「どうかお力をお貸しくださいルーク様」 背後で「ジェイド!?」とか「師団長!?」なんてとめるよな声が聞こえ、私はその声の発生主たちを一瞥して確認しておく。 どうやら五分五分のもよう。 この船室にいる兵士たちの半分の顔色は青ざめて震え、半分はジェイド側の人間なのか頭が足らないのか「ひざまづけ」とあんに告げたルークをにらんでいる。 襲撃きたら、あの“半分の特殊思考の人種”をペルソナで吹き飛ばそう。 きっと責任は六神将にすりつけられるだろうから問題ないだろう。 「・・・言われてすぐやるって、プライドはないのかよ」 あきれたような、ちょっと静かなルークの声がポツリと漏れる。 それにジェイドはニヤリと口端を持ち上げ―― 「あいにくと、この程度のことに腹を立てるような安っぽいプライドは持ち合わせていないものですから」 (そのまま蹴り上げてOKですか?) ----------------------------------- きっとルークは「皇帝代理ならここでひざを折るのは…(少しぐらい考えてから行動すべきじゃ)」とか思ってるといいな。 なにごともさ。 言葉の意味はきちんと理解して使うべきだ。 |