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05.ひととかかわるもの |
名というものには意味がある 言葉には力が宿る そして―― 「はじめまして “”。わたしはエルシフルという!」 名をもつ生き物は、言葉を操る生物、すなわち人間だけである。 「ああ、もちろんこのわたしよりもだ!それがその"名"をもつ君のあり方なんだろう」 『ひとの、なにがいいんだ?あれはすぐに死ぬだろうに』 “”――。 すべての詞ということばを示す名を持つ君こそが だれよりも なによりも "ひと"に近い。 「っと、いうわけで“名”を持つ君に頼みがある」 『は?』 「実は最近わたしにこどもがうまれてな。 “” の名をもつきみに、子供の名前を付けてもらいたかったんだ!会えてうれしいよ」 『いや、ひとのはなしきけよ』 ああ、あんたはどうして いつも そこまで明るくなれるんだ ========== side 夢主1 ========== 世界に “災い” が訪れ、文明が滅び、再び人の文明が形成されてから、どれくらいたったか・・・。 オレと人間との距離は相変わらずだ。 広がることはあれど、縮まることはない。 人の姿になっても、それは魔物と戦うときだけ。 あとはたまに、伯母上に会うぐらい。 伯母上はすっかり人の中にいることが気に入ったようで、人の中に混じり、しまいには人の子のための町を一つ気づいてしまったほど。 まぁ、その間もオレは日々をのんびりと、獣の姿で森の中などで暮らしていた。 もっぱら木の洞の中で寝たりいろいろだ。 それ以外は、孤立した生活。 そんな暮らしを送っていたあるとき、人好きの始祖の隷長がいるという噂を聞いた。 なんとなく心が揺れた。 たぶんしろきものを思い出したのだろう。 無意識だった。 なつかしさにかられるように、人が好きだというそいつにあいにいっていた。 きまぐれだ。 新しい同胞を見たいだけ。 そう、自分に言い訳するように・・・会いにいくと、ちょっとしろきものに似た容姿のおとこの始祖の隷長だった。 エルシフル。白くて綺麗な竜のような始祖の隷長。 まとう空気まで似ているってどうなんだろう? 彼のまとうどこか懐かしい空気に誘われるように、気付けばオレはエルシフルに話しかけていた。 『短きものとなぜ自らかかわろうとするんだ?』 《おや。なるほど。君が"ききとるもの"か》 『。そう呼んでくれ』 ききとるもの――それは始祖の隷長たちが呼ぶオレの呼称。 オレは生まれたときから、万物の魂の波長とやらを音として聞くことができる。 たぶんそれが開花したのは、"星喰み"に食わられた者たちの声なき魂の断末魔を聞いてからだが。 それから人の言葉で"名"を意味する 【】 というオレの名前に、始祖の隷長たちは別の意味を付けた。 本来【】とは、と読み、真実の名を示す。 そこからイメージを送りあって会話とする始祖の隷長は、それを"本質"を意味すると判断した。 我らが言う本質とは、魂。真の名とは、すなわち魂の名。 ゆえに【】というオレの名は、「魂の名、魂の響を聞き取るもの」そういう意味をこめて、彼らはオレを"(を)ききとるもの"と呼ぶ。 ――その名を名乗ってから・・・ふと、目の前の始祖の隷長の"名前"に違和感を感じ、その正体にすぐに思い至り首をかしげる。 オレやスパイラルドラコとは違い、元来始祖の隷長には、名前という概念はない。 その本質をそのまま「〜のもの」というふうに呼ぶだけだ。 白い身体に白い心をしていたあのひとが、"しろきもの"であったように。 しかし目の前の始祖の隷長はどうだろう。 この若く溌剌とした始祖の隷長は、人と同じ発音の、個体を示す名をもつ。 それはきっと自分でつけた名前に違いない。 なぜ彼はそこまで人間など愛するようになったのだろう。 人間が好きというのは、しろきものに近しいものはみんなそうなのだろうか。 例えばベリウスしかり。目の前の始祖の隷長しかり・・・。 ああ、そういえば しろきものがいなくなってから、どれだけたったのだろう。 ひととかかわろうとする同胞なんて、何年ぶりだろうか。 その後、彼の話を聞いて、何度も会って、何度も会話をして。 そうしていくうちに、とことんなまでに嫌悪していたひとへむける感情に、オレのなかで若干変化があった。 っが、しょせん、"若干"である。 結局オレの人見知りは、改善はされつつあるものの、積極的になるまでにはならない。 なぜか"仲間"というものがそばにあるのが怖いと思うのだからしかたあるまい。 それは目の前でしろきものをなくしたせいか。 人間の子らが、オレの同胞を狩るからか。 はたまた長年見続けている意味の分からない紫の悪夢のせいか。 ただ・・・。 ひとつだけわかっていることがある。 それはどれだけオレが人は嫌いだと言っていても、心のどこかでさびしくて、誰かにかかわっていたいという願望があること。 だって、そうでなければ、しろきものと同じ思想を持っているからといって、"人が好きな"エルシルフにまで会いに行こうとは思わないはずだから。 ベ「あ、よ。ニンジンは食せるようになったか?」 麗しい金髪の人間の姿でやってきた叔母が、大量のオレンジ色の物体を紐でくくったそれをもって、やってきた。 思わずプイっと視線をそらした。 なんで今くるんだ! おかげでエルシルフに弱みを握られたあげく、腹を抱えて爆笑された。 とりあえず人の姿になると、伯母上からニンジンを受け取り、それをエルシルフになげつけてやった。 剛速球となったオレンジの流星がエルシルフのもふっとした白い身体につきさ――― ぱくり ぼりぼりぼり。 ごくり。 エ「ん♪うまいな」 ベ「であろう」 喰いやがった。 突き刺さることはなく、くわれた。 オレの本来の姿でも今の人間の子供の姿でもやつの目玉の中に入ってしまいそうなほど小さいオレは、とっさに回れ右をして走り出す。 しかし人間好きーな金と白の同胞のほうがコンパスの距離が有利すぎる。 結果示し合わせたように見事なコンビネーションをみせた二人によって捕獲されたオレは、人間風に調理されたニンジン料理のフルコースと格闘することになった。 まだ生で食わされるより味があるだけましだったと言っておこうか。 もちろん死んだ。 あんなまずいもん食えるか!! そしてオレは思う。 なぜ人類の文明は一度ほろんだというのに。 何百年たとうと、なぜニンジンはニンジンなんだと!! - - - - - - エ《なぁなぁきいてくれよ!》 夢『エルシルフがしろきものに似てるって誰が言ったんだったか』 エ《なぁってば》 夢『それにしてもあのエルシルフがいまでは、人と我らをつなぐ"盟主"となるとは。いやはや時が流れるのは早い』 エ《ってか聞けよ!!わたしにも娘ができたんだ。名前はク》 夢『しろきものは面白さを追求したあげく人の世を愛していたが、こう恋愛的な意味ではなかったよなー(遠い目)』 エ《なぁっていうか聞けよ!》 夢『断る。もう何回目だそれは』 エ《182回目だが?っというわけできいてくれよ私の娘が生まれたんだよ!こっれがかわいくてさー!もう!》 夢『わービックリだよ(棒読み)』 エ《かわいいのは当然だろ。なんたって私の娘だし。ああ、お前に名前付けてもらった名前のおかげだ。さすがは"ききとるもの"!魂の本質がよくわかってるな!》 夢『どうでもいいから、離してくれ。オレは人には近づきたくな』 エ《まぁまぁ、いいからきけって。ニンジン食わすぞ》 夢『ぐ!?日、卑怯だぞ!』 エ『っでなぁー・・・・・・・・・・・・・・・がさ。っというわけでさ!面白い人間がいるんだよ!今からそいつのところに行こう!それでなあの町の》 夢『や!?お前がひとのはなし聞けよ!?』 エルシルフがあの偉大にして優雅で優しいしろきものに似てるといったやつでてこい!しろきものに謝れ!! はっ!?オレか。 てか、もう勘弁してくれ。 こいつ、いろいろダメだ! |