
|
08. この寒い頭を殺してわからせよう |
side ガイ成り代わり『夢主2』てっきり彼女を瞬殺してオレが勝つのだとばかり思って、オレは自分の勝利を疑っていなかった。 理由?そんなの簡単だ。 どれほどチートスキルを得ようが、オレには豊富な経験があった。 そこには国の代表の一人としているとか、国の恥にならないようにとか――このオレとしたことがすっかりスッポンと抜けきっていた。 これはオレの過信が招いたこと。 相手がTOAの技をすべて使えるチートだと聞いていた。 っが、しかし。 問題はそこではなかった。 あいつは、あいつは―― 『私が勝ったら以前の服を着て、髪も切ってください!それで私と一生デートしてください!』 『ことわる!』 即答したが聞いてないようで、彼女の脳みその中ではすでにオレと彼女は結婚したことになっており、子供は何人よねとか。休日はやっぱりこどもたちと素敵なだんな様と遊園地に行くの。ああ、でもこの世界にはないのよね。なら作ればいいだけだわ。だって後々ガイは位を返上してもらえるのよ。ならそれぐらいできるわ。それでそれでぇ〜!可愛い奥さんなわたしはいろんな人に声をかけられるの。でもぉでもぉ危ないときには、ガイがさっそうとあらわれて追い払ってくれるのよ!ああん!もう!こんなところでガイったら。愛してるだなんて。はずかしい!!みせつけてやればいいだなんて!!いや〜ん!!きゃー!!はずかしー!! ・・・っと、妄想を膨らまして一人で百面相をはじめたかと思えば、芝居のようなものをはじめて、体をくねくねさせ、奇声を上げ、自分の身体を抱きしめて身もだえはじめた。 オレは鞘から刀を抜く途中だったため、その形のままかたまり、いつの間にか刀を落としていたことにも気付かなかった。 ただ、言いようのない悪寒が背筋をうめつくし、このまま凍りつきそうだったことは間違いない。否、もう固まっていたのはそのせいかもしれない。 彼女は何と言った? オレに全身スパッツになれと言わなかったか。しかも一生デートってなんだ?愛とか、子供って…何? 思わず思考が白に染まった。 全身に一気に鳥肌が立った。 口から今から砂を吐けそうだ 。 たぶんあまりの寒さに内臓が凍りついているので、氷の破片ぐらいなら吐けるかもしれない。 このときオレは、いままでにないほどの身の危険を感じたのだった。 妄想にふける彼女が、いまだクネリと悶え、(妄想の中の)こどもが結婚式に行ってオレが泣くという段階までいったところで、ようやくオレは自分の意志で体を動かせることができた。 そのまま泣きそうになるのをこらえて、飽きれた雰囲気を醸し出しているマルクト皇帝とその盾たるアスランさんへ視線を向ける。 た、たすけてくれ。 思わず視線で訴えたが、アスランさんに同情するように悲しげに首を横に振られた。 あげくニヤリと笑ったピオニーが「棄権は認めないからな」ときた。 姫「んもうガイったら〜」 1「っ!!!!!!!」 しかたなく正面へ視線を戻したら、まだ妄想につかっていたらしい女が目を閉じて愛しそうに宙を抱いている。 本気で泣きたくなった。 はじまってしまった。 震える身体をふるいおこし、気合だけで目の前の相手を見つめる。 目が合えば、きゃ(ハート)という歓声が聞こえ、ぞわりっと一気に鳥肌がたった。 ぶっちゃけそれだけでオレには大ダメージだ。 試合開始を告げたアスランさんの言葉と同時に、ヒメコが「いくわよ〜」と剣を抜いた。「いや、こなくていい」と思わず言いそうになったおれは悪くないはずだ。 チートだと宣言するだけあって、彼女の速度は速く的をはずさない。 ただし技が軽い。 技に重さがかかっていないのだ。 だからチートでも彼女は「負けない」わけではない。 1「たしかにチートだというだけある。っが」 まるで剣に操られて動く人形だな。 すべての攻撃や魔法技を使えたとしてもどこで身体に力を入れるかわかっていないのだろう。 彼女の空気が読めない仲間たちいわく、ヒメコが軽いから体重がかからないんだと、どうでもいいフォローをしたり羨ましがるような女どもの声がするが、【これ】のどこがうらやましいのだろうと思う。 剣技をよけても確かに補正がかかって必ずあたってしまうが、実際のところ実力が伴っていない。 神に三つの願いをかなえてもらったというが、これはつまりあれか? 体力はオマケでつけてもらったとして、神とやらは本当に「技がすべて使えるようにした」だけなのではないだろうか。 言葉を重んじる神なのだろう。まぁうそではないのだろうが、なんとまぁ勘違いもはなはだしい娘か。 自分の体力はMAXで、常にMPを消費しない無限大☆とか思ってたらあほだ。 ここまでくる間の戦闘中にしょっちゅうグミだって食べているだろうに、それさえも忘れているなら正真正銘のアホだ。 自分が最強だと思っていたら、そうとうイタイ。 もういっそのこと神には「どんな勝負も絶対勝つようにして」とでもいえばよかったものを。 そうすればオレにだって勝てるだろうし、ラスボスも一発だ。 それを忘れてアイテムなしで挑むとはな。 むしろさ、なんでオレは戦わなくちゃいけないんだろう。 ねえ。もう帰っていい? あ、だめ。そうですか。 姫「早く剣を出してガイ。私と戦って」 あなたが私のものだと証明してあげるわ。 うすら寒く笑いながら、剣を手に襲い掛かってくる女に、思わずオレは譜銃を抜いていた。上から下へ振るようにすれば銃の中に格納されている弾が自動装填されるものだ。 それはわずかな時間。 ジャキンという音と共に弾が装填されると同時に、オレは迷いなくトリガーをひいた。 相手が死ぬとか関係なかった。 もし本当に死に掛けたら、武器を全部奪って足を紐で縛ったあとに、回復魔法でもかけてやればいい。 この場にはその回復を得意とする――“珍しいはずの第七譜術師が”たくさんいるのだから。 ちょっとやそっとでは、死ぬことはないはずだ。 そう。それが『ちょっと』なんていえないような状態、例えばオレが奴の存在にきれて、奴の心臓か脳を“間違って”撃つような――ことがなければ。 姫「いや!きゃぁ!ちょ、ちょっとやめてよ!どうして剣じゃないの!?ずるいじゃない、わたし近距離派なのに!」 1「オレは中距離型だ!」 ガンガン!! 姫「きゃぁ!」 ティ「ヒメコ!?ちょっとあなた!飛び道具なんて卑怯よ!」 ジャキ。ガウゥンッ! ティ「ひっ!」 1「あ、わるい標的かと思って間違った」 あー、つい。思わず?な ティ「きゃぁ!ちょっと!!ふざけるのもいいかげんにしなさいよ!」 2「……とういか。なぜ?先輩のどこが卑怯なんでしょう?」 ピ「ああ、そっちのもうひとりのメロ、じゃなくて彼女の言うとおり、ルールで禁止されてるのはアイテムであって、武器はありだぜ」 アス「譜銃も立派なアイテムですしね」 ル「なんなんだあの女」 ピ「どうかしたかルーク」 ル「あ、いえ…。ただ、あんなでもしばらく共に旅をした仲。ガイの戦闘スタイルぐらいは知っているはずなのに、身勝手なことばかりわめいていたのでつい」 2「あ!そういえば、ルーク様の刀はガイのものでしたね」 ル「ああ。ファブレ邸では流派を重視するより、その人間に会った特性をことのほか重視する。伸ばす部分を伸ばしたらない部分はできる者が補うようにな。 おれはこの通り、体重も身長もないから、速さを生かすことを求められた。その戦法はガイが得意としていたため、ガイに剣の手ほどきを受けていたからな。両手で扱う大振りの剣より、刀の方が扱いなれていたんだ」 2「なるほど。だから旅の間はガイの刀を借りてたんですね」 ピ「ん?それって、つまりガイはずっと銃主体だったってことか?」 ル「あとは体術ですね。まぁ、メインは銃でしたよ」 ピ「…銃を使う姿もみていた、だと? それなのにあの金髪は、銃を使ったら卑怯と言っていると…あいつは馬鹿か?」 2「私よりずっと一緒にいて気付かないなんて。どんだけ・・・」 アス「まぁまぁ」 騒いで逃げ惑っている金髪女には聞こえていないようだが、観客席の方からあきれたような声が聞こえてくる。 いや、まさにその通りだと思うよルーク。 むしろオレの身の安全のために、いまここで抹殺していいだろうか。 いや、落ち着けオレ。 とりあえず、奴が半径五メートル以内に近づかないように、銃で牽制し続ける。 ガウンガウンガウン!!!! 姫「もう!いや!近づけない!なら魔法よ!」 次手を宣言されて、はいそうですかと待つたまじゃないんだが。 手の内を敵に宣言する奴ってどうなの? もうやってられなくなってだらりと下ろした。 っが、その手をもう一度持ち上げ、勢いよく―― 銃を投げた。 銃を撃ったんじゃない。 投げた。 ドコッ! 姫「カハッ!」 少女の腹にクリティカルヒット☆ わぉ。漫画よりいい音がしたよ。 見事詠唱中の少女の腹に銃はあたり、ヒメコが吹っ飛ぶ。 そんなどうして!?とばかりに目を開く彼女は、まだ余裕らしく、腹を抱えつつもすぐに立ち上がる。 ッチ。なんて頑丈だ。 ふらつきながらもすぐに収まるところを見るに、あざ程度のダメージだったのだろう。チートめ。 まぁ、こちらをあおるようなことをしておいて、涎や血一つたらさなかったことはほめてやろう。レイなら今の攻撃で内臓が傷ついて立てなくなってるだろうから。だって彼女は普通の人間だからな。 ああ、チートこわいねぇ。常識的に考えてさ。チートってもうあれって人間じゃないよね。 1「銃弾は卑怯でずるいんだなんだろう?だから捨てた」 そういって今度こそ手ぶらで、相手を待つ。 このままいけば殺しかねない。 オレが力加減している間にさっさと降参してほしいものだ。 レイのような常識を持った相手だと、こういう状態や、変身ときなどの『間』を見逃すことなく敵をぼこるのだ。 例えば魔法少女が呪文を唱えていたり変身している隙をついたり、我こそはと名乗っている最中にどついたり。 かわりに、優しさだと思ってほしいものだ。 ぐだぐだ言っている間にてめぇを消すなんざたやすいんだ。 っが、オレは近づきたくないのでやらない。 だって近づくとオレの操が危なそうだ。否、オレに精神的ダメージが来そうだから。 姫「うるさいわよ!偽物のくせに!私が強いからって嫉妬なんて醜いわよ!」 2「あたたた。先輩、随分イタイひとが目の前にいるのですがペルソナでトゥ!っとやっちゃってもいいですか?」 1「それやるとオレが失格になるから却下だ」 2「そうですか。あ、私、自分がオタクだとは認めますけど、“あれ”とは同じにしないでくださいね」 レイの言うとおり、オレを模倣しやがった目の前の金髪女は、とんでもなくネジがぶっとんだガキだ。 レイが冷めた目で言うのに対して、またトンチンカンなことをわめいて、その騒ぎに向こう側の女性陣(特にティア)が騒がしい。 そうそう。こんなところでわめくなよ小娘が。 試合じゃなきゃ、オレはお前を助ける気などないし。むしろ戦いたくもないし、顔も合わせたくないし。存在さえ無視したい。 それに本番はこれからだろう? でもとりあえず優しいオレは最後に聞いてやる。 徹底的に叩きのめされるのと、大人しくする代わりに無傷で生きて帰る方法を選ばせてやろう。 まぁ、結果は決まっていそうな気もするが…。 1「まだ、やるのか?」 姫「やるわ!負けを認めない限りいいのでしょう!?」 ピ「・・・そういうルールはちゃんと覚えてんだなあいつ」 アス「まったくですね」 まったくだ。 姫「ああ、そっかぁ!」 なにが「そうか」なんだろう? 突然ヒメコは嬉々として歓声を挙げた。 なにごとかと思っていれば、頬を主に染めてヒメコが、くねりとこしをまげてひとrでもだえはじめた。 思わずひいた。 姫「やっだ〜。もうガイったらぁん。私に勝たせてあげようって、わざと使い慣れてない武器を選んでくれてるのね!そうよねぇ。ガイは剣士で紳士だものね」 1「・・・・・・」 やっぱり撃ち殺そう。 だめだこの妄想頭。 本気で心臓か頭を打ち抜いて即しさせてやろうかと、銃を構えなおしたら「殺すなよ」とピオニーからお声が。 思わず舌打してにらみつけたら、楽しそうに「おおーこわ」っと笑う金髪浅黒男の声。 ならあの口だけふさぐ方法はないだろうか。 しかし、そこそこの技術(あくまでだけ)がある相手に対し、どうやって手加減しろというのだろう。 しかも相手はこちらを殺す気できてます。メインパーティキャラは死なないとか、ゲームだからどんなに怪我をしても平気とかでも思ってる顔だぞあれ。 いったいぜんたいどうしろと。 むしろオレも殺したくて仕方ないとすれば・・・。 1「殺したい。ね」 なら、『殺させよう』か。 彼女の中で"ガイ"の位置はとても高いようだ。 むしろ"ガイ"という有害物質だけであいつの脳は埋めつくさられている気がする。なら―― 姫「覚悟してガイ!いくわよ!」 ここはゲームじゃない。オレたちは生きている。 オレは掲げていた銃でヒメコの攻撃をそらしつつ、楽しそうに大技を決めようとして飛び上がったヒメコをみつめた。 この距離なら銃を撃てば余裕でヒメコの心臓だって射抜ける。 いや、たぶんチート補正でそれてしまうだろう。 だから最後の一戦とばかりにオレは銃も刀もとらず、よけることも攻撃することもせず、そのまま腕を広げてそれを受け止めた。 ザッシュ!!と嫌な音と、赤い血が飛び散る視界。それとともに激痛がオレを襲った。 2「先輩!?」ル「ガイっ!!!」 「「「「「!?」」」」」 姫「え…」 衝撃の影響でそのまま地面へとおれはふとばされドサリとたたきつけられた。 一瞬だが意識がくらりと来たが、まだ意識がしっかりしている。 かわりに痛みもじんじん伝わってきてどうしようもないが。 困ったことにチート補正とやらがきいているようで、見事に急所だ。 このまま血を流せばさすがに出血多量で死ぬだろう。 降参と言おうにももう声は出ない。 首から原まで見事な太刀筋をくらった。 抑えた腹からはとめどなく血が出ているし、首もとまで衝撃波は裂いたので喉からあふれるのはヒューという風の音とゴボリという泡。 死ぬなと本気で思った。 まぁ、それが狙いなんだが・・・。 どこかでキチガイじみたかん高すぎて耳の鼓膜が破れそうな超音波じみた絶叫が聞こえたが、とりあえずそれには鼻で笑ってやった。 ざまぁ。 ひにくにみえるように笑ってみたつもりだが、さすがに意識が遠のきかけているのか、痛みはひどいのにそれで目がさえるのではなく視界が濁っていてよくわからなかった。 手も指先から体温が消えていくのがわかった。 地面に転がっていたら、即ピオニーが戦闘の中止を言い渡し、あわてて駆け寄ってくる複数の足音とオレの名前を呼ぶ声が聞こえたのを最後にオレの意識は途切れた。 ―――ひとが『死』ぬということは 「誰かに忘れ去られたときだ」 そう、とあるヤブ医者が言っていた。 だが、その『死』が他者によって与えられたものだとしたら? そのひとが死ぬことで辛いのは、残された側か、殺された側か、殺された側の遺族か、それとも…殺した側か。 答えは――わかるだろう? もっともつらいこと。 自分が死ぬことよりも 最も大切なものを自分の手で奪ったときこそ なによりもつらいものだ ガイが好きなのだろう?なら、ガイであるオレの『死』をもって、お前がそこで『生きている』のだと自覚すればいい。 その手が裂いた肉の感触。 その手が染まった赤色は、誰の命から零れ落ちたものか。 いままでずっとお前が手掛けたものが、ゲームの中の登場人物などではなく本当に『生きていた』と思い知れ。 しっかり目に、その体に焼き付けやがれ。 あ、すいません。わるいけど、まじで誰か回復よろしくね。 まだ死にたくないんで。 すみませんすいみませんすみません>< 流血してグロい表現書いてすみません><; 最初は相手のさむすぎるガイバカ具合に、夢主1たるガイさんがうごけなくなって〜という話を描こうとしたんですが、かいたらガイもヒメコも決着がつかなくなったので変更しましたまじぐろくてごめんなさい!シリアスにしてごめんなさい>< でも夢主1(ガイ)視点の次話はかならず笑いですから!・・・たぶん(汗) これいこう、グロイシーンは『モナリザ』ではありませんので! 本当にびびらしてごめんなさい>< |