〜 O NE PIECE 夢 〜



18. 君の名をまだ知らない





side リース



今、島にいます。

海上で拾った男の子は、目を覚ましているが、こっちをネコのように威嚇して毛を逆立てて睨んできていて、はっきり言ってオレがなにかしたかと問いたい。

男の子はかすり傷と極度の疲労以外はピンピンしていて、あの凄いおねぇさんのいる三姉妹より元気そうだ。
あと、この彼を抱きしめていた女の人をふくめ、あの船の中にの家族はいないそうだ。
と、いっても、言葉が話せないのか、男の子が口をきいたわけではない。
首を縦か横に振るだけ。
これらのことは、事情を知っていた別の人間から聞いたのだ。


どういった経緯であの船は人を載せていたのか、オレにはわからないが、あの船から救えたのは、全部で九人。
凄い三姉妹を救った後に、運よく他にも生きている人を見つけたのだ。
そのうち、陸についたとたん去ってしまったのが、五人。
オレを殴り飛ばしたピンク髪の美女グロリオーサさんとは知り合いだったらしく、そのまま残ったのが、あの悪魔の実を食べたという三姉妹。
行くあてがないともついてきたいとも何かを言うでもなく、ただひたすらフーっと警戒態勢のままにくっついてきたのが、最後のあの少年だ。

・・・・ここで起こってしまったことに関していうならば、心が痛むとことだろうか。
どうしようもないとわかっていても、あそこにはオレの弟達と同じような年齢の子供も多くいた。
やるせなくなる。
だからせめて命を救えた四人だけでも助けようと、共に女ヶ島へいったけど。

ついた場所は、正確には女ヶ島に隣接するとある島の、森の中。

ただいま静養中です。
なぜって、女の人を偶然目にしただけではずかしながら鼻血を出して寝込み、そのあと島の気候があわずかんぜんに体調を崩してしまったのだ。

そんなオレは、グロリオーサさんに呆れの目で見つめられた。
レイリーさんには豪快に笑われた。

『女ばっかり』
「・・・おぬし、あれだけで鼻血を出して寝込んだばかりではないかにょ。こりぬのかえ?」
『いや、あの、ですから。女性の肌を見たいとか、色眼鏡で言っているのではなく、ここまできてほかに移動手段もしまもなく、どうしろとって意味だったんですが』
「はは!わかいとは羨ましいものだ!わたしももう少し若ければなぁ」
『すみません。頭に響くのでさわがないでいただけませんかレイリーさん』
「そっちのちっこい小僧はピンピンしておるというのになぁ!軟弱だなぁお前さん」
『レイリーさん、オレが十歳未満のガキだってご存知ですか』
「たまの散歩に出てみれば、世の中まだまだ捨てたもんじゃないにょぉ」
「うむ。おもしろいものもみつけたことだしな」

『・・・なぁ。いやまじで。だから黙れよおっさんたち』

寝込んでいるオレの真横で、陽気に笑うおっさんに思わず殺意がわいた。
その横にちょこんと優雅にすわるグロリオーサさんは癒しだ。

しかし途中から会話にならなくて。
素の粗野な口調になったオレはきっと悪くないんです。

ちなみにオレをはさんで右の枕元に、レイリーさんがグロリオーサさんに晩酌しながら膝をついて酒を豪快にぐいぐい飲んでいる。
左枕元には、なぜかあの生き残った男の子が“オレ”を威嚇しながら、座っている。
威嚇するなら座らないでくださいよと何度も説き伏せたのだが、ききゃぁしない。
なぜ、いるのでしょうか?


そうそう、実はあんまり女ヶ島あたりのことは読んでないから知らなかったけど・・・。
勘違いでオレになぐりかかってきた美女グロリオーサさんは、なんと原作でも登場したあの“ニョン婆”だった。

そういえば原作でもあったねー、女ヶ島の女帝ハンコックのお話。
たしか彼女は、独身で、31歳にしてルフィに初恋とか。
確か元奴隷で、フィッシャータイガーによってマリージョアを逃げた後、それをたすけたのはたしかレイリーで、女ヶ島に三人姉妹を連れ帰ったのはニョン婆だった・・・とかなんとか。そういえばそんな話もあったな。

ってか、たかだか十数年だけであのニョン婆のような皺皺になるのか。この目の前にいる物凄い美女が!世界とは理不尽なものだな。

そういえば、たしかにたすけてすぐに女だけの島って変だよなぁ〜とはおもってたけど、まさかまさかのオレ、立ち入り禁止区域に入っちゃった男か。
これって殺されるんですかね。

レイリーさんに視線で問えば、それはないだろうと、笑った。
理由としては、この島が本島と少し離れた人が立ち寄らない無人島の一つであること。
第二に、外について詳しいニョン婆こと現皇帝グロリオーサさんがだまっているかぎりばれることはないだろうとのこと。どうやら彼女たちは味方になってくれるらしい。

それならいいけど。

『なんでオレここにいるんでしょう。ってかもうイヤだ』

普段デスマス言葉を使うよう気を付けていたが、気を抜くと短気な性格が思ってだって出てしまい口がわるくなる。
そんなオレにグロリオーサさんが少し驚いたような表情を見せた。
弟たちにはすぐに拳が出るのはよくないと言われたっけ。
たぶんそれは育ての親たるじいちゃんが悪い。
もちろん女性を殴るなんてするわけないだろ礼儀知らずじゃあるまいし。
むしろね

『具合悪いんで、まじであんたら帰ってくれませんか?』

布団の中で寝込んでるオレを酒の肴に周囲で騒ぐな。





**********




野生動物の宝庫でありながら、それをあっけなくたおして寝床を確保したレイリーとグロリオーサさんの最強具合に、笑った。むしろ泣いた。

どうやって連絡を取ったか知らないが、しばらくして熱も下がった頃、師匠ミホークさんがやってきた。
あのミホークさんが。オレを迎えに来てくれるなんて。

明日は槍が降るんですね。わかります。


っと、いう冗談は置いておいて。


『なんでその子までついてくるんです!?いや、むしろ。師匠が子供好きだったとは知りませんでした。明日はやはり槍ですね』

さぁ、帰るぞと船に乗せられたところで、なぜか師匠が片腕であの少年を俵抱きしていた。
少年自身、今自分がどうなっているのかわかっていないようで、キョトンとしているしまつ。
レイリーさんが言うには、親もない帰る場所もない子供だ。引き取ればいい。とのこと。しかも彼はとどめとばかりにいつものほがらかに笑いながら「お前と相性が合いそうないい素材だ」と告げた。
これに師匠は「ほぉ」と少年をちらっと興味深げに見つめ。

「世話はお前に任せる」

っと、オレに全部ぶん投げやがった。
それでもしっかり「土産としてもらっていこう」なんて捨て台詞を吐いて少年をかついでいくもんだからびっくりだ。

そんなわけで。
オレに弟弟子ができました。





はじめはキョトンしていたものの、船に連れ込まれて正気に返った少年は、あわてたように遠ざかる陸をみつめていたが、目の前でわれ関せずとばかりに眠っているミホークさんをうろんげな目でみつめていた。

「と、とりあえず今日からよろしくお願いしますね。あ、っと。オレはリースです。そっちのぐううたら師匠は」
「知ってる。“鷹の目ミホーク”・・・」
「ああ、うん。そうなんだ。それで」
「構わない。おれに力をくれ」

いや、無理です。
オレ、力なんてないんですよ。
ヒキョウ技や唐辛子の栽培方法ならどんどん教えますが。

その前に

『弟子の仕事はまず家事からです』

「かじ?“火事”か?放火できるように、するのか?」
『いいえ“家事”です。いいですか。まずは洗濯からです!』

これができてはじめて師匠の弟子になれるんですよと、真顔でこれから仲間になる少年をときふせた。
なぜって、弟たちみたいに大食らいの無銭飲食が常の片付けができないやつになっては困るので。
ついでに師匠による負担が少しでも減ればいいのにというオレの切実な願望がそこには込められている。





そうしてオレと彼とのもうひとつの物語がはじまった。
いまおもえば、これはまさにひとつの分岐点だったのかもしれない。

ミホークにヒヨコの様について歩き、彼を「師匠」と呼んだ少年は、その後――その名をこの海の広がる世界で響かせることとなる。








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