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02. 黄昏ちゃたある海兵君とリースの武器のはなし |
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またまたボツ話2です。 もともとはリースの武器を何にしようかと思って考えたもの。 ある雑用さん視点のリースのはなしとなっています。 ここのボツリースは足が悪いことになっています。 でもって物凄く口が悪くて、本編以上に物凄く卑怯です(←だからボツになったり…) 口が悪くて本当にごめんなさいといいたいorz 10.07.02 【ある雑用君は見た1】 リースさんは凄い人だ。 悪魔の実の能力者でもないし、六式も使えないけど、海賊を一網打尽にしてしまう。 幼い頃に事故にあったとかで、視力もほとんどなく、足も悪いらしい。 それなのに能力者に引けを取らない。 そんなところに一般人からの出立した海兵たちの中には、彼の斬新な発想に共感し、ときに憧れる者も多い。 かくいう俺もその一人だ。 今日は日用雑貨の補給作業という雑用にあけくれていた。 あらかじめ必要なものを注文表に書いてもらい、それにしたがって各班や部隊に届けるのが役目だ。 最近はリースさんの作った石鹸が売れ行きがいいらしく、注文が多い。 リースさんに憧れている俺としては、今回の仕事は嬉しいものだ。 なんたってリースさん本人と会えるめったにない機会なのだから。 リースさんは、科学班によく出入りをしているので一般兵である俺は本当に会う機会が少ない。 以前も一度、リースさんに書類を届ける仕事をして話したことがある。 リースさんの部屋は、やっぱり研究室みたいに試験管やとかビーカー、名前の知らない機材がたくさんあって、それよりも床が抜けてしまうんではないかと思うほどの本で埋め尽くされていた。 その部屋からいつもリースさんの発明は生まれる。 そういえば、こないだは木の皮から時間をかけて紙をつくっていた。 海軍が栽培している花から食用油を採取したり、そこら辺に生えているような植物から美味しいお茶をつくったり。 食堂から出た余分な油で石鹸を作ったりもしている。 石鹸に関しては、あのあとおつるさんと一緒に材料から見直して新しい物を作っていた。 改良を加えられた石鹸は好評で、その後マリンフォードで出回ることとなる。 俺が今回注文依頼をしに行くのもその新製品の方である。 「あぁ、ありがとうございます」 以前書類を渡したときのあの笑顔が可愛い。 海軍でも悪魔の実を使わない凄腕の将校ときいていたから、強くてたくましい姿を想像していた。 だけど実際目にしたリースさんは、俺よりも背が小さくて海軍にはあるまじきほんわかとした優しげな空気をまとう人だった。 眼鏡でほとんど見えないが、大きめな瞳はキラキラとしていて、顔立ちも意外と整っていて一瞬女の人かと疑ってしまった。 長い黒髪も本当にキレイで、上司という意味での緊張よりも触ったら壊れてしまうんじゃないかという恐れに俺は動けなくなってしまった。 でもやっぱし俺より年上というだけあって、色々考えすぎて固まっていた俺にリースさんは苦笑すると、子供を相手するように頭をなでられた。 少し背伸びをしていたのが、また海軍の男らしくなくて――本当に小動物のようで癒し系だった。 いつものように石鹸を補充する依頼のためとはいえ、今日もまたあの笑顔が見れるだろうかと、内心浮き足立っていた。 俺は鼻歌でも歌いたい気持ちでリースさんの研究室に向かった。 そのとき、もっと場所をわきまえた行動をするべきだったと気付いたのは後の祭り。 俺がリースさんの部屋に着くと、少し扉があいていた。 本来なら相手は海軍少将。自分はしがない雑用。 地位身身分も何もかも違うし、相手は上司のさらに上司。 あいていたからといって、部屋の中を覗き見たり、ノックもしないのは失礼であったが、そのとき頭に花がわいていた俺にはそんなこと思いつきもしなかった。 ためらいがちにも扉の隙間から中を覗き―― 見てしまった。 なぜかリースさんが、一つの固形石鹸を眺めてリースさんが笑っていた。 それはあの優しげな笑みなんかではなくて… 「石鹸って…すべるんだよなぁ〜」 口調も違った。 なぜか背筋に悪寒が走った。 みてはいけないものをみた気がした瞬間だった。 【ある雑用君は見た2】 リースさんの元に配属されてから、あのひとのいろいろありえないことを知ってしまってから、リースさんが物凄く料理が美味いのを知った。 このときばかりは部下になってよかったとさえ思えた。 リースさんの部下になると、リースさんの手料理が食べれるのだ! しかもうまい!! 俺は両親が共働き、男ばかりの兄弟のなかで育ち、少しは手料理というものに慣れていた。 リースさんのご飯の美味しさは、いつかレシピを教えてほしいと思ったほどだ。 ――今日も俺は雑用をこなす。 海軍に入って間もない俺はやはりいつまでたっても雑用兵であり、肉体を鍛える鍛錬を終えた後は、いつもどおりに床をピカピカに拭いて、調理場のほうへ野菜を運んだ。 調理場へ付くと、今日はコックがひとりもいないかわりに、髪をひとつに結ったリースさんが腕まくりをして流しの前に立っていた。 いつも長袖で暑くないのかと思っていたが、まくられた袖のせいであらわになった古い傷跡に――事故にあったという噂を思い出した。 リースさんも周囲の人も誰もそのことを言っていたことがないので、言いたくないのだろうと思って、傷のことには一切口にも顔にもださず、気持ちを切り替えるつもりでリースさんに手伝いを申し出てみた。 少しなら腕に地震があると伝えると、リースさんは嬉しそうに笑って俺の参加を認めてくれた。 なにせここの基地は小さいといっても人数がそれなりにいる。 一人では大変だとは思っていたからちょうどいいと言われた。 大変だと思うなら声をかけてくださいよと思った。 「さぁ、やりますか」 「はい!」 リースさんの声に元気よくこたえる。 隣にはリースさん。 目の前には魚。 なんか、嬉しい。 こんなところで家庭スキルが役立つ日が来るとは思わなかった。 俺はさすがにコックではないので、本物とは劣るが主夫としての腕はあるつもりだ。 リースさんの指示に俺も野菜を切ったり、煮込んだりして―― 「リースさん。この魚のムニ…」 ザシュッッ!!!カッ!カッ!カッ!チャポチャポチャポ…。 指示を仰ごうと振り返った瞬間。 リースさんは包丁を投げた。 しかもその間に大根が宙を舞い、リースさんの腕が一瞬消えたかと思うとまな板の上に数本の串が刺さっていた。 串には見事なおでんの具が複数串刺しにされていて、さらに頭上からはきられた大根の一部が鍋の中に落ちて行く。 「料理をする包丁なげてなにしてんですか少将!!」 「え?なにって料理。投げないとその間に作業できないでしょ?」 「何処の職人ですかアンタは!?」 そこでふとみると宙でクルクル回っていた包丁が重力に応じて落下を始めた。 獲物を狙った鷹のように直角に落ちてくるそれにヒィー!と慌てて逃げようとしたら、リースさんがとびあがってソレをキャッチした。 ――スタン!! カキィン!!!! 見事な着地をしたリースさんの手にはなぜか包丁が二本交差するように持っていて、どこにあったのか魚の刺身が調理場に増えていた。 あれ? なんだろうこの光景? 【ある雑用君は見た3】 「ちょ!!や、やめてください!!なんでオレを狙うんですか!もっと弱そうなのいっぱいいるじゃないですか!!」 「あの中で一番弱そうなのはお前だ女ぁ!!」 「んなっ!ひど!!見た目で人を判断するなんて」 「お前の首を取ればこちとら名が挙がるというもの!!」 「そんな簡単に首は抜けません!」 「だから狩るんだよ!!」 「遠慮します!」 そういってギャーギャー逃げ回っているリースさんをみて……あの人が走るたびに何かが落ちているのに気付いて顔が引きつった。 周りでは心配そうにリースさんをみている者、二人のやり取りなど無視して残党の処理に当たる者など、反応は様々だ。 だけどリースさんがこっそり落としている物体に気付いている人間はほとんどいないようだった。 いつもリースさんにくっついていた(こき使われていた)俺だからわかる。 もうじきこの鬼ごっこも終盤だろうと。 同じように、リースさんという人をよく知っている大佐が、俺の側にやってきて足を止める。 「そろそろか」 「そうですね〜。今日はたしか食事担当リースさんだったので、今回は“アレ”がでるんじゃないかと」 「食事担当…ってことは、間違いなく“アレ”だな」 「ええ」 俺も大佐も互いを見ることなく、ただリースさんの動きを見つめていた。 そして。そのときはきた。 ズベッ! ゴス!!! リースさんによって床に投げ捨てられたいくつもの石鹸によって、海賊がすべって転倒した。 何が起きたかわかっていない海賊は目をパチクリと開いたり閉じたりしていたが、「面妖な術を使いやがって」と勝手にリースさんが強いという誤解をした。 いや、足元見ろよ。 リースさんは泳げないけど、能力者じゃない。 しかも身体に障害を抱えるあの人は、強くはない。 だけどいつも誤解されるんだ。 そこがまたリースさんらしいといえばらしいけど、どうしてみんなあの人のイタズラに気付かないんだろう。 「リースのイタズラなんかに気付いたら夢も何もかも崩れるぞ」 「大佐。心の中まで読まないでください」 「まぁ、私はしっていたからな。お前はリースの本性知ってるんだろう?…崩れた側だろ」 「海軍が何たるカを知る前にリースさんの元に配属されたんで、夢を抱く時間もなかったですよ」 「それはついてるんだか、ついてないんだか。…あぁ、そろそろでるぞ」 立とうとするたびにすべる床のせいで立てないのを海賊は、力が入らないと誤解していく。 そんな相手にリースさんはニッコリと笑って―― 「だれが女だー!!!この豚汁の具にも与えしないコレストロールの塊がぁ!!! 貴様のような腐った肉が世に出回るから大豆を肉の代わりに使うと考える人間が出るんだよ!!賞味期限切れなんかごまかすんじゃねーよ!!ってかお肉様に謝れ!!お前なんか食えるかー!!」 あぁ、切れてたのか。 というか、女や弱いなどと暴言を吐いた相手も悪いが、あんたの方が酷すぎるから。 料理に物事を例えるのはかまわないけど、きっとその言葉の嵐だけで敵の大将も心が木端微塵にきざまれたことだろう。 「あ…」 「終わりだボケ!!」 「「おわったな(りましたね)」」 いつの間に海賊の側まで来ていたのだろうか。 【剃】が使えないくせに逃げ足だけは尋常じゃないほど速いリースさんは、般若のような顔で海賊のすぐ脇に立っていた。 そして罵声を上げながら、手にしていた赤い物体を思いっきり、呆然としている海賊の口につっこみ吐き出さないように身体をたたくことでそれを飲み込ませた。 「ぎゃーーーーーー!!!!!」 海賊は絶叫を上げて、のどをかきむしるようにして暴れ続け「水」「みずをくれ」とその場にうずくまってしばらくしたら意識を失った。 「ハイ。海賊船長一丁捕獲ぅー。ついでに縄もってこい縄ー」 ノックアウトした海賊をみて、やる気なさそうに手をパンパンとたたいた大佐は、そくさくと後始末にかかる。 その際、懐から香水ビンのようなものを取り出して、海賊の顔に吹きかけていたのは、中身が何かを知る自分には耐えられそうもなくて視線をそらした。 あの大佐が使った香水。 あれもまたリースがつくったもので、特に女性海兵が好んで使っているものだ。 使用例は変質者に負われる女性が自分の身を守るためによく使われる即効性の秘薬。と、いっても睡眠薬やら毒、クスリのどれでもない。 実はあれ――ただの唐辛子と胡椒入りの水だ。 それが予想以上に効果があるかので、あれを女性陣がしつこい男対策に持ち始めたら、世の男たちにとってみれば恐ろしいことこの上ない。 いやー。あの海賊、起きたとき死ぬね。 可愛そうに。 「ご愁傷様です」 防犯用香水を懐へいそいそとしまうと大佐が、何食わぬ顔で戻ってきた。 俺と視線があうと―― 「とりあえず数千万単位の海賊だからトドメ刺しといたがやりすぎたか?」 白目をむいたまま運ばれていく海賊の姿を見て頭をかく大佐。 その姿に是と頷いておく。 やりすぎな大佐の次の被害者が出ないように…。 なにせリースさんのあの赤い物体だけでも破壊力は抜群のはずなのだ。 それに追い討ちをかけるこの人の凄さに感服しそうだ。 「ハバネロと唐辛子の摩り下ろしたものだけでできた激辛団子。 知っていたら呆れるだけの技だけど。あながち間違ってないですからね〜。 さすがに大佐の“擬態香水”はかわいそうに見えましたよ」 「いや、海賊だし。生ぬるいリースのことだから、あいつのかわりにとな。 念には念を入れたんだ」 「念って…さすがにいれすぎですよ大佐。 “アレ”はハバネロの塊ですよ。 それを食べて正常でいられる人間は、毎日ハバネロを食べている変人ぐらいですって」 リースさんが相手を転ばすために使ったのは、泡立てただけのただの石鹸(ただしリースさんお手製)。 そして敵を一撃でのしたのは、ただの唐辛子とハバネロの辛さ。 実際、どこの市でも買えそうなものばかり。 こんなもので海賊を相手にできるわけないと誰もが笑うが、リースさんは見事にそれを“可能”にしてしまう。 着目点は悪くはないと思う。 元をたどれば、能力者や海賊といえどただの人間なのだから。 効果は言うまでもなく絶大だろう。 だけど、だからと言って、実行して人間一人を倒せるかというと――普通は無理だ。 「海賊を前におびえることをしなければ、剣なんかなくともガムテームだけでも戦えるのかもしれませんね。 人間、やればできるって、今ならそう思えますよ俺」 「お、おまえ…リースに感化されすぎだぞ」 視線が青い空と白い雲を捉えた。 視線が宙を彷徨う。 そんな感じの俺。 そんな自分の様子に、最近リースさん繋がりで親しくなった大佐が、慌てたように俺の肩をつかんで揺さぶって現実へと引き止める。 「もどってこい!!人間を捨てるにはまだ早い!」 リースみたいに生活の中で武器を作らなくともまっとうな武器を扱えるようにしてやるから! もどってこぉーい! そんな声が聞こえた気がした。 お偉方と親しいとある雑用の一日。 あぁ、今日も空が青い。雲が白い。海が青い… |