有り得ない偶然 Side1
++ HXH++



01.新しき目覚め



死んだ。

それほどの衝撃を身体に受けた。

だけど、わたしの意識は途切れることなく――



目が覚めた。




そしてはじまった“つづき”。
これはその“つづき”の物語。





 :: side 夢主1 ::





死んだと思った瞬間を味わった。
だというのに、“目がひらく感覚”がして、まだ世界は続いていることを知った。

わたしはどうやら、新しく“生まれた”ようだ。


目を開けたような感覚はあっても視界はぐにゃぐにゃ。音も聞こえるような気がするが、意識がさだまらず、なんだかフワフワする場所にいた気がする。

あとでわかったことだが、それは赤ん坊だったから、生まれてしばらくは目があかず、あいても見えてはいなかったためだと気付いた。
目があいても赤ん坊の視界はうまく昨日しておらず、なにか色と形がもやもやするだけ。
その視界のせいか、それとも“生まれたて”だったせいか、思考することもできず自分という者も周囲というものもなにもわからないまま、ふわふわとほぼ夢うつつを彷徨っていた。


新たに始まった人生は、聞き耳を立てているだけのわたしでもわかるほどにずいぶんとハードな世界らしい。

なんだかよくきこえる怪獣映画で響くような獣の声。
激しい戦闘音のようなナニカ。

おい、まて。わたしはどこに生まれたんだ?
ここはどんな戦場なんだ。
現実世界の、地球の平成の私の死後の・・・その延長の世界ではないのか。
そもそも私は人間か?

生まれたての赤ん坊であるせいで目が見ない。
そんななかで聞こえる想像もできない音の数々。怖くないはずがない。





どれだけの日が過ぎたのかははっきりしないが、時がたち、ようやく視界がはっきりしてきたころ。
そこでようやくわたしは、別の世界に生まれ変わったのだと気付いた。

なにせ最初に視界にとまったのは、自分の頭スレスレに突き刺さる包丁だったのだから。





* * * * *
 




最初に視界にとまったのは、自分の頭スレスレに突き刺さる包丁だった。

なぜ包丁がここにある!?
まさかさっきの「ドン」という音と瓦礫が崩れたような音に意味があるのか!?
状況を確認しようとしてよいしょと向きを変えて固まった。
家の壁が壊れ、恐竜に酷似したなにかでかい獣がいた。
異世界か!?総ツッコミを入れたくなるような光景が目の前に広がっていた。
壁はすでに破壊され、恐竜の頭が建物に突っ込んでいる。
そこへ父らしき男が刀を振り上げ恐竜の首をきりつけた。赤い色が舞った。
母らしき女性が複数の包丁を手に恐竜の爪を食い止めていた。

瞬間おもったよね。これは夢だと。
現実逃避を決行した。
当然、そのあとわたしは寝たさ。

だってこれは死んだ私が見ている夢の延長だと思ったから。



だが、そのリアルすぎる夢が覚めることはついぞなかった。
だってここが現実だった。





* * * * *
 




「おはよう、・・・愛しい子」


また、目が覚めた。

自分を呼ぶ声にまどろみのなかかから引き戻される。
今度こそ、目の前には両親がいた。
恐竜が奇声を上げ、飛び散る血や包丁が宙を飛んでいったり、親らしき人間たちが死闘を繰り広げてはいない。
戦闘のために放置したあげくの目覚めではなかった。


優しい微笑み。

淡い栗色の髪に、明るい黄緑の瞳。
母親になりたてのその人がみせる"微笑み"の感情が自分を抱き上げる腕から伝わってくる。
ああ、温かい。それがくすぐったくて嬉しくなる。

こうして、自分という命は愛されてうまれてきたのか。

彼女の微笑みだけで、愛されているのだとわかる。
[愛]をしる。
それだけで、転生したのも悪くないと思えた。

前世のことは気になることは山のようにあったし、最後に共にいた友人のことも気がかりだ。
だけどわたしにはそのきがかりをどうするすべもなければ、時空を超える力も元の世界に戻れる手段もないので、いまは極力考えないことにした。
なぜ次元的規模で考えてるかって?もうここが異世界だとわたしはしってしまったからだ。
いや、だって!恐竜がいる日常なんておかしいだろう!?
つまりここは異世界。並行世界の地球でもいいが。自分がしっている魔法もファンタジーも物語の中にしか存在しないあの世界とは異なる世界であることにはかわりがない。
そうなると一緒にいた友人が同じ世界に飛ばされた確率はとても低い。だっていま傍にいないのだから、“そういう”事だろうと思う。だから“あきらめる”のだ。わたしはひとり、“ここ”に生まれた。それを受け入れるしかない。

それに生まれ変わってしまったものはしょうがないだろう。
生まれ変わったってことは、死んだってことだ。

まぁ、わたしがわたしである限りは、生きるだけ。


。ほら、お母さんとお父さんよ」


母に抱き上げられる。
横にいるのは新しい父だ。

まだ目がしっかり見えていないので不便だが、色はわかる。ある程度の形もほぼわかってる。
きっとどこかの夢物語に出てくるような転生者ならば、生まれながらに目はみえたりするのだろうが、あいにくとわたしはまだ生まれて間もない子どもそのものだった。

だが“判断”は可能だ。
これはひとえに前世からの影響だろうが、わたしは視えてはいけないものを普段から認識している。たぶんこの世界では"オーラ"と呼ばれるものが視えるのである。 オーラというのは、まるで個性そのもの。同じいろはなく、とても個を見分けるのにはちょうどよかった。
それでいまのところ両親を判断しているのだ。

母の周囲のキラキラしたもに手を伸ばす。

『あぅ!』

母や父のオーラはまるで制御された川の流れの様に、彼らの周囲を包み込む。
この世界に生まれてから、以前よりもはっきりとオーラが視えるようになった。
それがこの世界の肉体を得た影響かはわからないが、きっとこの世界の住人はオーラのあつかいに慣れているのだろう。
母のソレはとても強く綺麗だった。

「ふふ。まぁ、さすがはあなたの息子ね。もうわたしのことがわかるみたい。
こんなに賢い子なんですもの、わたしよりも立派なハンターになれるわね」
「……」
「あら。お父さんも喜んじゃって」

二人ともわたしが何かアクションをおこすたびに喜んでくれているらしい。
ところでハンターということは、わたしも将来あの大きな肉食獣どもを狩る仕事に就くのだろうか。

それよりも――

今の会話のどこに、父が嬉しいとわかるのだろう!?

父は無言だったぞ!?しかも無表情だぞ!
母よ、いまのどこをどうみて、父の表情を読み取った!?

父の感情的な意味でだが、初っ端から、なんかいろいろくじけそうだった。
まずはこの世界になじむより先に、父の言葉を理解することから始めなければいけなさそうだ。



・・・わたしの、以降の幸先がいいコトを願おう。




――二度目の人生。

自分は新しい名を得た。

』とかいて、『』と読ます名前をいただいた。
ぶっちゃけ前世の名前は忘れてしまったので、新しい名前はすごくうれしかった。
それに今の“自分”にはあっていると思う。
きっと最初に名前を呼ばれた瞬間、その長自分のことだと認識瞬間、わたしは“”以外の何者でもなくなったのだ。


黒筆 ――。

それが新しいわたしの始まりの名前だった。








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