〜 O NE PIECE 夢 〜



原作軸 04. 未来へ繋ぐ桃色の一歩





 とんでいったルフィらしき物体を追うため、嫌がる桃色少年の襟を掴んで森に向かった。
無理に踏み込む寸前、オレたちの背後――破壊された小屋のほうから何か怒鳴り散らすような女性の声が聞こえた気がしたが、あっちはあっちで勝手にすすめてもらおう。
たぶんアルビダ?だかアビルダ?だかが、ロロノア・ゾロの話を部下達としているのだろうから。

 それにしても・・・この世界は、“物語”の中ではないようだ。

 人々は世界の中で呼吸して、脈を刻み、生きているのだから。
かくいうオレもその一人だが、オレの場合は異分子といってしまえばそのとおりの曖昧な存在だ。
オレが消えれば世界は、さだめられたシナリオどおりに進むのかもしれない。
けれど人々は生きているからこそ、己の感情によって考え動く。
そのせいか、記憶している限りの原作とは微妙にずれている。
現に目の前の桃色少年がコビーであるならば、ルフィのタルを拾うのは彼のはずだ。
コビーがまだルフィと会っていないのは、オレと話し込んだことで引き止めてしまっていたせい。



少しだけ 可笑しくなって

  オレは 哂う 笑う わらう・・・



――世界はすこしならば修正がきくのかもしれないと・・・・・・オレのその行為(エゴ)をゆるしてもらえるのかもしれないと。



 口端だけを持ち上げた薄い笑み。
運がいいことに、オレが桃色少年をひきずるような形で走っているので、彼にオレの笑いはみられなかったようだ。
なら、いい。
オレは雑誌の立読み派だったから、原作のすべてを知っているわけじゃない。
だからなにができるかなんてわからない。
けれど原作がある程度適用しているのなら――

ありがたい
あぁ、神よ。今日ばかりはくそみたいなあんたでも感謝してもいい。


ス ベ テ ハ


『オレの正義のため』


やってやるさ!
すべてを変える。
オレ色に。オレの好きなように。

そう――

逃げて逃げて逃げ切ってやろうじゃないか!!!

ハッハッハ!
オレの自由と平穏のためなら!!
そう、オレの薄れえない原作知識はきっとそのためにあるんだと思う。


神様、サイコー!








◆ side リース







「あ、あそこです!」
『やれやれ。うちのこはどうやら無事のようですね』

 ニマニマしそうになる顔を慌てて引き締め、桃色少年が示したほうへ向かう。
そこにはタルに下半身をはめたままのルフィが地面に転がっていた。
ケガは・・・ないようですね。
血のにおいがしないことから、やはりルフィは頑丈だなと頷く。
コビーの服から手を離し、二人そろっていまだタルと格闘しているルフィに駆け寄る。

「あの!大丈夫ですか?ケガは?」
『ずいぶん吹き飛ばされましたねルフィ』

 タルにはいったまま転がっているルフィに、駆け寄った桃色少年が心配そうに話しかける。
本当にいいこだなこの子。
この時代に他人の心配のできる子なんてそうはいない。
できれば部下にほしい。
・・・あ、いや。部下なんていらない!いらない!まてオレ。はやまるな!!
なにこの先も海軍でやってくみたいなこと考えてるのよオレっ!!
それにしてもなんでこんな子がこんなところにいたんだっけ?
 オレが心の中でいろいろ考えていると、タルフィはいつものように軽く笑っていた。
たとえタルにはまっていようと笑顔の耐えない弟は、オレの(周囲のせいで)すさみきった心にはある意味癒しだった。
というか他人の振りをして、視線を反らしたくなっただけ・・・。

「はははは!」
『いや、笑い事ではありませんよルフィ(特にその格好とか)』
「そっかぁ?」
『ええ』
「そ、それより、あ、あの・・・た、タルのひとはケガは?」
「ああ大丈夫。なんかびっくりしたけどな」

ニッシッシと笑うのは、相変わらず健在のようだ。
どんなときでも明るいその笑顔を見た桃色少年が、なんとも不思議そうな顔をしてオレを一瞥したあとルフィをみやる。
誰に聞くともなく、彼の口から漏れたのは疑問。

「あなたも海軍なんですか?」

ぜんぜんみえない。
そう、顔に書いてある。

普通に見えないとオレも思うわ。

ルフィなんかは涙まで浮かべて爆笑している。
ひー!腹いてー!!と騒ぎながら、もうリースばらしたのかー!とかこっちに笑う方向を変えてくる。
いやいや、それなにか誤解を招きそうですよ。
ばらしたわけじゃないし。それより今の発言だけ聞いてると、ルフィが海軍であることをオレが話したように聞こえるのはオレの錯覚か?
チラっと桃色少年をみると、やっぱり海兵なんだー!!とか、顔を青くして頭を抱えて悶絶してる。

「ひーっひっひ!あはははお前わらえるなぁ!!」
「お、おふたりだけでなんでこんな島に!!」
『ルフィ。誤解がおさまってないんですが・・・増長しているというかなんというか』
「あーわりわり。リースならともかくさ、なんかオレが海軍っておかしくて。あっはっは!!!」

 よく笑うな〜。
そこまでルフィが海軍であることはおかしいだろうか?

『・・・・・・』

想像してみて――戸惑いを隠せなくなった。

 だって《ルフィが海軍》という言葉で連結されるのは、ルフィを海兵にしたがっていたじいちゃんの姿。
そうするとなぜか爺ちゃんが、鼻水をたらしながらウォンウォン泣きながら喜んでいる姿が一番先に浮かんだ。
側にいるのは、いかつい海軍将校のコートを着て凛々しく「いってきますお爺様」とかじいちゃんに旅立ちの挨拶をしているルフィ。
きっと歯はキラリン☆と輝いていること間違いなし。
でも、たしかに。
似合わない。というかきもいな。
じいちゃんのようないかついコートの中身が、ベストに短パンに麦わらって・・・こどもが親の服を着て遊んでいるかのようだ。
いやいや。むしろこの場合はオレの想像力のなさを呪うべきだろう。
もしかすると本当は似合うかもしれないし。
現に前世のTVCMかなにかでルフィが、黒スーツに黒いロングコートを着ていた光景を見た気がするが、あれは物凄く似合っていたはず。
でも白はちょっとな〜。

「お前おもしろいな〜オレはルフィ。海賊だ」
「あ、そうなんですか。どうりで海兵には見えな・・・って!?ええ!?じゃ、じゃぁ、こっちのひとは!?え?えええええー!!!!!?(いみわかんないですけど!?)」
「ん?リースは違うぞ」

 桃色少年のツッコミが楽しいな〜と、年長者としてニコニコと二人の話を聞いていたが、なにいってんだこいつ?みたいな顔で真実をさらっと述べようとするルフィにギョッとする。
こいつ。オレがどれだけ海軍が嫌いなのを言い聞かせて育てたと思っているんだ!?
ルフィは海軍の仲間と思われてもいいのか!?
それより、こういう場合は“海軍将校から奪った服”ぐらいのウソをつけ!!
オレの身の安全を考えろ。

っと、いうか、言うな!言うな!!言うんじゃねー!!!


「リースは海軍少将だぞ」


 こんのっあほがー!!!

 はっきりと言いやがったし!!!
しかも階位まで!?なぜお前が知っている!?新聞もみなそうなお前がなぜ!?

『言うんじゃねーって言ってんだろうがぁっ!!!』

 思わずじいちゃん直伝の拳でもってルフィをぶん殴っていた。
ドコン!ガッシャーンと音がしてタルが粉砕され、「いてっ」とルフィがうめくが、オレの怒りは収まらない。
そんな軽い「いて」程度ですむのはお前の悪魔の実の能力ゆえ。
そのゴムの能力が、にくくてにくくてたまらない。
いっそのこと悪魔の実だけ抜き取ってやろうか?
いや、それだけはだめだ。まだ実験段階のこの能力を使ったら、ルフィも死んでしまうかもしれないし。
でも、いっそもっと痛みがあればいいのにと思うオレはわるくない。
ゴムなんて嫌いだ!!

『おまぁえぇ〜!!!何度言ったらわかるんだよこのアホゴムが!!オレは海軍なんか嫌いだといってるだろうが!!
しらないひとから物をもらうのとついていくのはだめだと、何度も言い聞かせたよなぁ? 知らない人に話しかけられたら無視しろって教えたよなぁ!? なんでこの素性も分からない桃色少年にオレのこと言っちゃってるんですかね。 どの口がオレのことしゃべってくれたのかなぁ?ええ?どうよルフィくんよぉ。 ってか、こっちは海軍本部から逃げてきたんだよ! 真っ正直に人様の素性をばらすんじゃねーよ!!ジジイのところに連れ戻されるだろうが!!』
「アッハッハ。やっぱリースうけるわ〜」
『笑うところはそこじゃねーよ!!!』

ゴスッ

「いってー!!」
『いたくて結構だ!!これ以上オレのことを口外してみろ!その口、しゃべれなくなるまで肉はやらん!!』
「!!り、リース様それだけはごかんべんを!!」
『名乗るなら自分だけにしろ!!』
「ははー」

「・・・・・・・」

 オレのきれっぷりを笑うルフィは、オレが食べ物の話をしたとたん地面にひれ伏して土下座をしてきた。オレは悪代官かなにかか!?
しまいにはオレにすがりつき、涙目になって「それだけは」とないている。
本当にこいつは食料のことしか頭にないのか?

たしかにオレは短気だ。
切れると心の声がそのまま口に出るので口も悪くなるし。

その差にビックリさせてしまったか、呆然としている桃色少年。
肉。オレの肉がぁ〜と悲痛な顔をしている弟(ルフィ)。
なんともいいがたい雰囲気の二人を見て、なんだか一気につかれた。

『はぁ〜。しかたありません。今日はもういいです。
で・す・がっ!!
いいですか二人とも、オレのことは口外無用です。絶対に言わないでください。いいですね?とくにルフィ
「りょ、りょうかい!」
「は、はぁ・・・あ、えっとわかりました」

 まったくなんで逃亡早々にこんなやっかいなことになってるんだ?
初っ端からオレが海軍であることがばれるなんて・・・。
やっぱりルフィと旅するのは止めに切り上げたほうがいい気がする。


 そこでふと、オレをみてダラダラと脂汗だか冷や汗を流して直立不動のままの桃色少年に目をやり、首をかしげる。
そういえば――

 森にタルごとふっとんだルフィを探すさいに、思わず横にいたからつい連れてきちゃったけど・・・この子、だれ?

「そういえばお前、だれだ?」

ルフィもオレと同じ疑問に到達したようで、桃色少年に不思議そうに首をかしげた。
あー、また指差して。
ひとに指をさしちゃいけませんと何度も教えたのに。

けどそこで、そういえば名乗ってませんでしたねと、汗をぬぐいつつ桃色少年は「コビー」と名乗った。

やはり彼は“コビー”で間違いなかったようだ。


「この海岸は海賊【金棒のアルビダ】様の休息地です」
『なるほど。渦があってたやすく人は近づけないから、海賊の拠点としては最適ということですね』
「え、ええ。リースさんの言うとおりです。
ぼくはその海賊船の雑用をしています」
『・・・忘れているようなので念とため言っておきますが、オレはこれでも海兵ですがよいのですか?そのようなことをオレのいるところで言ってしまって』
「ハッ!!そ、そういえば!?」
「シッシッ。気にすんなってコビー。海軍から逃げてるリースが、海軍に連絡とれるわけないって。いつも電話からさえ逃げてたくらいだしさ」
『この子はどうしてそういう変なところには頭が働くというか覚えているんですかね。
ですが、ええ、そのとおりです。むしろオレの方が通報されやすいので、できれば海軍との接触は避けたいのですよ』
「は、はぁ・・・そうなんですか」
「それでさ。この島に小船とかねェかな。おれのやつ渦巻きにのまれちゃってさ」
「あぁ、あの。リースさんの言ってたことは本当だったんですねぇ」
『あーあれはびっくりしたよ、まじで』
「ふつう死ぬんですけどね・・・ましてやタルなんて。
あ、えっと、こ、小船ならない事もないですが・・・」

思わずコビーの言葉に共感し、激しく首を「うんうん」と縦に振る。
うん。オレも能力者じゃなかったら、あの渦巻きで死んでいた自信がある。
ぶっちゃっけタルにルフィを詰め込んだのはオレだ。
だけど咄嗟のことすぎて頭が回らなかっただけで、今おもえば、タルの中でよくルフィは生きていられたものだと関心さえしてしまう。
しかもタルはどこも壊れず、無事にこの岸まで漂着したし。
なんであのタル、渦に見込まれても平気だったんだろう?
さすがは天性の強運というところだろうか。





 ルフィの要求に、すぐに案内されたのは、手作り感あふれる小船のもと。
同じ森の中に隠してあったのは、組み立てるための材料である木材を手に入れやすかったためだろうが、どうやって海に運ぶつもりだったのかは少し気になる。
それになによりこの船がルフィの飛ばされた森と同じ森の中にあったことは運がよかったとも言える。
なにせ移動の際にアルビダにみつかる危険が下がったのだからよしとしよう。
実はルフィには、オレが能力者であることは教えていない。
なのでこの船を乗れるくらいまともな船にすることぐらいオレの能力なら可能だが・・・まぁ、様子見といこうか。

こんなところで甘えさせては、この先ルフィが強くならないし。
なにより“あいつ”を助けにいくなんてできないからな。



「棺桶か?」

 ああ、なんてこと。
 ボロ〜ンと効果音がしそうな小船を前に、ルフィのなんと正直なこと。
もう少しオブラートにいこうよ。
お兄ちゃん、空気の読めない君に胸がいたいよ。
あまりのことにホロリと涙が出かけた。

ほら。コビーなんか困ったように苦笑いしているし。

「い、一応・・・船です。ぼくが造った船です・・・!二年かかってコツコツと・・・」
『二年・・・ですか』
「二年かけて?で・・・いらねェの?」

あれ?この二年ってなんだ?
原作を読んでいたとはいえ、オレってば始めの頃はかなりふっとばして読んでいたからなぁ。

「この船はここからにげだしたくて造ったんですが、結局、ぼくにはそんな勇気にないし・・・どうせ一生雑用のうんめ・・・ゴフッ」
「ぅわー。リース、なにやってんだよ」
『いえ、ちょっと。むかついたものでつい』

 一生雑用の運命。だからもうこの船はいらない。そう吐き出されようとした言葉に、無性に腹が立った。
そのまま逃げるためにきたえた足の速さ(“剃”ではない)で、コビーの背後へと周り、チョップを脳天から食らわしていた。
オレが小柄とはいえ、まだルフィよりも背が低いコビーにだから脳天からなんてまねができたのだ。

「い、いたいですリースさぁん」
『なんのことでしょうか?そしてぜひ今のあなたの発言、および今のオレの行動はお忘れくださいな。むしろ忘れなさい。
さぁさぁ、なにをしているのです?続きをどうぞ☆』
「え?」

 なんだそれは?と思った。
運命ってなんだ?
流されて逃げられないこと?そうだというのなら、オレが海軍にはいったのも運命か?
それは無理やり海軍にはいらされ、海軍でしごかれたオレにもあてはまる。そしてそのままオレは一生、死ぬまで海軍でいないといけないということか!?
そんな「運命」なんて、たかが二文字の言葉じゃないか。
それごときで未来が閉ざされてしまうだと?
断固断る。
絶対いやだ。
いつか必ず逃げ出すんだと、日々、虎視眈々と隙を狙っているオレに今の【未来(おさき)真っ暗絶望説】は不快極まりなく、常に逃げようと戦略を練っているオレに失礼だと思う。
だからチョップしたのを謝る気なんてない。
むしろお前の言葉を取り消せといいたくなる。が、そこは年上者として抑えた。

 ルフィはオレの爽やかな営業スマイルに頷いている。
理解力のある弟(こ)は好きだ。

『人が思うより人生とは短いものです。その人生を運命なんて言葉で片付けるものではありません』

 オレは前世の記憶がある。
人間一生六十年と思っていたいたが、オレの前世はあっけなく十台半ばで終わったのだ。
それにオレはこの世界で、たくさんの死をみてきた。
オレより若く死んでいった子供たちも山のように見た。
長く見えるようで人生は短い。
それをたった一つの“運命”なんて言葉ごときで、すべてを決めてしまうのは、悔しいじゃないか。
せめて希望(ゆめ)を持てば、少しは変わるだろうが――。

『コビー、あなたはやりたいことはないのですか?オレは叶えたい野望があります。その名も【生きて生きて生き抜いて、広大な家庭菜園を作って穏やかに暮らすぜこのヤロウ計画】です!そのためならこうして日々海軍から逃げるくらい厭いません。さらにいうと現在進行形でその恐怖の鬼ごっこの真っ最中ですし。
なんでしたらオレが海軍から逃げ切る方法をお教えいたしますが?』
「い、一応・・・本当はやりたい事もあるんですけど」
「じゃ逃げればいいじゃねェか。この船でさ」
「ム・・・ムリムリ!!もしアルビダ様にみつかったらって考えると足がすくんで……!!怖くてとても・・・・・・!!」

 物凄い速度で首をブンブンブンブンと横に振るコビー。
なんて速度だ。
鳩が首をガックンガックンゆらすあれよりも激しく・・・。
よく酔わないものだ。


 そしてコビーは海賊船の雑用になる経緯を話してくれた。

 釣りに行こうとして間違って海賊船になって逃げられなくなったとか。
 それを聞き、なんかこいつオレに似てるなぁとか思い、同情だがよくわからない涙がオレの目からは滝のように流れた。
おかげで眼鏡はくもり完全に役立たずとなった。
そんなオレにギョッとするコビーからハンカチをもらったので、ありがたく受け取って涙を拭きつつ眼鏡のくもりをぬぐう。
ルフィはオレの突然の涙にもなれているせいで気にもせず、むしろコビーに「根性なさそうだしなー」とか「お前キライだ」発言までしている。

ルフィのさわやかな発言(本心ともいう)に、コビーのダメージははかりしれないようで、こちらも泣きながらズモ〜ンとおちこんでいる。

「でも・・・その通りです。ぼくにもタルで海を漂流するぐらいの度胸があれば・・・」

いやいやいや!そこは度胸じゃなくて無謀ってやつだから!!
しかもそれって、オレのミスだ。
横にあったからそれの中身を抜いて、とっさにルフィを詰め込んだだけ。
そのせいでルフィは“タルフィ”となっただけで・・・。
間違ってるよその考えは!!
オレだってタルに入れられて渦巻きに飲まれたら死ぬからね!!
渦巻きがなくても、タルで漂流したらふつうは死ぬからね!!

とっさにコビーの会話につっこみをいれようとしたが、すでに話はうつっていて、ルフィがなぜ海にでたのかを聞いていたので、オレはそのタルに関する誤解を解くことはできなかった。


 コビーの言葉にルフィは笑う。


「おれはさ・・・」



海賊王になるんだ!!!





にいっと浮かべた笑顔が、一,二度しかみたことないはずの・・・なつかしい誰かを思いおこす。





その言葉に、遠い昔の約束が脳裏をよぎる。















 聞こえるのは海の音。
波が岩に打ち付ける音。

そして――





『ガープ。なんだそれは?』


オレハアタタカイウデノナカ
アナタハツメタイクサリトカベノナカ




ソコは―― ふ か い

 深い、深い、フカイふかい・・・ ウ ミ ノ ソ コ ・・



「ちっせぇーなぁ」


オボエテ イマスカ――
オレハアナタヘチイサナ コノ手ヲ ノバシタ



「なんだぁ?ああ、おめぇは・・・お前が“リース”か」

「はは。今更だがおめぇの名前少しもらったぜぇ」

「寝るな寝るな。聞いてるんだろう?」

「あいつもお前みたいに賢い子になるぜ。はは、だがぁおまえはちょいとばかり規格外すぎるか」




「お前。俺の言ってることわかってるんだろう?なら――」






頼むぜぇリース。 あいつを・・・



――お願いねリース君・・・










蘇える記憶に飲み込まれ、そのまま次第に潮騒の音が、“あのとき”の雨音に聞こえてくる。





痛いっ!!!

 ふいにガツーンと、そしてコビーの悲鳴のような大きな声で、水泡のような幻聴が掻き消える。
パチンとはじけるようにオレは、現実に引き戻された。

「ルフィさんまでぇ!ど・・・どうして殴るんですか!!」
「なんとなくだ!!」

 ドドーンと胸を張って告げるそのルフィの姿は、まさにいま相手を殴り飛ばしましたといわんばかりの体制だった。
おいおい。なんだかしらんが、おまえなにしちゃってんのよ。
どうかした?と視線で問うと、少しだけ不機嫌そうにルフィは「こいつムリムリしか言わねぇんだもんよ」と教えてくれた。
あぁ、なるほど。
そういえばルフィは海賊王になるとばかり昔からいっていた。
それがこのルフィという人物のすべてであり夢だ。
それを全面否定されれば、そりゃぁ、殴りたくなるというもの。
ってか、それってまさにさっきのオレだよね。

夢を否定される。
夢をみることをやめる。

だけどこの世界ではそれもしかたないこと。
こんな時代だから余計に・・・。

でも

それは生きることを止めたということ。

だからオレはそんな考えが嫌いだ。
ルフィは違う意味で、夢を諦めることがキライだ。

オレはルフィでもシロヒゲでもゾロでもない。
背に傷をおおうとも、どんな惨めな姿をさらそうとも、オレはなにがあっても生き続けたい。

逆にルフィは

「おれは死んでもいいんだ!」
「え?」
『・・・・・・』

ここがオレとルフィの違い。
夢を諦めないことへの考え方の違い。
だからあの子は、海賊という道を選んだ。
死ねないと思うオレは、決して“あるべき海賊”にはなれないだろう。


「おれがなるって決めたんだから、そのために戦って死ぬんなら別にいい


「!!」

シャンクスとの誓いの帽子をかかげるルフィの決意はゆるぎない。
それに息を呑むコビーからは、「し、死んでもいい・・・!?」と驚愕の呟きがもれる。

ルフィは相変わらずコビーの心中など気づきもせず、その態度はのんびりしたものだ。
それがひとびとの核心に迫る言葉であろうと、本人だけが気付かない。

「やれそうな気がするんだけどなぁ。やっぱ難しいのか?」

のんびり語るルフィとは対照的に、みひらいたコビーの目からは涙がポロポロとあふれ出ている。
その目は先ほどまでの死んだようなそれではなく。

未来(きぼう)を見つけた者の強い輝きを乗せていた。

「・・・ぼくにも・・・・・・」
「?」
「・・・・・・やれるでしょうか・・・・・・!! し、死ぬ気なら・・・・・・」
「ん?なにがだ?」





「ぼくでも・・・海軍にはいれるでしょうか・・・!!!」





 時代(みらい)への風が吹く――


 強い声に。
はからずもオレは笑みを浮かべていた。















 ――ねぇ、きこえた?

“あなた”とは違う経路で、未来(ミチ)を選び取った少年がここにいる。
やがて新しき風と向かい合うだろう、若い蕾が・・・



やっと 芽吹いたんです





 ゆらり ゆらり ゆらゆらと

 漣にゆられ
潮騒の音は何処かの蒼へと届くのだろう















【オマケ】


ル「あれ?そういえばリースはどうやってあの渦を乗り切ったんだ?」
リ『馬鹿ですかルフィ?泳いだに決まってるじゃないですか』
ル「そっかそういえばリースは悪魔の実食べてなかったもんな」
コ「え!?でもリースさんは」
リ『どうしたんですかコビー。オレが貴方と会ったときびしょ濡れだったじゃないですか』


笑顔でおしとおす!!!

オレは能力者なんかじゃありません!
一般人で、がんばりやな――
そうさ。オレは一般人の心を持った男。

そこら辺の通行人Cでいたいのだ!











2011.02.13 作成
2014.03.21 投稿








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