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原作軸 03. 能力は無駄な時こそ使うもの |
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◆ side リース 旅立って初っ端から大渦と遭遇。 まさかあんなものと遭遇するとは思わず、悪魔の実の能力で泳げないルフィは溺れる前に船に積んでいたタルに突っ込んできっちり蓋をしめた。 オレは海楼石の腕輪を外して能力を開放して、渦に飲まれる前に脱出した。 ギリギリというところだろう。 とっさだったから、ルフィに対してオレの能力で助けることはできなかった。 ルフィは大丈夫かな? あんな子でもオレの実の弟なんだけど・・・。 気配を探っていると普通に元気そうで安心する。 だけど渦のせいか随分遠くに流されたみたいで、ルフィ入りのタルが行き着く先の島に先回りしておく。 空間に漂う空気を操り、風を操るのと同じ原理で、地面に着地する。 ふわりと空気が動き、オレが無事地面に足を着けたところで、今の現状がよくわからなくて首を傾げつつ、初っ端からのトラブルに頭が痛くなる。 『やれやれ。初っ端から酷い目にあいましたね。誰ですかトラブルを引き寄せているのは』 オレか?それともルフィか? もしかすると一族総出でトラブル体質なのかもしれない。 なんて厄介な。 そんなところばかりしっかり血の濃さを見せ付けなくてもいいのに。 それより、目の前で呆然としているピンクの髪のだる〜んと顔の長い少年にどう説明すれば・・・。 って、なんか怯えられてるよ。 ん〜。なんでさ!? オレ、まだなにもしてないのに。 『あれ?』 相手の顔をよくよくみて、どっかでみたことあるような気がして思わず首をかしげる。 目が悪く歪んだオレの視界にはっきり映るこの桃色の髪具合。 誰だったかな? いや、でもこんな派手な色を身に着ける知人は、七武海のドンキホーテ・ドフラミンゴぐらいしか知り合いにはいない。 ということは原作か? そういえば原作の始めの方で、ルフィがタルで漂流するとかいうシーンがあったような? そこでふくよかMAXなおばさんと会って――わぉ。まさかこの桃色の子って、コビー? まぁ、互いに名乗っていないから、少年がコビーだとは断言できないけれど。 つくづく感心する。 生身でみると、やっぱり紙面で見ていたのとは、少し印象が変わるのはおりしもガープ爺ちゃんだけではなかったようだ。 ――というか、本当に原作軸に突入しちゃったんだね。 今、改めて気付いたよ。 なんでルフィが島を出たところで気付かなかったんだろう。 なんで近海の主とバトッたり、大渦に巻き込まれたところで、これこそ原作軸の始まりだと確信できなかったんだろう。 なんてこったい。 オレは絶対関わるまいと決めたはずの原作になぜか、しかもちゃっかり一緒に旅をしちゃってるんですが一体全体どういうこと? もう、神様なんて信じない。 それよりこのままルフィと旅したら、爺ちゃんからの縁談よりまずいかもしれない。 たしかルフィの旅の中で、オレの師匠と出会うシーンがあったはず。 あわよくば師匠とかち合う前に退散させていただこう。 それまではしかたない。どんな未来になるか分からないけど、じいちゃんに捕まるよりましだ。 縁談の日々もいやだ。 この際、仕事をしなくていい有給を取ったと思って、少し冒険に付き合うのもいいかもしれない。 あとオレのマドンナを探すっていうのもいいな。 あ、オレ、実はもう十年近く片思い中なんです。 頼む答えをくれ!と訴えた翌週。オレが愛した女性は行方不明になってしまったので・・・。 むしろオレのプロポーズがイヤでイヤで逃げたのではないかと日々思えてならないので、真相を聞くべく探していたりする。 だって彼女は物凄く可愛い人なんだ。きっと別の誰かとつきあっているかもしれないじゃないか!! そんなこんなで、オレは有給という名目を勝手に決め込み、そのまま彼女探しをしようと思います。 え?連絡?しないしない。 だって居場所がばれるじゃないか。 「か、海軍将校!?ヒェ〜!!!なんでそんなひとがここに!!」 『は?え?』 「ひー!!ご、ごめんさい!!ま、まさかアルビダ様をつかまえに!?ご、ごめんさい!ごめんなさい!!ぼ、ぼくはただのざつよ・・・ちがくて!えっとその!ボクはただ釣りに出ただけで・・・」 『あの・・・まぁ、とりあえず落ち着いてください。 それより。まだ、オレ名乗っていませんよね?なぜオレの役職を知っているのですか?』 「だって背中!!」 一人でムンムンと考え事に熱中していたら、突然悲鳴が聞こえてコビー (仮)へと視線を戻すと、なにか小さな声でいいわけをしながらも、オレの服をさされた。 指された指の先は、オレの背中。 なにかあっただろうかと思って肩越しから見えた字に苦笑がこぼれる。 あぁ、そういえば忘れてた。 オレってば、海軍本部をでたときの格好のままじゃん。 オレの海軍ルックは、主に和服。 というか、海軍将校になって《正義》を羽織るのは、まぁ、しかたないと思っていた。 そこは気にもしなかったし、問題はなかった。 オレの正義は、昼寝。そして植物の栽培だ! おひるねって気持ちがいいだろう?それを世界中のみんながやれば、 みんなが幸せになれるし、寝ているのだから争うなんて芸当ができるはずもない。 ゆえにオレは自信を持って昼寝はすばらしいと宣言できる。 野菜に関しては、水遣りや成長の管理が大変であり、そのてまひまを考え、 さらにできあがったあとの美味しさを考えれば――あれらを日々育てている農家さんともに、オレとしては野菜作りというのは誇っていいと思う。 それにこのまま農業スキルをあげれば、老後の隠居生活も夢ではないだろう。 なにより野菜には栄養がたっぷりあるのだ。 それは人々の健康管理へもつながる。 だからこそ、昼寝こそすばらしい世界平和への道であり、野菜こそ正義だと、オレは断言できる。 それがオレの正義だ。 だけどその正義コートのサイズがなかった。 オレが小柄なのもあるだろう。だけどSSでもでかすぎて・・・・・・無理だった。 なので特注で頼むしかなくなり、そのときジャンパーでもなんでもいいがどうする?といわれたので、気まぐれに和風な羽織を頼んだ。 できた羽織は、チラチラと極彩色の折鶴がなぜか三羽ほどとんでる絵柄の入った真っ白な羽織。案の定、背には黒抜きで正義の文字。 その白地をみたとき心のそこから思ったよ。 誰だよ折鶴とかいれたの!鳥は鳥でも鳥違いだ!ここは海軍らしくカモメだろ!! しかも折鶴って、生き物の鳥でさえないし。 むしろ無地でいいのにとつっこんだら、周囲の上官を含めた部下とか海軍のお姉さま方がもったいないとか似合うとかなんかよくわからないことを言ってきたという・・・いわくありげの羽織だ。 どうもオレの周りにはおしゃれな奴が多いみたいだ。 まぁ、たしかに作り直すのはもったいないのでそのまま愛用している。 ――それをしっかり目の前の桃色の眼鏡少年に、見られたようです。 さすがにこれから出会う人々が、海賊だろうと海軍だろうと一般人だろうと、オレが【海軍少将のリース】だとは知られたくない。 面倒だ。 それになにより、オレは目立ちたくないのだ。 すでにずいぶんと平穏な人生からかけはなれてしまっているが、オレはオレの野望をまだ諦めてないのだから。 じいちゃんによる縁談騒動が終わったら、今度こそ引退でもしてゆっくりする場所を見つけよう。 だけどこのままでは、オレが海軍だと一発でばれてしまう。 オレは指摘してくれたコビー少年(仮)にお礼を述べ、海軍の証でもある《正義》の文字を消すべく、羽織を脱ぐ。 そのまま表裏をひっくり返せば、真っ黒な中身が外面になり、《正義》の文字は見えなくなる。 裏表使用って便利だよね。 さらに一度バサリと羽織を振れば、表面にしかなかったはずの“折鶴”が浮き上がってきて、もう一度羽織を振れば、折鶴を描いていたラインがぐにゃりと動き、そのまま“カザグルマ”の絵にかわる。 もちろんオレの能力によるものだ。 やっぱうちの実家が【フーシャ村】なんだから、鶴とかより風のイメージがある【かざぐるま】だよね。 それに【かざぐるま】って『風車』ってかくから、まさに故郷そのもの。 それとさ、原作のナミを思い出すよね。小さいころに会って仲良くなったナミ。彼女とお揃い――みたいでいいかなともおもって、【かざぐるま】にしてみた。 出来栄えに満足し、それを羽織りなおして、しっかり前をしめれば、内側になった《正義》の文字は全く見えない。 完璧だね。 「の、能力者!?」 『いや、手品です。手品ってことでよろしくお願いします』 たしかに羽織の色を変えたのはオレの能力によるもの。 いざというときのためにこの羽織にはいろいろ仕込んであるので、オレの能力を使用し“仕込み”を利用して服を染め上げたのだ。 便利だよね〜。オレのビックリ能力。 でも能力者ってばれたくないので、羽織を着なおしたところで、海楼石をはめこんだ腕輪をしなおして、剣(というか刀)も腰にさしなおして剣士で通すことにする。 髪の毛はどうしようかな。 さすがに染めたり本当の色を出すこともできるけど、黒のままでいっか。 ハイ、そんなわけで変装完了です。 さぁ、どんどん爺ちゃんから逃げましょう!! 『あ・・・そういえば』 ・・・ルフィはどこだ? それより、目の前の桃色少年は本当にだれだ? 『そういえば、どちら様ですか?』 ああ、うん。それ、今オレも思ったよ。 弟(ルフィ)の気配を探してキョロキョロとしていると、目の前のぼんやりとした桃色少年(たぶんコビー)が口を開いた。 だれって・・・ここはあっさり名乗ったら、オレ、海軍に連行されないだろうか? それとも偽名でいくべきか。 海軍には連絡しないでくれるといいんだけど・・・。 そう思って、思わず相手に懇願する気持ちでみつめていた。 眼鏡をかけてはいるが、オレの目にはほとんど形がうつらない。 なのでつい目を細めてしまい、睨むような形になってしまったが、そのままじぃーーーーーーーっとみつめる。 言わない?オレのこと通報しない? 睨んでいるようにでも見えたのだろう。 オレの無言の視線に堪えられなくなったように、たじろぎ、けれども何かを言おうとする桃色。 「あの・・・」 あ―――っ!!!! よく寝た――――――っ!!!! 「『え?』」 ふいに聞こえた大きな声。 それはなにやら酒蔵らしい小屋から聞こえ、オレとコビーは思わずそちらを振り返る。 瞬間、ドゴン!と派手な音がして、どこからか飛んできた金棒が、オレたちの背後にあった小屋を破壊した。 「『・・・・・・』」 『桃色君』 「あ、はい?」 『あそこにいなくてよかったですね』 その日、オレたちは、タルに入った人間が空を飛んでいくのをみた。 ってか、今のルフィじゃね? 2011.02.07 作成 2014.03.20 投稿 |