[有り得ない偶然] 復活 → TOA



06. 使用人と大いなる七番目の夢





 side 『夢主1』





 この前、“ガイラルディア”でも“ガイ・セシル”でもなく、ただのガイとしてインゴベルト陛下に面会がかなう機会があった。
ってか、オレが頼んだんじゃないがな。 向こうが来いと言ってきたのだ。

なんで使用人であるオレが、城に呼ばれたのかはわからなかったが、 目をかけているお子様クリムゾンの頼みだし、彼の面子もあるのでしかたなく面会という名目の「出頭命令」に応じた。



「この者がいままでの政策案を?」

 礼儀にのっとって、謁見の間で顔を上げろと言われるか、口を開く許可をもらえるまで待つ。
膝を着き、静かにうつむいていた。
そうしたら困惑したような王の言葉。そのままオレは放置で、王はこの場にいるだれかに言葉を投げかけ、そのまま相談を始めてしまう。

オレ、放置ですか!?

ってか、いまの話こそ意味わからないよ。
オレの言いたいことは、いまはひとつ。

なんだそりゃ?――である。

 いつ、どこで。オレが貴様の政治的案件に口を出したというのだろう。
貴様の国は貴様の国だ。
勝手にのたまって、玉座ごと共に腐れ落ちればいいが、国は道連れにしてもせめて国民だけは道連れにするな。
そんなふうに、命を簡単に考えることじたい許せないが、その前に救える命があるならば、散らせることはオレが許す気はない。

 そんなこんなで国民に協力をしようと思いはしても、目の前の王に対してオレはなにも協力などしていなかった。

―――していなかったはずだが?


 まぁ、いい。

なにせ、ファブレ公爵が口を開く前に、それをさえぎるようにうるさい第三者の声が響いたのだから。

「陛下!!なんですか!その薄汚い使用人風情は!?いまはわたしとの謁見中のはず。偉大なるユリアの予言を無碍にするつもりなのか!?」
「あ、ああ。すまないモース」

 顔を上げず、チラリと視線を軽く向けると、苦い顔をしたうちのぼっちゃ…クリムゾンがいた。

高さが違うし、顔をあげる許可が出ていないから、チラ見で見えるのはせいぜい足先だけ。
それでも王以外に玉座の横に人影が見えて、やっぱりため息が出そうになった。それも特大の。
なんで玉座の横に豚がいるの?なんでファブレ公爵がそこにいない。

余計なことを喚くしか能がない豚は、誰の許可も得ず啼いているというのに。
本当に民を思いやる者が口を開くことさえ許されないとは―――キムラスカ終わったな。

やれやれだ。


 呼び出し状に従い出向いたら、その場に偶然モースがいた。
呼ばれたのはオレのはずだが。
なぜモースがいる?
そう視線だけでクリムゾンに問えば、やはり強引にはいるやいなや、好き勝手に予言だからああだこうだと喚きだしたようだ。
 つまり客はオレ。謁見への乱入者はモース。という公式になる。
っが、しかし。そこは玉座の手前。権力がものをいうらしく。所詮使用人でしかないオレの立場は低い。

しかもオレが以前忍び込んだときよりモースの身勝手さがでかくなっている。
最悪だな現状が。


 クリムゾンお得意の無表情鉄面皮の眉間に皺が刻まれていくことから、あいつはやはりこの状況をよく思っていないようだと―――オレの判断は間違っていなかったと安堵する。

キムラスカの最後の砦は、彼、クリムゾンだと。

 そもそもこの場合、階級ってどうなっているんだろうか?
モースがいると階級とかないようにみえるから、世界の情勢がよくわからなくなる。
もともとオレは異世界の住人であり、乗り移ったとはいえ“ガイ・セシル”として生きてきた分の記憶や知識があるわけでもないので、この世界のことなんてゲームの内容とこの数ヶ月間で学んだことぐらいしか知らない。
常識とか他の知らないことは、自力で学んできた。
ルークと一緒になって少しは勉強をした。
勉強嫌いだから、あまり深くはやってないけど。
そのなかにもあったとおり、本当なら『ここ』は階級を重んじる場所・・・であっているはずだ。
 それがなぜ他国の豚が、この場をのっとっているのか。
 “呼ばれた”ってことは、わざわざ陛下という地位を持つ国のトップが、自ら、オレのために時間を用意してくれたはずなのに、なぜかモースが予言を盾に話し続けている。
王に“呼ばれた”オレって、まがりなりにも客じゃねぇのかね?っと、いうより、この場にオレは必要ないならさっさと帰りたいんだけど。
陛下がモースと話しているのなら、オレっている意味ないよね。


 ほんとうにこいつらは――


『カスどもが』

 相変わらずの笑顔でさらりと罵倒という名のイタリア語でののしってやったら、意味を理解してしまったらしいうちの赤毛坊ちゃんが、横で顔を青くしていた。
しかたないので次からはドイツ語でも使おうと思った。
 思わずでたのは、XANXASを髣髴とさせるような予想外に低い“ガイ”の声。
それはピーチクわめくモースの口もピタリととめ、他の者全員が口をつぐんでいたこの静かな空間では、思いのほかよく響いた。

ごめんクリ坊。オレ、もうつきあってられないわ。

突然わけのわからない言語が響き、よくあれだけ舌を動かせると――思わずその舌を引っこ抜きたくなる――思っていたモースさえポカーンとした間抜け顔でしゃべるのをやめる。
それには、いい機会だろうと、オレは許可もなくその場にスッっと立ち上がるとニッコリと笑いかける。

「御前を失礼いたします陛下。
許可なく口を挟むこと、頭を上げたこと、ともにおゆるしください」

 一応礼儀として、許可されていないことには始めに謝罪を入れておく。
でなければ、あとあとそれを言い訳にグダグダ言われても困る。
お前はモンスターペアレンツか!とつっこみたくなるなうような容赦ないバカバカしい追及に身をさらされたくないから当然だ。
 ほんの数か月前まで、オレはとある格式イタリアXANXASを演じていたがゆえ、どうも気に食わないものには物を投げるか燃やすかしないと気が晴れなくなってしまっている。
ついうっかりと、対象を燃やすなりなんなりの攻撃をオレがしてしまうことがないように、そう思っての事前許可だ。
 あまりオレを不快にさせるなよ。
オレの理性が切れかねない。
 オレが律儀に、ボンゴレの裏方ボスにして先代ドン・ボンゴレの義息子として学んだ社交界マナーとボンゴレ大空&ヴァリアーのボス的オーラでもって、そのあとも貴族らしさを熱演して、さらに後生丁寧に挨拶を続けた。はじめの立ち上がった詫びとは違うそのながったらしく遠回しな挨拶を終えると、壁際にいた貴族だか官僚だかわからない髭やら皺やら兵やらがホゥっと息をつくのが聞こえた。
なれって怖いね。
暗殺部隊の殺気にはなれるし、腹黒い綱吉らの笑顔にも耐え続けているオレが、バカどものやっかみやたかだとか、たかだか王ごときにひるむはずがない。
 むしろひるましてやろうか?と、こちとら椅子に座っていればいいだけの玉座ではなく、血で染められた玉座を守るマフィアだ。常に戦場たる裏世界。その最前線に立つ舞台――そのさらに実力集団である暗殺部隊ひきいてたんだぞ。とか、内心いろいろ思っていたりするが、それをやると某海賊世界で学んだ『覇気』なる技が無意識に出そうなので、それで気が狂ったり倒れられても話が進まないだけなので抑える。

 この世界、トップがぬるいよ。
せめて“うちの綱吉”ぐらい腹黒くならなければ、玉座にはすわってほしくない。

 『予言』――その言葉ですべて片付くんなら、オレが予言と称して戯言を語ったら、彼らはあっさり信じるのだろうか。


どうでもいいけど。


 誰かが傷つくのは、心の整理が面倒だから本当は嫌いだ。
だけど、自分が楽しみ、らくし、平穏を得るためなら、他人をおちょくったりいたずらかけたり、発破ぐらいかけてもオレの心は痛まない。



 そもそももうじきこの世界は壊れる。
これは必然だ。
『ルーク』っていう存在がどこかで、死ななければ救えやしないのだ。
 だってこの世界は『ルーク』を救おうっていう考えがない。原作知識からだけど。
たとえばレムの塔。振動を止める装置とか作ったり、瘴気が身体にあるとわかるだけの技術があるのに、他にも探せばいくらだって方法があるだろうに、目の前にレプリカであるルークがいるから、ルークに世界のために死んでこいという。
そのとき人々は別の方法など一切探さなかった。
時間だってまだ幾分かはあったであろうにもかかわらず。
つまりこの世界の中では、予言に読まれているから『ルーク』はいつか死ぬべきで、いつ死んでもいい。っと、まぁ、そういうことだ。
 きっとこのままいっても人々は、ルークを助けるという決断を下すことはない。
それで後で後悔しても、それは自分への言い訳に過ぎない。

 何が言いたいかというと、世界崩壊=たかだが一年というハードな旅をこどもたちにやらせてルークが死ぬ時期が、あと二年ばかしと“近い”のだ。

 一つでも失敗すれば世界はすぐに壊れるだろう。

 ローレライは、ゲームの終焉で「未来を覆したのは賞賛に値する」だとかなんとか言っていたが、つまるところ―――
ユリア・ジュエ。予言を詠んだだけで予言によって生まれた譜石を破壊するでもなく、惑星救済の対策一つ考えもしなかったらしい彼女にせよ。
星は終わるのだと信じて疑わず、『ルーク』に死んで自分を解放しろというローレライにしろ―――――“彼ら”からしてみれば、世界はどうでもいのだろう。

そうでなければ、何もしていないのはおかしい。

 大地を地上に浮かすだけの技術が当時からあったのにもかかわらず、彼らは何もしていない。
振動を止める技術が近年、禁書で発見されるということは、すでに振動によって大地が液状化することも振動が原因であることもわかっていたはず。なのに、だれもなにもしなかった。
それは“そういうこと”なのだろう。

 精霊であるローレライには、ひとの感情を期待しても無駄だ。
あれは身勝手にもほどがある。
あんな音素ごときに意識があるのが間違っている。
 ユリアにいたっては遠い未来のことだ。自分の残した言葉に、世界が操られて考えることを人々がやめようと、気にもならない。

当然だ。

そうでなければ、こんな中途半端に惑星予言なんか残さない。

 そもそも予言に頼ってるのは人間だけだ。
それで滅びるもなにもあったものではない。
すべては人間の都合だ。
外郭大地もしかり。第七譜石による戦争で厄病が〜とかも、すべて人間の都合だけを詠まれた未来。
それが“予言”だ。

 外郭大地だって、持ち上げたりする技術や暇があるならさっさと瘴気を消せばいいものを。結局は人間の都合だけで大地は持ち上げられ、地面の下の世界は閉ざされ、太陽も大地もすべて奪われ、地殻に残された瘴気により生物たちは死に絶えた。

 いつどこで動物が、魔物が、予言を詠むだろうか?

 空を飛ぶ鳥は予言を聞いて風に乗っているのか?
魚は泳ぎ方を、敵の襲撃を予言で教わるか?

答えは否だ。

鳥は己の感覚で風を捕らえ、魚は水流をよむ。魔物は本能に従い森を疾駆す。
かれらにしてみれば、生きるということは常に身を守ることを考え進化を続けているということだろう。

 そう考えると、はじめに世界を見捨てたのは、予言を中途半端に詠んでそのまま放置したユリアだ。
それは聖女とうたわれた人間の行為ではない。
そもそも予言があったからフォニムウォーだかなんだかの戦争が起きたんじゃないのか? その辺は詳しく知らないし知りたくもないが、所詮彼女は“ただのひと”だったということだろう。
 別に聖女などになりたくてなったわけではないし、馬鹿でかい空の譜石も偶然発生してしまってどうしようもなかったのかもしれない。
それが“たたのひと”であるということ。
だけどそれではすまされないのが、その予言に不吉を詠まれた時代の人々なのだが・・・。

予言にあったから詠んだだけ。

そんなんじゃダメなんだよ。
そんなことで、戦争を起こすなんて――オレは嫌だ。

 ローレライは、ユリアとは違って、戦争にもあまり興味はなかっただろう。
あれは“ひとではない”から、深く歴史に関わろうとはしない。なにも望みはしない。

予言に最も近き聖女と第七音素意識集合体たる二人が、人の存亡を望んでいない気がする。
―――とうに、何かを・・・。

彼らは諦めてしまっていたのかもしれない。


だから世界は“今”に導かれた。



『本当にこの世界はめんどうだ』
「ガイ?」

 世界が滅びるとき、そこに生きているものたちは「生きたい」と助かる道を探す。
それが普通だし、この世界の元となっている“オレの知識であるゲーム”でも、そうして世界救世の旅に主人公達は行かされていた。
しかしオレは、ぶっちゃけ、ユリアたち同様に、この世界の救世には興味はないのだ。
面倒だし世界も変える気もないし、たとえオレが“ガイ”という立場にたっていたとしても、あの原作パーティーにだけは加わりたくないし、やるなら・・・自分の世界は本来そこに生きているものたちでどうにかしろ。と言うのがオレ的な本音だ。
そもそも実質数日で、泥の大地と化した原因を止める装置が、原作知識の中では作られていたんだ。
時間があれば、世界ぐらい余裕で救える装置を山のように作れるだろう――と、思わずにはいられない。


 っというわけで。
立ったまま固まる赤毛坊ちゃんをよそに、オレは笑顔をにっこり深め――

陛下に「世界を救ってね“ガイ”のかわりに」と――

これから“おこるであろう”ことを語って聞かせた。

 丁寧な言葉遣いって面倒だ。
だけど【復活】世界にて“二世代分の裏社会の王”の側にいたオレとしては、ここは相手を認めさせるだけの振る舞いが必要と判断する。
むしろ話を聞き流すでもなくきちんと心に留め、言葉の意味や世界についてをより考えてもらうためには、オレが彼らと同等かそれ以上の存在であることを印象付けなければいけない。
使用人でしかないオレに権力はない。だが周囲に言葉を届けなければいけない。
この場で呆然としている彼らの中で、その心にオレという存在を残す必要がどうしてもあった。世界のためにとでも思えばいい。
そうしなければ、オレの発した言葉は届かない。
 まずは仕草や口調をきっちりとした貴族らしいものにし、あとは威圧感か大空の包容力、理論の正確さ。などなど。
とりあえずまっすぐくる王から視線は反らさない。
横槍を入れてこようとしたモースは、視線にちょっとばかし気をこめてだまらせた。
そうしたオレの仕草に、周囲からさらに微妙なざわめきがおこる。
クリムゾン以外の者達の顔は、それにともない青くなっていたり様々だ。
やっぱり格と品位の違いだろ?
怒鳴っているだけでは、それは我侭な子供と何一つ変わらない。
なにせ口汚く予言予言と唾を吐き飛ばし、立場もわきまえず一国の国王の居る上座まで上がるような恥知らずとはちがって、オレは礼儀をきちんとこなしている。
むしろ王がモースをとめられないこの状況は、どこからどうみてもキムラスカがダアトの配下に下ったようにしか見えない。
だからインゴベルト陛下はダメだとさっさとオレは見限って、以前クリムゾンにのみ真実を語ったのだ。

オレとの格の違いって奴を、少しはその身に刻めばいい。とくにモース。



 今は奴らにダメージを与えてさっさとトンズラをここうというオレの都合もあるので、うちの坊ちゃんにのみ聞かせた真実をはしょって話している。
陛下もモースも二人とも目がくもっていらっしゃるようなので、バカでもわかるように柔らかい言葉で簡素に語ったよ。

「世界は滅びます。だから予言は六つしかないんですよ〜。笑えますよね。だったらいい加減目を覚ましやがれ」っというのが内心。

それを懇切丁寧に、貴族ならではの遠まわしの言い方をしたオレをほめて欲しい。
決して脅してはいないし、恐ろしいと評判の営業スマイルじゃないはずだ。

簡単に言うなら「予言なんて戯言にかまわず世界を救えよおんどりゃぁ」っとこの一言で済むんだが、やはり身分ある者との会話っていろいろ複雑なのだ。
慣れてるからいいけどさ。

っが、しかし。

ここまで語ってもわからないようだった。
 馬鹿か?パッセージリングの賞味期限が来てるので、てめぇらが死ぬぞ。死にたくなかったら対策練ろうや。と言っているだけだろうに。
 ので、覚えている限りの予言突きつけてやることにした。
モースが青い顔していたり何か騒いでいたが、知ったこっちゃない。 世界を壊したければ壊せばいいんだよ。と、さっきから言っているだろう。
 ぶっちゃけオレは、この世界をまるっとぐるっとすべて嫌いなので、このまま滅びようと本当にかまわないし、それでオレが死のうがね。いいんだよべつに
むしろこの世界に来てそれほどたっていないから、愛着も薄いし。
たしかにぼっクリムゾンはさ、いつのまにか自分の子供でも面倒見ているような気分になってはいるし、レプルークは可愛い孫みたいだけど。
それはそれなんだ。
もう呆れを通り越して達観しすぎてしまい、この世界で自分がいつ死んでもいいかなとか思うほど、オレのその症状は実は酷い。
いつもなら転生してしまったら、生きたいと足掻くだけ足掻くのだが。
今回はもうどうでもいいから、好きにすればという気分であるのは間違いない。

それほどオレは【TOA】なる世界が嫌いらしい。

 進んで死にたいとは思わないが、こんな微妙な時期に放り出されて“ガイ”として身分も特別な力があるわけではないたかが憑依しているだけのオレに、なにができるわけでもなし。

「『・・・〜にマルクトの病は一人の男によって持ち込まれ』」
「ええい!嘘をつくな!!そんな予言きいたことない!陛下、これは罠です!!」
「し、しかし・・・」

「・・・・・・信じる信じないは勝手ですよ」
ニッコリ。

 だって信じないなら、てめぇらは死ぬだけですから。
 あ、どうせ生き抜いても惑星の生物すべてが滅びるなら、可愛そうなルークやレプリカっこたちは、アグゼリュス前には誘拐でもしにいこうかね。
そんで短い人生を面白おかしく過ごさせてあげようか。
それならオレも楽しそうだし、原作破壊とかじゃないけど、面白いことになりそうだよね。
シンクとかはどうやって連れてくるかな。
被験者とかのしがらみとくのは手ごわそうだが、ヴァンと一緒にいさせたくないから強引に誘拐しよう、そうしよう。


 っというわけで、オレはそろそろ本気で出家(シュッケ)します。
王族なんか嫌いだもん。

カスはカスなりに宇宙の藻屑となればいい。


 そんなわけで
モースさんに特別プレゼント!

 名付けてオレ的予言。
そんなに予言が好きならオレが、お前の為に予言を詠んでやるよ。



「モース様、一つだけでかまいません。どうかわたしの知る予言を聞いてください」




ND2018
予言にとらわれたし 大詠師は
栄光なる者の手を取り
自らを陥れ精神汚染により化け物となる

その後、大詠師だったものは
予言におぼれ
とめるユリアの子孫の最後の声を聴かず 最後のチャンスを失うだろう

そしてかのものは予言によって殺される

ローレライを取り込みし 栄光なる者
ローレライの愛し子によりやぶれん

七番目の音素
夕焼け色の聖なる焔のにより解放される

これを機に世界から第七音素は減少するだろう
しかし世界の崩壊は免れるであろう

崩壊が免れし世界
そは星の記憶よりはずれし世界



ND2020
二人の聖なる焔の光 いまだ戻らず
焔の光なきままに
光の王都にて 空虚なりし成人の儀が行われる

始まりの谷で
聖女の末裔が子守歌を歌い
ひとりの聖なる焔の光が舞い戻る




 ゲーム知識です。

 オレが覚えているのは、せいぜいが年代。
月日までは覚えていない。
予言をかたって告げたのは、ゲームが辿った“予言から外れた未来”。
別の世界で辿った物語だとはいえ、それはある意味もう一つの未来だ。
なら、今告げたのもまた予言といっても問題はないはず。


 ふとみると、周囲にキラキラと緑っぽい光が舞っている。

「予言が譜石となろうとしているか」

させないよ。

いまのを予言として世界に取り込んだら、世界は別の修正力を働かせるだろう。
オレは一つの石になろうと収束していく緑の光に手を伸ばす。

予言を詠んだらすぐに石になるはずのそれ。それがいつもより遅いのは、“レプリカ”の予言を詠んだからか。
あるいは“別の世界”の未来であったからか。

原因はさだかではないが、まちがいなくオレの発言を世界が予言として変換しようとしているのが感覚でわかった。

 前の世界で、世界を支える柱のひとつの側にいたオレにもまた、『世界』に関わることはよくあった。
トゥリニセッテ――あの世界の世界を支える柱。
その大空を守るために、オレはあいつらの側にいた。
世界の柱の『縦軸の継承者』ドン・ボンゴレ九世と十世の傍に。

世界の柱の“側にいた”――その責任は、“この記憶”が続く限りあるのだと思う。

 輝く緑の光に手を伸ばす。
オレはその場にいた全員から視線を向けられているのを感じつつ、口端を持ち上げ――

「散れ。大いなる七番目の夢。
まだ“そのとき”ではない。夢とならず無に還れ」

 使えるとは思ってはいなかったが、手のひらに『大空の炎』がともる。
オレの手のひらの上でその橙色の炎は弾け、終束しかかっていた緑の光を包み込み、光と炎は相殺されて消える。
 オーラ、魔力、覇気、霊力、チャクラや覚悟の炎、音素。別の世界にあっても必ずあったソレら。ソレらは、どこにでも、姿を変えて存在していた。
それらは、常に世界にあふれ、世界をめぐらす力となりうるもの。
転生をしまくっているせいか、“そういうもの”にオレは酷く敏感だ。
そのオレの感覚で、もうここに第七音素が集まっていた形跡がないを確認し、ほっとする。

 やれやれだ。
この世界は“力ある言葉”が“形”になりやすいようだ。
少し言動に注意した方がいいかもしれない。


 そこでようやく周囲に意識を戻すと、唖然として口を開いたままの上流階級の奴らが目に留まる。
 予言を消したとかいうツブヤキが聞こえたが、パフォーマンスぐらいに思ってもらえればいい。
もともとオレは奇術師だ。
なによりオレは『この世界の』守護者ではないし。

それに・・・

いまのは“まだ”この世界には必要ない予言を生み出してしまいそうだったから、“星の夢”になる前に、「ないもの」にしただけだ。

 そんなオレに呆然としたまま固まっているモースとインゴベルト陛下を見る。
まじめな顔で視線を投げかけたのに。あんなへんちくりんな顔で、口をあけたまま固まられては、笑いたくなってくるじゃないかと、笑いの衝動を必死で抑えるべく顔に力を込めて無表情を保つ。



「さぁ。お二方選択を」

 もう丁寧な態度など不要だろう。
相手は混乱しているようだし、なにより今が一番のチャンスだ。オレを彼らの上のものだと印象付け、オレの言葉を彼らに届かせるためには。
だから次に必要なのは、強い言葉。そのためには丁寧語や貴族らしい態度も邪魔だ。


「いまのは」
「な、なにを」

「“星の夢”が悪夢を見る前に、優しい子守唄で穏やかに眠れと――そうしたにすぎない。
さて。陛下、それにモース。
あなたがたは国を支えるべき上位者だ」

なにをすべきか。
考えるべきなのだ。

「そのまま聖なる焔の光を犠牲に世界をとるか、予言に従い己の死を待つか。
それとも第三者の選択を選ぶか」

 なんかインゴベルト陛下が、さっきとは違い、物凄くすがるような目でみてくる。
モースが困惑と憎しみの混ざった眼で睨んでくる。
なんでそうオレに視線で訴えるんだ?
オレは妖怪サトリじゃない。
口があるならいってくれないと困る。
せっかく口があり言葉が通じるのに。
人間ってもったいないなぁ。
助けて欲しいなら、助けてと言えば手を出すぐらいしてやってもいいかと思えたが。

「死にたくなければ戦争をしなければいい。
死にたくなければ世界を救えばいい。
死にたくなければ“周囲”を見ればいい。
それだけだ」

 オレになにを期待しているのかは知らないけど、うん。その視線自体うぜぇ。自分で考えろよ。未来なんて自分で掴み取るもんだぜ。

今、“定められかけていた”もう一つの未来は、まだ存在さえしていないのだから。

予言や未来は、変えようと思えば変えられる。



「では。皆様。わたしはこれにて」

 その場にいた人たちが固まっているのをいいことに、このまま出家だフィーバー!だぜ!っと、思って足早に城をでる。
城の門が見えなくなりかけたところで、「待ってくれガイー!」という、うちの坊ちゃんの声が聞こえた。
聞こえた瞬間「オレは何も聞こえない聞こえない」っと、優雅な早歩きをやめ、醜聞さえ問わない物凄いダッシュでファブレ邸へ走って戻った。
そのまま少ない荷物をぐわっ!っとまとめ、リュックを背負い飛び出そうとしたら、息を荒げつつ追いついてきた坊ちゃんにとめられた。
 そこへ騒ぎに駆けつけてきたルークが「ルーク!ガイをとめてくれ!」と声を上げたぼっちゃんの言葉に、目をきらっ☆きらっ☆っと、輝かして飛びついてきた。
またコアラだ。
そのままルークに抱きつかれ身動きができなくなった。





**********





 “ガイ”になりかわって、シュザンヌ様の容態がよくなるまでの契約があっという間に一ヶ月、半年とのび、あれからもう八ヶ月突破。
まがりなりにも『陛下』と呼ばれる人間に啖呵きった手前、このまま逃げないでいるわけにはいかない。残れば不軽罪で死ぬじゃないか。
だからきりもいいし逃げようとしている。
っが。クリ坊に捕まった。
ルークを味方につけて、オレを捕えるあたり切羽詰ってるなと思う。


 そのままルークとはわかれて、オレは青い顔のまま坊ちゃんの執務室にひっぱられた。

「たのむ!たのむ!!いかないでくれガイ!」
「断る!!」
「そこをなんとか!お前がいなくてはこの国は」
「いやだ」
「そこをなんとかたのむガイ!」

「こんのっ・・・」

「ガイ?」

いいかげんにしろや、ごらぁっ!!!

っと、騒ぐ坊ちゃんをしめて、インゴベルト陛下が待てと言ったり、亡命して逃げたことにするぞとか、予言に逆らった犯罪者あつかいするぞとか、指名手配にされてもいいのかとかいろいろ言われたけど―――すべて無視して、笑顔でファブレ邸にさらば!とわかれをつげてさっさと脱走に成功した。





 ファブレ邸のメイドさんや使用人、白光騎士団のひとたちはみんないいこだね。
シュザンヌ様やルークまで見送りにきてくれた。
公爵どうしたって?ああ、坊ちゃんならどこかの部屋で気を失っているんじゃないかな?

「あっはっは。それでは八カ月という短い間でしたがお世話になりました〜」

「ガイ様、お元気で!」
「たまには戻ってきてくださいね」

「気が向いたら〜」

笑顔で出立。笑顔で見送り。

うん。さすがオレ。
もうみんなオレ=“ガイ・セシル”ってことを完全にわすれたようで、態度が違うよね、態度が。
とくに、みんなにまた会いにきてねと、別れを惜しんでくれるのがいいね。
やはり善行はいい。
“己の行為は戻ってくる”とは、昔の人はよく言ったもんだ。
まじめに一年仕事していてよかった。










夢主使用人歴、八か月目

濃密な日々は終わる
あとはまかせた頑張れリン先生!






















〜 今回のゲストでポン♪ 〜



■ ガイ
・一カ月契約のはずが八カ月にまで伸びて部ちぎれた使用人
・前の世界では、“世界の柱”の傍にいてそれらを守護者とともに守っていたらしい
・王と大詠師に啖呵きって逃亡



● クリムゾン・ヘアクォーツ・フォン・ファブレ
・夢主のすべてを知る唯一の存在
・世界のことをきにかけている
・国と民を強く思っているが、権力の差には口をはさめずやきもきと悔しい思いをしている
・ガイに八カ月ですっかりほだされた「坊ちゃん」



● インゴベルト六世
・予言い妄信しすぎて周りが見えていない王様
・クリムゾンに言われガイのことを気にして呼び寄せたが、モースをひいきしてしまいガイから見捨てられた
・謁見の途中正気に戻り、ガイに「この先どうしたらいいのだ」と目で訴えるも時すでに遅し
・とりあえず今後に期待できるのかできないのかも怪しいひと



● モース
・大詠師のくせに予言を読むこともできない通称「豚」
・権力を使ってくるくせに、場をわきまえることを知らないKY
・特技、騒ぐ喚く乱入する



● ルーク
・ガイにべったりコアラのようにしがみつくほどにはなついている
・教えれば覚える子らしくガイもぞんざいにせず可愛がっている










<< Back  TOP  Next >>