〜 O NE PIECE 夢 〜



15. 奇跡の海(中)





side リース



 時間がたつのは早いですね。

 オレがこの世界に生まれておおよそ8年。
この世界で生きるのだと決意をしてから2年。
サイクロンに吹き飛ばされて“鷹の目”を踏み潰してから半年。

一年たつのが速いという言葉はよくあるけど、オレからしてみれば、一年一年が『はやい』とかよりも異常に【濃いぃ】です。


 そうだね。
オレのこの短い人生、長くて濃かった。

そして、色々おかしいと思うよ。


 だってオレはひたすら平穏な日常を望んでいただけだから。

なのに現実はどうだ?
誕生日に悪魔の実を食べるはめになったり、船の見学に言ったらその下敷きになるし。

あげく気がつけば海軍に入れられていて、なぜかオレにも階位がしっかりあたえられているわ、部屋を消し炭にされるわ。

「・・・・・・潮風が目にしみる」

 決して今目から零れ落ちてるのは、涙なんかじゃない。
そうだ。そうとも。これは潮風が目に染みたんだ。
だからしょっぱいんだ。


 ああ、そういえばぞくにいう“原作キャラ”であるナミにも会ったなぁ。
今、思えば、あれは『オレの不幸記録』の方ではない、珍しい『幸せの記録』であり、つくづく“【普通】がどれだけ素晴しいのか”を実感させられた―――そういう面では、きっとあの幸せの日々もまた“濃い”日のひとつだったのだろう。
 あのあとに「普通のいいひと」であるドレイクさんに、普通と癒しと強さを求めて「北の海」に会いに行こうとしたんだよ。
そうそう。
そこでオレはサイクロンに巻き込まれて、グランドラインを出るどころか、さらにグランドラインの奥に戻されて、そこで偶然に偶然を重ねたあげく“鷹の目”を踏み潰し―――。
あのときは怖かったなぁ〜。

いまのがここ数年の出来事。
なんか・・・・・・。
なんだろ。
本当に泣きそう。

結局『オレの不幸記録』だけが更新しているほど、日々は濃いのがかなしい。

だって生まれて七年の“後半部分だけ”を振り返ったにしては、波乱万丈だよね!?
どうみても濃いな。
濃すぎだろ!


 ここだけのはなし。

オレの人生の前半―――それも赤ん坊のころのことだ。
それでさえ【濃いぃ】イベントは結構あったりする。
 例えば海賊王の自首。
金獅子の脱獄にともない家に船は降ってくるし・・・。
まぁ、その頃のことはまたそのうちはなすとして。








 ≪今≫は、あのサイクロン事件で“鷹の目”に土下座をしてから、早くも数ヶ月たつ。
実は、まだオレは“鷹の目”と一緒にいたりする。

 あのサイクロンと土下座事件以降、電伝虫によりおつるさんから「海軍にはしばらく戻ってくるな」と言われ・・・・・・まぁ、その、あれだ。本当にいろいろあって、オレは“鷹の目”に弟子入りした。
 はじめは嫌がられたが、行く場所もなかったので、そのままストーカーよろしくはりついていたところ「勝手にしろ」と大きなため息をついたミホークさんにより言質を取り、ちゃんとした弟子として着いていくことを許可された。

そのときオレたちの間で師弟になるにあたり約束が交わされた。

一、自分の身は自分で守る
一、ミホークは何も教えないので、リースは勝手に学ぶこと
家事全般をリースが行う
迷子になった場合、片方が必ず迷子を捜すこと
一、船のオールは決してヒモを外さない

この五つを条件に、オレはミホークさんと旅をしている。

 最近では家事兼サイフの紐をオレが握っているせいか、なんだかどこかの小姑のように自分が口うるさくなってきたと思うこの頃。


 あの五か条にあるとおり「共にいることを許しはしたが、俺がお前に教えることはない」とのミホークさんの言葉どおり、彼は半端なく、そしてとことんなまでに放任主義でした。
この時点の“鷹の目”は、まだシッケアール王国跡地には住んでおらず、転々と旅住まいだ。
日々がそんな放浪生活で、いつ師匠らしい指導が来るのだろうと、少し期待もしていたが、陸に上がったらとか、船の暇な時間に〜・・・など、何かを教えてくれるということはなかった。

「見て勝手に盗め」と言うことだけはあって、自ら直接指導とかは一切無いが、それでもまるでオレに“みせる”ように戦いを頻繁に行う。

オレの目の前でね。

本当は損な光景など見たくないんだ。
だって、血が舞ってるよ。
悲鳴が聞こえるよ。
視力のあまりよろしくない目の代わりに、敏感になりつつあるほかの五感が、否応がなしに彼の強さをオレに魅せつける。
よく見ていろと一言残し、オレの前で行われる惨劇の数々は、まさに覚えろと言っているようなもの。

 なんかいろいろ麻痺してきたというか、あきらめざるを得なかったオレの心境など、この世界で強さを求めるような“やつら”には、計り知れないことだろう。

安全第一、平穏大好き。
おだやか最高!深い森の隠居世界バッチコイ!!だけどこの世界ではそんなことを言われれば笑われる。
十歳になっていないこどもが隠居って――って、いう笑いじゃない。
浪漫がない。野心がない。と、ほざく。
オレの夢と希望を“そんなこと”といいはり、やつらはより冒険やら危険極まりないものをもとめるのだ。
それがこの世界の男だと彼らは豪語する。
平穏こそがオレの望む理想郷であり野心だ!と騒いでも、聞く耳持たず。
女性にも笑われました。

そしてオレは今その冒険と強者の頂に近い男たちの、最たる男の側ににいる。

いろいろ常識というものをあきらめたくもなってくるのも当然だろう。
とりあえずは師匠らしいことをしてくれているようので、オレもきっちり料理の腕を振るって「約束」に応えようと努力している。



 そんなこんな。どんな経緯か。話すまでもなく、オレの不幸が重なって、ミホークさんの弟子たるオレ。こと、モンキー・D・リース。

 ここ数ヶ月ミホークさんをみてきてわかったこと。

それは、刀を振るう理由。

オレの前でよく刀を振るって敵を倒す様を見せてくれるし、たしかに勉強になる。
オレのために海賊や賞金稼ぎなどを必要以上につっついたり、かまっている。
と、思いきや。
そうでもない気が最近してきている。
指導・・・というよりは、このひと、本当に敵が多いだけなんだよ、きっとさ。
だって海賊を見れば「暇だから」という理由だけで、斬りかかる。
逆に“鷹の目”とわかるなり、挑んでくる海賊テキさん多数。
もちろんミホークさんに切り捨てられている敵。

これだけをみていると、どうしてもただの戦闘狂にしかみえない。
かといって、「約束」が、反故されているわけではない。

 ミホークさんからしてみたら、律儀に約束を守っているつもりなのか、傍にくっついていても特に嫌そうな顔をされるわけでも邪険にされるわけでも何か言われるわけでもない。
っで、オレが迷子になるとわざわざ迎えに戻ってきてくれる。
ただし、あきれたようにため息をつかれるが。
その瞬間、オレは思うのさ。オレもあんたの『漂流癖』にはため息が出るよとね。

「迷うな」

っと、あの無表情で言われるんだけど、だけど。
だけどね。
そもそもオレは迷子になったことなど今までなかった。あの森の中でもしっかり生き抜けるぐらいには方向感覚はあったのだ。

だが、ここでよく考えてみてほしい。
7,8歳のお子様と、三十路に近い20代後半の大人な青年。
身長も体格も体力も何もかも違うと同時に、コンパスの長さが一番違います!!
おかげで、無言のまま進むミホークさんのあとを必死で追いかけても、すぐにおいてけぼりをくらってそのまま迷子になってしまう。
“オレがあなたに”ではなく“あなたがオレに”合わせてくれないと、ついて来いと言われようともついていくなんて無理だから!頼むからそこ、気付いてくれ!!と何度訴えたか。
首を傾げられたよ。

小さいって不便だね!本当に泣きたい。

周りの建物が全部でかいし、この世界の人間もみんな馬鹿でかいし。
みんなみんな蟻のように縮んでしまえばいい。
そうしてオレに踏み潰されろ。
そうすればオレの苦労と、奈落につながるようなこの深きオレの嘆きが解るに違いない。

【特】に、追いていっては戻ってくるたびにため息を付く足長コンパス!お前だ鷹の目ぇっ!!

思わず体格が良すぎる人々しかいない世界の無情さを叫びたくそうろう。
これぞまさしく「ああ、むじょう」ってやつですね。


 オレがミホークさんと交わした約束は、オレがコンパス差にくるしみ必死についていくのがやっとだった初めの頃の、数々の苦い経験からのものである。
他にもあるが、一番はやっぱし『あれ』だ。
たとえば家事――。
料理をオレが受け持つこととなった理由とか。

あれは「食事」として称して海王類を指し示すミホークさんをみたときのこと。

 あの光景から、すでに嫌な予感はしていた。
案の定、次の島でそのダメさ加減がすべて発覚した。
男一人の旅生活ゆえのことだとは思うが、このひと、料理なんてものがまったくといっていいほどできやしないことが判明した。
じゃぁ、いままでの食事はどうしていたんだ?と問えば、海賊やどっかから奪った金で、普通に街の酒場や食事処にはいっていた。
遠慮というものがないなと思わずあきれてしまったが、生きるためだと平然と言われてしまえばぐうの音も出ない。
でも毎回町や食事どころのある島にたどり着けるわけではないし、むしろこの数ヶ月の旅でさえ無人島なんていくつ越えたか定かでないほど未開の島の方がこの世界には多い。

せめて食料を屠畜するように、塩や胡椒ぐらい持っているだろうと思ったオレがバカだった。

一つ目のジャングルで獲物をとったミホークさんがふるまってくれた料理は、料理なんかじゃなかった。
あの鋭利な刀で肉を切って焼きました。以上、タカノメクッキングでした〜。
って、思わず焼いただけの肉料理というのを見て、せめて血抜きぐらいして塩でもかけろよ!と「お前もかブルータス!」と叫んで地面に膝を突いて頭を抱えた。
ブルータスについてはつっこまれなかった。

 それ以降、オレは料理がどれほど重要か、人の身体を維持し、健康を保つのにどれだけ料理人が苦労しているかを語って聞かせた。
 オレの周囲の人ってどうしてこう料理ができないヤツラが集うのか。
しかもその半数の人間は、生でも肉にかじりつくという豪胆振りを見せる。
ああ、そうだったね。
ここはワンピース世界。
肉を好む赤ん坊が平然と居て、傷がすぐに治る脅威の回復力を持った爺さんもいて――ふつうな料理人などいるわけなかったな。

 そんなこんなで料理やら家事の面倒をすべて引き受けることを自らかって出たのだ。
かわりにオレを助けることを条件とした。
なお、この“助ける”のなかには、迷子捜査も含まれる。
だって迷子になるのオレのせいだけじゃないもんよ。


 その後、調理器具を一切持たないミホークさんにたのんで、万能中華鍋と包丁(数種類)とお玉、必要最低限の調味料を常備してもらえるようになった。
それから鍋一式はつねに歩くようになった。
ミホークさんにもたせるとどこに置き忘れてくるかわからないためだ。
あのひとは、とことん興味ないものを【見ない】習慣があるらしく、オレの鍋は三代目だ。
学習したオレは、常に調理用具装備で、いまでは自分の一部のような感覚となっている。
どこかのドラゴン○ールにでてくるエロ仙人こと、甲羅を背負った某仙人のようなカッコウだが身も守るための盾になるし問題はないので、格好悪さは無視だ。

 なお、いつだか肉なしの野菜だけのいためをつくったとき、調味料が切れていたため味付けを薄くしたら無言で皿を傾けて捨てようとした。
きれたオレは、どれだけ野菜というものが重要かを語って聞かせたことから、オレの普段の口調と興奮したときのあらっぽい性格があばかれることとなったが、その事件のおかげか、オレがこの旅の財布を握れるようになったという経緯があったり。
好きなだけ食料に費やせることは喜んだ。
あとミホークさんが、薄味嫌いなのも理解した。


 ――なんか、やっぱり小姑っぽいよオレ。
オレはあんたの嫁か?
振り返って思うのは、そんな旅だったということ。





**********





 旅もなんやかんやあったけど、そこそこ順調。
食料も大量に積んだ船で、ただいま漂流―――オレがきちんと舵と進路見てます―――じゃなくて、ミホークさんの希望で新世界入り口付近を航海中。

「召集だ」
「無理です」
「……」

突然無理を言わないでほしい。
ただでさえここはグランドライン。
まっすぐ進むのも大変なのに逆走とか無理。


 二人旅を初めてドンブラコッコ。
そんでもって最近、ミホークさんが七武海に入ったらしい。
たぶんオレが持っている電伝虫を通して、おつるさんがひそかにミホークさんと交渉したんじゃないでしょうかね。
じゃなきゃ、この一匹狼な男が自由を捨てて、なにかの下にくつく(特に海軍に協力する)なんてことあるとは到底思えない。
おつるさんが裏でかかわっている気がしてならないけど、弱みでも握られたのか、口車に乗せられたのかは不明だ。
おつるさんとミホークさんが実は微妙な感じで繋がっていることは、はたしてどれくらいの人間が知っているのやら。
ま、しらないほうが身のためだとは思うよ。
なんたってあの参謀と名高いおつるさんと、“鷹の目”ミホークだからね。

 そして早速、収集か。

海軍も大変だね。

「師匠、いつ海軍と出会ったので?」
「お前がいない間だ」
「そりゃぁわかりますよ。
ただそれが“いつ”の話ですか?ってことを聞いてるんですよ」

会話になりませんでした。



 とりあえず航海術をちゃんと学び始めているので、最近は船に帆をつけて、簡易ヨットのようにして、自分の“意思”で、行きたい場所に行けるようにまえはなりました。
“漂流”は勘弁だ。
ピンチってひとを育てる〜みたいな話は聞いたことがあったけど、まさか身をもって体験するとは思いもよらなかった。
なので、今の旅は快適だ。
なにせちゃんと食料や衣、布、帆、縄などの予備も用意してある。
あいかわらずの小船で気まぐれな目的のない旅だけど、今度は地図を持っているので問題なく【航海】中だ。
もう『漂流』とは言わせない。

 漂流とは言われないけど、あるひとには別のことを言われるようになったのは苦笑でごまかすしかない。
迷子になりやすいオレ、喧嘩にまきこまれやすいミホークさん。
二人でいるといままで以上に平穏から遠ざかっていくことに改めて思い知らされる。
たまに電伝虫をとおして会話するおつるさんからは、「トラブル収集コンビ」と命名されたのだ。

あげく「けっこうあんたたち気があうんじゃないかい?リースはもう半年ぐらい帰ってこなくていいからね」とのこと。

それとオレ=“海軍のリース”とは、ばれるんじゃないよと強く念を押された。

 そこまで気にしないでもどうせオレの存在なんか一年もすれば忘れ去られているさ(むしろそう願う)と思ったが、ミホークさんに「それはないだろう」と短くつっこまれた。
噂は75日というからか?でも一年は360日だ。もっと日付がたっているんだから、その頃にはさすがにこんな子供のことなどみんな忘れているさ。
その頃にはもういい加減時効だろうと笑い飛ばしたら、ミホークさんがオレから視線をそらし、おつるさんが電伝虫の向こう側でまたため息をついていた。
結局その辺の事情は二人とも教えてくれはしなかったが、そこまでいうならと―――オレは変装することにした。

 まずは第一印象を変えてしまえばいい。
黒く染めていた髪色を『元に戻し』、かけていてもなくてもあまり変化がない眼鏡を外す。
それだけで随分雰囲気が変わるなと、あのミホークさんが驚いたような表情をして言われた。

 実はオレの髪は、黒ではなく白い。
それはオレが大怪我をおった二年前の“あの事件”が原因で、恐怖からかすっかり色素が抜けてしまったのだろうと、これは主治医の意見だ。
あれから二年もたつ。
本当なら次に髪が伸びるころには、黒に戻っていてもいいはずだった。
まぁ、若干色が薄まり灰色がかっていたとしても、徐々に髪は黒に戻っていくと思われた。
しかし何年たっても髪色はもどらず、目もあの事故で傷つけてしまったため、見えなくなったり色素が薄れたりと銀だか灰色だか、白だか、わからない濁った色をして視力をほとんどなくしている。

この事実を知っているのは、当時オレの担当にあたっていた主治医にして、じいちゃんさえ病室から追い出すほどの剛腕女医さんだけだ。

あのひとだけがオレの本当の色彩を知っている。
髪に関しては、病室からでる許可をもらった時に、あの女医が染めることを薦めてくれたのだ。
今思うと「変装」なんて便利な使い方ができるんだから、誰にも髪のことを言わなかったのは正解かもしれない。

それにオレって当事はまだ海兵ではなかったし、怪我人だったしで、せまりくるじいちゃんから護るためとか言われていたけど、実際は彼女に隔離と称していろんなものからかくまわれていた感じだ。

おかげであの事件から二年たつ今もまだなおらない髪の色を知る人は、彼女以外には居ない。
実際その事実は、おつるさんでさえ知らない。
ついでに変装なのだから、とことん変えてやるよ。、幼いころからじいちゃんやマキノさん、ダダンによってしつけられた普段の口調である“若干丁寧なですます口調”をやめて、心のままに口調をくずしてみた。

完全に素の状態なんで、かなり開放感があってオレ的にはすっきりした。

 ここまでひとは変わるのかというミホークさんのつぶやきが聞こえたけど、そりゃぁ、黒だと思っていたものが白だったら、『リースは黒髪黒目のメガネっこ』って先入観があるじいちゃんやおつるさんでさえ、正面から見ないとオレだってわからないだろうなと思った。
なにせオレの髪がここまで真っ白だとは、だれもしらないわけだし。
ここまでやったんだから髪の毛の結わき方も変えよう。
むしろ白を強調するために結ばないでいるのもありかも。
おおー。これはこれで楽でいいよな。
毎朝の面倒はなくなるし。
うん、今度からこっちでいるときは髪を結わかないぞ。
そういえばいつも邪魔だったから結わえていた髪を解いたらけっこう長さがあって、なんだか海賊旗のようにバサバサ風に揺れていた。

いわれてみると。たしかにこんなバッサバッサーって、もう別人かもしれない。



「師匠ししょうー。準備終わったー」
「いくぞ」
「おうともさ!」

 買った食材や自分の少ない荷物を包んで鍋にいれる。
そのままひもでくくった鍋をかつぐようにする。
これがいまのオレのスタイルになりつつある。





 そんなわけでただいまグランドラインを逆走中。
目的地はマリージョア。
天竜人がまた我儘でも言って海軍を困らせているんだろうと、ため息が出る。

「師匠には漂流癖があるから。行くの反対でーす。むしろ行ったら帰ってこれ・・・「途中でおろしてくれればいい」・・・あ、そう」

そういう問題でしょうかね。

 まぁ、帆を巧みに操って、えっちらおっちらと走行中。
けどすぐに海軍の船が見えたので、目立つ行動は避けるべく帆をたたんでオールをだして漕ぎ出す。
手漕ぎボートよりこの船は若干大きんだけどね!それを懸命に漕いでいるオレ。
7歳児(もうすぐ8歳だけど)に船をこがす大人ってどうよと思うけど、目の前のマイペースすぎるひとに任せてはダメだと学んでいる。
なにせミホークさんてば、途中で昼寝をし始めたり、突然漕ぐのを放置して海賊に切りかかってはその間に船をなくしたり・・・・・・この関係もまた慣れたものだ。

「ではおたっしゃで師匠。オレは先に帰るよ」
「うむ」

海軍の軍艦が見えたので、そこに飛び移って送ってもらった方が早いとのことで、見送ることにする。
いまのオレはある意味逃亡兵のようなもので、変装しているにしてもどうしたって近づけない。
“鷹の目”がオレたちの船をけって軍艦に飛び乗ったのを確認すると、若干看板が騒がしくなるも気にせずオレはそくさくと船を出す。


「まにあうかな」

 これもまた無理だと思う。
ぶっちゃけ緊急収集がかかってから、もう四日はたっている。
無理だな。
これがいつもどおりの天竜人の我侭だったとしても、なにか事件があったにしても・・・今更間に合うとは到底思えない。
まぁ、ミホークさんは意外と律儀な性格だったのか、それとも――面白そう。暇つぶしだ――とでいつものように思っているのか、相変わらずその真意は読めないが、ヒーローはあとからやってくるという理論によって意外とカキョウには間に合うのかもしれない。
もちろんついていかないオレには興味もなく、あとあとシャボンディで待ち合わせをしているので、ミホークさんには野生の勘でもなんでもいいからつかってなんとかシャボンディにたどりついてもらって拾ってくれればいい。





「そいじゃぁ、しばしの一人旅といきますか」

 オレはここぞとばかりに、自分の「粒」と「認識」という能力の向上をはかるべく、空気を操作して、一定の空気の塊が帆のそばでかいてんするようにすることで風が帆に当たるようにした。
いうなればエースが炎の能力で操っていたボートに原理は似ている。

 能力?バリバリ使用してますよ。
『悪魔の実』の能力に関しては、さすがの放任主義なミホークさんも“きちんとした言葉”を通し、時には実戦を経て教えてくれた。
むしろ能力を暴走させたり、使えないただのカナヅチにはなるなと言われた。

海軍生活では、悪魔の実をたべてしまったことも能力があることも隠していたので、はじめからオレが能力者であることを知っているミホークさんとの生活は意外と気が楽でいいものだった。
もちろん家事のことはぬかしてだ。
まぁ、たまに海賊だけでなく海兵たちにも襲われる旅だが、それほど居心地は悪くない。
それに能力の制御についてミホークさんは、彼のわかる限りのことを教えてくれている。
これはオレの身を護るという契約のひとつであるらしく、自分で自分の身は護れるようにしろという配慮らしい。

優しいんだか放任主義なんだかよくわからないひとだ。


「風?空気、空気の移動・・・あ〜えっと、酸素でいいか」

 そのまま能力で、酸素を動かし帆が綺麗に張られたのを確認すると、オールを船内にほうる。
ちなみにこの船は、オールがながされないようにひもでしっかりつながれている。
これは五か条の一つである。
なぜならミホークさんは本当に興味あるもの意外無頓着で、彼と過ごしたオレの経験から紐でつなげてないとやばいと判断せざるを得ない状況をいくつも体験したのだ。
さすがに風任せもいい加減やめてくれ!と思うほど、食料もつきひもじくなった時もあり、オールの件はその日以降からの誓いだ。

なくしてたまるかとな。

あのときの島は、無人島だったが、おれはじいちゃんによる訓練でそういった場所にはなれていた。
枝や木をナイフでけずってそくかいをつくり、柄の部分に穴をあけてひもをとおしたのはつらい思い出だ。
なお、いまこの船にあるオールは、さっき放ったのでちょうど10代目だ。
理由はこの際割愛させて頂こう。





 そんなこんなで、シャボンディにつくまで能力維持の時間を延ばす訓練以外に思いつくこともなく、もっていた本でも読むかとのんびりしていた。


 ガコン。

「は?」

 本を読もうと荷物へ手を伸ばした途端、突然船が何にぶつかった。

周囲を見渡しても岩などはなかったし、どこからどうみてもここが浅瀬だとは思えない。
まさか魚人か海王類だろうか?
衝撃で海にふっとばされそうになったところを舳先にしがみついてまぬがれる。

 そこでようやくオレの視界に“原因”を確認することが出来た。

ここからはちょっと離れているが、某豪華客船タ○タニックのように、傾いて半分沈んでいる船のへさきらしきものを見つけた。
沈没船しく、それによる破片が潮の流れでこんな遠くまできて、オレ&ミホークの家がゆれたらしい。
船じゃないよ家だよ。

空ばかり見ていたし船もスピードでていて周りを見る余裕さえなかったし、大本の船の残骸とは随分距離があったため、視界に入らなくて気付かなかったけど、よくよく見渡せばこの海域周辺にはあちこちに船の破片と思える残骸があった。

ここ半年でいままで以上に、気配やらなにやらに敏感になったオレの第六勘的な感覚が、オレの耳が、かすかな声をとらえたのはその時だ。

―――――!

今にも消えそうな・・・声。
けれどそこに何かが生きていると感じ取れる。

 あわてて揺れる船を水平に戻し、不慣れな能力を使う。
ゆっくりと残骸を避けつつ進み、やがて難破船の全容が見えてきた。
船には、いたるところに焦げ跡や砲弾の跡が生々しく刻まれ、普通の海賊が乗るには華美で客船のような豪華な大きな帆船だった。
あの傷はグランドラインの異常現象にやられたのか、はたまた海賊か、我が師匠ミホークさんのような猛者による暇つぶしで攻撃されたのかはわからない。

しかしその船は明らかに、なにかしらの攻撃を受けた後だった。


「助けに来ました!生存者はいますか!!」

 我が家である船を沈没しかかっているマストに鎖を巻きつけ流されないようにすると、沈没船の甲板をつたい、先程オレの感覚にヒットした何かにむけて次々に残骸を飛びうつる。
 おかしいと思ったのは、捜索をしてしばらくして。
某タ○タニックを思わせる客船のような豪華な船でありながら、船の周囲を漂う漂流物の中に、荷物らしきものが一切ない。
それは客の荷物というだけでなく、客船でないにしても海を航海するなら食糧や武器それ以外に必要なもの、さらにはタルひとつないのだ。
船の近くには浮いていたのは、船の残骸のほかは、同じような衣服に身を包んだ様々人間達の死体だけ。
間に合わなかった・・・というより、かなり前に攻撃を受けて崩壊したのだろう。
だから既に冷たく息をしていないものには申し訳ないが、彼らのことはすておき、生きているだろう者の気配を懸命に探す。

まだ望みはあるのだとオレは思っている。

そう、感じたから。

それに第六感がささやくのだ。
だれかが生きていると――。

 だが、そうやって飛び移りつつ生存者を探しているうちに、新たな違和感に眉をしかめる。
これが海賊船でないなら、乗客と思われるものたちはいても、死体の中に乗組員の姿がひとつもないのはおかしい。
しかもみながみな同じ格好でありながら、その年齢も性別も種族もばらばらなのだ。
たとえば人買いは、見目の良い子供か女を重視する。
その系統の船でないとしても自分より強そうな大男など商品として扱えるはずがない。
あつかうにしてもそのためには、その倍の強さを誇る護衛がいるだろう。
本当に普通の人であれば、心理のひとつとしてひとは自分より弱いものを狙う。

強いものを相手にするなら一人では不可能だ。

だけどこの場では、大男や魚人でさえ、可憐な女性と同じ服を着ていたりする。
それも強面の筋肉隆々の奴がひとりだけであれば複数の人間が応対することでその大男を捕らえたとも考えられるが、そういった強面の強そうな奴らが十人以上となると話は違ってくるだろう。


「何なんですかねこの船は?」

 商船や奴隷船、はたまた海軍の護送船か。
だが、そのどれとも違う気がした。

どこから流れ着いたのか。
なぜ全員が死んでいるのか。
なぜ船は沈没したのか。
護衛は?荷物は?目的は?

さっぱりわからない。
どれほど真意が知りたくても、ほとんど沈んでしまった船からうかがい知ることはできない。

「だれか、いないのですか?」

 勘を頼りに進んでいくと、二十歳ぐらいの女性が必死に機の破片にしがみついている姿にひかれそちらへ向かった。
返事はないし、案の定女性には息はなかった。
しかし彼女が必死に抱きしめているものは――

「ぅ・・・・ぁ・・・・」

生きていた。

 オレと同じくらいの男の子。

意識もなく、身体に力は入らないようだが、彼女が死んでも尚その子を抱きしめたまま離さなかったおかげで、水も飲んでないし、いまなら水から引き上げれば助かるだろう。

消耗が激しいが生きている。

「いま、助けるから!!」

 そっと触れた女性の肌はすでに死後硬直が始まっていて、海よりも冷たく凍えそうだ。
子供でしかない自分の腕力だけで彼女ごと持ち上げるのは不可能だ。だけどオレはまがりなりにも能力者。
先程の船を動かしたのと同じ要領で、周辺の空気の密度に干渉する。
二人の身体を支えつつ、見えない手が二人を抱き上げるように海から持ち上がる。
そのまま原形をとどめていた船の甲板にまで運ぶ。

 死んでしまっている女性には申し訳ないが、その手を離してもらう(この辺はあまり言い話じゃないし15Rとつけないといけなくなりそうなので細かいことは割愛する)。
そっと横に彼女を寝かし、浅く息をしているギリギリのラインで生きている男の子の様子を伺う。
オレは医者じゃないので人工呼吸と心臓マッサージと擦り傷の手当てぐらいしか出来ない。
とりあえず濡れた服から水分要素だけをとりのぞき、側にとめてあった自分の船から大量の布をもってきて肌の方の水分をぬぐってかけてやる。
身体の水分なんかは限度がわからずそのまま全身干からびてしまう可能性があったので、さすがに服の粒子だけだ。

「ごめんなさい。
もう少し待っていてください」

 ――まだだ。
オレを呼んだのは、この子じゃない。
もっと、もっと必死で。
もっと「生きたい」と願う強い声――。

 オレは再び海の上に降りると、残骸を渡って探す。

もっと、もっと他にも何人か生きてるはずだ。


「救助に来た!だれかいないか!!

 焦る声は、いつの間にか強制的に直されたはずの口調を巣に戻していた。
必死で探した。
探して探して――
そこにいたのはいたのは女の子。


 甲板か壁かは分かりかねるが、ちょうどたたみ一畳ぶんぐらいの板状の残骸。
その木片の上にねかせられているのは、意識を失っていてもしっかり呼吸を刻む二人の少女。
少女と女性のちょうど中間ぐらいの年齢か、オレのこの外見より年上の少女たち。
彼女達の方が先程の男の子より大人であるぶん、生命力が強いのかもしれない。
あるいは水に使っていなかった分まだ体力が残っているのか。

見た目だけの判断だが、この調子だと先程助けた男の子より二人の少女の方が、呼吸もしっかりしてる。

血の匂いがないことから、怪我はない。
あっても打撲ぐらいか。
今は、ただ過度疲労からか意識がないだけのようだ。

それにほっとしていると、側で水音がした。

波があたるには不自然なそれ。
もしやと慌ててそちらに視線を移せば、この板の隅、二人の少女の身体で見えなかった向こう側にもう一人女の子がいた。
少女二人を乗せて要領オーバーだったのだろう、三人目の少女は、上半身を大きめのこの板に乗せるので精いっぱいのようだった。
腕の力で何とかもっているといった感じだ。
必死に瓦礫につかまっているが、それだけでせいいっぱいのようで、もうそれも本能だけでしがみついている感じだ。
意識があるかも怪しい。


「大丈夫か!?いまたすけるからな!!」


 オレより随分年上だろうお姉さん。
驚いたことに、彼女はまずいながらも意識があった。

「わたしより、いもうとたちを!」

 彼女はオレが声をかけると、勢いよく目を開き、そう乾いた喉を無理やり振り絞るようにして叫んだ。

その目が強くオレを見た。

だけどオレにはその言葉に応えることは出来ない。
首を横に振る。

「あんたが先だ!」

 まだこの板の上に全身を乗せて眠っている妹だという彼女たちの方が、水が体温を奪っていないため、命も安全は保障されている。
七歳の子供の体で年上の人を支えることはできないが、場をつくることはできる。

即、たくさんの瓦礫を一か所に集めて、二人の少女が乗っているこの板の範囲を広げ、彼女を男の子と同じ要領で引っ張り上げる。


「っ!?」

 ふれてわかったけど、なんだかまだなれきっていないオレの悪魔の実が、ざわめくように、身体を構成していたものが粒として分離しかける。
そのざわっとした感覚は海軍でもよく感じたことがある。
失敗するとそのまま共鳴するように、オレの能力は制御を失い、また腕とかが粒になってしまう。
その感覚を思い出し、相手ももしかすると能力者なのかもしれないと気付く。

のう、りょくしゃ・・・?


思い当って、驚きすぎて目を見張る。


「よく、無事でしたね」
「?」

 能力者は海に弱い。
上半身だけは海面から出ていたとしてもほとんど力などはいるはずもなかっただろうに、それでも彼女は妹たちを守ろうと意識を保ってこらえていたというのか。
思わず口からこぼれた言葉に、ぐったりとよこになっていた女性がうろんげに視線をよこした。

もう言葉を出すほどには、体力も残っていないようだ。

それにきっと海から出たことで少し安堵して力が抜けているのだろう。
それでも警戒を怠らない。
目だけが、いまだオレを敵とみなして、ギラギラとしていた。

「貴方は。その、能力者なのでしょう?」
「・・・・・・・・・なぜ・・それ、を?」

オレの言葉に警戒を強める少女は、相手が七歳の子供であることに気付いたのか、礼を言うべきか。なぜ助けたのか、お前は敵かと、怪訝げな表情だ。
その彼女にそっと手を伸ばし、服の水分を能力で分離する。

「これがオレの能力です。服の水分だけはとばしまたが、今、できるのはそれだけなので、身体を暖められる場所までもう少し頑張ってください。」

 大丈夫。
オレは味方です。

そういう意味を込めて笑い返す。

「・・おまえ・・もか?」
「はい。オレも能力者なんですよ。
オレの能力は悪魔の実に反応する。じつは未熟者で、触れた相手が能力者であれば、ちょっとオレの能力が暴走しそうになるんでわかるんですよ」

 世界を構成する粒という粒を認識することで、それを動かすことのできる能力。
しかしいくら調べようとも、海軍の化学班に研究案をもちこんでも「悪魔の実」についてだけは結果が得られなった。

なにもわからなかったのだ。

誰かが口に入れる前の実は、しょせん植物であり、メロンのかたちをしていればメロンでしかなかった。
口に入れた後の残骸も調査してみたが、その結果は同じだった。

だからなぜ能力がそなわるのかわからなくて、オレが『認識できないもの』として悪魔の実は存在した。
ゆえに「粒」のほかに、「認識」を第二の形状ととるオレの能力は、悪魔の実 (=認識できないもの)を拒絶する。

 たとえばオレが自分以外の人物の身体を砂のように細かく分解して再構築できたとしよう。しかしその場合、「認識」できない“悪魔の実”だけはとりこめず、あとに残ってしまうのだ。
悪魔の実がどれだけ身体に溶け込もうと、再構築の際に抜け出てしまい、能力ともども実がその場に残るというかたちだ。
ちなみに、なぜかオレ自身の実はいくらやっても悪魔の実は分離して出てくることはなかった。
はじめ他者(正確には当時は実験用のマウス)の身体から悪魔の実が形となって残ったときは酷く驚いた。
そこで思ったのが、自分の身体で能力を使って完全にすべてを粒子化してしまった場合。同じように悪魔の実だけ残るのではないかと怯えた。
そうしたら能力者ではなくなってしまった自分は、再び自身を再構築できないじゃないかと―――。
だが実際は、“自分だけ”は、悪魔の実と共に人体を再構築することができた。
その時はどれほどほっとしたものか。

つまり、悪魔の実とは、オレの能力にとっては天敵なのだ。

 オレでさえ悪魔の実をおそれている。同時に海から嫌われるようになった(オレの場合は元から泳げなかったけどさ)。
そんな脅威を身の内にもちながらも海の中で耐えていた彼女の意思は、何と強いものだろう。
 そこでふと少女が心配するように彼女の妹達へと視線を向けたのに気付き、せめて彼女達の衣服からも水気だけは飛ばしておくかと、板を移動して二人に向けて手を伸ばし――

ザワリ

 うっそぉ!?まじ?マジですか!?
今の感覚から言って、この二人もたぶん能力者だ。
うっそぉっ〜!!姉妹そろって能力者なのか!?
どんな偶然?いや、ほんとマジでどうやって、この三人は海に投げ出されて無事だったんだろう。
これぞお姉さんパワーってやつですか?
構えてないで触れたもんだから、思わず能力が暴走しかけた。
それを慌てて押さえて、彼女達から手を離し、とっさに振り返れば、意味を理解したらしいお姉さんが力なく首を縦に動かした。

「すまん。妹たちもまた能力者じゃ」

視線が大丈夫かと問うてきて、先程の能力の暴走の話と結びつけたのだろう。
ざわざわしていた腕をさすって変化がないことを確認すると、今度は気をつけて妹さんたちに触れる。

「本当によく無事でしたね。感服です」

海の水だから、塩素は『Cl』。
水は水素『H』。

いつものように歌のように「認識」のための言葉を呟き、服から水分と塩気を飛ばす。
そこまでして、ギリリと奥歯をかみ締めるような音が聞こえた。
視線を合わせることはためらわれ、彼女に背を向けたまま耳だけ傾けていると

「海に嫌われるような能力・・・われら姉妹のだれも、望んでは、いなかった」

苦虫でも噛み潰したような低い声か聞こえた。

「・・・・・・」

 海軍本部でのほとんどの時間を体のリハビリにあて、さらに能力の訓練はちまいぐらいちゃっちいことしかしていなかったせいで、オレには自分以外を再構築する力は、今はない。
いつかはできるようになりたい。
そう。“今”は、ないけれど。

「その能力がいやだというのなら、オレがいつか、あなた達から悪魔をひきはなしてみせましょう。
オレはもっとがんばらないと・・・いけませんね。
あらら、寝て、しまいましたか」


 結局極度の疲労からか、彼女は会話の途中で目を閉じてしまった。
海から助けられたことで少しは肩の荷が取れたのか、彼女の寝顔は随分穏やかだった。

オレの言葉がどこまで彼女に届いていたかは知れないが、それでも気にはならなかった。

この誓いはしょせんベルメールさんの時と同じもの。
オレ自身の身勝手な偽善活動で、オレのこの差し伸べた手が、本当に将来貴女達をすくえるかなんてわからない。
もしかすると“原作”で死を予言されていたのなら、この世界では救えないかもしれない。
そんなこと未来になってみないとわからないけど。

「オレの自己満足です。約束です」

オレは結局、雪と同じ。この海を漂って消える水泡のようなもの。
これはきっと刹那の出会い。
あなたたちにとっては、通りすがりにしか過ぎない、一時の風と同じなのだから。


「ああ、でも――」


 死ぬなんて怖いことだ。
それだけはわかる。

生きたいと思うことの何が悪い?
暖かい手を望んで何が悪い?
死なせたくないと思って―――何が悪いのさ。


オレはそうやって、二年前にこの世界に戻ってきた。



だ か ら


「要救助者確保。これよりリース、帰還します・・・・・・なぁ〜んちゃって」

この海が喰らおうとした命。
救えて、よかった。


 残酷ながらも
時には こうして一抹の奇跡をも生み出す海に、感謝した。





**********





 それから生存者を連れて船に戻って、とにかく暖をとれる陸を目指した。

しばらくして――
おもしろデコボコ髭のメガネなおっさんに襲われた。

なんなの?こんどはなんなの!?
ってか海の上、それも人様の、それもオレの家よ!?
あんただれ!?
なんでびしょびしょなの!?

考えたくないけど、どこからあらわれた!?

「いや、なぁに。近くの島にいたのだがな。
久しぶりに鷹の目の船を見かけたものでな。随分船に改造をくわえたようだから“らしくない”と話を聞きに・・・」

―――泳いできた。

ありえない。
だってオレの常人凌駕しちゃってるだろう感覚センサーにも近くに島があるなんてわからない。

見える範囲にも島はない。

それを泳いだだと!?

「どこから見えるんだよ。
ってか、どこから泳いできた!?お前は人間か!!」


 その後、陸についた。
陸についても騒動はやってくるようだ。
こなくていいのに。
勘違いも、もうおなかいっぱいだよ。
騒ぎなんかいらないのに・・・平穏をくれよ平穏をさ!

 何を勘違いしたのか、生存者たちの治療をしようとしたら、陸で待っていたというおっさんの連れの蛇の杖をもったボンキュッボンの美女に、その杖でもって殴られた。

オレがなにをした!?

「お前さんがうちの若いのを襲ってるようにみえてね」

治療だ!!





 そんなこんなで、謎の水泳男と謎の美女とであい、事の次第を説明したところ、彼女たちが傷の手当を引き受けてくれた。


それにオレもついていき―−―

“おんなのこ”と間違われて、女ヶ島というところへ連れていかれた。





 そこは見事なボインちゃんのつどういろっぽい女だけの島でした。

サンジじゃないけど、鼻血がでた。

ずっと山賊と暮らしていたし、軍にいたときだってきっちりした服に身をつつんだ女性人しかいなかったし、前世は前世でエロ本より漫画の雑誌ばかりみていたので、ぶっちゃっけ女性に一切免疫がなかったらしい。
そのままオレは、しばらく知恵熱を出して寝込むこととなる。


スリットや衣服の間から覗く素肌がハンパなかったです。








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