【有り得ない偶然】Side1 F
-- 君は別の世で生きる --
◆HUNTERXHUNTER
02.誕生×世界×家族
死んだはずのわたしは、赤ん坊として生まれた。
しばらくしてからようやく目が見えるようになったとき、そこにいたのは赤い髪に金色の(瞳孔開いた獣っぽい)目の父親と、栗色の髪に若草色の瞳をした母親だった。
二人の間に、わたしは男として生まれていた。
::side夢主1::
おなかの中にいたときからなんとなくは想像がついていたけど、生まれた世界は、漫画で有名な【H UNTER×H UNTER】の世界だった。
だって、やたら「ハンター」って単語が連呼されてるときてる。
《原作》をしっていれば、嫌でも・・・わかる。
漫画の世界に転生。
有り得ない。
まさに夢物語でしかない言葉だ。
だからこれはわたしがみている夢なんだろうって。
ずっと思っていた。
いや。違うか。
ずっと、そうであればいいのにと思っていたんだ。
漫画の世界――そんな場所。
現実に会ってたまるかよ!くそったれが!
というのが本音で。
トリップとか転生とかありきたりなものは、物語として読むぶんには好きだが、自分がそれの主人公だと言われると――いやね、いろいろ
面倒くさくて。
なにそれ?どうやって一般人だったわたしは生きていけばいいの!?とか本気で鬱になりかけたものだよ。
夢であればいいと願ってた。
まぁ、その世界で何年か生きれば、さすがににここは現実なのだと諦めがついたが。
だって、まだあの《死》の瞬間の、とんでもない恐怖と痛みは忘れてない。
わたし、 もう・・・・・・
死にたくないなぁ。
――そんなこんなで。
そうして、わたしの第二の人生が始まった。
ここで生きると決めたからには、わたしは、《わたし》を捨てることにした。
まぁ、もとからそれほど女らしいところなどなかったが、わたしは自分を「オレ」と呼ぶことにしたのだ。
もう前世の《わたし》はいない。
さよならだ。
これはけじめだ。
そして、わたしはもうひとつ決めたことがある。
それは、何が何でも生き残ること。
人生はいつ何が起こるかわからないと、身をもって体験したばかりだ。生きたいという欲求は誰よりも強くあった。
人生二度目があろうとやり直しはきかない。だからこそ、この二度目の人生をできるだけ楽しみたいと思う。
とりあえずこのままこの世界で生きるために、オレははじめに“生き残る方法”から学ぶことにした。
だってあの人外魔境の世界だよ!?
ここが《わたし》の記憶通りの漫画の世界であるならば、能力者がうじゃうじゃいるのだ。
さらには主人公がその事件に突っ込んで解決していくから物語ってのは面白味があるわけで、すなわち漫画の世界ってことは、事件が頻繁に起こるんわけだ。
オレが能力とか覚えない限り、なにもしなかったら死ぬじゃん!!
オレ、まだ死にたくないっての!!
死んだばかりだ。二度目の人生ぐらいもっと長く!もっと楽しく生きたいんだよ!!
ええ、もちろん。がんばりますとも。
生きるためにね!
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黒筆
(クロフデ )――。
ひらきなおったあと、ファンタジー世界で
男の子 をしている。
なぜ女だった《わたし》が男かというと、自分の両親らしきひとたちが "息子" だといいきったから。
それすなわち今世の自分は『男』ということ。
前世では女だったので、ある意味ではいろんなことが新鮮な体験だった。
でも、もともと恋愛ごとよりも冒険に憧れる性質だったので、男には一度なってみたかったというのもあり、その事実に関してはあっけないほどすぐに受け入れられた。
まだうまく目の見えきらない赤ん坊で、自分の体を好きに動かすことができないとしても、自分の性別が分かったからには、いろいろ心構えもできるというもの。
さて。
わたし・・・もとい、オレの近辺について語ろうと思う。
まずこの世界について。
ここはやはり【H UNTER×H UNTER】であるらしい。
母が能力者だった。
新しく生まれた先の母は、この世界特有の能力である 〈念能力〉 を日常的に使用していた。
ここまでくれば、そりゃぁ、ここが【H UNTER×H UNTER】だといやがおうでも気がつく。
なによりやたらとハンターという単語が跋扈してるし、これはもうあきらめるしかない。
その世界でもオレがいるのは、ジャポンという日本によく似た文化を持つ小さな島国だ。
ここは地球でいうなら江戸時代とかそのあたりの文化らしく、建築様式は長屋や平屋の屋敷がメインで、さらには忍とかが当たり前のように(我が家の屋根を)走っている。
ちなみにその光景をはじめてみたときは思わず『NARUT0かよっ!!』とつっこみそうになったが、ここの忍はきちんと忍んでいるので、黒服がメインだ。
そんな町中からはずれた場所に、オレの家はある。
今世における新しい自分の父親は、このジャポン出身だ。
父は長く続く剣術を伝える武門の家の者らしく、オレの家は、町から少し離れた場所で道場を開いている。
ちなみに家のすぐ裏は森である。
父の名を――黒筆 芭雪(クロフデ ハユキ)。
体はがっしりしていて顔もいかつく、黄色人種の特徴だった黄色い肌はすっかり健康的に日焼けし小麦色をしている。
いかにも武士のようないでたちの父だが、これでもみてくれだけではなく本当に強い。
たぶん中途半端な 〈能力者〉 など軽くあしらえるだろう。
ジャポンでは、武術に秀でたものが集い、その血を脈々と継いでいるため、父のような奴はこの国はごろごろといる。
ちなみにジャポンの中には、原作で有名なあのネテロ会長が師範をやっている心源流拳法なるものも存在し、元はこの国から発生した武術らしい。
それほどにこの国は猛者で満ちている。
だけどその多くがハンターではない。
というか、ハンターになろうとする者が少ない。
ジャポンはあまり国外交流がないらしく、ハンター試験にいく者はめったにいないそうだ。
同時にこの島国の住人は、 〈念能力〉 を知らない代わりに、『気功』を使う。
合気道とか、前世の世界では想像できないほど実用的で凄まじい。
要領は 〈念〉 と同じで、体内をめぐる生命エネルギーを操るのだが…。
ゆえに純粋なジャポン出身者のハンターの多くが、肉体の強化やら活性化を得意とする強化系が多いのだとか。
我が家の父も見事な強化系だが、ごっついみてくれのわりには、穏やかで優しい性格をしている。
そのミスマッチなところが最高!と褒め称えたいのが、我が父だ。
母は、黒筆 風花(クロフデ フウカ)――新しい母は、代々続く遊牧民族の出身だ。
羊の毛を刈って暮らす
穏やかな一族出身だが、そのなかでも母は一際闘争心と探究心が強かったらしい。
独り立ちの時、伝統の技をもちだし、ハンターとなり、そのまま武者修行の旅に出たとか。
その母は十代の頃、強敵を求めて一族の集落を飛び出し、強敵を倒して回っていたらしい。
そうして偶然立ち寄ったこのジャポンで母は父と出会い、父のそのたくましさに惚れて結婚を決めた
最強の女である。
彼女はジャポンの外で育った生粋のハンターだ。
〈能力〉 は縛ること。
操作系で、自分の毛糸で作り出したものを操れる。
この能力は羊毛をかてにしていた一族ゆえの特徴らしく、故郷には似たような操作系 〈能力者〉 は結構いたらしい。
同時にハイレベルなものとしては、彼女の毛糸で編んだ服を着ている者をあやつったりできる・・・らしい。
毛糸が怖いと思ったのは始めてだ。
ちなみに父は、その技でよくしばられては捕獲されている。
『気』によって強靭てきな肉体を誇る父にかかれば、どんなに 〈念〉 で針金のようになった毛糸でも父の筋肉には食い込むことはない。
・・・。 いや。それもちょっとどうかと思うけどね。
母は怒ると怖いけど、笑顔が耐えなくてあったかい。そんなひとだ・・・・・・たぶん。
ちなみに我が家は、山の中に家があるため、森に住む獣がよく侵入してくる。
生まれてからずっと思っていたが、せめて村とか町に住もうよと思う。
落ち着いた暮らしがしたいなぁとか思ったり。
――まぁ、そんなこんなで、自分はこの世界で波乱万丈の日々を送っている。
生まれてしばらくたってから、改めてわかったことだが、“ここ”は、こないだまでいた地球という世界とはまったく違った。
しかもこちらの世界は、あちらの世界では、【H UNTER×H UNTER】という漫画になった――というか、酷似した世界観である。
そう。この新しく自分が誕生した世界は、漫画に酷似した世界、またはそのものであるのだ。
なぜって。
『ハンター』とう単語が絵本の中にもでてくるしまつ。
さらには母までもがそれに属しているらしく、日常的に何度も聞けば・・・さすがにね。
そんなわけでなんとか馴染もうと必死に赤ん坊から始めているわわけだが。
この世界はどれだけスリリングなんだか。
だって・・・自分のすぐ脇を
包丁がとんでいったよ。
オレ、今、赤ん坊!?
ベビーベットが包丁の刺さった衝撃で
ガコンとゆれたし!!
しかも父が見事なまでに磨きぬかれた愛刀で、母がさらに投下している包丁やらナイフやらを弾き飛ばしている。
これが照れ隠しとか、夫婦喧嘩と呼ぶのだから、うちの両親は何かがおかしい。
さらには突如、開け放たれた縁側から、凶悪な顔面の獣が入ってきた。
それにオレがびびっていると、母が父との戦闘の片手間に 〈念能力〉 で人形を操りだした。
母手製のあみぐるみたちは、窓から飛び込んできた怪獣モドキを毛糸で縛り上げたり、
みごとなアッパーやらナイフを繰り出したりして、そのまま野外へと放り出している。
「・・・・・・・・・・・・・あぶぅ・・・(こわっ)」
本当に【H UNTER×H UNTER】の世界ってのは、スリリングだ。
その後。結局わたしは、 〈念能力〉 を覚えるのことになるはめとなるのだけど・・・。
そのきっかけは、やはり身近な存在である母であったと、ここに明記しておく。
もっともっと生きたいよ
まだ死にたくないんだ
だから原作キャラと会わないで済めばいいと思ってる
・・・
いや、それよりもさきに、夫婦喧嘩から生き延びられるすべを探さねばなるまい
まじで頑張ろう
オレはもっと生きたいんだよ!母よ!!!