
|
01. 先輩ってさ・・・ |
side ティア成り代わりな『夢主2』
とりあえず。 あらためて“レプリカ”のティアとして、旅に同行することになりましたです。 どうもこの世界では先輩の名前は聞き取ることも発音することもできないようで、以降ガイと呼ぶこととなりました。 私はというと、一度TOAの世界にいたせいか、あるいは平行世界だからか、しっかり名前を『』と認識してもらえているので、そちらで呼んでもらってます。 じゃないとティアが二人で、面倒だしね。 さてさて。言わずともわかる気がするけど、アッシュやティア、アニスには、「レプリカ」「レプリカ」と真正面から言われ非難されまくっていたりする。 言い返すのも面倒だからできるだけ見ないふりを決め込む。 ジェイドは沈黙。たまに眼鏡を押し上げているのが…イラっときたり。 言いたいことがあるなら言えよと思う。 かくいうルークはというと、TOVの『心の中の聖騎士様』な“フレン・シーフォ”にしかみえない“ガイ”こと先輩の側にいる。 こちらのルークは物凄く博識で、自分の立場を理解しているようで、このめちゃくちゃのパーティーを見ないふりしてスルーするが、きっちり彼らの戦闘能力などを把握していてそのうえで役割を振り分け、自ら地図を見て、国と国の戦況状況などを逐一把握して旅の順路を見定めていく。 私が最初に会った時のあれは驚きすぎたせいで一瞬自分を見失ったとのことで、実際彼の言うとおり、普段のルークの言葉づかいや物腰はどれも丁寧だった。アッシュから生まれたレプリカとは思えない、どこからどうみても貴族か王子様のごとく優雅だった。 たぶん先輩の影響だろう。あのひと、子育てに慣れてるから。 真剣なまなざしで世界地図や、先輩の報告を受けているルークの顔は、すごく凛々しい。あ、王子っていうより、軍師っぽいかもしれない。 そんな一行に。+αで、『ガイ・セシル』色のトリップ少女がいる。 彼女の名前は、徹野 姫愛子(トオノヒメコ)。 TOAガイ狂いの夢見るトリップ少女であり、“ロン毛のフレン”にしかみえない先輩な“ガイ”を、目をハートにして常に追っている。 隙あらば先輩に抱き着いているが、先輩は見向きもしていない。 ・・・そういえば、先輩は彼女のようなピンクオーラを放って愛をささやかれるのを苦手としていたはずだ。自分が囁いて女性を口説くのはいいらしいが、ことのほか恋愛漫画さえ寒気が走ると言っていたのに、よくあんなにべったりくっつかれて平気だなと思ってしまった。 聞けば、そのせいで始終寒気に襲われているらしく、『心の中の聖騎士様』の騎士服の上に外套を羽織っているらしい。 なんか・・・不憫だ。 さてこんなはまとまりが一切ない一行で何をしているかといえば、ひとまずグランコクマに向かっている最中だ。 なんとアグゼリュス崩壊からそれほど時間がたっていない事実にはびっくりだ。 アッシュもいてルークもいて、イオンがいなくて――てっきり最終局面付近かと思ったが違うらしい。 さすがは原作破壊を得意とする先輩が、『ガイ・セシル(=パーティーメンバー)』なだけはある。 私が行く世界は、頑張って原作をひっくり返そうとしてもあまり大きな変更などできなかった。というか、私がそこまで活動的ではなく、自分が生き残るので精いっぱいだったためともいう。 先輩って、嫌だ嫌だ言うわりには、世界の理とか余裕で無視したり壊すから、彼が生きる世界は常に人口密度が高い。 その謎のフラグのおかげで、この世界も随分原作とは違う流れが世界に生まれているという。 まず第一に、アクゼリュスでの死亡者ゼロであること。 シェリダンやベルケンドでは爺様たちが、相変わらず日々を生き生きと過ごし、本日も譜業と戯れているとか。 もちろんヴァンの部下による皆殺しイベントは発生したようだが、あくまで発生しただけで、襲撃者であるヴァンの手駒どもを、住民たちが新手の新兵器の実験だと意気込んで逆に一網打尽にしてしまったらしい。 ワイヨン鏡窟、イオンとナタリアが連れて行かれてダアトに乗り込むイベント、ガイが恨みつらみとカースロットの言い訳をするシーンも…すべて吹っ飛ばしたそうだ。 それにアグゼリュス崩壊後すぐに、ルークの手によってすでに戦争回避のための書面がキムラスカとマルクトにも届いているから、「原作?なにそれ?おいしいいの?」状態である。 もともと先輩がいつものごり押しでもって、クリムゾンを丸めこんだあげく、キムラスカ国王インゴベルト六世には世界崩壊の危機を進言していたのが二年も前の話だというから、手が速いのか遅いのか微妙なところだ。 そうしてクリムゾンを含む理性派な貴族共が立ち上がって、インゴベルト陛下がおこそうとしていた戦争を食い止めたため、初めから戦争など気配すらなかったとか…。 うわぁ〜・・・世界が違いすぎる。 まぁ、そのかわりとばかりに、現在先輩は、年がら年中寒さに震えて暮らし、嫌な脂汗に見舞われ、腕にかせでもしているかのようにいつも彼女につかまっている…本人にとっては最悪の状態だ。 先輩のフラグって、つくづく変だと思う。 だって先輩自身が不幸だと思えば思うほど、その周囲で死亡フラグが撤去されるとか。 わたしもね、転生してからは、さすがにトラブルではなく、それに準じた「もの」――妖とか、虚とか――を呼び寄せる体質になってはしまったけど。 先輩のってちょっと…。 なんだかなぁ〜。 うん。先輩って“そういうひと”だとしか言いようがないや。 ********** 「おーおまえらか。俺のジェイドを連れまわしてくれたのは」 「……お初にお目にかかります陛下。 私はキムラスカ=ランバルディア王国ファブレ公爵が子息、ルーク・フォン・ファブレ。 このたびのアクゼリュス訪問における使節団の代表として参りました」 グランコクマの宮殿、謁見の間。 ルークと先輩が、ピオニー陛下の前で膝をついている。 ピオニー陛下のふざけた言葉にルークの眉が動いた。 それだけで反抗せずに膝をついて恭しくこうべを垂れているのは、さすが常識人ルーク。 ただし(なぜかいる)アニス、ティア、ナタリア、アッシュ、ジェイド…あと誰だっけ?―――えーっと、夢見るトリップ女子…ユメコだっけ?あ、ヒメコだ―――とりあえずその+αの金髪少女が、その場で我がもの顔で、直立不動で・・・。 ルークや先輩の態度や試すようなピオニー陛下の言葉にピーチクパーチク喚いている。 それに周囲にいる官僚たちや、ピオニーが目を見張っているのも気づいていない。 先輩がいて、常識ありすぎる軍師系ルークまでいるんだ。 間違いなく王様の前で礼儀を欠いたり、階級がおかしい人間はお呼びじゃない場所で、彼らが無罪でいられるわけない。 かくいう私は入ってないよ。 だって不敬罪になりたくないもの。 扉というか、城の前まできたときに、どうしようかなと思っていたら、先輩とここの世界の超常識人ルークに待っているよう言われたんだ。 まぁ、そのとき、“相変わらず騒がしい人たち”が、「レプリカだから当然よね」「なんでついてくるのかわかんなーい」「いい気味よ」などと大声でめちゃくちゃ嫌味を言ってくれたわけだが。 逆にお前らは呼ばれていないだろうと思わずにはいられなかったが、そのときとっさに先輩がルークの耳を笑顔でふさいでいたので、きょとんとしていたルークが可愛いかったとか、むしろ私を助けてよ先輩!とか思ったのは秘密だ。 さて。その城外にいる私がなんで彼らの状況を生中継できるかというと、別れ際、先輩がいつも着ていた黒衣の外套と一緒に、ニッコリ笑顔で渡されたものがあるためだ。 それを手に、のんびりと街のカフェでのんびりしている。 先輩から「面白いものがみれるよ」と渡されたのは、コンパクトサイズの鏡。そしてイヤホンだ。 なんだろうと思っていたら、こちらがカフェの席についたとたん鏡に映っていた自分の姿が歪み、上空から視点の謁見の様子がうかがえた。 上空視点?なぜに? つまるろころ、城の中に盗撮機が設置されているらしい。 ・・・先輩。なにしちゃってるんですかあなた。 そこでイヤホンの意味を知り、慌ててコードのさせる穴を、鏡をひっくりかえして探してさしこむ。 耳につければようやく音が聞こえた。iP○onかよ!というツッコミはこの際、先輩だからしないことにしておく。 画面の中で、ルークが名を名乗った途端、背後でナタリアが「本物のルークはアッシュですわ!」とか叫んでいるが、先輩は眉一つ動かさず無視。 向こうでは先輩が、殺気立っているのかもしれないが、カメラ越しではわからないのでありがたい。 だって先輩の殺気って尋常じゃないもの。 あんなの目の当りにしたら誰だって怖いって。 ルークを含めた周囲の官僚たちは眉をしかめて何か言いたそうだが口を開かず。 当のルークはもう慣れたとばかりに、いないものとして見向きもしない。 さすがだ。 『我らが偉大なるインゴベルト陛下より、このたびの和平およびアクゼリュス崩壊、パッセージリング老朽化にあたる事情についての書状を預かってまいりました』 華麗なるスルースキルで、すでにあずけていた書状の中身を告げるルーク。 私がイヤホンをしたときにはすでにいくつか言葉を交わした後だったせいか、普段の態度をひっこめ《皇帝》として威厳を見せるピオニー。 その青い瞳が、ルークの一方後ろでうつむいたまま顔を上げない(きっと許可が出いないんだろう)先輩に向けられる。 『ほう。っで、そちらは?』 『申し遅れました。こちらは我が国の外交官でガイと申します』 問うのはピオニー陛下。答えるのはルーク。 あれ?この世界の“ガイ”の立場は、外交官なんだ。 ガイに憑依って言ってたから、肉体は22歳くらいだっけ? 若いのにすごいな。あ、でも。先輩って中身いくつなんだろう。 それより、《ユーリの心の中の聖騎士様》姿なのに、騎士じゃないのかな。 もしかするとルークより政治にかかわっちゃてるのか、先輩は? やりそうといえばやりそうだが… 二人の許可が出て顔を上げた先輩は、上着をぬいだあの《聖騎士》の恰好で、うやうやしく騎士として礼を取った。 『御前失礼いたしますピオニー陛下。このたびは謁見のお時間をいただき感謝いたします。 私はキムラスカの軍事総指揮官。こたびの各国の和平にともなう政を一任されております』 先輩が顔を上げると、キラキラと流れるように落ちる長い金の髪。 水色の瞳はふせめがちに長い睫でゆっくりとひらく。 物凄く物腰柔らかで、凛とした口調はあの先輩からは聞いたこともない丁寧かつ品があって。 なんて綺麗なんだろう。 っていうか――― ぐ ん じ そ う し き か ん ? え? だれ? 『――ガイと申します。おみしりおきを』 『ほぅ、随分と若いな。その年で国の軍りを一任されているのか』 『みためよりは若くはありませんよ陛下』 呆然としている間にもつつがなく話はすすんでいく。 ってかちょっと待って。 本当にマジストップ! えーと、いまおかしな言葉が聞こえた気がするんだよね。うん。少し前にさ。 外交官とか、軍事総指揮官とか。 「・・・」 え?マジなんですか? ちょっとせんぱぁ〜い!? まじですか?まじなんですか!! あんた《聖騎士》…じゃなくて、騎士じゃなかったの!? 今、ルークが“外交官”って言わなかったっけ。 あれ?あれれ???? ちょぉ!先輩!!その格好で騎士じゃないとか、あ、でも軍事関係者なら騎士姿でも・・・・・・ ――って! ちょっと待て! えええええぇぇぇーーー!!? どんだけ!? どんだけなの!? 先輩ぃ〜。 本当に本当に あんたってひとは・・・。 なにものさっ!? |