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04. 逃げてローレ様〜(笑) |
side P4主なのにティアな『夢主2』
エンゲーブの宿内。 なんとかリンゴ事件もローズ邸での隠顕眼鏡&みどりっこ導師との遭遇を避けた。 買い物にと外に出ればルー・・・じゃなくて、夕様は、すべてが珍しいらしくキョロキョロして、あれはなんだこれはなんだと私に訊いてくる。 けれどこの世界のルークは、わからないことはまずわたしに聞くようにいってあるので、ひとりで暴走しようとしないし、そばから離れないでくれるので助かる。 包帯とわたしのとっさの嘘――夕様は幼い頃に事故にあいウンタラカンタラ・・・だから人前に出ることを許されなかったナドナド・・・――の効果があったのか、リンゴ屋できちんと金を払って買ったあとも騒動には巻き込まれず、むしろ騒動から遠ざけてもらえた。 どこかの貴族の哀れな子供。助けなければと思ってくれたようだ。 こういうときばかりは、同情でもなんでも万歳だ。 だって使えるものは使わないと、この世界で生きていくの無理だから。 ゲームプしたとはいえ、私にとって“今”居るのは紛れもない現実。 ドロボウ事件を回避できたし、宿にも泊まれたからといって、このまま何事もなく一晩過ぎるとは限らない。 「うっとうしいんだけど」 「あ、もうとっていいですよ。私たちだけのときはかまいません」 片目を隠すように巻きつけていた頭の包帯や、腕や腹の包帯を取る許可をだすと、「うー」とうなりながらルークは、ばさっと勢いよくフードをとっぱらい、怪我人モドキな変装をといていく。 そのままルークは備え付けの椅子と机を占領するとなにやら書き始める。 たまに今日あったことで質問が来ることから、どうやら日記を書いているようだとわかる。 う〜ん。でも今日は遅いからなぁ。 お子様(実質七歳)はもう寝る時間だと思うんだ。 なんか眠そうにたまにウトウトしてるしさ。 とりあえず、ルークにテトラカーン(物理反射)とマカラカーン(魔法反射)を掛けて寝てもらうことにする。 (一回しか凌げないけど、これなら反応が遅れても対処出来る) 「は・・・寝ないのか」 「えぇ。あ、明かり気になりますよね。今消します」 「違う」 「夕様?」 ボソッと低く呟くと日記を勢いよく閉じ、枕を投げつけられた。 ――密かに日記を投げつけられなくて安心したのは秘密だ(汗) 「ぶっ!?」 「お前が寝ろっ!ココに来るまで戦い通しで、野宿のときも起きっぱなしだろうがっ」 「それは・・・寝ずの番はなれ「いいから!・・・っそうだ。命令だ!そのペルソナとかいう術で俺護られてんなら、宿くらい気にせずベッドでちゃんと寝やがれっっ」・・・わぉ」 「反論するな!」的な勢いで、隣のベッドを指さされた。 「は…い」 「お・ま・え・が!倒れたら、だ・ぁ・れが俺を護るんだよ。あぁ?」 ルークは人さし指でツンツンと、というか、ガスッガスッっというような勢いで、私の額を突っつき、最後にグリグリと押しつけた。 地味に痛いです。 「そう、ですね。ありがとうございます」 「っ!?俺が困るだけだっ!俺が!!」 ありがとうと告げたら、ルークは顔を真っ赤にして、フンっとソッポ向く。 その態度に、これがツンデレかと思う。 しかし、心配してくれるのは純粋に嬉しかった。 生のツンデレもけっこう腹立つものじゃなくて可愛いと思えたし。 うん。ここはせっかくだから言う事を聞いてあげよう。 ツンデレに素直にしたがったら、どういう反応が返ってくるのかも気になるしね。 「―――じゃぁ、おやすみなさい」 「!!お、オヤスミ!!」 最後の最後まで意地張ってました。 ふとおもったんだけど、まさかこの可愛らしさのためにルークをツンデレになるように育てたのだろうか。まさかファブレ邸ではわざとツンデレ育成をしていたとか。 な〜んて、ちょっとありえないことを考えつつ、そくさくと布団にもぐりこむ。 久々の柔らかいベッドに入ると、引きずり込まれるように意識はすぐに落ちた。 ********** (ここは…夢の中か) 起きていながら夢だとわかる感覚。 だから、ここは夢だと理解している自分がいる。 赤色のブロックが連なった床、霧の中イザナミがいて夢の中で、何度となくお茶会をした。 白昼夢のように、イゴールのいる車の中に引きずりこまれたのも少なくない回数だ。 だから、ここが夢だと言うことも、目の前にイザナミがいるのも慣れた光景だった。だったが―― 「“マーガレット”さん?」 「久しぶりね、」 予想外の人物に面食らう。 なんで彼女がいるんでしょうかね? ここは【夢の中】ですよ。 【ベルベットルーム】のごとく高級感漂う家具なんてありゃぁしません。 ワインもないですよ。 なぜ、いる? 「主の代わりに来たわ」 それで来ちゃったのかよ。むしろこれたのか・・・。 「お、ひさしぶりです」 「ええ」 (てか・・・・・・こ、交流あったの!?) 突っ込みたいところは山のようにあったけど、この際、存在自体がおかしいイザナミと“ベルベットルーム”の住人たるマーガレットさんだ。 もうなにも言うまい。 そんな混乱する私の思考をよそに、イザナミに促され、3人とも用意されたお茶会の席へ着く。 「早速だけど本題に移るわ。まず現状の確認から」 マーガレットはそう言うと、ペルソナ全書をテーブルに出す。 本当に“さっそく”ですね。 仕事がはやいようで。 「・・・っというわけで。アナタのペルソナはスキルが初期のものへ戻されているわ。 これは上位の持つ本来の力も強制的に下位スキルに落ちてるの」 「最初からガルダイン所持のペルソナなのに、ガルになってる――みたいなことが全ペルソナにですよね」 「えぇ全書からペルソナを出す自体には今まで通り問題がないようだけど」 マーガレットはそう言うと目をスッと細めた。 「――何体か降ろしたいんですが」 「いいわよ。金額は向こうの世界のものでね」 笑顔でマーガレットがテーブルに置いたものに目が点になる。 そして彼女の笑顔の奥に、「金」という文字が見えた気がしたのは・・・錯覚であってほしいが。 テーブルの上にドドンと置かれた物を見るに、たぶん幻覚でもないのだろう。 思わず顔がひきつる。 なぜこれが―― 「……何故、私の財布が“ココ”に」 使い慣れた『P4時代の“私”』が愛用していた財布が、目の前にあった。 そんな私の反応に艶やかに笑う彼女が、怖いと思った。 「秘密よ。でも、これがなければ不便でしょう?」 「そう、なんですが」 流石にP4技やら召喚をするには、アビス世界で稼いだ今のガルドの額じゃ到底払えない。 ありがたいし、物凄くつっこみたいが・・・つっこんではいけない雰囲気が、目の前の麗しい笑顔から向けられている。 そのやりとりを珍しそうに眺めていたイザナミがふいに口を開く。 「この世界に送ってから初めて気付いたけど、君が批判的なのは意外だったな。 あまりそんな風に見えなかったから印象変わったよ」 突然だなおい。 さすが人外生命体。 空気読もうよ。 でも、まぁ、一時限りとはいえ、目の前のサイフとマーガレットさんという現実から逃避するきっかけを作ってくれたことには感謝しよう。 ほっ、と息を吐きつつ、イザナミの方へ視線を無理やり向ける。 だって(いまだけでいい)財布をみたくない。 「こ、この世界【TOA】の原作ですが、アンチ対象が何人かいますからね。私は心がキな人間じゃありませんよ」 嫉妬だってするし理不尽な考えだってする。 感情で区別するときもある。 今までトリップした世界では、たまたま批判的にならなかっただけだ。 「まさかその中でも一番――処刑されてもおかしくない人に憑依するとは思いませんでしたけど」 「うっわぁ〜!君から毒ある言葉を聞くとは思わなかった」 「乗っ取られた当人のほうが冗談じゃないって憤慨するんでしょうが・・・」 私たちのやり取りに、マーガレットはクスリと笑いペルソナ全書の表紙を撫でる。 もしかするとこの世界の人物像とかもちゃっかり知ってらっしゃるのだろうか。 それともその手の中の“書”には、それさえも乗っている・・・とか? 「、あ。マーガレットさん?」 「今のアナタは、さしずめ『悪魔のような自分』ってことかしら」 「・・・ワガママなだけです」 あくまでペルソナ世界にあわせただけらしい。 よ、よかったよ。その本に【TOA】ネタまではいっていたら、どこのチートな神ですかといいたくなるところだったから。 それに私は、単にアビスの中でルークが好きという理由で、同行者に厳しいアンチ小説を読んでいただけだし。 そういうのを好んでいたから、“ティア”になってよけいに彼女の行動が許せなかっただけで・・・。 当事者達からしたら、アンチとか二次とか、たまったもんじゃないだろうけど。 「―――とりあえず、ロレには『八十神の猛り』を落として来ようかな」 「は?」 突然なんだ。 イザナミがまた空気を読まず発言を始めて、とっさには意味が理解できず、思わず聞き返してしまった。 「お気に入りの君が苦労しているのは“彼”の仕業だからね」 「あら。楽しそうな話だわ」 イザナミの爽やかスマイルに、マーガレットさんが笑顔で同意の意思を見せた。 その後二人は、和やかに私がこのアビス世界に来る原因となった“彼”とやらをどういじめぬくか話し合っていた。 先程まで、私が“彼”に対しグチグチ言ってたとはいえ、なんだか微妙に黒いオーラを放っている二人を見ていたらローレライに悪いことしたかと思えてきた。 ********** 翌日 目が覚めたとき、夢の後半がなんとなく寒く思えたが、まぁ、愚痴がいえただけましだろう。 ベッドから起きれば、疲れが取れていて、驚くほど体が軽くなっている。 しっかり休息したのと…おそらくイザナミ達のおかげだろうと思いいたり、おかしくなって笑った。 彼らも意外と人間味に溢れていたと――――怖いだけでない夢だったと、いまさら知った。 |