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15. 奇跡の海(上) |
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青い海をこの目で見たい。 そう思って涙が出そうになるのは現実逃避だろうか。 ――願うならば… 次に目を覚ましたときは、今のような不幸な世界でないといい もう一度家族の顔を見てから死にたかったと……そんな思いが脳裏によぎる。 優しい手にもう一度触れたい 温かいぬくもりを… そうすればまたがんばれる気がするからと けれど身体の自由は利かない。 「たすけて」 体中の血が勢い良くひいていくのがわかる。 さむくて、さむくて。震えがとまらなくなりそうだ。 もう限界だと思った。 自分でもありえないくらい血の気が引いて行く顔は、今頃青を通り越して白くなっているだろうか。 下がっていく血の気と共に。 それにともない視界がぼやけ、どんどん目の前が真っ暗になっていく。 すでに力の入らなくなった身体は、自分でささえていることもできない。 その闇はきっと優しいだろう。 一歩踏み出せばそれはすぐにでも手に入るのに。 「……もう、無理…」 このまま重い瞼を閉じてしまいたくなる。 暗闇にすべてを任せたくなる。 きっと この誘惑に身を委ねるのはひどく簡単だ。 かわりに目を開けるのが億劫になるほどには…。 目は意思に反して重くなっていく。 二度と目覚めない深い眠りのごとく、どこまで続くかもわからない闇に おちていく… 力の入らない身体はグラリと傾いで―― 自分の意識後とすべてを狩りとっていく。 鈍い衝撃が一度身体に走ったがそれももう遠い。 何も感じない。 触れる手のぬくもりも なにも… どこか遠くで自分の名を呼ぶ声が聞こえたが それに答える思考はどこにもなくて ましてや口ひとつ動かすようなそんな体力さえそこには残っていなかった。 ただ零れ落ちる意識が闇へと飲まれるだけ もう、わめくことも泣くことも…返事をすることさえできなかった。 「死んだね」 突然ドサリと鈍い音がして小さな身体が地面に倒れた。 それに周囲にいた者達が驚きに目を見開く中、つるだけが机に手を組んで深くため息をついた。 意識を失って倒れた子供の顔は、血の気がいっさいなく死んでいるのではないかと疑いたくなる程真っ白で…苦痛に顔がゆがめられている。 意識を失ってなお眉間のしわは深く刻まれ、酷く苦しそうだった。 「…貫徹12日目か。そろそろかとは思ったが」 はぁ〜と深い溜息をついて、医療班を呼び倒れた子供を運ばせる。 今年でやっと七歳になったばかりの小さな子供は、十歳にも満たないながらも部下としては優秀で、ひっきりなしにいろんなところから声がかかる。 そのせいで本日12日目の徹夜となっている。 本人は大丈夫と引きつった笑顔で答えつつもテキパキと動き続け、今日にいたっては目がうつろで「アハハ。弟の誰かかナミかノジコに会いたかった」と遺言のようなものをつぶやいて倒れた。 リースはその境遇からか海軍に入った後も、初めから軍曹という特殊な扱いを受けていた。 今では准尉ながらも他の少将をさしおいて、中将であるクザンの手伝いをしている。 おかげでサボリ癖のあるとある中将を働かせることに成功はしていた。 しかし彼についていた少将が過労で倒れ、当の元凶たる本人は行方をくらまし、主に秘書のような仕事をしていたリースに二人分の仕事が回った。 なんとか仕事を片付けても海軍の仕事は普通のそれとはことなり次から次へと増える一方だ。 しかもクザンは中将。 海軍のトップに近い位置にいる彼が行うべき仕事量は、書類整理だけでも並ではなく、さらに人材が二人も欠員した状態では終わるものも終わらない状態だった。 連日徹夜であったとしても、それをこなしてしまうのだからリースも並みの子供ではない。 本当に子供とは思えない処理能力を持っていて、科学班には鋭い指摘をしたり、将校達との戦いに生き残れるほどの戦闘センスを持ち合わせ、さらには下のものにも慕われている。 おかげで誰よりも若くとも地位が低くとも気にするものはなく、きちんと部下達はリースの指示を聞いて動いている。 しかしそれもそろそろ限界だろうと、つるはふんでいた。 大将や元帥の手伝いまではさせられないが、クザンが行方をくらましてから12日。クザン付きの少将が病院に担ぎ込まれてから6日目。 さすがに限界が近いだろうと様子見をかねて、つるはリースを自分の側に呼んだ。 案の定、倒れたリースは、極度の疲労と睡眠不足と診断が下り、タイミングよく帰ってきたクザンは医者に説教を食らっていた。 「やれやれ」 以前、いろんな意味で疲労困憊であった子供を哀れんだつるは、リースを一度クザンから離し、外海の見回りをさせていた。 そこでできる限りリースに休息を取らせたつもりだったが、帰ってきたリースを迎えたのは部屋消失(焼失)事件。 孫好きなガープがリースを迎えに行き、そのせいで仕事がたまったサカズキがきれた。 「仕事をしろ!」とあらわれたサカズキと「いやじゃ!」と反抗したガープにより、リースの部屋はなくなり、居場所を失ったリースが錯乱しかけたところをつるが保護した。 それから三週間の休暇を経て戻ってきたリースは、さっそくクザンの下にもどされた。 しばらくはいつものような穏やかで少し騒がしい日々が続いていた。 クザンもリースも互いに互いの扱いにすっかり慣れたのか――ただたんに思考回路が似ていたために親しくなったに違いない――二人の間には年齢も立場も関係なく言いたい放題やりたい放題。 だからクザンはリースに後を押し付けて逃げた。 そうして気がつけば、こんな状態になっていたというわけだ。 つるの目下にもそれとわかる隈があったが、リースの状況はそれに付け加えて半端がない。 最近では、リースも体を鍛えるためか『六式』を練習しているようだったが、肉体よりも頭脳を鍛えたいと思いますと図書館によく篭る。 その時間さえも今回はなく、また本部から遠ざけようかとつるは思案し始めた。 ★。、::。.::・'゜☆。.::・'゜★。、::。.::・'゜ side リース ベルメールさんとみかんの契約を結んでから、3,4ヶ月に一度くらいはあの親子の元に遊びにいくようにしている。 実際はそれはなかなか叶わず、できて半年に一度くらいというのがむずがゆい。 フーシャ村にいるルフィやエースには手紙をだしたり、電伝虫で話たりしている。 海軍の中では最近なんでオレを追い掛け回す人が山のようにいたのか理解して、おかっけとやらを殲滅する方向に動いている。 不気味な目でこちらを見てくる相手や罠には待った相手の顔を覚えて、彼らの上司に頼んで遠くに飛ばしてもらったり。 最近では科学班と協力して色々つくっていたらそれが功績として認められてしまい、気がつけば位がまた上がってしまうというドツボ体験をしたときは絶望した。 さらに一度、自分自身の実力を知っておいたほうがいいだろうといわれ、同じ階級の人と真剣勝負を行なった。 いままでの経験がモロに生かせてしまい、いつのまにか自分がかなり鍛えられているのを知った。 じいちゃんやボルサリーノさんいわく、冷静に相手の目の動き、指の動き、体の傾きなどをみていれば、普通に銃弾はよけられるという。 はじめのうちは「無理だ!!」「お前らは妖怪か!!」そう叫びながら殺傷能力のないビービーダンのようなおもちゃながらも銃弾の雨を食らった。 にげてにげてにげて…それだけではやられると体で教えられてからは、必死で目で物を追うようにして、気配でものを察知する努力もして。それらが全部フルでいかせてしまったのだ。 結論から先に言うと、中佐レベルまでは能力も何もなく勝てた。 それ以上は怖くて考えたくもなくて逃げた。 その決闘のせいで軍曹から一個あがっただけの位が、またポンととんで准尉になってしまった。 みんなが手をたたいて喜んでくれて、おめでとうと、そうでなくちゃ!と言ってくれたけど……ちょっとまてコラッ! オレがいつ…以下略。 もう、なんだか平穏を望むのも、海軍なんかいやだというのも疲れた。 オレは普通に名倉氏にいつか戻るため海兵達から逃げていただけだけど、それでもなぜかポンポンポンと昇進してしまったのだから、もしかすると意外と体力はついてきたのかもしれない。 とりあえずじいちゃんのこぶしを避けられるだけの度胸がついたのだから、『六式』でも覚えようかな〜と、現実逃避ついでに『六式』の勉強を始めた。 まず『六式』とは結局なんぞや? 海軍の教本と、海兵達の訓練の様子、将校達の話を聞いて、『六式』についてまとめてみた。 鉄塊テッカイ:肉体の硬度を鉄の甲殻にまで高める技。 紙絵カミエ:敵の攻撃を紙のようにヒラヒラと避ける技。 剃ソル:瞬発的に加速し、消えたように移動する技。原作のルフィ曰く、その際地面を瞬時に10回以上蹴っているらしい。 月歩ゲッポウ:爆発的な脚力で空を蹴って浮く技。主に回避に用いられ、応用技は無い。 嵐脚ランキャク:蹴りで呼び起こす鎌風。 指銃シガン:指で敵の体を撃ち抜く技。技のバリエーションは「一転集中」という点は共通するが、必ずしも「指から」とは限らない。基本的に鉄塊が習得できていないと使えない。 六王銃ロクオウガン:『六式』を極限まで高めた者が、使える『六式』最終奥義。 『六式』は特殊能力というよりも、ひたすら努力の結晶といった後天的な、あくまで技術だ。 やっぱり少し尋常じゃない人外の技のような気もするけど。 よくよく考えると、これはオレの場合能力で代用できるものが多い。 例えば、鉄塊てっかい。これは身体の構造を変化させればできないこともない。 海楼石にはかなわないが、ダイヤモンドは世界でも有数の強度を誇る。 だから身体をダイヤモンドにかえるとか――かなりめんどうだけど、やってできないことはないだろう。 なにせ身体のほとんどは水でできているわけだし、ダイヤモンドは炭素の塊である。 これをうまく使えば、わざわざ鍛えてまで肉体の硬度を上げる必要はないし、鉄よりも硬い防御ができる。 オレにとっては体を鍛えるより、肉体構築をしなおしたほうがとてもお手軽だったりする。 そもそもオレは自ら鍛えたり戦ったりするのを嫌うLet’sインドア派の人間である。 考えているうちに修行さえするのもいやになってきて、毎日鍛錬しいている自分を想像するだけで憂鬱になってくる。 さて次に、紙絵カミエだけど、これはほぼ普段のオレそのものだと思う。 敵の攻撃を紙のようにヒラヒラと避ける技――オレの場合は技ではなくそれだけが取り柄で。 次。 剃ソルはとにかくたくさん地面蹴って瞬間移動しているようにみせるんだそうだ。 一番めんどくさいのではと思うのはオレだけか? もしオレが怪物なみの脚力があったとしよう。だけど目で見えない速さで10回地面を蹴る…それだけじゃぁ、瞬間的に移動したような感じで動けないんじゃないかとも思うわけだ。 オレがやる場合はね。だってオレあんまり体力ないし(子供だから)。 たぶん蹴ることに必死になって、オレは正面を見るのを忘れるだろう。しかもその場で10回やると、戦っている最中だとか進むことさえ忘れるんだよ。オレだから。 ちなみに実は…瞬間移動モドキならできる。 オレは能力者。それも身体を粒にかえられる。 身体をミクロほどの粒に変えてしまえばいいのだから。 まぁ、小さいころの夢だったし、とりあえず『剃』はあとで練習してみよう。 そのうちできるようになるかもしれないし。 四番目は月歩ゲッポウ。これはエースと一緒に谷に落とされたとき、いつも考え習いたかった奴だ。 でもこれの話を聞いたときオレが愕然としたとしてもおかしくない。 理論はわかるけどね。水の上で沈む前にもう一歩足を出せ!!と同じだロケット噴射があしについているようなものだろうから。そこまでやったらオレは足だけ筋肉マッチョになってしまうよ。 いやいや、それ以前に、普通にオレの場合は某正義のロボット鉄○アトムのように足から噴射して飛んだ方がいい気がする。 …たぶんやればできるし! そこまで考えて、オレはオレ自身の異常性と、六式の必要性がオレにはないことに気付いてしまった。 むしろはじめからやる気がなかったオレが、修行なんてするとは思えない。 「今まで『剃』や『月歩』をほしがったオレって…ただのばかみたいじゃん」 いやいや、まちたまえ自分よ。 そうひげにするでもない。 「あ、そっか」 もし海楼石や覇気などで能力を封じられてしまった場合を考えておけば、六式は学んで損はない。 最近おつるさんとクザンさんにはオレのだらっけぷりな性格を完璧に把握されてしまっているようなので、彼らに訴えれば色々となんとかなるだろう。 まぁ、元帥を含めて階級の降格を願い出てみたけどソレはさすがに却下されたのは、今のところ一番痛い思い出だ。 とりあえずきっちり話を聞いてくれるおえらがたを味方につけ、オレは海軍改革――なんてするわけないだろう。改革ではなく、オレの修行相手を“まっとう”な人にしてもらうぐうらいの配慮は頼むつもりだ。 やっぱりここまできたので、逃げ足を鍛えようと思いまして。 ―――とか、思ってたんだけど。 その相談におつるさんのところにいったら、丁度良いと笑顔で言われた。 「煎餅いるかい?」 「あ、いただきます。緑茶入れましょうか?」 「たのめるかい」 二人で向かい合って、オレは日本茶そっくりのソレをきちんとした茶器にいれて葉を入れる。 おつるさんに相談しに行ったら、まずはお茶をしようと誘われた。 向かい合うように座って、おつるさんからはせんべいをもらって、ふたりでまったりしながら秘密会議が始まった。 「訓練をしようかと思うのです」 「ほぉう。アンタらしくないじゃないのさ。自分から修行だなんてね」 「自分もそう思いますが、いざというとき逃げ足を早くさせたいかったのです。そうでなければここ(の世界)では生きていけません。自分は修行も面倒ごとも嫌いですが、それよりも早死にはしたくなかったので」 「そうかいそうかい」 「だから師匠となるべき人はぜひまっと「それはちょうどよかった」 「は?」 「アンタの強さについてこれて、まっとうな人間…いるよ」 「え?ほんとうにそのひと、人なのにまっとうなんですか?」 「アンタもずいぶんへんなところに食いつくようになったねぇ」 「ははは…そりゃぁ」 自分が10歳未満であることさえ忘れそうなほど、子供らしい日々を送っていないので…。 警戒ぐらいしてしまう。 よくよく考えると能力者ってのは、能力使って変身とかいろいろするわけで、それだけでも能力者のほとんどが変な人に見えてくる。 そんな人間が海軍には山のようにいて――常識?なにそれ?そんな気分にだってなる。 その点では、おつるさんはかなりの常識人だと思う。 だって常識人そうなセンゴクさんは、ヤギつれているところがよくわからないし。 能力者じゃない人=常識人ってのはあてはまらない――ほら、いい例としてじいちゃんがいるでしょ?あれは能力者でもないのにぶっ飛んでるし、もう規格外だよね。 「任務ついでに行ってほしいのは北の海だよ」 「北の海ですか。なんでまたそんな場所へ?」 おつるさんがいうところによると、オレが師匠となるべき人に会うのには北の海に行かないといけないらしい。 内容としては海賊を捕まえるついでなのだが、今までと同じように『海軍支部めぐり』に近い内容だった。 北の海。そこで一時姿を隠せといわれた。 だけどそこまでいって姿を隠すぐらいなら、ぜひ東の海に戻ってフーシャ村にいきたい。 静かに暮らせというなら、たとえ山賊がいようと、故郷ともいえるドーン島が一番だ。 まぁ、そこまでわがままはいえないのはわかっていた。 なので、とりあえず言葉には出さず、目だけで訴えてみたところ、すぐに連れ戻されたいのかいと首を横に振られた。 たしかに。 灯台元暮らしと知っている場所に逃げても、なぜかクザンさんとか、じいちゃんとかじいちゃんとか…かぎつかれそうな気がしてしょうがない。 「さすがにガープもクザンの坊やもアンタに頼りすぎなところがあるからね。 少し離れてほしいというのもひとつ。 一番はアンタのためだよ。こないだ過労で倒れたこともわすれたのかい?」 「い、いいえ。いや〜、そこまで甘えていいのかなって」 「(この年で仕事中毒ワーカーホリックかい。なんてこった。どうりで子供らしくないわけだよ) そんな小さな子供が何ばかなこと言ってんだい。みつかるまえにさっさとおいき」 おつるさんはオレを見て、子供は子供らしく生きろという。 それは嬉しいけど、無茶言うな〜このひとと、内心ため息をついた。 ついつい視線をそらしたら、おつるさんの方からもため息が聞こえた。 「無茶なのは承知だよ」 だから今のうちに早く行けと・・・ 「名目上は、あの近海の海賊が幅を利かせているらしいからね。ついでに首をつかまえておいで。 そうしたら行方不明になってかまわないよ。あとはこっちでうまくやっておこう」 連絡だけは取れるようにとオレはおつるさんから、電伝虫を一匹あずかった。 つまりこれでオレは長期間のお仕事扱いの脱出計画と…なんて素晴らしいんだ!! あまりにオレに優遇が良すぎて、突然不安に襲われ、おそるおそる尋ねると 「言いたいことはわかるけどね」 「えっと、そのなぜとお聞きしても?」 「アンタ自分が何を言ってるかわかってるかい?」 突然、なんなのだろうと首を傾げると、おつるさんがやっぱりかとため息をついて新たな質問投げてよこした。 いったいなんのことだろう? 「やれやれ本当にこのこは自覚がないようだね…リースは今年でいくつになった?」 「え?えっと…七歳ですが?」 「じゃぁ聞くけどね、普通の七歳の子供はアンタのような反応を返すかい? たぶんだけど、あんたが今考えた答え、その考え方を普通の子供がするかい? お前に会わせたベルメールのところの子はアンタの会話についていけたかい?」 ―――普通、その年の子供は、外で遊ぶものだよ―― 言われて、この世界に来てはじめて己という存在の違和感に気付かされた。 なまじ周りが凄すぎてついて行くのでやっとだったオレは気付いていなかったが、10歳にも満たないこどもではなく“オレ”という性格のまま“リース”として暮らしていた。 環境で性格も随分変わったが、それでも前世のオレは高校生だったわけで、中身17歳過ぎの人間がこどもらしい行動をとるわけがない。 誰にも言われなかったし、それどころでないハードな暮らしだったから気付かなかったが、こどもとしての“リース”の存在はふりかえってみても違和感がありすぎいろいろとおかしかったことだろう。 オレは前世の知識を持ったまま“リース”としてすごしていたため、流暢に口を動かせなくともその思考回路も行動もすべて普通の子供が知らないようなことばかりしていたのではないだろうか? たまにこどもらしく演じたり、体の幼さに引っ張られて心が幼児化するものの、それ以外普段の言動はいかにもこどもらしくない。 「やっと気付いたようだね」 そこまで“普通”でないこどもにおつるさんは、元から頭がいいことが起因し環境がオレを大人びたこどもへと変えたとそう思っているらしい。 中身異世界人ですという疑いはなかった。 だがまっとうな思考回路をもつおつるさんからみたら、オレという奴は「可愛そうな子供」に映ったらしい。 いやね、オレだってたまになんでこんなについてないんだろうって思うけど、普通の子供のようとか今更無理ですよね。 だって… なんか七歳にして海軍准尉(これからして意味がわけわかんない)。 海軍の英雄といわれた男の「愛ある拳(手加減バージョン)」とやらをよけれる。 こないだどこぞやの中佐をボコってしまいました(7割は罠にはめて落とした結果)。 他の上位階級の人を無視して、オレなんかが中将の秘書のようなことしてます。 体力は普通のこども並みだけど、足の速さと気配読みなら最近誰にも負けなくなってきました。 実は悪魔の実の能力者で、気合を入れれば一瞬で船を沈められます。 ……今更。いまさら普通って――ナニ? オレには遠い世界のお話のような気がします。 それにそういうことは、オレが悪魔の実を食べる前に行ってほしかった。 でも、決して穏やかな老後だけは諦めない!! この世界で海賊は、夢を追うものをさす。 夢を追う――それつまり諦めないこと。 オレだって夢を見たい。諦めなくたっていいだろ? 普通なオレなんてものは 「無理な気がします」 でも 「平和が好きです。昼寝をして日々のんびり暮らすのが好きです。戦闘は面倒です。修行もやるきがしません。策略とか頭を働かせるも面倒で嫌です。それでも」 したいことがあるから 「逃げ足だけは鍛えてきました!少し頑張ってみます」 おつるさんは常識があるから、オレのめんどくさがりの性格も周囲にいいように遊ばれている涙の苦労さも理解してくれていた。 だからなりたくはないけど、おつるさんに頷いて、修行の旅にでることにした。 もちろん。オマケで少し“普通”と戯れて、本当についでに海賊を捕らえてこよう。 そこまで考えて…… ふと、一番重要なことを聞いていなかったの思い出す。 「……ところでどんな方なんです?」 さっそく旅支度を…と、席を立とうとしたが、慌てて座りなおすと「初めにそれをお聞き」とおつるさに笑われてしまい、なんだか恥ずかしくなる。 「はぁ、本当に抜けた子だね」 「自分もそう思います」 「まぁ、いい。リースは【Xディエス・ドレーク】という子を知っているかい?」 聞いた名前に固まっていると、詳細の書かれた書類をわたされ、一目見てオレは頭を抱えた。 オレンジ色の髪に少し釣り上がり気味に目、プロフィールの写真をみて眩暈がした。 どうしてこうも原作キャラとの遭遇率が高い? しかもいまだこのXディエス・ドレークはまだ海賊ではなく、海兵の衣装に身を包んだ年若い大佐だ。 これがあと十年ばかりすると、海軍将校にまでなる有望株。 しかも上半身半裸にマントというあやしい格好をする海賊になるのか…。 オレはこの人を知っていました! 「この子はこの若さでこの地位につくだけの腕がある。 これから伸びる逸材だし、なによりそれにわたしが知る限りかなりの常識人だ。 もともとリースを海軍支部を順に回らせたのもこの子にあわせようと思っていたんだよ。 まぁ、それよりも早く支部めぐりをやめることになっちゃったがね」 「あぁ、それで支部めぐり…」 でも、ひとつ言いたい。 常識人は半裸でマントなんて妖しい格好はしません!! っが… 「喜んでお受けします!!」 その後、電伝虫をつかって話したドレークさんは、物凄くまじめで、だけど物凄く気さくで、優しくて!普通で!! 即、仲良くなったオレは、さっそくドレークさんに会いにいくことを決めた。 約十年後はわからないが、今はいたって普通な海兵なドレークさん。 たとえ厳しかろうが、そこはそれ。“普通”という存在にはかえられるものはない。 ドレークさんはオレを鍛えてくれると言った。でもきっとあの人なら、じいちゃんや大将&中将連中のように、はじめからフルパワーで前触れもなく襲い掛かってくることもないだろう。 まっとうな海軍の訓練から始めた方が、まだオレの心は平常でいられる気がした。 彼は北の海にいる。 いままではずっと南と東の海ばかりまわっていたので、北の海ははじめてだ。 少しだけ、【常識人】というのに胸がキュンとした。 オレの中に“普通”という人生の夢がグルグルとまわり、自分とはかけ離れすぎたそのあまり理想さに…オレのトキメキはおさまらない。 いますぐ海に出たくなった。 いますぐ旅立ちたくなった。 ドレークさんの元に行けば、普通でいられる気がした。 そのままオレは渡されていた電伝虫を懐にしのばせる。 おつるさんからは座ったまま視線だけで窓の外を見るように示され、ここから伺える船のひとつを示して「あれにのるといい」とアドバイスをもらった。 急がなければ、そろそろオレの逃亡を計画に気付いた鼻とか勘のいい猟犬に気付かれるかも知れない。 オレは視線だけでおつるさんに意思表示をして、互いに頷きあうと、席を立つ。 窓から海と海軍のマークの入った大型の帆船がみえる。 それを視界に入れつつ、凝り固まった身体を伸ばして、深呼吸をする。 深呼吸して、気持ちを入れ替え、心の準備もおこなう。 はぁ〜 ひとつ大きく息ををついてから、窓の外へ意識を離す。 この息はため息ではなくて、あまたの海賊たちと同じようにオレが夢を追うための気合入れ。 窓の外から見えるのは、空を映したような海の青。 この世界は海を中心に世界が回っている。 「いってきますね、おつるさん」 扉に手をかけながら、去り際に振り替える。 いつも本当のおばあちゃんのように思っていた人に笑って手を振る。 おつるさんは一瞬驚いたような顔をしたあと、穏やかに孫でも見るかのような優しい笑顔で大きく頷いた。 「あぁ、いっておいで」 それからオレは必要な着替えと読みかけの本を数冊もって、通りがかりのバーソロミュー・クマさんに懇願して、そのに陰に隠れるように移動。 気配をできるだけ消して、ハイエナのような上司や祖父から逃げる。 大きな身体の背中に張り付いていたりすると、誰も気付かないのでとても平和に島を出れました〜。 じゃんじゃん。 っが、しかし。 「オレ、ついてね〜!!!」 軍艦から降りて商船へと乗り換えたオレは、予定とは異なる場所に漂流。 なぜならば、のっていた船が突然の時化で転覆。 そのあとはさらに運が悪く、吹き荒れた巨大竜巻サイクロンが発生。 なんとか原形をとどめていた甲板はギタギタに破壊され、近くを泳いでいた海王類も悲鳴を上げてサイクロンにみこまれ、オレは船員と積荷と船の破片と共に吹き飛ばされた。 「まじでオレなにかした!?」 この世界はとことんオレには優しくないらしい。 っで グランドライン(たぶん)の……ここどこよ!? 「うるさい」 「え?」 |