有り得ない偶然 Side1
++ HXH++



05.試験とこども



『父さん、ゼノ先生、いまなんと?』
「師範いま、なんと・・・」

「「試験うけてこい」」

なんのだよ!何を突然に!と色々ツッコミたいが、聞いてはいけない気がするとオレと保長は思わず遠い目をしてしまった。
だってゼノさんが父に頷いてからの今の発言ってことは、あきらかに二人の間でもう会話は済んでいる。
しかもゼノさんがいるってことは、あきらかに父の流派の階級を上げるための試験とかそういう話ではないはず。

瞬間、察した。

聞かなかったから後悔するってこともないし、むしろきかなかったことにしてオレは逃げたかった。
それは横で顔を盛大に引きつらせていた保長にも言えることだろう。

「待ってください師範!私は!この国で主をささえる立派な侍になるべく剣術を学んでいて!」
『そ、そうだそうだー!オレはそもそも国を出る気なんか』

「・・・・うむ」
「そうだな。芭雪(ハユキ)の言う通り、立派に合格して戻ってくるのを楽しみに待っているからな」
『まって先生!父さん今何も言ってない!!!』
「だが、師範は頷いている。まちがってないのでは?」
『保長はまじめにつっこむなよ!だからしゃべれよ父!』





 :: side 夢主1 ::





それはある日突然のことだった。
オレが十二歳のとき、兄弟子の服部保長(ハットリヤスナガ)と共に道場によばれたと思ったら、ハンター試験をしろと言われ、そのまま笑顔で手を振りつつ追い出された。
しっかり受験票を二人分渡されたんだが、いつのまにハンター試験に申し込んでたの。
むしろもっと早くおしえてほしい。
準備とか準備とか、心構えとかあるだろうが。


そして渡されたメモ。

【三日以内に××大陸▲▲国 〇〇園 「△△△種の□□□植物」を見ろ】


なにこれ。ここに行って、この植物を探すの?
これがハンター試験とどう関係があるの。

透かして見ても、裏がえしてみても、念ではないかと凝視してみてもなにもかわらなかった。
思わず保長と顔を見合わせ、完全に閉ざされた道場の門をみて、二人そろって大きくため息をついた。
あの二人がけったくしてる段階で、色々反抗する方が無理そうだ。

オレは山育ち(?)なので、この世界の一般人よりは少しは持久力はあるかもしれない。っが、しかし、力も念能力も弱いし、他の子どもより成長が遅いのであまり戦闘面において役に立つことはない。
だがすでに立派な剣士となっている保長が一緒なら、きっと大丈夫だろうと思えた。
しかたないからこうしてオレたちのハンター試験が始まった。





* * * * *
 




あれほどすったもんだあった能力だが、オレの能力はすでに完成していた。
当然逃げ足の速さと、野生の獣さえまく気配を消す(もとい周囲と一体化)と探知にのみに特化している。


オレの開発した念能力は、主に3つ。
はっきりいって戦闘にはむいてない能力である。

一つ目、水分にオーラをとおし墨に変化する能力。そこで現れた墨を《夜の宴(パーティー・インク)》と名付けた。
この段階ではただの墨を作り出しただけに過ぎない。

二つ目は、上の墨を操る能力。《道化師の歪曲心(ペインティング・パフォーマー)》
“自分のオーラが通った墨”は、ある程度自由に操れる。といっても簡単に説明すると空中に文字が書ける程度だ。
あとは硬質化は無理だが、集めた《夜の宴》を霧散させたり液状にはすることはができる。

三つ目は、《一夜限りの舞台演出家(マスカレードストーリオ)》
描いた絵に能力をひとつ付与する能力だ。
水見式でもなにかでてきたからわかるだろうが具現化系の素質もオレにはあった。
《夜の宴》で描いた絵は勝手に具現化した。
その具現化した対象に能力がひとつ備わっている。それが《一夜限りの舞台演出家》というわけである。
なお、一回っぽきりのため、具現化した絵は役目を果たすと水に戻って消えてしまうし同じ能力は使えない。

ただし、能力に条件をつけた。
名付けだ。
これにより、能力を固定化し、何度も使えるようにした。
条件とは、描いた絵に名前を付けること。そして付与した能力と絵と名前が一致していたら能力は何度でも使えるというもの。
ただし何かが不一致であったり、カンペを見たり、噛んでしまってもその能力は無効化される。
同じ絵は二度とつかえない。

能力の付与にも発動条件はいくつもある。

そして勝手にどこかに転移していたあの能力は、オレがマーキングした場所に飛ぶようにした。
《夜の宴》で鯉をかき、【黒姫】と名付けをした。

【黒姫】は、墨を影と見立てて、影と影を移動する。
つまり影をもとにした転移能力だ。
条件は何個かある。
・入り口も出口も影のある場であること、ターゲットのマーキングがされた場所にのみしか出れない。
・マーキング座標なしに、影に入ると、時空の狭間に彷徨うこととなる。
・出口に自分が通れるだけの影の大きさがないといけない。

最期のは条件というか、オレが気づいた安全対策と言ったところか。
なぜならば出口に影がないと、細切れになったり、壁と壁の隙間とかにつぶされる可能性もあるので注意が必要だ。


これでわかるだろうが、オレは物理で攻撃されると逃げます。影の中に!

本当に、もうね、体力の付け方も能力の方も、逃げ足だけをひたすら鍛えたともいえる。
なので、物理攻撃に当たるとあっさり死にます。
なにせこの世界では、空機にプロテインが入っていそうなくらい一般人でも二日間まるっと余裕で走り続けられるレベルなのだ。





* * * * *
 




本音を言うと、ハンター試験不安しかなかった。

もともとオレと兄弟子は、ジャポンで一生を終えるつもりだった。
保長は立派な主につく侍になるのだと意気込んでいたし、オレも裏庭より危険そうな外の世界になんか行きたくなかった。
それに保長なんかはハンターであるうちの母の弟子ではなく、父の剣術道場での師弟関係であり、剣術については学んできたがハンター試験なんて興味もなかった。むしろハンターがなにをするのかさえ詳しく知らなかった。

突発的な父とゼノさんの行動にオレたちは逃亡しかかったが、あの素敵すぎる笑顔を思い出したら帰るにかえれず、しかたなくその試験を受けることとなったわけだ。



まず試験会場までの移動方法。
××大陸▲▲国は、オレが一度うっかり転移しているのでマーカーチェックはついている。
オレの能力を知っている数少ない知人が一緒でよかったと思う。おかげで念能力を隠すことなく気楽に空間転移をおこなえた。

会場のある国までは、オレが能力を発動しそのまま黒姫に送ってもらい、後はのんびり歩いた。
途中でめっちゃうっそうとした山に入ったけど、問題はなかった。
むしろそこで襲い掛かられたけど、オレは逃げたり逃げたり、偵察したり、獲物を燃やしたりしただけで、あとは保長がめっちゃ刀で敵を切り捨ててた。肉やキノコ薬草やら保存食ゲットできてオレは喜んだけど何か?

後で知ったが、▲▲国にはいるための船や飛行船はすべて港につかないし、庭園のある山にむかう乗り物も目的地に向かわなかったのだという。
山の中で遭難というのも多かったらしい。

オレたちがゼノさんから渡されたあのメッセージにあった植物はよくわからなくて、園にいたスタッフに「この植物はどこで見れますか?」とたずねたら、「地下にある温室ですね」と優し案内されーーーーそのまま地下にある“本当の会場”へ連れていかれた。
つまりこの隠れ里のような秘境の植物園までたどりつき、あの植物名をスタッフのだれかに告げるまでが、試験の選考であったらしい。
あのきいたこともない植物名は、本当に存在してないので聞いたことがないのも当然で、かつ「合言葉」であったのをあとで教わった。

なんでゼノさんは、あんな合言葉や会場の場所を知っていたのかとおもったが、相手はあのゾルディックだ。
今期ハンター試験の本当の会場やそこへいくための暗号を知っていてもおかしくはない。
どこで仕入れた情報やら。
ゼノさん、伝手多そうだしなぁ。


そんなわけでとんとん拍子で庭園にあった隠された通路から、俺たち二人は本当の会場に行くことができた。
そこにはすでにたくさんの受験生たちがいた。
あふれる人人人人人・・・・。9割はむさいやろうどもだったと言っておこう。
そこについて一番最初に思ったこと。

「袴と着物で場違いだとおもう日が来るとは」
『ああ、なんというか裸王国かまたひきの国に、ガッツリ正装をきて迷い込んだような。居心地の悪さが』
「裸王国とかやめろ」

ジャポンなんて極東出身者がいないのか、みんな洋式の服だった。
この試験会場もみんな洋式。動きやすい衣でみんなきている。
もはやうちの国では破廉恥!といわれそうなレベルの女性だっている。彼女はズボンに、胸を小さな布で隠しただけで、他に上着は着ておらず露出度が高い。筋肉凄かったです。
あとはまれに民族衣装っぽいやつや独特なセンスのやつもいたが、やはり和服はオレと保長だけだった。

そういえばゼノさんは日本びいきだから和風っぽい服も着ているし、オレたちジャポン人はほぼ着物で日々を過ごしているから忘れがちだが、普通ジャポン以外の国では着物は着ない。
あんな格好で動けるのかよという声がチラホラ聞こえる。
いやそれはこちらのセリフだ。「中は丸見え」なんてことはないからな。そもそも袴はスカートじゃない!ひらひらしてるからって動きづらいってのもないし!
草履はただの草を足につけているわけじゃない!靴の代わりの履物だ!
腰にある刀は棒じゃないから!!!
そもそもこれは着物と袴といい、うちでは普段着であり、けっして変な格好ではない!下着じゃねぇよ!
オレたちからすると、Tシャツやブラウス等をきてズボン姿のやつらの方が違和感半端なかった。ズボンとかなにそれステテコかまたひきか下着かよ!といいたい。
こちらかするとお前たちの方が変な格好なのだと言ってやりたかった。

ジャポン人に対する風評被害(?)が酷い。

あとオレは小さな子じゃないです!身長は低いが!!成長が遅いだけだチクショウ!!
あ、でも12歳ってまだ子供の範囲か。しかもジャポン人って、外の国からすると民童顔で年齢不詳にみえるって母とゼノ先生言ってたな。
もしかして保長も相当若く見られてるのかもしれない。
たしかに他の受験生の身長のでかさと言ったら・・・。
うん。むオレたち二人で子ども扱いでいいです、はい。



さて、試験の話に戻ろう。
最初の試練は、いつまでたっても夕方にならない青空の下。巨大な植物庭園での試練は、迷路から抜け出すこと。
そこは植物が襲い掛かってくる巨大な迷路で、不思議の国のアリスになった気がして思わずスペキャして遠くを見つめてしまった。植物のラスボスっぽいやつは、オレの数少ない食料を酸で溶かしやがったので腹が立ったので燃やして灰にした。
実はそういう“もやすこと”に特化したの力も名付けをしてあるので、名を呼べばいつでも使用可能なので、オレは外に出かけると大概保長に火打石の代わりをさせられる。
ちなみにその後はめっちゃ植物の絶叫やらがきこえて、迷路を生み出していた植物が動きまくり迷路の庭園は地獄絵図となっていた。

そもそもこの“もやす”能力は、時間制限で蝶が着火し、“とあるもの”を燃料に燃え続ける。何でも一定の時刻後に燃える。しかも燃やしたあとの光景はまさに地獄絵図そのもので、時刻と地獄の音をもじって【じこく】とつけられた。

まぁ、念能力使ったけど、ばれなければよし。

そのあとは謎の洋館で肝試しのようなことをさせられ、神経を削りながら推理し謎解き、鍵をみつけて脱出するというもの。
ひたすら神経をさかなでたり衰弱させつつ、謎を解かせるというもので――常に悲鳴がひびきまくっていたのがうるさかった。
この心理戦は、幽霊やら恐怖系のものが一人になった受験生をターゲットに襲ってくるタイプで、ひたすらイベントのお化け屋敷のようだった。前世でよくあった洋画のような感じ。
だが、オレと保長てきには、海外の大きなアクションをとるものは恐怖ではない。日本人というかジャポン人は静に恐怖するのだ。
というか、ビックリドッキリ系はうちの裏山でなれてるし、幽霊とかオレは普通に見えてるのが日常だし、オレの傍に長くいたせいですっかり暗殺一家のゼノさんにも目を付けられあちこち一緒に連れまわされてる保長に、いまさら本物の殺気とか念とかあびせてもびびらない。むしろオレと保長は殺人剣をならっているのと、あとやっぱりゼノさんのせいでぶっちゃけ本物の死体とか見慣れすぎてしまっていた。
グロイのとか対処になれていますし、疑心暗鬼にさせられもしない。心を弱らせるどころか、なにごともなく受験者が悲鳴を上げる原因をスルーして、あっさり鍵をゲットして館をでた。あの館の幽霊は、今思えば念で作った生物(念獣)だな絶対に。仕組みとか興味ないけど。

そのあとにもいくつか試験は続いた。
筆記試験はさすがになかったけど、かわりに実技が多かった。
生き残れとか。戦えとか。何時間逃げ切れとか。〇〇を探しだせとか。
仲間を作ってもよし、仲間を裏切ってもよし。ソロでいくのもあり。だましあい、ばかしあい。協力性。性格、洞察力、生存値、生命力、強さ、俊敏力、知識量…などなど。複数の試験からそれらを見極め、ふるいにおとしているのだろう。
それはわかるが、ハンター試験ってなんでああも悲鳴が多いんだろう。ゲンナリした。


結果から言うと。
なんとか。本当になんとかというていで、二人とも受かることができた。
何度逃げたくなったかわからない。
守秘義務があるから詳しくは言えないが、息も絶え絶えになるほど大変だった。

なお、オレと保長は、試験後すぐに「裏試験」をどうするかと直接会長に聞かれた。
裏試験とは、念能力を習得することである。しかしオレはすでに能力者なのでスルー。師もちゃんといるしな!保長は念能力のことは知っているが興味はないので辞退していた。

国に戻ってきたオレたちは、今後について話し合った。
保長はハンターになる気もなかったのにハンターになってしまったので、ぶっちゃけハンターカードは今後彼の実家の神棚の中にしまっておくそうだ。
飾る気もないので箱に入れてそのまま閉まっておくとの事。きっとそのまま存在を忘れるんだろうね。
彼はこの国で立派な侍になって、自分が認める主につかえるという夢を叶えるのだそうだ。そして髭を伸ばすんだと。まだ髭にこだわってるのか。

さて、オレはどうしたものかな。
せっかくもらったし、オレは使うとするかな。
転移のマーキングの場所もちょうどふやしたかったので、もらったハンターカードで交通費を浮かせつつ国外旅行にでもでるとしよう。



そんな感じで、オレのハンター試験は幕を閉じた。

数十年後、なぜかオレがハンター試験の試験官に指定され、面倒になったオレが家族を巻き込んで裏山で試験をすることになるとは思ってもみなかった。
受験者に「生き残れ」という課題を出すが、喜々としてあばれる我が家族と、異様に嗅覚がよすぎて頭の良い獣たちに、受験生がほとんど離脱したのは悲しい思い出である。うん、そうなるだろうな。すまない、若き受験生たちよ。





* * * * *
 




年月がたち、オレは水を墨にする能力を利用して、絵描きになることにした。
絵描きといっても紙ではなく、基本的に人の肌に書く刺青の方の絵描きだ。
なぜ刺青師になったかというと、前世の影響もあり絵を描くのは嫌いじゃなかったこと。
どうじに、能力で転写するので、痛みをともなわず肌に書き込めるため、客に喜ばれるのではないかと思ったのも一因である。
それに墨なら、水さえあれば無尽蔵に作れるので、オレには絵描きや刺青師はうってつけの仕事であった。

 それから墨を使って絵を描きながら、刺青彫師として仕事をしながら、全国をぶらりぶらりと旅をしていた。
やっぱり獣に襲われるのは相変わらずで、いつのまにか珍獣ハンターという名をいただいてしまった。
いや、そんなものになった覚えはないが。
あれだろ「珍獣(におそわれる)ハンター」の略だろ。
そう、ツッコミを入れたかった。

刺青彫師としての仕事の依頼が入り、紙に描いたたくさんの下絵の巻物を風呂敷につつんであるいていたら、人気のない山道の途中でたくさんの死体が転がっていた。
どうやら野党に襲われたようで、女子供関係なく殺されていた。
状況は惨憺たる有り様で、このままでは血の匂いにつられて“ヤバイ生き物”がよってこないともかぎらない、ましてやこのまま放置は良心がめた。

『【慈黒(ジコク)】、遺体を燃やせ』

名を付けた墨絵はオレがリセットをかけるまでは、同じ絵を描かなくとも名を呼ぶことでその能力を持った絵が姿を見せる。
オレの羽織の内側に描がかれていた蝶の群れが名を呼ぶとともに動き出し、そのまま羽織の世界からこちらの3次元の世界に飛び出てくる。
黒い蝶たちはパタパタ飛ぶと、それぞれが血と泥や汚れで哀れな姿になった肉の塊のもとへ飛んでいき、そのまま対象にとまると羽をパタパタと2,3度広げてとじてをくりかえすと――ボッっと音を立てて黒い焔となって燃え始める。

この【慈黒】という能力、蝶が時限式のスイッチとなり、生命力をエネルギーに燃えるのだ。材料はオーラだが、炎は本物なので、生きている人間相手だと死んで生命活動が完全に停止するまで焔に焼かれながら苦しむという―――まさに地獄絵図がひろがる。
なお特殊な炎のせいか、どれだけ焔がひろがっても・・・焦げ臭さはない。
慈悲の欠片さいない演出と時間制で発火することから、周囲のやつが“時刻”と“地獄”をもじって【じこく】でいいんじゃないか言ったので、それが命名となった能力だ。
なお、生命活動を停止したあとの死体にもオーラはのこっているようで、【慈黒】たちにとっては餌もとい燃えるものにあたるらしい。

『・・・・・おいおいまじかよ』

その地獄の黒炎のなかから一匹一匹と漆黒の蝶たちがオレのもとへと戻ってくる。
それを周囲に漂わせつつ、きれいに遺体も血の跡も消えた道をみて、思わず頭を抱えた。

そこには“指定のなかった生き物”だけが、燃えることなく残されていたのだから。

なちなみに本来【慈黒】はオーラを燃やすので、生き物であれば一番に燃えている。
だが今回は特定のもの「遺体だけを燃やせ」と明確な指示をしていたので、“生きていたもの”には手を出さなかったのだろう。
言葉一つ間違えていたら、目の前の存在は今頃死んでいたわけだ。
想像して、憂鬱になる。
それ、なんて地獄。
だからこの能力こんなヤバイ名前なわけだけど。

『あー・・・ご苦労さん【慈黒】。もどっていいぞ』

羽織を広げて招き入れれば、蝶たちが水に飛び込むように羽織の内側へとびこんでいき、そのまま羽織の内側の柄としてただの絵に戻ってしまうので静寂がもどってくる。

どうしたもんかなと頭をかくオレ目の前には、死体の誰かに守られて無事だったのだろう。ボロ布にくるまれた赤ん坊がスヤスヤとねむっていた。
あまりに小さいことから、まだ生まれて半年もたっていないのではないかと思えた。
下手をすると、まだ目も見えていないのかもしれない。

このままここにおいておけば、せっかく綺麗にしたこの場所が数刻後には赤子の血で染め上げられることは明白だった。
しかたないかと、羽織を脱いで赤ん坊をそれでくるむと、紙の束を背にくくりなおし、赤ん坊を抱き上げて町に向かった。


その日の依頼は、とある侍より腕に桜吹雪をほってくれというものだった。





それからオレと子供の生活が始まった。
こどもは戸籍もなく、むしろ傍で死んでいた者たちは原型がほぼなかったので、探し出すことができなかったのだ。
髪の色も同じ赤色、これも何かの縁だとそのままオレがひきとることにした。
一度死んで転生した後となっては、どうせ男とか女とか恋愛とか、みじんも興味もなかったから後継ぎにはちょうどいいだろうとも思ってのことだ。

赤ん坊時代はさすがに連れまわして旅をするわけにもいかず、一度実家に赤ん坊を連れて戻った。

数年後、子供はすっかり・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うちの両親になついた。
あのときのこどもは、才能の塊だった。
十にも満たない年で早々に念を開花させ、早々に能力の扱い方や身の守り方など教えることとなった。
敵を殺さなくても生きていける方法とか、母直伝のサバイバル方式もいろいろ教えてみた。
結果、母になついた。

なんだあの戦闘狂?母が、ではなく子供の方もだ。ちょっと、オレをおいて両親と息子がめっちゃ仲良しで修行にいそしんでいるとか、意味が解らないんですが。そんなに強さを求めなくても。ぶっちゃけオレはついていけないレベルで、母と息子が戦闘狂なんですが。

『オレは逃げるので精いっぱいなのでそんなに強さをもとめる二人にはついていけないよ』
「え、パパの方が強いよ?むしろえげつない?」
「そうねぇ、の能力のほうが強いわよねぇ。生者にたいして容赦がなさすぎるし」
『それは言うな!!』

【慈黒】はたまたまできちゃったんだ!しかもその能力をリセットせず長年使ってるから、もう、ね。
それこそオレの能力。みたいになちゃってるけど!





* * * * *
 




あるとき、ハンター協会から今度はハンターとして試験管をしないかと言われた。
子供を引き取ったのでお金もいるなぁとなり、軽い気持ちで試験管を引き受けた。

一度受験会場に来るように指示を受けていたので、会場へ向かえば、会場につく前に、たまたま飢えて死にかけていた人間が倒れていた。それを気付かずオレが踏み潰してしまった。
なお、そのとき、倒れた彼に手を差し伸べようとして、彼に触れて、バチリと静電気のようなものをうけ、思わず手を放してしまったのはゆるしてほしい。
おかげで青年が地面に顔面ダイブしていたが、静電気のせいだ。
でも「へぶうぁ!?」なんてとてもかわいそうな悲鳴が聞こえたので、わびとして飯をおごった。
たぶんそこからオレと彼,ジンの腐れ縁は始まった。

そのときの試験は、オレの試験が来る前に終わった。
合格者はたった一人。オレが踏みつぶした人間にして飢え死にしかけていた奴――ジン・フリークスだった。
それは原作開始より二十年ほど前のことだった。




さらに数年後、試験管リベンジをしないかと言われたが、息子もおおきくなっていたので、家族ぐるみで参加でもいいかときけば、ハンター協会のネテロ会長(いったいいくつだこのひと)はあっさり許可をだした。
めんどうなので、わが家の裏山で数日生き延びろいう試練にした。
なお、父とゼノさんと母と息子が、山の中を“おたすけスタッフ”として駆け巡っているので、死にそうになったら山に入る前にと渡しておいた発煙筒を使用するように告げておいた。
ただし一度山から出たものは、そのままリタイアだ。発煙筒を掲げず獣にやられそうになっても生死の保証はしないと始めに言っておいた。
基本的にハンター試験の受験生に渡されるバッチには発信機がついているので探すのはラクだ。
ただ、うちの獣どもが心底優しくないことと、うちの家族(+ゼノさんが面白そうという感じで参加してきた)が喜々として受験生を驚かしたりしなければそこそこ生き残るだろうと思った。

その年のハンター試験は、「暗闇怖いよー」と泣きながら山から逃げ出す受験生であふれた。
げせぬ。

ちらっと身内を見たら、みんなそれはニコニコといい笑顔で「あーたのしかった!」「また遊びたいわぁ」とほざいた。
獣じゃなくて貴様らかぁぁ!!!










――そんなオレの半世紀。

こどもの名前は、ヒソカといった。


え?なんでその名前にしたかって?
あの死体というかグロ指定注意の中で、息をひそめるようにひそかに生きていたなんて凄いじゃないか。

まて、いまネーミングセンスないなといったのはだれだ。

ノットネーミングセンスって酷くないか。
たしかに某ポケットの中の獣シリーズで捕獲した先から「いち」「に」「さん」とか名前つけてたけど。乱獲したら「らんかく1」とかにしてたけど。
安直なのはだめか?わかりやすくていいと思ったんだが。

しかたない。次にもし命名する機会があったら、おまえらがましだと思う名を考えることとしよう。
シンプル過ぎるのとネタと面白さを追求しないように気を付けるさ。
その疑うような目はやめてくれ。
ちゃんと考えるから。


粋なのをな♪








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