メイプルズ・旧
〜鹿はひとになった!?〜



02.片割れメイプル

 


 side 鏑木虎徹





 俺の名前は、鏑木・T・虎徹。
家族は兄貴、母ちゃん、そして素敵な奥さん。
子供は双子で。身体があまり強くない嫁さんだから、同時にいっぺんに二人も得れたことはとても幸せなことだと思った。

生まれた子供は男の子と女の子の双子で、女の子を【楓(カエデ)】と男の子を【椛(モミジ)】と名づけた。

 不思議なことに椛は、生まれてきたときその手に青い指輪を握り締めていた。
友恵は神様からの贈り物よ。と、その指輪を幼い椛になくさないように言い聞かせてもたせた。
生まれたてではきっと理解などしていないだろうから、物心がういたらそれを持たせればいいのではないかと思ったが、 椛は本能で理解しているのか、名前のとおりの小さな紅葉のような手で、その指輪を始終大切そうに抱きしめていた。
赤ん坊の必死な姿に何度癒されたかはわからない。
 いつか椛にはこう教えるのだ。
「その指輪を握って生まれてきたんだよ」と。「それがきっと神様からの贈り物なんだ」と――。
まぁ、成長した椛を見るからに、わざわざ告げる必要もなさそうだが。

 そして、うまれてからすぐに、椛の方にNEXT能力があることが発覚した。
これに最初に気付いたのは友恵だった。
椛が幸せそうに笑ったりするときや、人の体温を感じたときなど、その身体が青く光るらしい。
その青い光が触れている場所から自分に流れ込むと、こころがほかほかするらしい。
それと同時に何か暖かいものが流れ込んできて、友恵はいつもより体調がよくなるという。
まさか癒しの能力か、触れた相手の生命力やら何やらの力を増幅する能力かと思いきや、それはそれで違うらしい。
いろいろためしたところ、幸せ気分をおすそ分けするような、そんな能力であることが判明した。

「いいじゃないの虎徹くん。
だっているだけであったかい気持ちになれるなんてすてきじゃない?
ふふ。まるで、ひだまりが人になったみたいね。
この子にとって損はない能力よ。
NEXTであっても、椛はきっとたくさん友達ができるわね」
「それもそうだな」

 友恵の言うとおりで、徐々に成長していく子供たちを見て、その言葉は真実味を帯びる。
このころは俺が子供のころに比べればずいぶんとNEXTの迫害はなくなったが、なくなったわけではない。
だけど椛の能力は心を和やかにさせる。
そのおかげでNEXTであっても椛は、嫌われることなくつまはじきにあうようなこともなく成長した。

穏やかに。あたたかく――。

 ただ、ひとつだけ問題があった。
椛のことだ。
 椛ははひとよりも成長が遅かった。
遅いといっても外見のことではなく、脳のほうになんらかの障害があるらしく、言語能力や感情表現がひとより劣っていた。
うまく言葉を話すなんてことはほとんど困難で、ある程度の年になるまでは二足歩行などできなかった。
なにをするのも同じ日に生まれた楓や、同い年の他の子供たちよりできるようになるまで酷く時間がかかったた。
成長したいまだって、長い文章のようなものをスムーズに話せず、小さな子供のように単語で区切られた会話しかできない。
唯一椛が異様な速さでなしとげたのは、文字を覚えること。
まるでそれだけは始めから知っていたかのように、椛は物心つくころには、すでに難しい単語を理解し、俺には到底理解できないような哲学書やらの分厚い本も読みほした。
けれど自分自身でなにかを書いたり、自分の口から言おうとすると、やはりうまくいかないようだった。
 四歳の頃には知り合いがたまたま家に持ってきたクロスワードパズルをといてしまった。
それをみた知人が面白半分でIQテストをすれば、椛の知能指数は子供にあるべき領域を超えていた。
しかしそれとは対照的に、椛は“自分が何かをする”という行為がとんとできなかった。
考えることも苦手――というよりは、ひととそもそも感覚が違うようなのだ。
人並みまでいくのには、ずいぶんと時間がかかった。
 椛は怒ることをしない。あせったり心配したり悲しいという感情はあるようなのだが、怒らない。
沸点が異常に高いところにあるのだろうと思っていたが、こういう病気の患者には、とても穏やかなひとびとが多いと医者はいう。

 椛はある程度成長すると、普通の人とかわらないまでにはなったが、走ったりするのは相変わらず下手でよくこける。あまりしゃべるのは得意ではないし、顔の筋肉もあまり動かないので感情がわかりづらいし、人とはずれた思考回路は天然なのか障害の影響なのか判別しづらい。しかもNEXTだ。
そんな椛が、普通の子どもたちの間でやっていけるか心配だった。
しかしそれを補うようにNEXTの能力によって周囲が癒され、そういうやつらは逆に自ら椛の側にいようとする。
双子として楓がそばにいること。あの幸せのおすそ分けの能力のこと。
まるで障害を持って生まれてくる椛のためのようなセッティングだと嫁さんは言っていた。
そのとおりかもしれない。
あの指輪だってもしかすると椛がちゃんと成長できますようにと神様がくれたものなのかもしれない。

 椛は本当に普通に育った。
ちょっとぎこちないところをぬかせば、普通の子どもだ。
よく笑うし、外ではしゃぐのが好きだ。
いじめにあうこともなく、逆に友達には恵まれていたほどだった。





「そっちいっちゃだめ!あ、ちょっともみじー!」
「みてみて、カエデちゃん。おいしい草!」
「おいしくない!おいしくないから!それは雑草だよ!たべちゃだめー!」
「ふふ。椛も楓も元気ね」

 あ、椛のやつまた草食べたのか。
俺の子どもたちは、今日も元気だ。
さぁ、俺も友恵のところに戻ろうかな。
今日は動物園に遠足に来ている。










虎徹さん視点。
もう完全に病気だと、医者を含めた周囲が勘違いしている。
口数は少なくとも心の中は騒がしい夢主1でした。
そして誰も夢主の事実に気付いていないという勘違い。



※みなさまへ
作者は障害者の皆様を軽んじているつもりはありません。
もしこの話を読んで不快に思わせてしまったり、不適切だと思われるような表現がありましたら謝罪いたします。
ただ、作者はけっして皆様を不快にさせたいわけでも、差別やらの意志があるわけではないことはご理解ください。
さらには皆様への配慮が足らずいたらない点がありましたら、本当に申し訳ありません。

文節が正しくないであろう乱文で、意味不明なものになっていたらすみません(汗)








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