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04.鹿が横文字に苦戦する件について |
side [有得] 前世鹿な 夢主1 一カ月に一度の特別な日がやってきました。 お父さんがアポロンメディアに移動になってから初めての、しゅてりゅんびるとです。 今回はちょうど楓ちゃんのフィギアスケートの大会があったので、お父さんに会いに行く日をずらして大会より少し前にきました。 もちろんお泊りですよ。 大好きなお気に入りの人形エルレインちゃんもちゃんと持参してます。 だってお泊りですからね。 「ねぇ椛。ここがどこかわかる?むしろ【シュテルンビルト】って言える?」 「しゅてりゅんびると!お父さん、いる、街!楓ちゃんの大会!」 「うん。でもなんか微妙に違う」 「?」 「シュテ【ルン】ね」 「あ…うん」 いや〜ん!!はずかしー!間違った!! 前世は日本育ちの鹿だったし、今世は日本に酷似した場所で育ったから実はカタカナ表記って苦手なんだよね。 いつも「お父さんのいる街」としか呼んでなかったから久しぶりに街の名を呟いたら見事に間違ってました。 横文字のバカヤロー!覚えるの難しいから、ついやっちまったじゃないか。 オレはあわてて楓ちゃんに口止めを頼む。 「楓ちゃん、シーね。オレ、間違っちゃったの、シーね!」 「うん。わかってるよ。大丈夫。椛が横文字嫌いなの知ってるから」 「かえでちゃぁ〜ん!!」 はい、そのとおりです。ただの覚え間違いです。 でもそれをちゃんとわかってくれる楓ちゃんが大好きです。 頭なでて〜。 「ん〜。よしよし?」 「楓ちゃん、オレ、横文字と戦う、よ!」 「それがいいと思うけど…読むのはできるんだから問題ないんじゃ…あ、だめか。 いい椛!絶対迷子になっちゃだめだからね!椛がかいた字って汚くて読めないんだもの。それに椛ってば口下手だから、迷子になっても行先を告げられないでしょ?さっきだって町の名前間違ったし」 「だって、横文字・・・きらいぃ〜」 「好き嫌い禁止!もぉ〜、今頑張るって言ったばっかりじゃん。 そりゃぁ私だって、もうちょっとみんなが椛の言葉を理解してくれるなら、迷子になったくらいで気にしないんだからね」 「めんぼく、ない、なの」 「いつもぼぉってしてるからだよ。大会のときぐらいは私のこと見ててね!」 「うん!」 「会場って天井がガラス張りなんだって」 「うん?」 「雲とか数えるのやめてねお願いだから」 「うー・・・」 楓ちゃんはオレの頭をなでるプロです。 鬣をなでてもらったみたいな感じ。 きもちいいのです。 心はふわふわします。 そんでもってオレは横文字が嫌いです。 怒ってるときの楓ちゃんは、髪を鳥巣のようにしようとわしゃわしゃしてきます。 雲を眺めたりするのが大好きです。 エルレインちゃんが好きです。 でもそれは人間からずれた行為なので怒こられてしまいます。 今日もわしゃわしゃされてしまったよ。 「ほら、椛。いこう」 迷子防止にと、楓ちゃんが手をつないでくれた。 二人でスケート会場側の選手用のホテルまで、シュテルンビルトを歩いた。 お父さんにはついたと連絡はしたけどね、あっちはブロンズステージだから治安が悪いから二人だけで来ちゃダメだって。 いつも会いに来るときは二人だけだけど、お父さんのところまでは牛さんとかとベンさんとかが送ってくれる。 でも今日はお父さんは、ちょうど会社を移動したてで忙しいみたい。 おばあちゃんは明日にならないとこれない。楓ちゃんの大会をみて一緒に帰るんだ。 だから今日は、楓ちゃんもオレも、選手用に用意されたホテルの方に泊まることになっている。 それにしてもいつきてもシュテルンビルトは凄い。 人口密度も凄ければ、町の風景がオリエンタルタウンとはまったく別物。近未来な大都会って感じかな。 思わず三層になっているシュテルンビルトを支える柱を見上げる。 バカでかい。 あれは前世で茶飲み仲間であった獅子神様の、夜の姿ディダラボッチよりでかいだろうか。いや、意外と小さいかもしれない。 どちらにせよ獅子神様にはない優美さがある建造物であるのは間違いない。 そのまま町を見ているうちに、大通りにでたせいで人が多くなってきて、楓ちゃんとつないでいた手がはなれ、人ごみに流されてしまった。 もみじ!っていう楓ちゃんの声が聞こえたけど、すぐに楓ちゃんも人ごみにまぎれてみえなくなってしまい、そのあとは楓ちゃんのリボンもみあたらなくて、仕組みが違いすぎて余り力のはいらないこの小さな身体では人を押しのけて彼女を探すこともできず、泣きそうになる。 ちょ、オレ、行き先のホテル知らないんだけど!? なんとか人ごみから抜け出たときには、オレは知らない場所にいた。 どことなく遠くでヘリコプターの音と、悲鳴やら歓声やらが聞こえる気がする。 お父さんとかが、出勤したのかな? そういえばお父さん、ヒーロースーツは前のままなのかな。ほらあれって胸にトップマグってロゴが入っていたからさ。 移籍したんだよね?だったらどうなんだろう。 ――連絡があったのは数日前。 あの赤いロボットっぽいのにお父さんが助けられてすぐ。 ベンさんはお父さんのために、トップマグがヒーロー事業部を撤退したことを寸前まで黙っていたらしい。 つまりお父さん経由でしか情報が入ってこないオレたち家族も、その移動の話や撤退の話を知ったのは最近。 早ければ今日明日にはヒーローとして、再復帰するのだろう。 とりあえずエルレインちゃんのはいっているリュックをしっかり握って、タクシーでもつかまえようと決意。ホテルの場所はわからないから、牛のおっさんがいるところか、ベンさんあたりをたよればきっと大丈夫に違いない。 そう思っていざふみださんとしていたら――。 「おとなしくしないとこいつを殺す!」 体がフワリと浮いて、次の瞬間には、首につめたいものが当たった。 あれれ? なんだこれ? 夢主は言葉が不自由でも稚拙でもなく、ただ間違っただけ 次回は捏造事件発生! |