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01. お互い苦労するな |
side ティア成り代わりな『夢主2』
「貴女、何なの?」 ハイ? (゜△゜;) 目の前にアビスパーティメンバー、そして不遜な態度をとる本物らしき『ティア』がいた。 え?私が“ティア”だよ。 なにこれ? これはまさかのアレか? 宿のドア開けたら平行(または異)世界でした〜。 なぁんて、ありきたりのオチなのか!? そんなん・・・あってたまるか!! ++++++++++ それは数刻前のこと―― 「ルーク様、着替えが済んでませんよ」 宿を出ると、待ち構えていたルークは、見覚えがありすぎるゲームの恰好のままへそを出していた。 いつもなら言わなくても変装するルークが、珍しい。 最初のエンゲーブ頃に比べ軽めの変装になったが、欠かさず着替えさせていたので、ルークも日常化していて外出時はもう習慣のようにやっていたのに……ど忘れしたのだろうか。 不思議に思っていたら、ルークは疑問符を頭の上にいっぱい浮かべたような顔をしてコテンと首をかしげた。 幼げなそのしぐさがあまりに自然で、あまりに無垢で、その大きな目が何にも侵されていない純粋なもので――思わず胸がキュンっとしてしまった。 こんな子犬のようなかわいらしさは、ゲームや“私が夕様と呼ぶルーク”とも違う。 私が知りうるどのルークにもあてはまらなくて、ちょっと違和感を感じたが・・・それを抜きにしても可愛い。 なんだこの癒しっ子は!? ツンデレか!?ついに萌えの到来か!?かわいすぎだろこれは!! 「えっと…ティア、なのか?」 「ごほん。失礼しました。ええ、そうですよ。どうかしたんですかルーク様」 危ない危ない。上目使いでクルリとした目でみつめられたものだから、頭にワンコの耳と背後にしっぽの幻覚が見えてしまった。思わず、もう少しで、ぎゅってしたくなるところだった。 それを咳でごまかし、いつも通りニッコリ営業スマイルで下手に話しかける。 すると、はじめルークはきょとんとしていたが、直後…鳥肌を立てて―― 「なんで敬語?!きもっ!!」 ザザッ!と勢いよく距離置かれた(滝涙)。 なんでさ。 私、普通にやってるだけなのに。 ルークってばどうしたの? 可愛いしぐさをするし、かなり無垢でいい子かと思いきや、やっぱり口悪いし。 ティアに成り代わった私は旅のはじめから一緒にいるんだから、今更なのに。 私、ちょっと傷ついたよ。 しかしその疑問はすぐに解決することとなった。 「ルークどうしたの」 タイミングよく遅れて登場するヒーローのごとき現れたのは、ティア。 まさしく今の私と鏡のような、もとい、久方ぶりに目にするダアトの茶色の制服をきた ――ティア・グランツ。 ご本人様のご登場です! あ?なにこれ?どんな状況? そして冒頭に戻る。 「貴女、何者なの」 このいかにも“下賤なものは見るのも嫌と顔だけで訴えるお貴族様”のごとき斜め上から目線に、とげのある口調。 そしてデカ乳。 間違いなく、本物のティアだろう。 ルークがちょっとかわいい雰囲気があるけどロン毛のままだし、よくわからないけど、可能性としてはゲームに忠実な世界かもしれない。 そうなると、扉を開けたら異世界。とか、平行世界とかそういうオチだよね。 だって振り返っても宿の扉がない。 (つまり…ここは原作軸のどこか…ってことだよね?むしろそうであれ!!) …何かしらの切欠でトリップとかしたんだろう。理屈は気にしない。 気にしたら負けな気がするから。 それにしても、なんてあからさまな視線なのだろう。 服装も髪型も中身も違うとはいえ、自分によく似た存在を警戒しているティアと、 うん。やっぱりジェイドとティアの眼力が怖い。 ああ、でも。 (どうせなら) 「貴女のレプリカですが何か?」 と、いってやった方が、普通に名乗るより百万倍面白いだろう。 引き離された双子設定や、平行世界のティアというよりは真実味あるだろうしね。 まぁ、ぶっちゃけ髪切っても音素化せんがな(当然だ)。 レプリカ。その単語ひとつで、一瞬にして皆に動揺が走る。 ルークは一瞬表情を曇らせうつむいたが、すぐに顔を上げると、私の行動の何一つ見過ごすまいとするかのように、まるでこちらを見定めるように、その綺麗な翡翠色の瞳を私にまっすぐと向けてくる。 挑まれているようにも監視されているようでもあり、純粋な“みる”という行為には、自虐的な雰囲気もマイナス思考の片鱗もどこにもなくて思わずほっとする。 そんなルークとは打って変わってアッシュは、苦々しい顔をして剣にある腰に手をやっている。しかもあれが無意識だろうから、よほど『レプリカ』への反発意識が強いんじゃないのあれ。もし暗示にかけられていたとしてもこうして一人自由に動ける意思があるのだから、暗示などという言い訳は通用しないと思うのに。つまりこのアッシュはもとから性格破綻者ってことで決定ってことで。 人の心理を突くとか人の気持ちを察するのは、どこぞやで転生人生を面白おかしくまっとうしていそうな先輩がむいている。 私がわかるのは、“私が”その態度に「不快」になったということだけ。思わずアッシュではなく、こちらの眉間に皺がよりそうだった。 私がここに現れてから一度も口を開いていないジェイドは、ずれてもいない眼鏡を押し上げて、無表情で動揺を押し隠したように、手を開いたり閉じたりと(槍でもだしたいのか)なんかせわしない。そうそう『レプリカ』は、貴方にとっては過去の抹消したい汚点でしたね。あっはっは、いい気味。もっと悩めばいいのに。もちろん怖いから口に出したり笑ったりなんてできるはずもないから。心の中だけで叫んでみる。 アニスはあの子供特有の声で「また偽物なの!?」とか騒いでいる。 彼女の側にいたナタリアは、これまた特殊なことをしている。「ル、アッシュ…」とか、心配そうに祈るように手を組んで、アッシュをみているのだ。いや、この場合は普通心配げに見つめるべき相手はティアだろう!?なぜにアッシュだ?まさか、アッシュがレプリカのことで心を痛めているに違いない。とか、そういうオチだったら、私、ここでペルソナ発動して全員吹っ飛ばして逃亡してもいいかなって微妙に思う。あ、もちろん聞きたくもないから、そんな野暮な質問は口には出さずそのままスルーしたが。 そこで私はふと一人メンバーが足らないのに気付いた。 ルーク、ティア、アッシュ、ナタリア、アニス、ジェイド。 ゲームのなかでイオンがいないときもあったから問題はないけど、このメンバーがそろっているのにひとりどうしてもいない男がいる。 ルークの保護者と自称する幼馴染み兼護衛剣士である金色がいない。 もしかするとゲームでいうなら前半にあたる、タルタロス前なのかと思ったが、でもアッシュもナタリアもいる。 どうもレプリカ事情まで知っているようだし、やっぱり後半あたりなのだろう。 だからこそいないのはおかしい。 ・・・そういえば、前世の親友である先輩は、『ガイ・セシル』が嫌いだったな。 というか、あの先輩は、テイルズシリーズ史上ことのほかアビスを嫌っていたから、まぁ、不慮の事故でもない限りあの人がアビス世界にかかわることはないだろうと。 唯一姿が見えないガイを探して周囲を見渡せば、すぐに、離れた位置にその人を見つけることができた。 金髪に青目。細身の剣をみにつけた―― ん? このメンツで本来該当する『金髪青目』はガイ・セシルただひとりだ。 金髪ならナタリアもそうだが、彼女の目は明るい若草色だ。 しかしなぜか私の目前の人間は、明らかにガイの特徴を持っているが、どうみてもガイじゃない。 金色の髪胃はふんわりとウェーブがかかっていて肩よりも長く、目の上はばっちりマスカラ使用の大きな目。いまにもバサバサと音がしそうなまつ毛は濃い。 てか、自然な長さに思えないマツゲのバッチリ感でマスカラしてるのがまるわかりだ。 化粧も薄くしていて、頬はうっすらピンク。 唇はぷっくりやわらかで、口紅だかグロスのせいか、グロテスクにテカテカ油っぽい艶がある。 この世界にも化粧品ってあったんだね。 そして顔から徐々に視線を下ろしていく。 胸に視線を向ければ、うっすらだが、そこそこ形のいい胸のふくらみが二つ。 ガイはスパッツだったが、そいつがはいているのは、ふんわりしたミニスカに膝丈上のスパッツ。 足、細っ。しかも内股・・・。 あからさまに女にしか見えないんですが。 だけど色は私がクリアしたゲームや、いまのいままで一緒に旅をしてきた『ガイ・セシル』そのものだ。 ってことは。もしかして、もしかしてなのか? もしかして彼女はこの世界の―― 「ここのガイは女なのか」 思わず心の声がもれた。 それでもボソリとしたものだたので、周囲には聞こえなかったらしく反応は返ってこない。 っと、思いきや 「オレとこの女のどこがソックリだって?」 ベシッ!! 「いっ」 突如頭を小突かれた。 音もそこそこしたが、実際のところ痛みは一切無かった。ただ、いきなりの衝撃に驚いて声が漏れただけ。 だったのだけど 「……え」 こんな器用な芸当をしてくれたのは誰だろうと、後ろを振り向いたら、腰近くまではあろう長い髪をポニテにした――― 「フレン・シーフォ?ってかユーリの?え?だれ?」 黒い外套を羽織った下は、黒と白を基調とした騎士のようないでたち。まさしくユーリが着ていた『心の中の聖騎士様』のようだ。 その手にはなぜかTOVのリタのように分厚い本が装備されていて。 長い金髪は頭部で結ったポニーテール。 そして青い目の・・・たぶん男と思われる美人さんがいた。 なんだ。この同テイルズシリーズのフレンとユーリ(『心の中の聖騎士様』バージョン)の特徴をミックスしたような人物は。 …しかし今さっきの声だと 「そのチョコレート色の髪……服は違うが、おまえ“ティア”か?」 ああ、ほら。やっぱりガイだ。 そういやガイの容姿って、フレンと顔立ちや髪色が似てたな。 しかし目の前の『ガイ』だと思われる人の目が、ガイより大きい気がする。 いや、変だって意味じゃなくて、それはそれでフレンに似て丸みがある。というか、もっと穏やかに見えるというか、年上ならではの抱擁感があるというか、ぶっちゃけ可愛い系だけどさ。 そのガイはものすっごく訝しげな顔で「フレンだと…」と、それが“誰か”知ってるかのようにブツブツとひとりごとをつぶやいている。 そして彼(彼女?)は、この世界のルークと私の対面の時のごとく、私の方をジィ〜〜〜ーと見てきて、どことなく幼さの残る顔を真剣なものに変えて、観察者らしい険しい目で見つめてくる。 「ふむ。こちらにいるティアとは違って武器が両手剣、ね。 しかもオレの姿を一目見て“フレン・シーフォ”と言ったことも然り。“ユーリの”という発言からして、お前、ユーリの『心の中の聖騎士様』をみたことあるだろう。 服や髪がまったく違うけど、ティアに間違いがない。っと、すれば、TOVの関係者がトリップと考えるより…先程の台詞からして異世界者か?それもテイルズのゲームをそこそこやっている、な。 ああ、そうか。そんな格好だったから気付かなかったが。 この纏ってるオーラからして――お前、だな」 「……そのうんちくの長さ。も、もしかして…先輩?」 「「……」」 長い。長すぎる。 相変わらず些細なことからいろいろ気付いたり理論を組み立てるのはすごいけど、推理ショーみたいで自分が第三者ならきっとうきうきと聞いていられたんだけど。 あの理論の組み立てや推理ショーを淡々と実際にやってのけたあげく、決め手が理論整然とした前半のそれではなく、突拍子もない“オーラ”というところとか。 なんか最後のあれでかっこよさもすべて台無しになって憧れとか尊敬とかがことごとく崩れ去ったたあげく、私の本名をあてるような人間を――私は『先輩』しかしらない。 っで、さっきの「ここのガイは女なのか」「オレとこの女のどこがソックリだって?」という会話を振り返るに、どうやら先輩はこの世界の『ガイ・セシル』であるらしい。 『ガイ』といえば先輩が『害虫の“害”』と言い切ってやまないあの嫌いなキャラランキングの上位者だったはずだけど…。 ナルホド。 成り代わりですね。 「…ガイに転生とか相変わらず変なところに『残念』を発揮しますね」 「正確にはヒョウイ。そういうはメロンかよ」 言われて改めて思い出す。 どうやら私も先輩もどっこいどっこいのようだ。 「「はぁ〜」」 二人同時にため息が出ました。 |