
|
03. 一番毒殺したい奴はもういない |
side P4主なのにティアな『夢主2』
エンゲーブについて一番最初に、ロッドを売り払いました。 金になりませんでした。 わかります。 ゲーム設定による初期レベルの装備ですね。 ってか、この初級ロッドって、あれか? ダアトとかの支給品で、大量生産品とかいう理由で、値段がつけられないとか? ああ、もう。なんでもいいけど、いろんな意味で泣けてくる。 しかたないので、ここまで来る間に倒した魔物からぶんどった金と、ティアの首飾りを売って得たあまりの金を使用し、新しい武器は自腹で新調した。 ティアロッド、サイフの潤いにもならない。 すさまじいな“この女”。ここまでくると。 リアルにティアを体験してわかったけど、所持品もなく、レベルも最低で、よくラスボスという名のヴァンに挑んだものだ。 間違いなく襲撃したとき、ヴァンに軽くあしらわれていたに違いない。きっとそれにも気付かず「私はやれる!」とか思っていたんじゃないかと。 まぁ、それはさておき。 考えなしにもほどがあると、私自身が『ティア』となった今、乾いた笑い声をあげたくなる。 「な、なぁ」 「はい?」 私が遠い眼差しで、天井を見上げていると、おそるおそるといった風にルークが声をかけてきた。 ルークの視線の先には、私の手。 私が手に取った獲物をみて、同伴者となっているルークが物凄く不信げな表情を浮かべている。 その視線が、やたらと“私”と、私が手にした“モノ”見てくるのに気付いた。 顔に「なんで『それ』?」と不信感が、ありありとかかれている。 私がルークでもきっと同じ顔をして疑問に思っただろうさ。 たしかに『これ』は譜術師であるティアには不似合い極まりないだろう。 「なぁ、本気でお前が“ソレ”を使うのか?」 でもね。 しかたないじゃないか。 だって私は、憑依しているだけだけで、本物のティアじゃないもん。 「こちらの方が都合いいのです」 「だって・・・それ」 「こちらの方が。『私』には、都合がいいのです」 「本当に、本当に?それで戦えるのか?だって・・・ロッドじゃなくて、ソードだぞ?」 そう。私は、今、武器屋の中でも軽い『両手剣』を選び、それを買おうとしている。 身体が違うとはいえ、P4の世界で使っていたせいか杖なんてものより剣の方が手に馴染む。 ってか、私、メロンと違って歌って癒せる魔女っ子じゃないし。 女の子が剣を持っちゃいけないルールはないんだよ、ルーク様。 それに私は魔法・・・じゃなくて、譜術なんて使えないただの薬売りの弟子で、ただのペルソナ使いでしかないんだから! ペルソナ使えるだけで普通じゃないと言う意見は聞こえませんから。 そんなわたしが、杖なんかもってられない。 むしろ邪魔なだけ。 そもそも―― (譜術使わないんだかロッドは必要ないし・・・・・・多分) そうして意気揚々とロッドを売りさばいて――っと、いってもさすがメロンの持ち物。金にはまったくといっていいほどなりはしなかった――かわりに、使い慣れた武器に近いものを手に入れた。 そんな私のあとをついてくるルークは、なんともいえない顔をして首をひねってばかり。 「なんか・・・ちがくないか?」 うんうんとうなりながら、私と武器を交互に見つめるのをやめない子に、不思議に思って首をたずねるもツンデレっこからいい返答がかえってくるはずもなく。 「どうしました?」 「あ、いや。って、なんでもねぇよ!!」 「そうですか」 生ツンデレ、グッジョブ。 でも、どうして悩んでいるのかは教えて欲しかった。 それから私たちは、さっさと宿を取ると、早々に衣装&髪型チェンジ!! 変装だ!初の変装だ! 動きやすさ重視の服と、髪をピンとゴムでまとめる。 それだけでもなにか新鮮でちょっと楽しい。 (ここまで長いの初めてだけど・・・・・・まとめづらいもんなんだね〜。メロン尊敬) 着替えたけど。 武器固定?称号?―――どうやら関係ないようです。 ちょっと残念。 っというより、ここではステータスバーとかでるわけじゃないから、『称号』なんてものつけられてもわかるかよ!って、ことみたいだ。 ある意味よかったかも。 恥ずかしい称号つけられたら、本気で死ぬ。 「なぁなぁ、なんで着替えるんだよ。 しかも、フードとか包帯とかうっとおしい」 「申し訳ありませんルーク様。しばしご辛抱ください。 ルーク様のお姿は一目で王族と認識されてしまいます。 また、身につけている物も上質なので、盗賊から狙われやすいのですよ。 少しでも危険から遠ざけるためにも、ご理解して下さい」 「…ふぅん。で、お前も着替えんだな」 「ダアトの軍服だと、悪目立ちしますので」 「じゃぁなんでその服で俺の家襲ったんだよ!」 「(ごもっともですっ)」 ルークくん逆切れだ。 でもそのとおりだと私も思う。 なんで襲ったバカメロンっ!!! ほんと、それはこのメロン本人に聞いてください。 私が『やる』なら、ダアトに辞表出して退職金貰って地味な格好で城外で襲う。 実力差があるのがわかってるんだから、その場合は毒入り菓子を差し入れしてくれるわっ!!ヒゲめ。 (あ、夾竹桃がこの世界ないから『うっかりうっかり』が出来ない…!) と、一瞬ネタに走りそうになった。 一瞬“向こう側”の世界(どこだよ!?)に意識が飛びかけたが、ルークがブツブツと文句を言っていたので、その怒りをなだめるのに忙しく現実にしっかり戻ってこれた。 ようやく、まだ我侭坊ちゃんであるルークのご機嫌が回復したところで、重要なことを持ちかける。 「ルーク様、申し訳ありませんが、これからは偽名を使っていただきます」 「・・・・・・それも王族と判りやすいからか」 少しの思案の後、眉を持ち上げた不機嫌そうな顔でルークが私を見る。 うん。この子、教えればわかるし、すぐに頭が回る。 吸収が早いのは“元”がいいからか。 どちらにせよこの子が我侭プーだったのは、周囲が悪いとしか思えない。 ルークはちょっとばかり短気だし、たぶん私がアビスのなかでルークしか好きじゃないって贔屓もあるんだろうけど、いいこなのは間違いない。 丁寧に教えれば理解してくれる。 ツンデレって少し短気だし、感情を表に出すのができない子が多いから、扱い方が難しいね。 でもそれを乗り越えればきっとこのルークは、まともな子に育つ!・・・ハズ。 なので、懇切丁寧をこころがけ、ルークに答える。 「はい。そのとおいです。以前告げたとおり、超振動の事故とはいえ、敵国にいる以上は危険ですので」 「面倒くせぇ…! おい、お前が決めろ。変なの付けたら許さねぇーからなっ」 ―――まさかの展開だ。 私が、命名!? というか、ルークにとって、『自分だけの名前』って物凄く特別な意味を持つよね!? 今更気付いた!?どうしよう!? ってか、私なの!?私がそれをしていいの!? なぜ私にめいめいの権利を与えるのルーク!!いいのかそれでっ!? ど、どうしよう・・・ (…まいったな。古代イスパニア語なんて判らん) でも、先輩よりはきっとましなはず。 私の親友であり、一緒にトリップ体質になって色んな世界を転生しまくっている“あの先輩”なら、面白おかしな名前しかつけない。 本人は真面目に生きているが、ひたすらギャグに生きているようなあのひとだ。 そのネーミングセンスはある意味壊滅的であり、人の顔と名前を覚えるのが苦手だからと、会った人全員におかしなあだ名をつけるのだ。 そういう意味では、私はきっとマシなはずだ! でも古代イスパニア語なんて知らない。 いっそのこと日本語でいいだろうか。 だからといって、言語が決まったからとすぐに思いつくようなものでもないわけだけどさ。 「え、え〜っと・・・」 チラっとルークをみやれば、先程までの怒ったような表情が嘘のように、なぜか期待に胸をときめかせた子供のように目をキラキラさせてコチラを見てきていた。 ああああ・・・・き、期待が痛い。 その眩しい無邪気な視線が逃れようと視線をそらすも、ルークの朱色の綺麗なグラデーションの髪が視界に揺れてしょうがない。 グラデーション。綺麗な夕焼けみたいなルークの髪は、視界から排除するのが難しいほど鮮やかだ。 夕焼けのような明るい赤色と金色の光をそのまま切り取ったようなキラキラ〜。 赤色?セキ? いや、なんかそれはアッシュの方が似合いそうだな。 もうちょっとルークの髪は明るくて・・・橙?いやでももっと赤くて・・・朱色? そうそう、シュ色だよ。 でもって金色が混じってて、夕焼けみたいで、そういえば夕日って茜っていうんじゃ。 う〜ん。名前、名前・・・名前・・朱色、しゅいろ、アカ、夕焼け、橙・・・・・・・・・あ。 「そ、その・・・“セ”」 「セ?」 「『夕(セキ)様』でっ!!」 我ながら単純である。 ルークの髪の色が、朱色だから夕焼けからとって『夕(セキ)』なんて。 和名なだけで、まんまじゃないか。 私、もしかして先輩と同じレベル!? 「…どういう意味だ」 落ち込む私にコテンと音がしそうな可愛い仕草でルークが聞いてくる。 やっぱりこの世界って、名前に意味を持たせるんですね!? 意味がある名前でよかった!! それにどんと胸をはって答える。 なにを偽る必要がある。っというか、ネーミングセンスなくてごめんなさい。はっきり白状します。 「そのものずばりルーク様の髪の色からとりました。言葉としましては、【夕焼け】や【赤】を意味します」 「――へぇ」 「(珍しい言葉だから納得…したかな?)」 古代イスパニア語で語源がないことを切に願いたい。 もし、意味合いが最悪なやつだったら目を覆いたくなる。 「んで、お前は?」 「え゛っ?!」 「お前だって偽名必要だろ?それに、たまに名前呼ぶと複雑そうな顔してたし」 純粋な疑問が痛い。 そんでもって考えてもいなかった!! でも・・・髭に会えば確実に“ティア”だとバレるが、偽名はたしかにあればいいに越したことはない。 (あまり捻った名でも自分が呼ばれたって気づかなければ意味がないし) 名前ナマエナマエナマエ・・・メ、メロン?いや!それだけはイヤっ!! ああ、もういいや! 「―――『』とお呼び下さい」 「・・・どっからでた?それはお前の髪の色か?」 「き、気分的に思いついた名前です!でもそちらで呼んで頂いたほうが、全然気持ちのもちようが違いますから!」 ニッコリ笑うとルークは納得してくれた・・・らしい。 さすがに無理やりな説明だって自覚があるだけになんだかだましているような気分になって、純粋なあの子には申し訳なくなる。 そもそも突然名前を考えろと言われても“あの先輩”じゃないのだ。思いつくはずがない。 それに『』というのは、ティアに取り憑いているこの『私』の本名だ。 なじみのある名前なんだから十分だ。 単純だろうがなんだろうがしょうがないじゃないか。 だって、ティアやメシュティアリカだとキャラ名の意識が強くて自分だと認識しづらい。 むしろ呼ばれたくない。 あのメロンが自分だなんて信じたくない!! ・・・・・・名乗った後、『』とティアとか名前を混ぜるなり、もう少しもじってもよかったかなぁと己の短慮に苦笑する。 とりあえず 「では、食材のほうを買いに行きましょうか」 |