有り得ない偶然 Side1
++ HXH++



09.第二試験×料理×美食ハンター



「そういえば、おじ、じゃなくてあんたのこと、何て呼べばいい?」
それ変装なんだろう?

と、一緒に走っていた保長の子、服部半蔵が聞いてくる。
「叔父さん」と言いかけたハゲのことは、殺気込みで睨みつけて黙らせた。
口の軽い忍者め。

その横には、ニンマリ笑顔を張り付けたヒソカがいる。
他人に向けられた殺気の余波を浴びて興奮してるんじゃないよ!まったくこの子は。

オレたちはまだ階段を走り続けている。

生き延びるためには逃げる必要があり、とにかくがむしゃらに逃げるためだけの足は鍛えた。そのおかげでオレは体力とかは一般人よりもついた。そしてオーラを操作することで、疲労を最小限にしている。そのため80kmを超えようがついていけている状態だ。速度じゃないぞ、距離のことだ。
ただ途中であまりに眠くてヒソカに運んでもらっていたが、体が縮んでからどうも限界以上の行動をすると眠くなるような気がする。経験してきたことと体が一致しないせいで、自分が今までできていたことを当たり前のようにやろうとすると眠くなる感じだ。
いや、むしろあれかな。ただのオーラ不足の可能性もある。
じつはこの試験を受けるために新たな常時展開型の念能力を作ってしまったので、その影響でオーラの消費が激しいのかもしれない。
眠気に関しては、何が原因かは解明できていないが、少し寝たらすっきりしたので自力でまた走り始めた。

そこへところに、半蔵が合流したのだ。
しゃべりながら走るのはきつくないのだろうか。
「名前を聞くぐらいはできる!」と、凄い顔でオレたちの速度にくらいついてくる半蔵。

名前をきかれた。
あーそれもそうか。この時間軸にいるいじょう、オレは会長たちが付けた名前のキャラを演じないといけないんだったな。そうなると今後も呼び名が必要か。

・・・アレを名乗るのか。

ネテロ会長とジンが考えたあの名前を。

『・・・・・ズ』
「聞こえないよ☆」
『ぐっ・・・』
「そ、そんな鬼の形相で名乗るような、なまえ、なのか?」
「ナイスツッコミ◇さすが半蔵。きみ、息切れしてるけど大丈夫?」
「あんま、大丈夫じゃ、ない!」

でも知りてー!と叫ぶ半蔵。もうゼーハーもんである。

『ポンズ』

「「ん?」」

『ポンズ=ユズだ』
「「柚子ポン?」」

こいつら本当に血のつながりがないのか!?
顔をお互いに見合わせた後、息ぴったりで聞き返してきた。

ジャポン人にはなじみ深い万国共通万能調味料の一つですよねー。
ネタがわかるから同郷とは会いたくなかったんだ!
それが分かる時点で、これだからジャポン人は味にうるさいといわれるんだぞ!

『後見人(ネテロ会長)につけられたんだよ。たまたま鍋パやった後だったから』

「わーお☆ないね」「うわぁー。ないわ」

若干二人から憐れみと同情の視線が送られた。
そのいかにも鍋がおいしかったアピールのような名前を今は呼ばれたくなくて――呼ばれたらいたたまれなくなる自信がある――そのあとすぐに、二人を置いていくようにスピードを上げた。

意をくんでくれたのか、それともそれぞれやはり自分のペースのほうが楽だったからか、ヒソカと半蔵が追いかけてくることはなかった。

『フン!』

怒りに任せてはしっていたら、試験官サトツさんとそのすぐ背後を走っていた子供二人のそばまでやってきてしまった。

サトツさんのすぐ背後には、10歳ぐらいの子供たち二人、405番と99番か。

あ、あの99番の子、雰囲気が幼馴染のシルバに似てる。ゾルディックかな。
シルバってば、オレの知らない間に何人子ども増やしたの?

まって!
釣竿を持った405番の子供、ジン=フリークスに激似なんですけど!
あ、そういば子どもが出てるって言ってたか。まさかこいつか!?
ジンには子どもの名前を聞いていなかったし、原作知識なんてもう覚えてないので誰が主人公か覚えてないし。だというのに、目の前の少年が誰かはすぐわかった。こいつ100%ジンの息子だ!それほどまでにジンに似すぎていた。ただしこの子の方がジンいり、素直そうで純粋そうで可愛げがある。だが、どうみてもミニチュアジンだった。

衝動的に、気づかれる前にと、速度を下げてしまった。

「ん?おねぇさん大丈夫?」

ひぇー!向こうから話しかけてきた。
どうやら一気に近づいてきたのに一気に速度を下げたので、ジンの息子が気になったらしい。
なんてことだ!ジンの息子なんて、何をされるかわかったもんじゃないから顔見知りにはなりたくないのに!!!

『オレ、じゃなくて、わ、わたしのことはきにしないで大丈夫よ』

前世ぶりではないかこんな口調。
久しぶりすぎて、女の子ってこんな口調だっけ?っと、自分で自分に思わず疑問を抱く。
ダイジョウブデスコトヨ。みたいに変な言葉遣いにならなくてよかった。
むしろ声変わりする前の体格でよかった。結構自然な高めの声が出たわ。まんま女子って感じだった。
うぉぉ−ーーい!オレの成長期マジ返せよ!

405番の横にいた99番の銀髪の子が、「こいつ汗ひとついてねー」と不審そうにオレを見てくる。
やめろー。アラを探すんじゃない!
こちとら即席舞台俳優じゃ!芸歴0分のにわかガールだよ!やめい!みるんじゃない!

『そ、そんなことより前を見て!ようやく光が見えてきたわ』

オホホホとわらって、ジンの息子からさりげなく距離をとる。

前方を指させば、遠くの方に白いものが見えている
外の風が流れ込んでくる。
うん。出口かな。

これでようやくながーい、ながーーーーーい通路と階段の持久走はおわりだろうか。





終わりじゃなかった。

たしかに暗いトンネルは終わったが、次はヌメーレ湿原。足元の悪い湿地地帯である。

出口のところで試験官のサトツさんが、この場所のことを説明していたら、受験者に擬態した獣があらわれた。
だけど今まで走るだけで飽きていたらしいヒソカに、トランプでミンチにされていた。
ついでにヒソカはサトツさんまで狙ったらしくて、サトツさんがトランプをキャッチしながら、試験官への攻撃は禁止ですと、ダメだしをしていた。

受験者の振りをしていたのはサル型の獣だ。
あの魔獣は肉がなくてうまくないやつである。
どうぜ獣を殺すなら、うまみのあるやつを狩ってほしかった。そうしたら非常食にできるのに。
あ、殺されたサル型の獣の死骸に、一瞬で鳥が群がった。
うーむ。ぶっちゃけ今屍をあさっている鳥のほうが食しがいがありそう。

「それではまいりましょうか、二次試験会場へ」

しょうがない。時間がないから狩りはおあづけだな。
つい、美食ハンターとしての食指がうごいてしまい、基本人以外の物を食べれるか否かで判断してしまう。
いけないいけない。


サトツさんが再び歩き出す。
相変わらずスゴイスピードだ。走らないと追いつけない。
あれってさ、股下の長さが長いから、ただの大幅早歩きも走るぐらいの速度が出るんじゃないの?
オレもあれくらい股下が長ければ、イケメンになれたのだろうか。チビですがなにか?405番よりは身長高いいやい!

そうこうしているうちにドンドン霧が濃くなっていく。
後から追いかける方が大変そうなので、速度を上げてサトツさんの背後につく。
通り過ぎ際、405番と99番の子供たちの会話が聞こえた。

「ゴン、もっと前にいこう」
「うん。そうだねキルア。試験官を見失うといけないもんね」

ジンの息子はゴン。99番の銀髪猫目の彼はキルアというらしい。

「そんなことよりヒソカから離れたほうがいい」
「え、どうして?」
「あいつ、殺したくてウズウズしてるから」
「!」
「霧に乗じてかなり殺るぜ」

あら、やだ。うちの息子ってば殺戮モードにはいちゃって、霧に紛れて遊んでくるらしい。
次の試験開始までには、会場には間に合うようにね。

まだ念能力も開花してないのに、うちのこの狂気に気づくとは、やはりキルアくんはゾルディック(暗殺一家)ではないかな。
シルバってば、こんな小さな子をかなり徹底して暗殺者にするための教育を施したのかもしれない。
いや、シルバじゃないかも。奥さんとかかな。わからんが。教育ママになっちゃたのかあの子。
キルアの察知能力がすごいと思っていたら、ゴンもそこは不思議に思ったらしく、キルアが自ら意味深な言葉を返していた。

「なんでそんなことわかるのって顔してるね」
「なぜならオレも同類だから、臭いでわかるのさ」
「同類…?あいつと?キルアが?
そんな風にはみえないよ」

くん。っと鼻を動かして臭いを嗅ごうとするゴン。
え。何してるの君。
においって、そんな直接的な意味じゃないと思うよ。暗殺者や殺人鬼特有の雰囲気のことだと思うけどなぁ。

キルアもそういう考えだったのか、ゴンが"きづかなかった"ことに、満足したように口端を持ち上げて笑った。

「それはオレが猫かぶってるからだよ。そのうちわかるさ」
「ふーん」

その直後、ごんは背後の人込みへ向けて大声でこえをかけた。まだ仲間がいるようだ。

「レオリオー!クラピカー!キルアが前に来た方がいいてさ!」

「ドアホー!いけるならとっくにっとるわい!!」
かなり遠くの方から、ゴンに返事する声が返ってくる。
向こうにいる子もわざわざ返事してくれるなんて、律儀でいい子じゃないか。

それにしても――

「緊張感のない奴らだな。もー」

キルアに言われてしまったが、それはオレも思った。
ゴンの周囲はなぜか緊張感がない。
あーシンぽい。そういうゆるくてマイペースなのに強気なとこ、ジンぽい。

巻き込まれるのはご遠慮願いたい。
ジンの血縁者なんて、いやですね〜。
スピードを上げて、子どもたちを追い越すとオレはサトツさんの後を追いかけた。



この試験会場は、本当に走りづらい。
一般人何人残るか怪しいレベルである。

ぬかるんだ大地は走りづらいし、霧が濃く、受験者たちを己の栄養にしようと魔獣や植物が、受験者たちのフリをして惑わしてくる。
これ、うちの実家の裏山の念能力開花しちゃった化け物級の肉食獣の群れとどっちがましだろう。

「貴方のおうちの山も相当やばいですからね」

二次試験会場まで私についてきてください!そうサトツさんが言ってたから、オーラをおってピったり背後を走っていたら、こっちの心を読んだようにとても小さい子声でサトツさんがつぶやいた。
心を読むんじゃない。

「声に出てましたよ」
『サトツさんはオ、私のことを?』
「ええ、会長から聞いてます。ただ他の試験官たちは知らないと思いますよ」
『そ。ありがとう』
「いえいえ、どういたしまして」

誰に聞かれているかわからないので会話は最小限で終わらす。

周りからは悲鳴が聞こえています。

霧に投影された人が走っているように見せかけた影にだまされて、植物にくわれちゃったかな。
地面のなかで口を開けて、泥に擬態して待ち構えていた巨大カエルに食べられちゃったかな。
催眠術をかけてくる蝶がにねむらされてはいないか。
爆発するキノコを踏んじゃったり、嘘八百を告げてくるカラスの言葉に騙されて罠にはめられたりしていないかな。

なんでそこまでここの生態に詳しいのか?って。
ハンターの仕事でこのヌメーレ湿原に調査に来たことがあるからだね。

しばらく走っていたら、開けた場所に出て、そこには体育館みたいな建物が建っていた。

「ここが第二試験場です。皆様時間までもうしばらくお待ちください」

サトツさんはいまいる受験者へと優雅にお辞儀をするとすたこらサッサとばかりに、どこかへ行ってしまった。
足が速いな本当に。


しばらくしてぞくぞくと受験者が追い付いてくる。
その中にゴンもヒソカもいない。

どうしたものかなと思っていれば、受験者が途切れた後に一人でヒソカがたどり着いた。
前方を走っていた者たちの姿が追えないくらいの時間差で来たということは、オーラを追ったか、GPS機能付のなんらかの機械の恩恵でもうけたかしてサトツさんの痕跡をたどったようだ。

まぁ、始めからヒソカの心配はとくにしていない。そもそも今の大きく育ったヒソカを見るに、このハンター試験も受からなければそれはそれでいいという雰囲気を感じるので。
ただし、オレの時間軸の六歳のヒソカなら心配する。
だが今のヒソカはは23歳らしい。本来のオレの身長よりも背丈も高く体格もいい。さらにはあの自信マンとばかりの笑顔、我が母に似すぎていて、心配など何もない気がしてしまう。心配するなら、あの笑顔と遭遇した人間たちのほうだ。絶対殺される。
ここまで立派に成長した姿を見てしまえば、心配は無用というもの。
なにより、オーラが整っているから、今のヒソカは念能力を習得している。
心配する必要を感じないのも、能力者であるところの安心感が強い。


第二試験会場前まで到着したヒソカは、肩に何か大きな荷物を担いで……おっと、ありゃぁ、人か。上半身裸の青年を担いでいた。
気絶しているが、どういうこっちゃ?
その半裸の受験者には見覚えがある。たしかトンネルのなかで、かなり後方を金髪青年と走っていた男だ。
一緒にいた金髪青年の姿はない。

「よいっしょっと」
『ヒソカ、それは?』
「ああ、これ?殺すには惜しいって思ってね☆」

青年を会場近くの木によりかからせると、凝った肩をほぐすようにヒソカが腕を回す。
そのまま「あーつかれた」と少し離れた木の根元に座り込むヒソカ。
そのヒソカから、かすかに血の匂いがした。
キルア少年が言っていたとおり、本当に遊んできたらしい。

『ふーん。遊びで殺すんだ』

そういう子に育っちゃったのねお前。
まぁ、あの山では生きるか死ぬかが常だったし、他に遊ぶもの何もなかったしなあそこ。
「殺し」を快感と思ってしまうのも仕方ないのだろう。
うんうん。やはりこうなったのもすべてオレらのせいだな。

オレの言葉に、ヒソカは不思議そうに首を傾げた。

「パ…君も、悪いことだって言うのかい?◇」
『言ってないだろそんなこと。オレは六歳までのお前しか知らないからな。今の趣味は何か知りたかっただけ』
「そ☆それらならいいけど」
『恨みは買わないよう気をつけろよ』
「買う前に、売ってくる奴は皆殺しさ☆」

それなら、まぁいいか。

気をつけろよと頭をわしゃわしゃなでてやれば、仮面のようだった笑みがくすぐったそうに和らげられる。
うん。座っているから撫でられるんだな。
オレ、ずいぶんと身長が縮んでないか?それともヒソカの身長が高すぎるのか。
少し憂鬱になったので、またなーと手を振って、受験生たちの中に混ざりこんだ。


次の試験開始は、本日午後スタートと建物の入り具に紙が貼ってある。
ゴンと金髪少年が森から姿を見せたのは、開始時間から10分ほど前のぎりぎりのタイミングだった。

ギリギリ登場って、どこの主人公かな。

ほら、よくサスペンスもの爆弾って、かならず1秒前に解除できるじゃん。
それにヒーローは遅れてくるじゃん。
あれとおんなじ原理かなって。
・・・つまり、戯作だと主人公はこのミニジンこと、ゴン少年が、主人公!?
ひえー。巻き込まれるのだけは嫌だ。できる限り近よらんとこ。


そうこうして、はじまった二次試験。
なんとお題は料理だった。





+ + + + +





『……おもうに、先程の試験内容で貴方たちは"なに"を審査していたんですか?』

好き放題やってくれた試験官に、オレがいらだちを込めた笑顔をニィーッコリと送ったのは、悪くないはずだ。
殺意も送ってないし、殺さなかっただけ感謝してほしいものだ。

半蔵が人の顔見てヒィ!と悲鳴を上げていたが、知ったことではない。
口軽忍者くん。その口、削がれたくなければ黙ってろ。





一つ目の試験は豚の丸焼き。
「アタシ達が満腹になった時点で終了よ」
試験官は、女性メンチと、横も縦もでかい男ブハラが試験官だった。
二人は美食ハンターであるらしい。
オレが活躍していた17年前には見ない顔ぶれなので、たぶん若手だろう。
二人の経歴は知らん。同職として、あとで目の前の二人についての情報を得ておく必要があるかもしれない。

二人が満腹になったら終了ということは、胃にかんする念能力だろうか。なにせこの場には約150人ばかり受験者がいるのだ。全員の料理を判断するためには、二人の胃では追いつかないだろう。
本当は"食べさせること"ではなく、"材料をとってくるまで"が試験の判定箇所であるのなら、「満腹になるまで」という時間制限をもたせることで、受験生たちの心のゆとりをなくすことには成功している。
まぁ、どういう基準でなにを試験で審査しているのかは、それぞれのハンターにまかされているが、美食ハンターがみるのは料理の腕で味でもなく、そこまでの意気込みや経緯などだろう。とうぜん動体視力・観察力などもみているだろうが、そのあたりはハンターは持っていて当然ないとつとまらないので、それらは必須項目ともいえよう。
さぁ、目の前の二人の真意は読めないが、どう判断を下してくるか。後輩の試験が楽しみじゃないか。

ハンターは誰でも武術の心得がある。
美食ハンターだからとなめてはいけない。食材を求めるだけではなく料理もできるし、味も知り尽くしてなんぼだ。
しかも食材を探して猛獣の巣の中にも入ることもあれば、密猟者と遭遇すれば捕縛することもある。未知の獣とバトルなんてこともしょっちゅうだ。
つまりは●●ハンターと名乗るのは自由だが、それになりたいからといってその称号を得れるとは限らないわけである。

現にオレなどは自称は美味い物を求める美食ハンターのつもりだが、周囲からの認識はUMAハンターだからな。

まぁ、何が言いたいかというと、美食ハンターが出すお題として「料理を満腹になるまで食べさせる」のは試験として向いていないということだ。真意はほかにあると考えるのがベスト。
美食ハンターとしてお題に出すのであれば、先程も告げたように「食材をとってくる」=力、知恵、観察力、考察力、行動力があるかなどを求めるべきだ。
もしも本気でて「料理を満腹になるまで食べさせる」のが目的だったらがっかりだ。その場合、「満腹になるまで」という条件は、どうなのかと思う。
完全趣味じゃん。

もしそうなら、同業者ではあるが、オレの中で彼女らの行動に-1と好感度が下がることとなる。
なんとなく女性ハンターメンチの態度をみていて、すでにオレの中では、好感度が下がりぎみだが。
ここはいい子の受験生を演じておこう。笑顔で「試験官の言うことききまーす」とばかりにニコニコしつつ、ほかのみんなと同じように、豚を狩るために森林公園のなかにかけだす。

たぶん遅く行っても、あのブハラという男はいくらでも食えるだろう。
きっとそういう能力だ。
女メンチのほうの能力はわからないが。

なお、ヌメーレ湿原と連結しているビスカ森林公園では、野生の豚は一種類である。
コレがとてつもなくでかく、頭部さえ覆えそうなほど花がでかく進化していて、鼻ですべてを押しつぶす威力を持っている。
とても凶暴で、一般人なら豚の餌にされかねないが、頭が弱点であるので、そこに気付いてしまえば一瞬でやれる。
ただし普通の弓とか刺さらないぐらい表皮は固いし、なんなら突進の威力で人間など一瞬で死ぬし、死んだら今度は豚の餌になるのは人間である。

それを丸焼き…。

現在オレの武器は念能力と体力と知恵ぐらいである。刀は「か弱いお嬢さんが持つものじゃない」とネテロ会長に事前に没収されてしまったのでない。
「おぬし、すぐ殺すしのう。手加減という言葉を知らんじゃろう。せっかくの未来ある若者たち(受験生)が、お前に殺されてしまってはたまらんから、これは試験が終わるまで没収じゃ」と言われたが、そういう環境で、かつ殺す前に殺せと教育を受けているのだ。仕方がないだろうと思う。
そういう意味では目に見えて丸腰だが、マーメンが渡してくれた旅用鞄には、ロープにナイフ、毒もあるし、怪我などの簡易的な治療も可能である。なんならいつも愛用していた包丁と香草、調味料、鍋、火起こし道具なども入っている。
放浪しすぎて常に旅道具がごっそり入っているらしい未来のオレの遺品であるカバンには泣けたものだ。もう少し安定した生活はできなかったのかと思うが、まぁ、いまはそのおかげで助かってはいるのでよしとする。

そう。考えれば簡単だ。試験官が食べることを考慮したら毒は不可だ。なら、あとは罠とか使うなりすればいい、でかくともなんとでもなる。
となると、物理か。

豚が通ったとき躓くレベルの穴を掘る。その上に、ロープでつるした大きめの意志を設置。
穴に躓きバランスを崩したところを脳天めがけて狙い撃ちするのだ。
案の定豚はこちらを見つけると推し粒祖とやってくるが猪のように級には曲がれないようで、穴に躓きバランスを崩す。
そこへ大きな岩が落下。ドオォォンと大きな音を立てて豚は倒れた。
本当に脳天が弱い子だなぁ。鞄で殴っても一撃で倒せそうなレベルだ。

「へい彼女!大丈夫かい!」
「重そうだね!おれたちが運んであげようか?」

さて、この猪のような数メートルはある巨大な豚をどうするかと思っていたら、隠れていた数人の男たちが周囲を取り囲んで、にやにやとなにかアホなことを言ってくる。
どうやら豚の弱点にも気づかず正面から挑み続けて負けたらしい。人の豚を横取りしようという魂胆のようだ。
やれやれである。

それでハンターを目指そうと思うの、どうなんだろう。

『あらやだぁ。大丈夫よ。こんなもの力がなくたって、知恵があれば運べるわ』

それともオレと一戦やるか?その場合、気絶したお前らをこの場で放置する。当然そうなるとどうなるかわかっているだろう?この場所では、死体が転がった瞬間、それを餌に獣たちが群がるのだ。
ヌメーレ湿原の入り口でみなかったか?

『そもそもこの豚の表皮が固いのはなぜ?鼻がでかいのはなぜか。何を守ってそう進化した?…っという発想をした方がいいわ。思考力が鈍ったままよあなたたち。そんなんでこの湿気が多い場所でどうやって火を起こすつもりだったのかしら。
しかも私をどうこうしたとて、豚は一匹よ。貴方たちは三人。お題は“丸焼き”よ。わけるわけにはいかないけれど、誰の手柄として持っていくつもりだったの?』

そういった瞬間、いまさら気づいたとばかりに男たちが顔を見合せ、互いに敵意をむき出しにしはじめる。
視線で互いをけん制しあっている。
おいおい、いまさらからよ。
事前に取り決めもなく三人で組んだんですか。

あー、ばかばかしい。

『あと、忠告しておくけど、私をどうこうしようとしたら、あなたたちを"この子"たちが襲うから。そのつもりでね』

ニッコリわらって指をパチンと鳴らせば、帽子からブゥンっと音がしてスズメバチのような姿をした黒い大量のハチが出てくる。
少しハチたちに男たちを追いかけらせれば、それに男たちはヒィ!っと悲鳴を上げて逃げていく。
彼らのその後がどうなったかは知らない。

今回ハンター試験を受ける際に、ネテロ会長たちが面白がって「ポンズ=ユズ」という少女の設定を作った。
いわく、虫使いで、虫を使って身を守る。あまり特出した身体能力がるわけではないので、毒や薬学に通じている。
孤児のか弱い少女であり、身分証がほしくてハンター試験に参加。

か弱いってどんなだよ!いや、虫使いって、オレの能力《慈黒》から発想しただろ!ってつっこんだら、「じゃって〜おぬし、基本クロヒメとジコクしか使わんじゃろ」「そうそう!そりゃぁ印象にのこるってもんだろ」とネテロ会長とジンである。
だけど《慈黒》は炎が生命エネルギーを燃やすときの炎が目立つし、えげつなさ過ぎるので使用を禁止されている。
そうしてこの時間軸にいる間、もとい「ポンズ」でいる間は別の能力を作ることにしたのだ。
それがいまの蜂である。

名は――《黒針》クロバリ。

帽子の中の影に通常時は身を潜めている。
元は墨絵なので潜ませるのは影が必要なので、帽子の中はちょうどいい隠れ蓑になった。

「蝶だとただかわいいだけだからだめ!もっと凶暴そうなのを女の子の護衛にしなきゃ!」とは、誰の言葉だったか。
その結果がこれ、毒を持つ蜂である。
この世界にしかいないスズメバチのような外見の蜂で、シビレヤリバチという。
それを墨で大量に事前に描き、名をつけ、能力を付与した。まぁ、もとは墨絵なので、黒い蜂にしかならなかったのはしょうがない。
色違いの件については、亜種とか新種とか言ってその辺はごまかそうと思う。
能力は、「縄張りの守護」。彼らの縄張りはオレから半径1m。その範囲内のオレへの敵意を持つものは無差別で攻撃する。
名は、蜂の針と縄張りをかけて「クロバリ」である。
その攻撃がシビレヤリバチと同じ毒によるものか、刺すだけなのかはマル秘である。

それにしてもいやぁー、ハチってどうしてああも翅の音だけでも恐怖を誘うのか。それに加えてシビレヤリバチはスズメバチを上回る顔つきの怖さである。
あのモブ男たちでなくても普通に逃げるわって思った。

「お前の能力はいつもえげつなさすぎる」っと、能力を名前と制約で固定したあと、ジンとネテロ会長に頭を抱えさせた。
「もうちょっと温和なそうな虫はいなかったのか」と言われた。
『なによもう!女の子の護衛には強面をつけろって言ったのは貴方たちでしょ!』と少女ぽく言い返してみたら、砂をはかれた。
「おぇ」じゃねぇよ!

――っという経緯は置いておき、問題は目の前の豚である。
《黒針》たちを帽子にもどし、豚の処理をどうするか考えるである。

ガチでこのまま丸ごととか、料理に携わっていた者として許しがたいので、内臓はぬき血抜きもして、切った腹や口の中に持っていた香草をぶち込むことにしよう。
能力で燃やしてもいいが、先程告げた通り《慈黒》の使用は禁止されているので、道具で一から火を起こす。

自分よりはるかにでかい獲物なんてこちとら何体も相手をしているのだ。自分一人の力では持ち上げられなくとも手段はいくらでもある。今回は下に丸太をおいて転がして、時間がないので川で洗い流し血抜きとした。
ついでに皮は残しつつ毛は食べやすいようにすべて削いだ。
野生動物の毛皮って、どうしてもダニとかいるんだよなぁ。袋に洗剤入れて皮をすべてつけてしまいたい。数日もすれば虫がいっぱい…あーそういえば、内臓にも虫いそうだよなぁこいつ。
もっと丁寧に処理したい!めっちゃ処理したい!美味しくしあげたい!むりだけど。
あまり時間はかけていられないので、ある程度で川からあげて、焚火の上に血抜きした豚を紐でつるす。
紐と枝が心配だったが、きれてしまったり足らなければそこらの蔦を補助に使えばいい。

しばらくしているといいにおいがして、なんだかいいタイミングでヒソカが豚を引きずってやってきた。

「ああ、やっぱりキミか」

ちゃんと料理する人間はこの中で君だけだろうと思ってね。そう言ったヒソカが、「運んであげるから、火を貸して」とこっちが了承する前に、オレの豚の横にもう一頭を軽々とつるし上げる。念能力だったのだろう。なんかゴムみたいにびよーんと伸びたオーラに引っ張られ、あっさり豚はつるされていた。
その後、親心がわき、ヒソカの豚の首を切りつけ血抜きも行い、腹を掻っ捌いてない像だけ取っておく。香草の代わりに塩を振りかけておいた。毛はそのままなので、口当たりはよくないだろうが。

「いいのかい?そんなサービスして☆ボクら、ライバルじゃないのかな(笑)」
『まぁ、念のため合格ラインを上げてやりたくてな』
「ふふ。パパは相変わらずボクに甘いねぇ☆」
『かもしれん』

本当は毛皮から皮、牙、蹄とか、すさまじく硬いというあの鼻も分離したかったが、お題が“丸ごと”だ。どこまで削ったら失格になるかわからなかったから、味でごまかすしかない。

『この試験、嫌いだ』
「おやおや☆」

食への冒涜の気配を感じる。

その後、約束通りヒソカがオレの分も豚を運んでくれた。
会場の近くまでついたら、豚はオレ自身で運ばねばいけない。オレに力を求めてはいけない。腕力はあまりないのだ。見てくれの通りの筋力とそれに+アルファ分ぐらいしか力はない。オレは基本脚力と逃げ技(念能力)しか磨いてないのだから。
なので豚を運べるように小細工がいる。途中で拾った薪を移動し、その上で豚を転がして、なんとか会場の男ハンタ―の前まで運んだのだった。
他の女性とかお子様の受験生たちでさえ、みんな担いで普通にもってきていてぎょっとした。
会長と人が付けた「かよわい」というのを、いま目の当たりにしてしまい、少し落ち込んだ。

この世界、前回の世界と違って、空気中に筋力や体力とかをあげるエキスでも放出されているのではないかと思った。一般人の基準が、何かおかしい。


結局、第二試験豚の丸焼きを持ってこれたのは、オレを含め70名であった。
150人近く第一次試験を通過していたのになんてこった。

「うん。美味しい」

「あ〜くったくった。もーお腹いっぱい」
「ブハラ、あんたねー。結局食べた豚全部おいしかったって言うの?審査になんないじゃないのよ」
「ま〜いいじゃん。それなりに人数は絞れたし。"細かい味を審査するテストじゃない"しさー」
「甘いわねアンタ。美食ハンターたる者、自分の味覚には正直に生きなきゃダメよ。ま、しかたないわね」

「豚の丸焼き料理審査!70名が通過!!」


『・・・( ^ω^)』

いや、まってほしい。まってくれ。まて!本当に待ってくれ!
いまのブハラとメンチのやり取りを聞いて、"味で勝負"でないことにほっとする反面、ブハラは一匹で体調数メートルの巨大豚を70頭も食いやがった。しかも誰も血抜きも毛皮の処理も内臓の処理もしていないやつをだ!!
しかも泥もついたままで豚をただ焼いただけのやつを。
漫画じゃあるまいし、その辺簡略しちゃったらしいよみんな!?

『うまいはずないだろうが…』

さらにいうと案の定ブハラによって、すべて豚の丸焼きは食され、骨だけが彼の背後に山積みなっていた。
合格者70名。
つまり豚の丸焼きも70頭分である。
それをブハラはおいしいおいしいといって、全部食したのだ。
ねぇ、皮も内臓も目だも脳みそも、なんなら蹄まで食ってるんですがこいつ。
寄生虫は?毛は?
いろいろ何がどうなって、おいしく腹におさまるんだよ。
ぜったいなにか念能力を使って食っていそうだ。

なお、ヒソカの豚の丸焼きは「絶妙に味があっておいしかった」と高評価をいただき、オレのは「臭みがなくて毛もなくて食べやすかった」と評価をいただいた。
ポイント制の試験ではないので、そのまま合格だけが言い渡された。


男試験官ブハラが言うように、これはハンター試験である。「おいしさ対決ではない」のはたしかなので、この試験はありだと思えた。
今度試験官やる機会があったら、参考にするのもいいかもしれない。
ただ獲物を捕獲して持ってくるまでを試験に取り入れるのはいいが、全部を食えるわけがないので「試験官が食べる」とか「料理する」とか「試験官が満腹になるまでが期限」というルールだけは絶対やめておこうと思った。



そして次の試験は、女試験官メンチによるお題である。
建物内に案内され、そこには酢飯のはいったおひつに、包丁とまな板と、流しのセットが、受験者分用意されていた。
本格的に料理をしろということらしい。
お題は「寿司」。しかも握り寿司限定。

寿司とは、我らが故郷の料理である。
それはつまり半蔵もヒソカもオレも、寿司がどういうものであるかを知っている。
これは有利だ。
だが、あの口軽忍者半蔵くんは、周囲の困惑する受験生たちを見てプークスクスクスと「いかにも自分は知ってます」とばかりに笑うのだ。
ヒソカがその様子を見て、心底呆れたようにヤレヤレと肩をすくめていた。

周囲も半蔵の挙動から、彼が"お題の料理が何かを知っている"と断定したようで、半蔵の動きをギラギラした目で注視している。

『…兄さん、忍者ってなんだっけ』

兄弟子の保長よ。お前の息子、感情がめっちゃわかりやすいし、すぐに態度に出るんだが。あと口が軽い。忍者ってそれでいいんだっけ?
この場にいない保長に、オレは思わず問いかけたのだった。返事は当然ない。

その後、金髪少年クラピカが「書物で読んだ」とかで寿司がどういものかを知識としては知っていて、それをささやかれたらしい横にいた青年(ヒソカに運ばれてきたあの青年である)レオリオが「魚ぁお前ここは森の中だぜ!?」「声がでかい!川とか池とかあるだろうが!」という大きな声でやり取りをしたことにより、受験者全員が脱兎のごとく外へと駆け出して行った。
「くそ!俺の他にも知ってるやつがいたのか!」と半蔵が叫んでいたが、お前もあの二人とどっこいどっこいだぞとあきれてものも言えない。
ねぇ、アレを身内と認めたくないんだけど。
元の時代に戻ったら、オレが預っている間は半蔵に、「忍者とは耐え忍ぶものである」と徹底的に叩き込もうと決めた。

「くっくっ、おれよりよっぽど性格悪いなメンチは」
「あらそう?」
「だって今のスシダネってのは、ほとんどが海水魚なんだろ?みろよ、あの材料じゃまともなスシなんてできっこないぜ」

オレが立ち止まっている間に、何人かがすでに魚を取ってきて戻ってきていた。
彼らがまな板の上に置くのは、どれも異形で、角がある魚もいれば、棘をまとったようなやばい生き物まで千差万別といった奇怪な姿の魚ばかり。それ本当に魚かといえるようなものまでいる。

それをみて楽し気にみつつ、メンチとブハラがこそこそ話をしている。

「だから面白いんじゃないの。フツーのスシダネなんてもう食いつくしてんのよ。どんなキワモノができてくるのか楽しみだわ。今日は試験官というより料理人として来てるからね」
「料理人として…ってのは、マズイんじゃ……」
「なによ」
「いや、なんでも…(料理人として…ね。メンチの悪い癖が出なきゃいいけど)」

料理人としてだと!?
やはり料理人として来てやがる。メンチ、この女は試験官としてマイナス点です。
なぜなら、料理のできや味や食感などで判断されたら、もはや個人の価値観によるものとなるので、誰も受からなくなってしまう。
オレのなかで、試験への意欲がゼロを突破してマイナスを更新している。
メンチの発言でぶっちゃけ、やる気は完全に失われた。思わず包丁は置いた。

「ねぇ、貴女。246番のあなたはいかないの?」

なにもせず調理台の前で突っ立ったままだったオレに気づいたのか、ふいにメンチから名指しで声をかけられた。

この女どうしてくれよう。いや、ハンター試験を継続させていいのだろうか。魚を捕りに行った方がいいのか。頭の中がグルグルしていたので、憂鬱な表情のまま顔を上げメンチを見やる。

露出度が高いあの服、短パンにブラ。ブラがよく見えるネットのシャツ。なんてハレンチ極まりない恰好だ。 あれでよく美食を求めて森に入れるなぁ。虫に刺されそう。
こちとらタートルネックに長袖にズボンの、完全武装露出なしの冒険用の恰好ですがなにか。
そもそもオレが肌を見せたらハンターに狩られるだろうが。
それにしても、でかいパイである。
ブラから見える谷間をみて、どこにあったのかオレのなかの謎な乙女心が彼女を敵認定した。
やはりもっと前に胸にまんじゅうを仕込んでおくべきだった。

『私ですか?』
「ええ、貴女よ246番。みんな魚を捕りに行ったわよ?」
『そうですね』

握り寿司なら、別に海老とか貝とかカルビが乗っていることもあるし、コーンとマヨとかもあるよなぁ。玉子焼きがのっていたり、ハンバーグがのっている寿司もある。なんなら豚肉でもいいのでは?さっきの豚でも焼くべきか。
前の世界しかり、この世界でもそういったアレンジ寿司はあるのだが。
試験の内容からして"握り"であればいいのであって、種類は限定されていないよな。
魚を名指しで言ってくるということは、そんなに魚がいいのだろうが。

『魚ですか』
「聞いてたでしょう?寿司には魚よ。それと、貴女、豚の丸焼きの段階で、皮の処理も内臓の処理もしっかりしていたし、香草とか使ってたぐらいだから、美食ハンターを目指してるんじゃないの?ここの魚とかみんな珍妙よ。興味あるんじゃない?」

興味があるというかすでに美食ハンターです。言えないけど。

あと食は進化するもので、今ではジャポンでも寿司は市民の食べ物だ。よって、魚以外も握り寿司になっているのだ。魚オンリーという思考のあんたの知識も偏っているぞと、食文化発祥の地の住民としては言いたいが、面倒ごとは控えたいので黙っておく。

そもそも――

『……行く意味が見出せません』
「あら、どうして?私が満腹になったらこの試験は終わりなのよ?」
『“そういう基準”だからです』
「?そ。じゃぁ、あなたは料理への意気込みがないとして失格にしようかしら」
『"そういう言い方"をするなら行きますけど、作る意味は…どうなんでしょうね』

本当にそれ。作ることが本当に試験なのか。
だってメンチは味で決めると言ったのだから。
メンチの基準では、この試験は受かる者がいない気がするんだ。
オレの言いたいことが分かったのか、ちゃっかりメンチの背後でかすかにブハラが頷いている。

『私、東国出身なんで握り寿司が何か知ってますよ。いいんですか作って?』
「な!?あれを貴女までしっているですって!?」
『ええ、知ってますよ。それって“貴方の行動から料理の姿を想像する”という推察力の試験には当てはまらないですよね?あ、でもこの料理試験が実は推察力の試験じゃなくて、ただ味とかを見るだけの試験だったら関係ないか。
そうだったらすみません。
というか、その場合、料理を作らせておいて"何"を判断してるんです貴方?
あと、私を失格にするのは結構ですが、受験生ではなく料理しかみてないのなら貴方も試験官としては失格じゃないでしょうか』

さっき「料理人として」ってメンチは言った。それってつまり、味や食感や見た目とかで合否を決めるということ。
それはハンター試験として本当にどうなんだろうって思うので、オレは彼女が嫌いになった。
ハンターを名乗るなら、しっかりみるもんみて試験をしてほしい。

料理人としては一流なのだろうが、同じ美食ハンターとして、"ハンター"として幻滅した。

『そういう点も含めて、私の中では貴方はマイナスです。残念です』

二十代の若造が、二十年ハンターをしているオレに口で勝てると思うなよ。オレのほうがハンター歴が長い先輩ですぅ!デカ乳め!
仕方ないので、作るフリだけでもするかと、魚を捕りに建物の外へ出た。

「ちょ!何よあの子!!絶壁のくせにぃ!!!」

ポカーンとしていたメンチだったが、オレが出てしばらくすると我に返って騒ぎだしていた。
聞こえてますよ。いや、あの調子だと聞こえるように言ったのか。
ですが、大丈夫。傷つく要素はない。なにせオレ、男の子なんで!絶壁で当然じゃないか…と、思うことにしておく。乙女心は封印した。

「メンチ。そういうこと言っちゃだめだよ。あと、実はオレもメンチのこの試験どうかなぁって実は少し思ってた」
「ブハラ!あんたはどっちの味方よ!」
「味方も何もないけどぉ…でも」
「でもも、ああもない!!もう"握り寿司"って言っちゃったし!試験官はわたしよ!」
「うう…そうだけど(あの子の言うことも正論だと思うんだよなぁ)」

聞こえてきた声に、半蔵だけでなく試験官もダメじゃないかと、この試験に不安を感じたオレは悪くない。

魚を探しに建物の外に出たら、外の木の枝に気配を消してサトツさんがいた。
彼もこの試験には不安を感じていたらしく、様子をうかがっていたようだ。
オレの存在に気づくと、サトツさんは携帯を取り出して空を指さし、「しー」というジェスチャーをしてくる。
ああ、なるほどね。
どうやらサトツさんが、電話でこの試験について上に連絡したようだ。
あの空を指すジャスチャーの「上」がなに意味するのか、「上司」を指すのか、「今から空からくる」の意味なのかは判断しかねたが、どんな経緯を田戸オルガすでにネテロ会長にはこの事態は報告済みなのだろう。
うん。やはりこの寿司づくりはダメな試験だ。作る意味を感じないな。

まぁ、たしかにこの森林公園の魚はゲテモノばかりだ。興味は絶えない。
嫌味として玉子焼きのにぎりでも作ってやろうかと思ったが、巣よりさきに川を発見してしまった。
ネテロ会長がどう動くかは不明だが、試験に動きがあるまではのんびり釣りでもしてくるとしよう。


あっけなく釣れてしまったので、しょうがなくそいつをもって建物にもどった。

ひとまず刺身の状態にでもするか。旅ポーチからワイヤーを引っ張り出し、魚の鱗を糸でとっていく。自前の包丁ではメンチたち美食ハンターに使い込んだ包丁から経歴がばれそうな気がして、用意されていた包丁を使う。
さぁ、魚をさばくかと思っていたら、目を輝かせた子供がやってきた。

「すごい!おねぇさんって料理うまいんだね!」

キラキラした目で、あのにっくきジンの息子が話しかけてきた。
それにチラっと一瞥して、すぐに視線を包丁と魚に戻す。

たしかに綺麗に鱗が取れている。手慣れた感はあるか。うん、でもはじめからそうというわけではないがな。

そうだ。前世のときだって、料理は得意じゃなかった。
もともと料理はやろうとさえ思えば、できないことはなかった。
菓子類は適当にやればできたが、なぜか家庭料理というのは上手くできなかったのだ。
見かけがとにかく悪い。味は普通にうまかった記憶があるが。

第二の問題がオレだ。
前世からズボラな性分であり、食べられればいいという価値観で生きていた。つまり、毎日同じ飯だろうと若干苦かろうと気にしなかっかたのだ。よって、オレは一人暮らしをするにあたり、最低限必要な栄養さえとれれば、一人前を作るぐらいなら「適当でいいか」となるか、または作らなくてもいいだろうという結論に到達してしまっていた。
そのときのオレには、食することで生きていくという必要最低限の条件さえ人間として満たされていなかったといっても過言ではないだろう。

そんな過去(前世の習慣)をどう乗り越えたかって?

いっぺん、子を持つ親になってみろ。
かわいい我が子にひもじい想いなんかさせたくないだろう?
それがオレの料理を頑張ろうっていうきっかけだった。

以前も話したが、オレの常識を覆したのは、こどもの存在だった。
オレのバカげた価値観がそれにより一変した。

だからどんな食材でも、人の口に入れるものはおいしくさせたい。なんなら我が子にはより美味しい物を食べさせたいがために、美味だと評判の食材を求めていろんな場所にも足を運んだ。それが美食ハンターになった理由だ。
実家のやばすぎるあの裏山では、いつも美味しい調味料があるわけではなかった。いろんなところを旅してみたら、一般的な食材でさえ手に入らない場所もざらにあった。いまでは食べられるもののありがたみを実感し、残すとか捨てるとかに抵抗があるほど。

手元には紫とショッキングピンクの毒々しいマーブルじょうで、なんか角のある魚がいる。
こいつも無駄にはしたくない。せめて食えるものとして、調理してやりたいところだ。

『覗き見なんて泥棒と同じよ』
「あ、そうだよねごめなさい」

ゴンを追い払おうと、言葉を投げかければ子どもは慌てたように謝罪すると、さっさと仲間の元に戻っていった。

あのジンの子どもに話しかけられただけで、少しイラっとするのはなぜか。たぶん純粋すぎて、自分と違いすぎる感覚にむずっとするのだ。

なんかむかついたので、まな板の上の魚の胴体と顔の境目に包丁を勢いよく突き刺した。
ダン!っと、包丁がまな板に突き刺さる音が響いた。

いや、八つ当たりじゃないぞ。こいつ角があるってことは頭部が固いんだよ。だからとる必要があってだな。



はい。さらにうちの口の軽いオバカがやてくれました。
あの子はもう。
帰ったら即説教決定だ。

何があったかというと、最終的に試験を完全にダメにする発言をしたあげく、メンチ(試験官)をきれさせたのだ。
あと、オレもブチぎれてます(ニコリ)

お題「握り寿司」では、メンチが出していたヒント「握り限定」という言葉、手の動きや言動、周囲にある小物など(箸や握調味料入りの皿など)から、指定の形を想像するのが一番の課題だ。
その段階で、想像力が豊かな受験生たちが、生きたままのそのままの魚を、握りこぶしサイズの米で包んで出した。
考察の鋭い受験生も同じように生きたままの魚に米を張り付けたりと散々な物を作成。この場の全員が、似たり寄ったりの発想で提出したのだった。
結果、メンチは「そんなもん食えるか!」とそれらの皿を放棄。

なお、そうやって食材が一つ無駄になるごとに、オレの笑顔は深まり、こめかみの血管がびきびき言っていたがそこは乙女の秘密である。
そんなオレの様子に近くにいたヒソカが嬉しそうにニコニコとし米を握っていたが、ひとがブチギレルの我慢している様を見てニヤつくとはお前は本当に変態だなとか思ってしまった。

あと勝手にオレの鞄をあさって、勝手知ったるとばかりにバーナーをとりだすんじゃない。何してるんだ?と思ってたら、ヒソカはまずそうだった魚の切り身を炙っていた。ヤダ、この子、炙り寿司作ってた。…できたものに少し首をかしげていたが、故郷で食べた握り寿司とはなんか違うよね。形というよりも、たぶんその魚の色だと思うよ。緑だし。まぁ、生よりは焼いた方がマシに見えるよその魚でも。ついでにオイルと香草でもかけておいたら?味は保証しないが。試験官に提出するなら、バジルソースとかおいしそうなものではなく、激辛唐辛子パウダーかけようぜ。

生きたままの魚にお米をはりつける――そんな料理とも言えないゲテモノが、捨てられていくのを見て胃がキリキリと傷んだ。
なぜ自身でさえ食べたくないものを料理として人に出せるんだお前たち。

ゲテモノばかりだしていく受験生の中で、寿司を知る唯一の半蔵が意気揚々とメンチにそれらしいものを出した。

「どうだ!これがスシだろ!」

ついに俺の番が来たなとばかりに、自信満々に半蔵が、試験官に料理を提出する。
だされたものはオレたちのよく知る握り寿司の形をしたもの。

「ふーん。ようやくそれらしいのが出てきたわね」

それにメンチは満足そうに笑うと、その何の魚でできているかわからない握り寿司を食べた。

そりゃぁ我らが自国の料理だから、形は知っていて当然だよな。
これで他の受験生みたいなゲテモノ料理を出して来たら、身内としてあいつを絞めようと思っていた。よかったなオレにしめられなくて。

「ダメね美味しくない」
「なっ!?なんだと!?」

メンチが出した判定は、「まずい。不合格」の一言。
判定基準がもうメンチのなかでずれている。美味いかまずいかで判定がかわっている時点で、もうこの試験は誰も受からないのが確定した。

ヒソカくん。ちょうどいいから、君が作ったその緑の寿司、上に激物載せて渡しておいでよ。あ、いや?それは残念。なに?自分でまず食べてみたい?え、そうなの。それは君、勇気あるね。

でだ。
そこからが問題だった。

「メシを一口サイズの長方形に握ってその上にワサビと魚の切り身をのせるだけのお手軽料理だろーが!こんなもん誰が作ったって味に大差ねーべ!!!」

グシャリ。思わずオレが握っていた米を握りつぶしてしまった。
横でしぶい顔をしながら自分で作った寿司のひとつをモシャモシャと食べていたヒソカが、顔を引きつらせオレから一歩距離を置いた。恐怖からではなく、汚れないためだろう…たぶん。

いやいや、シャリの握る強さ加減とか、鮮度を保つためにどう生かすか。魚を美味しく切る方法とか、いろいろあるのよ。それを誰にもできるとか言わないでほしい。料理二年目の俺には、地元の寿司職人のような絶妙なおいしさは再現できないし。

そして、問題なのはここ。半蔵が大声でメンチにキレちらかした内容だ。握り寿司がどういうものなのか、懇切丁寧に説明してしまっている。
口が軽いにもほどがありすぎる。
そこでほかの受験生たちが「なるほどそういう料理か」と、すべてを把握してしまったから大変。

しかもメンチは、オレと"同じところ"でブチギレた。

「お手軽!?こんなもん!?味に大差ない?」

うんうん。わかるそこだけは。

「ざけんなてめー!鮨をマトモに握れるようになるには十年の修行が必要だって言われてんだ!!キサマら素人がいくらカタチだけマネたって天と地ほど味は違うんだよボゲ!」

メンチは声を荒げて、半蔵の襟を鷲塚むとがくがくゆさぶって怒っていた。
当然うちのわんぱく小僧は、それに反論する。

「んじゃぁそんなモンをテスト科目にすんなよ!!」
「っせーよ!コラ、ハゲ、殺すぞ!」
「文句あんのか、あ!?
こちとら、小さいころから寿司なんてなぁ見慣れてんだよ!料理人じゃないけど叔父さんがよく作ってくれたし!誰でもできるじゃねーかよ!!」

原因オレかよ!!

おい、過去のオレ、どうしてああいう子に育てた!あれが、身内!?育児失敗ダメ見本市かここは!?
いや、たぶんオレがよく作ってたのって、この未来を知ってたからでは?こんな馬鹿な真似をしないようにと、あいつの目の前で実践してやったんじゃないか。未来のオレ、ごめん。なんか半蔵がダメ野郎に育ってる。

その後しばらく半蔵と言い合いをしていたメンチだが、怒鳴ったら腹が減ったと、次の挑戦者を求めた。
だが、すでにこの場の全員が作り方を知ってしまった後。持ってくるのは半蔵が作った形と同じようなものばかり。

「もーー!あのハゲのせいで作り方がみんなにバレちゃったじゃないの!こうなったら味だけで審査するしかないわね」

いや、あんた。そもそも途中から、すでに味で審査してただろうが。

試験合格を狙うとかではなく、悪意を伝えるためにオレも作った。
悪気しかなかった。
オレはいい笑顔で"とある珍獣の森の奥で発見した唐辛子やジョロキアをこえる激物"をソースにして、米の中に隠すように握って、持って行った。だが「臭いでわかるわよ。貴女、米に何か入れたわね」と指摘され早々に箸で握りを崩され、どろりと出た赤い物体に顔をひきつらせたメンチとブハラによってビニールに入れて激物として破棄された。
チッ。

「貴女、これ…美食ハンターの"あのひと"が発見したこの世で最高にやばい実じゃない。どうして貴女がこんなレア素材持っているのよ」
『どうしてと言われも、自分でとったから持っていたに決まってるじゃない。何か問題でもあるかしら?』
「え。自分で?うそでしょ!?」
「違法薬物じゃないけど、これ……市場では流通してないよね?」

そうだろうな。なにせ発見者は"オレ"ぞ。
このオレがみつけた=まともな場所にあったものであるはずがない。
その方程式通り、念能力者同士のバトルにオレが巻き込まれとき、転移に失敗した挙句、前人未到の密林に飛ばされて、その奥でまた魑魅魍魎どもとおいかけっこをした。その途中逃げ込んだ洞窟の奥で、たまたまみつけた木の実だ。
その実をぶつけたら、一撃で魔獣どもは絶叫を上げて、痙攣を起こしてぶっ倒れた――これはそういう実だ。

ちなみに即物的な効果も、液体や固体や粉末した場合の効能も解毒方法もすべて把握済みのうえで、しこみましたが、ナニカ。
"それぐらい怒っているんです"
っというアピールにはなったようで、若干青い顔の試験官二人に「やりなおし」をくらった。


以降もダメだしオンリー。

やれ「握りが強い」「シャリが堅くてほぐれない」「タネの切り方が筋目に対して直角じゃない!」「シャリの形が悪い」「船底型に握れ」「握りが遅い。タネに体温がうつって口触りが悪い」などなど。
あれもだめ、これもだめと、よく握り寿司というお題だけでそこまでダメ出しできるなと感心させられるような語彙力のオンパレードだった。
わかりきっていたことだが、食べ続けた結果メンチはすぐに満腹になってしまい、合格者はゼロとなった。
ブハラとはちがい、彼女の胃袋は一般人と同等の大きさのようである。胃袋の強さは尋常ではなさそうだが。



「だからぁ!しかたないでしょ。そうなっちゃんだからさ!
いやよ!!結果は結果!やり直さないわよ!
・・・・・はぁ!?報告してた審査規定と違うって!?なんで!?はじめからアタシが「おいしい」って言ったら合格にするって話になってたでしょう!」
「それは建前で、審査はあくまでヒントを見逃さない注意力と…」
「ブハラ、あんたはだまってな!!」
「こっちにも事情があんのよ!テスト生の中に、料理法をたまたま知ってる奴が何人かいてさ!特にバカハゲ!そいつが他の連中に作り方を全部ばらしちゃったのよ!
とにかく!アタシの結論は変わらないわ!二次試験後半の料理審査、合格者は0!!よ!」

ほら、こうなると思ったよ。

試験の結果を報告しにメンチが電話を始めたが、電話越しの相手と言い合っている。主催者側(たぶんネテロ会長かその秘書マーメンにだ)も、この試験はどうなんだと思っているに違いない。
メンチはブハラが止めても気にせず、合格者は0だと言う。
しかも相手がまだ何か言っていたが、メンチは電話を切りやがった。
「再試験をしろ」という指示があったかもしれないのも無視だ。
だが、会長にはこれでメンチのやりかたが伝わったので、たぶん後ほどご本人が来て、別の採点方法を指示するだろう。

それまでは…オレがこいつら(試験官+受験生たち)をどうこうしてもいいだろうか。
な〜んて思ったところで

ドゴォォン!!

派手な破壊音が響く。みればキッチン台が見事に真っ二つになっている。
ふむ。オーラの流れからして能力者ではない。と、すると、力技だけで机が割れるあれが、この世界の能力者でもないただの一般人の力か。ああいうことは絶対できないので、オレはやはり「か弱い」部類に入るのかもしれない。

「納得いかねェな。とても、ハイそうですかと帰る気にはならねェな!」

怒りに任せてキッチン台を拳で割ったのは、255番の体格の良い男だ。
そりゃぁ、この場にいる誰も納得はしていないだろう。

「俺が目指しているのはコックでもグルメでもねェ!ハンターだ!しかも賞金首ハンター(ブラックリストハンター)志望だぜ!!美食ハンターごときに合否を決められたくねーなっ!!」

あら、ま。ツッコミたいのはそこなの?評価の仕方についてじゃないのか。
あと、お前、いま"ごとき"って言ったな。後で覚えてろよ。

「それは残念だったわね」
「何ぃ!?」
「今回のテストでは試験官運がなかったってことよ。また来年がんばればー?」

メンチは椅子に座ったまま、相手をあおるように軽く言う。
255番の男の怒鳴り声や態度からくる威圧など微塵も感じていないようだ。

「こ。この!ふざけんじゃねェーー!!!」

馬鹿にされたような気分なのだろう。255番の男はこぶしを握ってメンチに殴りかかったが、男はパァァン!とブハラに張り手で吹き飛ばされていった。
パリーンと建物の窓が割れそこから外へと投げ出される男。
それでもブハラの張り手の威力はとても手加減がされていたようで、地面にたたきつけられた男はすぐに起き上がっていた。

あ、生きてる。やだぁ〜ブハラ優しい。

「ブハラ、よけいなまねしないでよ」
「だってさぁ、オレが手ぇださなきゃ、メンチ、あいつを殺ってたろ?」
「ふん」

お、メンチが殺すつもりだったらしいぞ。
オレも襲い掛かられたら、殺るか逃げるかしたね。逃げるより殺す方が速いから、殺しちゃうかもしれない。まぁ、だからネテロ会長に刀を奪われたのだが。

案の定、メンチは椅子の背もたれのほうに伸ばしていた腕に包丁を数本手にしていた。
ブハラが止めていなかったらそれで殺したとばかりに、立ち上がったメンチが数本の包丁をお手玉のようにぐるぐると回転させて、周囲に己の実力をみせつける。
包丁を数本、指先だけで回したり、放り投げたりとしている。

やだぁ、調理道具で殺す気だったの?
包丁は神聖なものなのに、衛生に悪いぞ。それでも美食ハンターか。信じられなーい(笑)

「賞金首ハンター?笑わせるわっ!たかが美食ハンターごときに一撃でのされちゃって。どのハンターを目指すとか関係ないのよ。ハンターたる者、誰だって武術の心得があって当然!」

メンチが空中に投げた包丁をキャッチしながら言う。
あ、オレも少し前に「ハンターは誰でも武術の心得がある」とは、同じこと思ったわ。

「アタシらも食材探して猛獣の巣の中にはいることだって珍しくないし、密猟者を見つければもちろん戦って捕らえるわ。武芸なんてハンターやってたらいやでも身につくのよ!アタシがしりたいのは、未知のものに挑戦する気概なのよ!」

体格がいいだけの255番の男などへでもないとばかりに、「馬鹿にするな!」と迫力満々でメンチはいいますが――

『気概っていいますけど、それを見せる場面はこの試験にはなかったですよね。あと"納得いかない"という意味では、私もその人と同意見で〜す!』

ハイハイと手を挙げつつぴょんぴょんと人ごみの群れから存在をアピール。
くそ、大陸人どもめ、みんなでかすぎだろ。お前らもオレのように縮めばいいのに。
なんとか人ごみをかき分けて前に出る。


『……おもうに、先程の試験内容で貴方たちは"なに"を審査していたんですか?』


ニッコリ笑って「ふしぎね。ふしぎだわぁ。どうして合格者は0人なのかしら?」と、かわいらしく見えるようにやわらかい笑みを心掛ける。

っが、半蔵が人の顔見てヒィ!と悲鳴を上げた。
こっち指さして「キン」がどうのと言っている。なるほど、オレの目ですかね。 ああ、しかたない。しかたないよねぇ、それは。そういう種族なんだから。お前はなじみ深いだろうが、他の人からしたらただの光の加減による変化だと思うだろう。知ったことではないが。
ねぇ、口軽忍者くん。その口、削がれたくなければ黙ってろ。

オレが黙っていられなくなって前に出れば、メンチがイヤそうに顔をゆがめて喧嘩の矛先をオレに向ける。

「っ!でたわね絶壁!最初にしゃしゃり出てくるのは貴女だと思ってたのに、こんな表面だけの甘ちゃんに先を越されてるわよ」
『破廉恥女にどうこう言われてもぉ。そもそも私、その255番さんとは何も競ってませんし』
「ハレっ!?あなたねぇ!」

誰が絶壁だ。
笑顔が深くなってしまったよ。

うんうん。そう、これはね、255番でもオレも悪くないんだ。テメェが悪事を働いたかのが一番悪いつってんだよ。
悪事が何をさすかてめぇはわからないだろう。受験生たちを雑に扱ったことだよ。
だから我慢できなくなったオレが、つい口を開きたくなってしまったわけだ。

「服装はどうでもいいでしょ!」
『そうね。この試験に服装は関係ないのと同じように、体格も関係なわよね?なのに貴方はどうして"そういうこと"を平気で言えるのかしら』

人の体格のことをどうこう言うのって、大人としてどうなんですかね。
そう、この試験において胸の大きさは関係ない!
お前がこちらを絶壁といったから、ハレンチといったまで。アバズレと言われなかっただけ感謝しろよな。
感情的になりやすいあなたが、オレに言葉で敵うと思うなよ。こちとら前世の経験を含め人生50年以上なわけで、言葉の言い回しだって手加減してやっているんだ。

「ああ、いえばこういう!貴女しつこいわよ!
だいいち、もう合格者は0とハンター協会には報告済みよ!」
『……』

いまさら、胸元を手で隠すの、やめてもらえます?
え?なに?オレと胸の高さ比べしたいの?
それとも周囲から視線を集めたいがために、体格のこと持ち出して大声をだしているんですか。

まぁ、このひと、そこまで考えてはいないだろう。

『報告済み、そこが傲慢だと言ってるんです。そもそも美食ハンターだからなめられているのではなく、貴方がきちんと評価しないことに周囲は怒ってるんですよ。そこは理解してるんですか?』
「そ。それは…アタシを試験官に選んだ協会が悪いのよ!試験は試験官に任せるってルールだもの!アタシはこの決定をかえないから!」
『あ、そうですか。ならよけいに、あなたには「試験官にむいてない」とだけ言わせてもらいますね』
「ちょっとあんたねぇ!」

『はいはい、あっちはほおっておいて』

『さて、255番さん、貴方にも言いたいことがあるんですよ私』
「お、おれは、トードーだ」
『ごめんなさぁ〜い。私、貴方のお名前なんて微塵も興味はないんですよ』

ここで自己紹介するのって何なんだろう。名前で呼ばれたい願望?
クソッ、どうでもいいわ!!!

『何が言いたいかって?
食事って大事だなぁって話です。
ねぇ、試験官さん、今日の豚の丸焼きだっておいしかったでしょ?ちゃんと血抜きもしたし、臭みどめに香草も入れた。食べる人のことを考えて、毛の処理も泥の処理もしたもの。
その“おいしい”ってことには、別にナニガシハンターだから。とか、そういのは関係なく、誰にでも美味しく食べてもらいたいって願いでしかないんですよ。
言ってることわかります?
つまりハンターの種類なんてものは、後からついてくるもの。功績に合わせ第三者がつける称号でしかないから、いまからなりたいとかいわれてもって感じなんですよぉ。自分でブラックリストハンターを名乗るなら、それだけの功績が必要ですよ。ハンターとして仕事一つしたことない、この場の全員(受験生)が、あれになりたいと夢を語るのは結構だけれどね。言葉だけじゃ望んだハンターにはなれないの。ああ、ちがうちがう、功績ウンヌンじゃなくて。えーっとなんだtったかしら、そうそう、夢を語るのは大事って話ね。夢を抱くのを忘れちゃいけないわ――でもね。
だからって食を馬鹿にするのは許せないの、私。
255番。あなた、そのいい体格と先程の言動からしてからして、食べる専門で作ったことないんじゃない?
生き物がどうやって食材になって、運ばれて、料理になるか。そこまでの膨大な工程の一つでも考えたことはある?料理人が何を思って料理をしているかとか、考えたことはある?
そうやって大変な思いとたくさんの人の手を使ってようやく貴方の口に入る。それが料理。
ねぇ、255番さん。あなたの体を作るのも、その命を回しているのも食ですよ?
食べ物がないと人間は死ぬんですよ?それをバカにするのはどうかなって私は思うの。いっそのこと貴方から食を一か月奪ってしまいたいぐらい。きっとそれだけで貴方は死ぬわね。何週間持つかしら、いえ、何日かしら?当然ハンター試験なんて受けれない。だって死んでるんだからハンターなんかなれない。
ね。死んじゃったら元も子もないんだから、食を馬鹿にしちゃぁだめよ』

飢え死にさせてやりたいぃ!!!!というこのあついオレの情熱が伝わったのか、一歩近づいただけで、地べたに尻もちをついたまま255番がお尻一個分後ずさる。
あら、やだわ。私、こんなに可愛く笑ってるのに、何で逃げるのかしら。

『そして試験官さん、あなたもですよ』

にっこりと振り返り、今度はメンチに視線をむける。
たったまま若干引き気味のメンチは、今すぐにも逃げ出しそうだ。そうはいかないと、近づいて逃がすまいとガシリと腕をつかみ、視線合わせる。
ぐっ!!なんてことだ。この女と身長差がある。オレのほうが低いとか!見上げる羽目になってしまった。これだから大陸人は!


『おまえ、食べ物を無駄にしたな』


メンチにぐっと顔を近づけて、取り繕うのをやめて素の状態で告げれば、「ヒッ」と息をのむ音が耳のそばで聞こえる。

『"試験官"のおねーさん、食を言い訳にするのやめてくれませんか?美食ハンターでも戦闘経験あるとか、ハンターはみんな強いとか、そういうのはどうでもいいんです。美食ハンターだから、料理人だから、うまい物しか認めない――っていうの、すごく…すごぉーく腹が立ってるんです』

なぁ、知ってるかい美食ハンターさんよ。
食に関する辛さってやつを。

『美食ハンターを名乗るなら、まずは食材を無駄にしない試験にしてくださいな。見ていて、はらわたが煮えくり返るかと何度思ったことか。私の胃は貴方ほど丈夫ではないので、この試験中何度胃が破裂しちゃいそうになったことか。私の胃がかわいそう!』
「あ、あんた!だから"アレ"を寿司にいれたのね!」
『えーなんのことかしら。物的証拠がのこっていても、それ、私がしたって断言できる正確な証拠があるのかしら?みたところ、この建物に監視カメラらしいものはない。口での証言は役に立たないわ。指紋をしらべても…ふふ、あるかしら?』

『それより美食ハンターさん、そこの机を壊したハンタ志望さん。貴方たちは本当の飢えを知っている? ひもじくて、ひもじくて何も食べ物がないとき。何日も物を口にしてないとき。あるいはそこらの草しか口に入れるものがない時。そんなときに自分よりも年下の子に、唯一の食べ物を譲られたりしたときのなさけなさを経験したことは?いままでそこらの雑草で命をつないできた、美味しいも甘いも知らない小さな子に会ったことは?そういう子が始めて甘いものを食べたときの表情みたことある?』

『ないでしょ』

食のありがたみと大切さを知らないから、たかが料理と軽くみられる。
その"たかが料理なんか"もできないやつが、いま、この場で口を開くな。
料理を言い訳にするハンターさんも。

『だから見た目だけの華やかさ、美味さだけに論点がいく』

ナニナニハンターになりたいということしかり、料理の採点しかり。

言葉の意味が分からない子たちではないといいのだけどねぇ。

『ここはお店じゃない。ここは限られた道具とものしかない野原の真ん中。 形の美醜や、味のうまさにこだわっては、生きていけない場所……なのに、試験官さん、貴方、ここで、何を見定めようとしているんですか?
ただ無駄に生き物を殺させて、無駄に料理をさせて。試験の判定もしていない。そんなの食をただ無駄にしてるだけじゃないですか』

そもそもなぁ、料理と認められず捨てられた食材たちの哀れさよ。いや、ほかにもある。あのおひつに入った酢飯だってそう!お米には七人の神さんが宿ってるんじゃぁ!残った酢飯はどうすんだよ。
生物も調味料も材料も、なにもかもを無駄にするような試験をしやがって!なんて罰当たりなやつだ。


ぶっちゃけ、半蔵がメンチに喧嘩を売る前から、オレは切れていた。
生きたままの魚を米で包んでるやつら、血だらけの魚汁に浸かった酢飯。などなど、のあまりの惨状にキレていた。
あの時ヒソカに「瞳孔開いているよ」とささやかれ、何とか落ち着いたが、あの瞬間包丁をぶん投げなかっただけでもほめてほしい。

あ゛、今ここでぶんなげてやろうか!?
よし投げよう!いや、そいれだと何人か巻き込んで殺しちゃうかもしれないから、地面にこの怒りをぶつけよう!よし!そうしよう。


『食材をむだにした、全員並べ!!そこにならべぇっ!!』


っと、メンチの手をつかむのをやめ、彼女の手にしていた包丁を奪って勢いよく地面にぶっさして、試験官を含めた受験生全員にむけ脅しをかける。
ぶっ刺した包丁?
うん。メンチの足の横スレスレにつきささったし、オーラ―がにじみ出ちゃって地面がボコりとえぐれてクレーターができたよね。
それがどうかした?

オレ、悪くないもん。





きっかけの話をしよう。
オレが食にこだわるようになったきっかけだ。

味を知らないヒソカの話は以前したな。もう一つは飢えの話だ。

あれは小さな幼いヒソカをつれて、あちこち放浪して暮らしていたときのことだ。
実家でヒソカを育てると、ヒソカが母の狂喜具合を引き継ぎそうで怖かったら、オレの仕事につれていくことにし、その日暮らしの旅をしていた。
実家の裏山には食べられる植物や木の実や肉といった風に何でもあったが、町や人がいる場所では、金が必要だった。生計は主にオレが道端で念能力を駆使したマジックを披露して稼いだ。
オレの念能力の一つが、影の中にあるものを別の影の中に移すことができたため、それをうまく利用し、布をかぶせたなから違う大きなものを取り出したり、別の場所に移動させたりと、奇術にうまく取り込んだのだ。
そうして地道に稼いだ。
っが、やはり道端の物乞いのようなことをして毎日必ず食べ物にありつけるわけもなく、たまにひもじい時もあった。
そういうときは、周辺の獣を狩るのだが、冬だとうまくいかないこともある。
あと、この世界だと地球とは異なり式に左右されない地域はかなり存在し、このハンター試験の会場のように条件が特殊な場所だと、限定された生き物しかいないときもあるのだ。
おかげで、小さな幼い子が、我慢を覚えてしまった。

あるとき。人を集めることもできず、物を買う金もなくなり、周囲に森もなかった。
ついに食べ物も底をつき、食糧難に遭遇して三日目。
今日も周囲の植物で食べれそうなものをなんとかするしかないだろうとため息をついた。
そんなときのこと。

「大丈夫パパ?」
『あ、ああ。ごめんな今日もお前にご飯食べさせてやれそうもない』
「平気だよ。僕、お腹すいてないから!それにほら!この草食べれそうじゃない?」

そう言って笑顔で何でもない事のように子どもが指差すのは、目の前で揺れている草。
そこにあるのはたかが草だ。
果実も実もなにもない。
けれどそれだけでも食べれるだけいいと子どもは言う。

こんなおいしくもなんともないもので、はらがみたされるはずもないのに。お腹がすいてないはずないのに。
子どもはニッコリと笑顔でそう言ったのだ。

この子を自分が育てると決めたのは、オレなのに。
その責任がオレにはあったのに。
だというのに、面倒を見て気を使うべき大人であるオレが、逆にまだ大人の庇護下にいていい小さな子どもに気を使わせたのだ。


山での暮らしばかりで、味を知らなかった子が美味しいというものさえしらなかったときの衝撃でさえ尋常じゃなかったのに、今回の気遣いもまた胸にグサリときたのだった。

食糧らしきものがなくても、せめてたかが草さえ、きちんとした食べ物になるようにしようって、さらに決意を固めたよ。
「くえればいい」なんて、絶対しない。

ああ、本当になんて最低な大人だったんだろう。子育てより先に、自分の食生活をもっと早くに見直すべきだったんだ。

こどもに気遣われてるようじゃ、オレはこの子を育てる資格はないと思ったね。「こどもが生意気なこと言うんじゃない」「大人をもっと頼れ」そう、余裕で言える立派な大人になりたいって思ったし、その台詞を今この場で言えないことがすごく悔しかった。そのとき、泣きたくなったな。もうさ、自分が情けなくてしょうがなかった。

だからそのとき決めた。
まずいもんも食わせない!もうひもじい思いも絶対させないって。
もうだれにも同じ思いをさせてなるものかと。



・・・あれ?

いま思い返してみると、もしかしてヒソカが未来で奇術師なんて呼ばれてるのって。
もしかしてオレのせい?










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【オマケ】

『食材をむだにした、全員並べ!!そこにならべぇっ!!』

外見に似合った高めの少女の怒気まじりの声が、ビリビリと空間を揺らした。

瞬間、メンチの包丁が彼女によって奪われたが、その突然の行動にも、その前の罵声が発せられる前の予備動作にさえ気付けた者はいなかった。

周囲があっけにとられていると、少女が先程まで皮肉交じりの発言をしていた時のような笑顔ではなく、真顔で見下ろしてくる。
その金色にも見える明るい瞳に"恐怖"をおぼえ、少女が「座れ!」という指示をだせば全員が思わず地べたにしゃがみ込む。
ただしそれは少女が求めるものではなかったようで、「座れと言ったら正座だろう?うん?」と笑顔がとんでくる。
笑顔なのに怖すぎ、何人かが涙目になっている。

そして――

『お前らは一度炉端で一芸を見せて日々かせぐ貧乏人のきもちになってこい!!どんなに人がいてもみせものに金を払う人は少ないこのご時世。 ただ見をされたあげく、稼いだ金では食費も稼げず。養うべき家族に「一日ぐらい食べなくたって平気だよ!」と逆に気遣われてみろ!それがどれだけ心苦しいか!食のありがたみを忘れた奴が食べ物を語るな!!
せめてオレの芸をみたなら、一食分になるぐらいの見物料を払えよぉっ!!』

叫んだ。

「「「(ものすごい私情まじってるぅ!?)」」」」

それの激しく私情が混じった罵声に、その場にいた全員の心がその瞬間一致した。

少女の鬱憤ははよほどたまっていたらしい。
まだまだ少女の説教?は続く。

足がしびれた者たちからうめき声がもれだすが、そのくらいで少女が許すわけもない。
助けを呼ぶ声が上がりだす。

「あ、あしがしびれた!!!!」
「いたたた・・・!」
「なんて、拷問だ」
「きつい、もう、むり」

『誰が正座をやめていいと言った。そこ!足を崩すな!』
『それと。そこの294番のハゲ!!貴様はそれでも忍か!!忍者ならしのべ!自己主張すんじゃない!』
「ひぇ!ご、ごめんなさいぃぃ!!!」
『しびれてなさそうな顔してる44番!お前に処刑の権限をやる。そこのハゲの足を全力でつっついてこい!!』
「ぁぁ〜!!む、むり!さわるなぁ!!ぎゃぁぁぁぁ!!!」
「wwwww」

何分正座をさせらえれていたのか。
正座に慣れていない大多数の者が、足のしびれに地獄を見ている中、平然と笑顔で立ち上がったのは44番だった。
彼によりこのご何人か、しびれた足に刺激を与えられることとなる。
あまりのむごさに、他のメンバーたちの顔が青ざめた。
つっついている本人はとても楽しそうに遊んでいる。
だが、その痺れを理解している者たちは思った。むごいむごすぎる。と。
ついでにああはなりたくないとも。

悲鳴が増えていくなかでも少女は知ったこっちゃないとばかりに語るのをやめなかった。

『いいか!材料一つ無駄にすんじゃネェよっ!!!いっそテメェら飢え死にして来い!』
『なぁ、お前ら、本当にお米様に詫びろ?米を無駄にしてんだよ?わかるか?そもそもお米様にはなぁ、七人の神様が宿ると言われてんだよ!』
『あと生魚をビチビチさせたままで食材を無駄にした皆様。ふざけんな。
あれをみて、食べたいと思った奴はいるか!?自身でも食べたくないと思ったものを試験官に出すんじゃねぇよ!』
『そもそもな。テメェで食えねーようなもんつくって、だめだしだされて気落ちする前に、もっと脳みそ使えよ!
料理ができない?やったことない?なんだその言い訳は。なにがブラックリストハンターを目指す自分はすごいだ。 魚を殺してから切るぐらい工程も思いつかないレベルのやつが、いきがってんじゃねーよ』
『魚にも謝れ! 活き作りじゃないんだから、食うならせめて殺してからさばくか、焼くか、煮ろよ! お魚さんがかわいそうじゃないか! お前は生きた魚をそのまま食べる趣味でもあるのか?ええ?どうなんだよこの秀才くんよぉ。心臓動いてビチビチいってる魚をそのままたべんのかよ!!』

怒涛の勢いである。

食の恨みが一番怖いとは言うが、本来の意味とはちょっとずれてはいるが、これもまさしかく食の恨みの一つであっただろう。
少女の地雷は食にあったようだ。



―――その後、気球から飛び降りたネテロ会長が空から降ってくるまで、試験管メンチとブハラも交えた全員が青い髪の少女の前に正座をさせられ、長々と彼女による食への熱弁を聞かされる羽目になったのだとか。








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