有り得ない偶然 Side1
++ HXH++



02.世界の事



生まれる性別というのは、魂とはそれほど一致しないようだ。
今世はどうやら男らしい。
らしいというのは、まだ寝てる時間の方が長い、赤ん坊のみではよくわからないためだ。
自分の両親らしきひとたちが"息子"だといいきったから。そうなのだろうと思っておく。
自分の性別が分かったからには、いろいろ心構えもできるというもの。
それにやがて起きてる時間が増えれば、すぐにでもそれを実感するだろう。

そうだ。
これからは「わたし」ではなく「オレ」といおうかな。

いいんじゃね?オレ。





 :: side 夢主1 ::





さて。わたし…もといオレが生まれた世界の話をしよう。

生まれてしばらくたってから、改めてわかったことだが、“ここ”はこないだまでいた地球という世界とはまったく違った。
しかもこちらの世界は、あちらの世界にあったとある漫画に酷似した世界、またはそのものであることが判明した。

なぜって。
「ハンター」という単語が絵本の中にもでてくるし、日常的に何度も聞けばさすがにね。

つまりあれだ。
この世界は某漫画「H●NTER*HUNTER」とよばれる世界に酷似したなにかであるらしい。


「H●NTER*HUNTER」。
わたしが死ぬ前までに読んでいた数少ない漫画のひとつ。みごとなまでの戦闘漫画に当時は意気揚々としたものだ。
だが完結もしなければ、更新も異常に遅かった。
あまりの巻と巻の発売までの間の長さに読むのをやめたこともあり、内容は全く記憶にない。

死んで生まれ変わったここは、その漫画の元になったのではないかと勘違いしてしまいそうなほど"酷似"した世界。
原作そのものと断言できないのは、自分と言う存在がいるから。


そんなわけでこのやっかいそうな世界で赤ん坊から始めることとなったわけだが・・・この世界はどれだけスリリングなんだか。

幼少期の頃は、自分のすぐ脇を包丁がとんでいった事が何度もある。

オレ、今、赤ん坊!?と何度叫んでも両親たちは華麗にオレにはあたらないように攻撃をしていた。
ベビーベットが包丁の刺さった衝撃でガコンとゆれたのは、いまとなっては懐かしい思い出だ。
しかも父が見事なまでに磨きぬかれた愛刀で、母がさらに投下している包丁やらナイフやらを弾き飛ばしたり。
これが照れ隠しとか、夫婦挨拶と呼ぶのだから、うちの両親は何かがおかしい。
さらには突如開け放たれた縁側から、凶悪な顔面の肉食獣が入ってきたり、野党がおしいってくるのも日常差万事。
それにオレがびびっていると、父との戦闘の片手間に母が“能力”で人形を操りだしたりしたこともある。
そう、この世界には不思議な能力があった。
母の場合は、あみぐるみというか毛糸を操る能力だ。
その母手製のあみぐるみたちは、窓から飛び込んできた怪獣モドキや野党を毛糸で縛り上げたり、みごとなアッパーやらナイフを繰り出したりしてそのまま野外へと放り出していた。
って、ことがあった。

「・・・・・・・・・・・・・あぶぅ・・・(こわっ)」

本当にこの世界は、スリリングだ。



そんなスリリングな世界の、わが家がある国。
名はジャポン。
日本によく似た文化を持つ小さな島国だ。

こちらの世界が日本風な土地であろうと、さすがに漢字まではないだろう。異世界だし。と思っていたが、ジャポンはまさに地球でいう日本そのもので、漢字も一応残っていた。
この漢字というものは、ジャポンでは当たり前に使われているが、神聖文字と外国ではいわれる希少な文字らしく、この国も外の国も基本は“ハンター文字”というものを使用している。これはひらがなの音と読みは一緒なのだが見た目はアルファベットに近い独特のものだ。

ここジャポンは日本でいうなら江戸時代にあたり、忍者が屋根を走るのも着物を着ているのも当たり前にいる。
建築様式は長屋や平屋の屋敷がメインで、さらには忍とかが当たり前のように(我が家の屋根を)走っているのを目にした。
あれをみたときは思わず「N●RUT0かよっ!!」とつっこみそうになったが、ここの忍はきちんと忍んでいるので、黒服がメインだ。
ただし、部分的に科学は発展している。部分的に。
そのため電線やTV、ネット、電話、携帯電話なんてものも存在する。

考えるに、外の大陸文化の発展が早いのだろう。

それがこの国に流れ込んでいるせいで、まだ江戸かそれ以前の文化基準でありながらこの国にも科学が存在している。
鎖国まではしてはいないが、それでも文明が進出しづらい土地柄の地なのだろう。
ほぼ全員が西洋の文化に染まり切り、衣類もファッションも建築様式も外国と変わらない現代日本とは異なり、完全に取り込み変化しているわけではない。 最低限必要なものだけがこの国に入り込んでいる形である。
ここから外の世界をあまり知らないので明確なことはいえないが、へたをすると技術水準は高いが、“高層ビルがあって当たり前”という世界ではないのかもしれない。母が使うような不可思議な能力が存在するぐらいだ。きれいな四角の建物ではなく、ファンタジーのような奇抜な建築物群であふれていたとしてもおかしくない。


そして母が毛糸のあみぐるみを操っていたように、能力を持つ者が普通に存在する。
この能力に関してだが、誰にでも能力の根源となるものはあるが、それを目覚めさせたり使いこなせるかは個人の資質らしい。
誰かにきっかけをあたえてもらい目覚めさしてもらうか。眠ったままにしておくか。自力で開眼するか。
第三者によって“力”を目覚めさせた場合、長い修行を経て開花させるのと違い命の危険があるという。
そして自分で“力”を“能力”に昇華するのだという。
ゆえに能力のもとは同じでも、能力は個人個人違い千差万別だ。
この能力を念能力という。

なお、母は操作系念能力者で、毛糸を操る。
父は能力はないが、武術にたけている。


このジャポンにおいては、能力者の扱いが他の大陸とは異なる。
ジャポンは独自の文化を遂げており、忍術や武術に秀でたものが集い、その血を脈々と継いでいるため、父のような能力ではなく侍がごろごろといる。そのため、念能力者が育たなかったのである。

ちなみにジャポンの中には、ネテロ会長が師範をやっている心源流拳法なるものも元はこの国から発生した武術らしい。というか心源流拳法ってなに?どういうのかさえしらんが、ネテロさんと言う人とセットで有名なのは間違いない。

ネテロというひとは、随分昔に会長となってハンター協会を立ち上げたひとだ。
母はそこでハンター資格を得たのだという話しを小耳にはさみんだことがある。
漫画のおぼろげすぎる知識がただしければ、主人公はゴンという野生児で、試験をうけた――ところまでの記憶しかないが、そのなかにもネテロ会長というのはいたきがする。
そう考えると、この世界は漫画を原作とするなら、そうとう原作軸にも近い時代なのかもしれない。

まぁ、すごいものをつくった凄い会長の武術の原点―――そんなものまであるほどに、この国は猛者で満ちているということだ。
だけどその多くがハンターではない。
というか、ハンターになろうとする者が少ない。
ジャポンはあまり国外交流がないらしく、ハンター試験にいく者もめったにいないのだ。

同時にこの島国の住人は、『念』を知らない代わりに、『気功』を使う。
合気道とか、前世の世界では想像できないほど実用的で凄まじい。
要領は念と同じで、体内をめぐる生命エネルギーを操るのだとか。
ゆえに純粋なジャポン出身者のハンターの多くが、肉体の強化やら活性化を得意とする強化系が多いらしいが、能力の性質についてはオレはまだ習っていないのでいまいちよくわからない。





* * * * *





少し家族の紹介をするとしよう。

自分の新しい父親は、ジャポン出身。長く続く剣術を伝える武門の家の者。
名を――黒筆 芭雪(クロフデ ハユキ)。
体はがっしりしていて顔もいかつく、黄色人種の特徴だった黄色い肌はすっかり健康的に日焼けし小麦色をしている。
髪は赤く、妖怪の血をついでいるとかで目はいかにも獣ですとばかりの瞳孔が縦に開いた金の目だ。
ちなみに親戚には、先祖の名残らしく頭に角が生えていたり、顔がまんま爬虫類っぽいやつや体のどこかにウロコがあったり、長寿の者もいるのだとか。
いや、父よ。それ獣じゃない。まんま龍じゃん!!!
まぁ、父の一族はこの際どうでもいい(汗)うちの父は普通の人間の姿なので!
外見だけだと、父はいかにも武士のようないでたちなだけあり、みてくれだけではなく本当に強い。
その腕前は、中途半端な能力者など軽くあしらえるほど。

我が家の父も見事な強化系だが、ごっついみてくれのわりには、穏やかで優しい性格をしている。
そのミスマッチなところが最高!と褒め称えたいのが、我が父だ。


母は、黒筆 風花(クロフデ フウカ)――母は、代々続く遊牧民族の出身。つまりジャポンの海を越えた先の大陸の“外”の人間だ。
羊の毛を刈って暮らす穏やかな一族出身だが、そのなかでなぜか母は一際闘争心と探究心が強かったらしい。
ひとり伝統の技をもちだし、ハンターとなり、そのまま武者修行の旅に出たほど。
その母は十代の頃、強敵を求めて一族の集落を飛び出し、強敵を倒して回っていた。そうして偶然立ち寄ったこのジャポンで母は父と出会い、父に挑んで負け、そのたくましさに惚れて結婚を決めた最強の女である。

彼女はジャポンの外で育った生粋のハンターだ。
念能力はあやつり、縛ること。
操作系で、自分の毛糸で作り出したものを操る能力だ。
この能力は羊毛をかてにしていた一族ゆえの特徴らしく、故郷には似たような操作系能力者は結構いたんだとか。
同時にハイレベルなものとしては、彼女の毛糸で編んだ服を着ている者をあやつったりできる・・・らしい。

毛糸が怖いと思ったのは始めてだ。

ちなみに父は、その技でよくしばられては捕獲されている。
どんなに念で針金のようになった毛糸でも、気功でもって強靭てきな肉体を誇る父の筋肉には食い込むことはない。

・・・いや。それもちょっとどうかと思うけどね。

母は怒ると怖いけど、笑顔が耐えなくてあったかい。そんなひとだ・・・・・・たぶん。


なお、龍の親戚とか来ることもふまえて、我が家は町から少し離れた場所、裏が森になっている場所に居を構えている。
父が運営する道場は、家から少し離れた町中にある。
ここまでいえば理解しているだろうが、裏の森は“アレ”である。森というか、もはや山。危険極まりない獣が跋扈しているあれである。
生まれてからずっと思っていたが、せめて村とか町に住もうよと思う。
サン族や盗賊や獣や龍がよく侵入してきてバトルになる山中の家とか、辛い。落ち着いた暮らしがしたいなぁ、とか思ったり。

まぁ、無理だろうが。





* * * * *
 




不可思議な能力が存在し、庭先には恐竜が闊歩し、忍者は屋根を走り、母が毛糸を自由自在にあやつって空中にナイフを浮かべ、親戚の頭が龍だったり、父がまじもんの人を殺すための剣術を教えていたりする―――ここはそんなバイオレンスな世界だ。
この大陸の外に何が待ち構えていようともはや不思議ではない。

さて、こういうよくある異世界転生ものだと、主人公たちは能力を面白おかしく使ったり、神様とやらにつけてもらったりしている。
私は神様とやらに会ったわけでもなんでもないので、このまま村人Cぐらいの感じでなにごともなく暮らすのだと思っていた。

だが、それだと生きていけない。

本当にこの世界、生きていくの大変なんだよぉ!!
私が生まれて3年以内に何度“庭先程度”の外出で死にかけたかわからないほど。
せめて気配を消すすべぐらいは学ばないとやばい。

ちなみに3歳になったいま、もうこのままだとBADENDだとオレは思ってる。





“庭先”での一番初めの思い出は、たしか目が完璧にみえるようになったころだ。

庭に連れいてかれた。
ピクニックをするのだとおんぶ紐でくくられてみせつけられたのは―――山だった。
そして森に一歩踏み込めば、両親に襲い掛かるきっかいな生き物たち。
きいたこともない文字に起こすのも難しい獣の咆哮が常に響き、おどろおどろしく深い山は、仙人が修行でもしていそうだった。
母の背中に背負われていた当時赤ん坊だったオレは、母からして背中に顔が固定されていた。つまり襲い掛かってくる獣を目の当たりにし続けたわけだ。
たとえ母が華麗に毛糸を操り武器を浮かび上がらせ自由自在に敵を葬っていたとしても。父が見事な気合一閃かつ刀一本で敵を何事もなくみじん切りにしようとも。すべてをみていた。

はっきり言おう・・・・・・・・・・・死ぬほど怖かったよ!!!!!!!


あの恐怖体験はもはや現実以外のなんだというだ!夢というのはあんなリアルではないだろう?

もう、そのころからオレはあきらめた。
この世界は夢ではない。っと。
あきらめざるを得なかったともいう。


それからも当然のように何度寝ても何度起きようと、世界は変わることなく昨日の延長でしかなかった。
こうなっては今の現状が夢ではないと自覚しなければいけなかった。

そうしないとこの世界では生きていけないとわかったのだ。



だって、庭は山だよ!!!
可愛い動物たちと戯れる!?馬鹿を言うな!庭に放たれている野生動物はすべて肉食だぞ!!!

こわい!こわすぎる!


だれだよ!何処の世界に行ってもわたしはすぐに順応するって言ったのは!
赤ん坊からこれでは、命がいくつあっても足りねぇよ!!!





そうしてこの世界について徐々に知っていき、オレは一つ気付いたことがある。
この世界、やたらと聞き覚えのある単語がとびかうのだ。

わかったこと。

この世界はとても危険。
だから「ハンター」とよばれる能力者がいるのだとか。
魔物(モンスター)を狩る方のハンターかと思ったら、狩るだけがハンターではないらしい。
様々な職業についているものがハンターと呼ばれるようで、料理人でさえその称号を抱くほどだという。





「HAN●ER*HUNTER」――《念》と呼ばれる生命エネルギー、オーラを体外に放出することで、不可思議な力をひきおこすハンターと呼ばれる存在が要となる世界。
ここでは魔法や冒険など存在しなかった地球ではありえないような生物が跋扈し、平穏とは程遠い出来事が日常茶飯事におこる。

自分はそんな世界に新しく生を得た。

待ち受けるのは、漫画にあるような冒険ばかりじゃないだろう。
それはしょうがない。



だって、

それが生きるということだから。





前世でさえやりたいことはまだまだあった。ような気がする。
前回、二十四歳で死んでしまったのは覚えてる。
たぶんやりたいことのなにひとつ、まだなしとげていなかった。
だが、こうして生まれ変わったからには、前世の二十四という年齢を超えてヨボヨボの老人になってから死にたいと思う。
たとえ危険極まりない世界だとしても、生きてやろうじゃないかと――この先何度でも分岐点があるのなら、わたしは《生きる》道を選ぶだろう。




今度こそ。
わたしは生きたいのだ。




生きる。

今のところそれが今世最大の目標であり野望だ。

わたしは生きていたい。
生きて、生き抜ければ・・・それでいいんだから。

だからわたしは生きるよ。

赤ん坊からやり直すことになったけど。
それでも相変わらず、自分は自分らしく生きている。



 自分は )。



“以前の名前も忘れてしまった自分”とは異なる新しい自分。
そして一度、世界から消えたはずの存在。

向こうの世界で死んでしまったから、この世界で生を得た。


この手は、今はとても小さいけれど
この手で掴み取ったのは――

何者にもかえがたい 生 という名の奇跡






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二度目だから 原作と似ているから
原作のある世界に転生したから

だからどうした

わたしには関係がないことだ
わたしはただひたすらに“生きる”ことだけを目指すだけ
だってこれはわたしの人生なのだから

生きようとあがいてなにが悪い








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