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13. あなたがくれた安らぎに(下) |
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その誤解はどんどん深まればいい… side リース ++ “だる〜ん同盟”友の会 ++ 「ん〜だれだい?」 木の陰からそんな声が聞こえるがかまっている余裕はない。 「すみません!どなたかは知りませんが、かくまってください!!」 どこにいったー!と周囲からオレを追ういつもの海兵たちの声がきこえる。 人がせっかくまったり本を読んでいたというのに…。 なんで邪魔をしてくるのか。 オレは入り組んだ海軍本部内を走りまわり、人の少なそうな影場をみつけそこへ駆け込んだ。 だって後ろから「うぉー!」っていいながら、怖い顔した人たちが手に武器を持って追いかけてくるんだもんよ。 逃げるに限るさ!! 少しだけもっさりとした茂みがあって、背後には大きめの木がある。 海軍本部にもあるんですよ緑はね。 そこで木としげみでうまいいちに目だ棚そうな場所を見つけたのでそこへ飛び込み、ゴイ〜ンと激しく何かに激突した。 「あ、あたまがっぁぁあ!!!!」 顔から飛び込んだのがいけなかった。 そこにまさか寝椅子があるとは思わなくて、見事に椅子の金属部分と頭を強打してしまいあまりの痛さにうずくまる。 眼鏡とあたってたらもっと痛かっだろうなぁ〜。 ガツッ!っていって、鼻はいたそうだし、眼鏡は傷つくし…って、妄想はおいといて、がいたい。 けど声に出したらあの戦闘狂のようなハイエナにみつかってしまうとあわてて口を押さえて、そこでやっと目の前にいるのが誰か気付いて目を見張った。 「ただいま使用中〜。悪いけど俺に用じゃないなら別の茂みにいってくれる?」 そこにいたのはステキアイマスクをして、ちゃっかり自分空間を作ってお昼寝体制万全なおひと。 いわずもがな。あのクザンさんです! たしかクザンさんとニコ・ロビンがであったのは原作より20年前。 もう過ぎてるねあのオハライベント。 知ってるとつい口出ししたくなっちゃうから危ない危ない。 そんでもってこの人は、「誰かな?」とそっちがずねたくせに警戒心がないのか、アイマスクもあげずに…また寝ようとしている!! いまにもグ〜という声が聞こえてきそうで、 ガッ!! っと、思いっきりその寝椅子を蹴って…やりたかったが、そこはそこ。 相手は将来大将のクザンさん。 とりあえず現状では上司です!! け、蹴れない。 でもお昼寝。 なんて、なんて…うらやましい光景だ! オレと変わってほしい。 おいかけられてなければ、オレもそこでお昼寝したい。 いいな〜。 いいな〜。い・い・なぁ〜。 むしろここまでくると恨めしい。 「さぼりですか…クソッ!なんてうらやましい光景なんだ」 「あ、うん。それでおまえさんは」 どうやら心の声が口に出ていたらしい。 気がつけばアイマスクをずらしたクザンさんの顔が引きつっている。 動くのねあなたの顔も。 …それよりオレの心の愚痴は、どこから漏れてたんでしょう? 「いやいや、蹴ってたからすでに」 「え!?そ、それは申し訳ありません!!」 言われてみると、たしかに寝椅子が微妙に動いた後が地面にある。 怒りのあまり我を忘れてやってしまったらしい。 さすがのオレも一気に血の気が下がり、勢いよくその場に土下座をした。 「ごめんなさいごめんなさい!! 将校でも上位の方とお見受けします!自分は海兵ではないですが、海軍本部にいる限り下っ端でございます!(むしろ石でいたい) 本当に申し訳ありません(未来の大将様)!! この非礼はぜひその冷たい能力でお手打ちにするなど、海軍本部から生涯ずっと追放などして、気を紛らわせていただければ光栄です!!」 追放とか…海兵なら死刑宣告と同じだよね? それでもいいです。 でもぜひ追放――してくれればオレは一生海軍に入らないですむんだけど。 「どうかお怒りをおしずめください!!」 もうあがめちゃうよ。 将校以上の能力者ってのは、みんな化け物じみた力の持ち主達だからね。 ここで謝らねば死ぬ。 死んだら『約束』はどうしたの?って川のほとりでルージュさんに怒られてしまいます!! そう思って、額に土がすりつくほど平伏させていただいた。 「や。いや…べつにそこまでしなくても」 「ほ、本当ですか!!」 さすが将来有望株!大将青キジ!! 心が広いようだ。 しばらくクザンさんはおかしな顔をしていたけど、それどころじゃない。 この人、物凄くいい人だった。 「あの、追われてるんです!」 どうしようかなと思っていたところへ視線を向けられ、ついすがるように言ってしまった。 ここにはたくさん大人がいるが、助けを求めても意味を理解してくれた人はいなかった。 だというのに、自分のいい方へとおかしな風に聞き間違えもせず、信じてくれたのだ。 この海軍本部マリンフォードにいる人たちは、もう誰もオレの声は届かないだろうと諦めていたのにだ。 「ふ〜ん。あれとか?」 「え?」 そこへちょうど、自分達のすぐ側で複数の気配がした。 追跡者の声がオレの名を呼んでいる。 しまった。ここまで来たか。 めんどうだけど逃げないともっと面倒なことになると思って、また逃げ出す準備をしていたところでクザンさんにとめられた。 なんでかなと不思議に思ってクザンさんを見上げていたら、椅子から起き上がり茂みから出て行った。 オレの脇を通る時に、声だしちゃだめだよと言って―― ――あ、クザン…ょう!!ここ…リース…きませ・・でしたか? ――こども?…てない……よ〜 凍らすよ。 そんな会話が聞こえて、悲鳴と謝罪を残して追跡者達は去っていた。 帰ってきたクザンさんは「もうめんどくさいなぁ〜」と頭をかいていた。 その態度にオレはほれそうだった。 思わず拍手をしたら、なんか考える用に動きを止め、しばらくしてから頭をなでられた。 それから先ほどの位置に戻り、オレに用じゃないなら、どうしたの?と聞かれ、 「オレを強くする訓練という名目の地獄から逃亡してきたところです」 「逃げてきたって。まぁ、たしかに凄いよね、君の訓練につきあってるひとたち」 まっとうな会話が返ってきました。 あまりの嬉しさについ色々と話してしまい、ガープじいちゃんの誤解の話までさかのぼったけど、クザンさんはそれを全部聞いてくれた。 「3歳になると我が家ではじいちゃんにより空へと飛ばされます。 5歳になると密林においてかれ………というわけで、船の事故にあったのが去年です。 その時、オレは逃げ足を早くしようと心に誓いました。 だけどなぜか。どこをどう間違えたのかじいちゃんが暴走し、オレはここにつれてこられたってわけです。 しかもオレって外見からしても絶対強くなるようには見えないじゃないですか? なのにオレを強くしようと、じいちゃんに言われた暇人や大将達が、ふつうにもてる力惜しみもなく使ってきますから。 とくにボルサリーノさんとかおつるさんとかじいちゃんとかじいちゃんとかじいちゃんとかじいちゃんとかじいちゃんとか」 オレとじいちゃんは本当に血がつながっていて、家族だ。 家族だから何とでも言う。 家族だからすぐ殴れるし、すぐ言い合える。 白ヒゲと同じくらいオレだって家族が大事だ。 だけど・・・ 恨みの多さについじいちゃんの名前を繰り返してしまったのは、しかたないだろう。 すっきりした顔でいいきると、さすがクザンさん。 じいちゃんのことをよくわかっているらしく、あの人ならやりかねない。とまで同意をくれた。 それからクザンさんは、やぱっりサボリで。 お昼寝が好きで。 じいちゃんに迷惑ばかりかけられていて。 いろいろと逃げまくっていて…。 なんだ。最高じゃないかそれ。 目の前のお偉いさんが、実はほとんどオレと同じような性質だと改めて判明した。 目が合った。 無言だった。 それでも互いに胸に秘めるものがなんであるか理解し、瞬間ギュッと互いに手を取り合って硬く握手をした。 同士よ!! 「あなたとはいい友達になれそうです!」 「俺もだよ」 『いろいろだるいよ。だらけるの最高!大好き同盟』略して【だる〜ん同盟】が結成された。 二人で「だる〜んですね」と笑いあって、その名を粒や管kで胸がポカポカ温かくなったりした。 クザンさんは本当にいい人だった。 しかもオレのことを気遣ってくれて。 「休み…たいの?それなら人が来ないとっておきの場所教えてあげようか?」 な〜んて、逃げ場所まで教えてくれた。 あぁ、もう。あんた最高だよ!! マンガを読んでいたときはわけわかんない人だと思っていたけど、オレのことを理解してくれるなんて。 むしろオレの意見をきちんと耳を傾けて聞いてくれただけで、オレは生きていたかいがあったきがする。 話を曲げずに、きちんと聞いてくれた初めての人。 そのひとがいたずらの共犯者みたいな笑みを浮かべるもんだから、うれしくて「これからもいたずらいっしょにやろうね」って意味をこめて笑い返してしまった。 まんがからだと、うれしくてもあんまりかおにでないひとだなと思ってたんだけど、予想外の表情にオレの中でテンションはさらにあがった。 どうやら彼は一緒にイタズラをたのしんでくれるらしい。 オレのなかで、クザンさんとのイタズラは、昼寝とかサボリという意味で定着した。 なんだか暗号みたいで楽しいね。 今度昼ねポイントにお茶と煎餅でも持っていこうな。 きっと昼寝がもっとたのしくなるね。 こうしてオレは海軍本部において、地位ある味方を仲間に加えた。 オレはまだここでもやっていけそうだと。 その日は鼻歌を歌って部屋に戻った。 あまりにまったりしていたせいで、背後からの光線にあやうく焦がされるところだったとだけ…恨みの報告としておきます。 鏡でも持って歩こうかな。 ★。、::。.::・'゜☆。.::・'゜★。、::。.::・'゜ side クザン 一年ほど前から周囲が騒がしい。 あのときはガープさんが、重症の子供――それも孫――を連れてきたので騒ぎになった。 次には、その小さな子供が成し遂げた偉業と、ガープさんに話して聞かせたという知識の深さに、その子供はガープにならって『英雄』……『小さな英雄』と呼ばれるようになった。 正義を貫く海兵たちにより、『小さな英雄』の存在は一躍アイドルのように盛り上げられてしまった。 なかには反発するものもいたようだが、実際その子供に会いにいくと必ず態度を変えて戻ってきた。 しばらくすると、子供は大将を中心に稽古を始めたと風の噂で聞いた。 実際当時の俺にもガープさんから呼び出しがかかっていたが無視した。 子守なんてめんどくさい。 騒がしいのも嫌で、今まで子供を見に行くこともしなかった。 こどもは…オハラを思い出す。 大将というのは、自分も含め能力者しかいないような連中である。 例え能力をセーブしていたとしても、相手は大将。 化け物じみた能力者たちのさらにその上を行く彼ら相手に死にもせずにいる。 そこでまたガープさんの孫にあこがれる者が増えた。 あのお方ら相手にしていき照られるなんて――さすがはガープさんの孫だ。 それから諸々の事情で俺は子供を避けた。 所詮子供だという理由からと、面倒だという理由だけ。 しばらくしてあの彼はなにやら泣きながら家に帰ったという。 子供は極度のホームシックだったらしく、ガープさんが暴走して、無理やり上から休暇を取り付けている姿を見た。 「おうちかえるぅ〜!!」という子供特有の泣き声は、実は通りすがりに聞こえていた。 オレはその声しか知らなかったのだが、その子供の態度は普段とは違っていたらしい。 いつも冷めた子供らしく、普段と違った反応にか、おつるさんまで顔を緩めて見送っていた。 「いいのぉ〜。わっしもああいうのほしいな」 なんだかんだいってボルサリーノが一番緩んだ顔をしていたとただ、記述しよう。 「またまた随分と人見知りが激しい子だね」 「あ、クザンさん!」 「俺、面と向かってあったことないけど…どんな子?」 ガープさんの孫という子供が、ホームシックで帰郷してから一ヶ月ほど。 なんだかすっかりマリンフォードが静かになった気がするのは錯覚だろうか。 一年。よく俺、その子供と会わなかったなぁと思っていたら、あの子のおっかけをみつけた。 なんとなく聞いてみると予想以上に相手が幼いことを知った。 その話では、ガープさんがつれてきたのは、なんとも小さな子供だという。 まだ五歳だという。 その小さな身体で、自分の身を省みず船の崩落事故から人を救いだたらしい。 事故のせいで右目を失明し、歩くのも困難なほどの怪我をしたため半年間は、表に出てこなかったとか。 医療棟の方にいたらしいので会わないのも無理がない。 失明。怪我。事故による恐怖はないのだろうか? 誰もがそう相手を気にしたようだが、子供は諦めることをしないのだという。 何があっても諦めない姿勢や、丁寧な応対はクールで、だけどキラキラと輝く瞳にその子供特有の河合裸子があいまって、ファン達は囚われるのだとか。 子供ってうるさいだけだろう?どこが可愛いんだろう? 夢見る海兵の目は、自分よりも強者に対する尊敬と憧れでキラキラと輝いていて、訓練の相手をしてもらえるだけで満足だと言った。 『小さな英雄』に抱きつこうとする者、組み手を申し込む者は後がたたないと海兵たちは口を揃えて言う。 早く帰ってこないかなぁ〜と女性陣は、すっかりやるきをなくすほど。 「おいお〜い、しっかりしてくれよ」 「無理です」 「わたしたちに癒しを!リースちゃぁぁん!!」 「(どこまでいっちゃってるんだ・・・)」 そうしてだいたい半年ほどして戻ってきた子供に、再び海兵たちは群がったが… 休暇で成長したらしく、お子様は彼らに答える前に、罠を仕掛けるようになった。 それも高等な…。 おかげ日夜、海軍本部の一部では悲鳴が耐えない。 やっぱり静かな方がよかった気がする。 ++++++++++ ガサリと草を踏む音がする。 仕事をするにしては時間は早い。 だれだろうかと思っていると、ゴイン!!と変な音がして「あ、あたまがっぁぁあ!!!!」 という悲鳴が聞こえた。 どうやら俺の椅子に頭を打ったらしい。 草に向かってダイビングでもしたのか? 器用な打ち方だ。 「さぼりですか。うらやましい」 「あ、うん。それでおまえさんは」 「……」 しばらくしても返事がない。 どうやら帰ってしまったか。 それならそれでいい。 なんだったのだろうという考えさえ、面倒でそのまままた寝ようとした。 「……?まぁ、いいか」 会話がなくなり、もう一回寝るかと思っていると、突如物凄い悪寒を感じて慌てて起き上がった。 瞬間、ガン!と勢い良く視界が揺れて、椅子から落ちかける。 なにごとだとアイマスクをとれば、そこには5,6歳ほどの小さな子供がいた。 長袖からはみ出した肌にある傷と、左右違う色の瞳を見て、その子供がここ一年ばかり噂になっていたガープ中将の孫だと気付いた。 名前はなんだったか。 ガープさんがことあるごとにその名前を言っていたきがするが、あまりにうるさくて(しつこくて)聞いていなかった。 興味がなかったら、どうも名前が出てこない。 さっきの音は……一番振動の激しかった部分から予測して覗いてみると、椅子が一部へこんでいる。 ワォ。 さすがは能力者でもないのに拳だけでのしあがったガープさんの孫といったところだろうか。 その孫はというと、どこか遠いまなざしで宙をみつめていた。 視線を向けると、なにやらクリクリした大きな目を鋭く細め、怨念でも吐き出すようにブツブツとなにか呟いていた。 さっきの寒気はコレかと冷や汗が流れた。 これは寒気とかそういうレベルを超えた――覇気にも近い殺気だった。 「ずるいずるいずるいずるい…昼寝邪魔されないなんて…ずるいずるいずるい……」 暗闇のような片目が、なにか遠い過去でも思い返しているのか、だれだれが何々をしたという風に正確な名前ごとそいつにまた昼寝を邪魔されただの呟いているところを見ると、 その恨みはよほどのものだろう。 だたそこは可愛そうそうだとは思うが、何も俺の脇でつったたまま呪詛をはかないでほしい。 ぶつぶつぶつぶつ・・・ お前は『ブツブツの実』でも食べたのかよ! 食べると死ぬか愚痴が非常に多くなるという絶対食べたくないNo.1の悪魔のような、悪魔の実。 あの伝説級の実をマジでこいつ食ったんじゃないだろうかと思った。 怨念に取り憑かれた!! そんな気分。 もういいかげんにしなさいよあんた。オレが怖いから!や〜め〜ろ〜。 あまりの怖さに、呼びかけながら軽く突っついてみた。 さわるのもなんとなくイヤだった。 呪われそうで。 でもここで触らないほうが危なくなりそうで仕方なく… 「あ、あれ?」 ふいに我に返ったらしい相手から、一気に殺気が引っ込み、かわりにキョトンとした普通の子供らしい表情が戻ってくるのに安堵する。 あれで、自覚なし。 そのうち本物の覇気まで使えるようになるだろうなと思うのは、オレだけじゃないだろう。 もしかしてそれがわかってるからガープさんも大将方もかまうのだろうか。 「あ、うん。それでおまえさんは」 「…それよりオレの心の愚痴は、どこから漏れてたんでしょうか?」 不思議そうに小首をかしげる仕草が、小動物のようで可愛い。 本当にさっきの豹変振りはなんだったのかと問いたい。 むしろ同じ人物なのか? 先程まで意思の感じられなかった常闇のような暗い瞳には、生来のものだろう輝きが戻っている。 そのせいか片目だけのクリクリした大きな黒い目は、夜の星空を閉じ込めたように黒いのに、暗闇の中にあっても柔らかさを内に秘めているようだった。 もう光が見えるか見えないかほどしか視力がないといわれる左目は、汚くにごるわけではなく、海と光を反射して銀色のようにきらめいている。 下がった視力を補うための黒縁眼鏡は誰が選んだのか、ガリ弁とは程遠いおしゃれなデザイン。たぶんおつるさんだ。 傷跡を隠すために伸ばし始めたらしい髪は肩までぐらいのびてきていて、ガープさんの孫とは思えないほどサラサラだ。 なんとなく女の子じゃないか思いそうになる。 頭にある天使のわっかみたいな艶を無償になでてみたくなって手を伸ばすと、 「うわ〜ん!!ごめんなさい!ごめんなさい!!」 物凄い勢いで土下座された。 殴られるとでも思ったのか。 ゴツンゴツンいってるほど、激しい土下座だった。 あまりのことに呆然としていて、相手の額が微かに赤くなっているのに気付いてハッとした。 このままこの子を放置したら、ガープさんが…くる!! せっかく逃げてきたのに、ココでつかまるわけにはいかない。 あわてて子供の衝撃的な行動を止めると、周囲を見回してガープさんがいないのを確認してホッといきをつく。 離している間子供は、凄く目を輝かせて、嬉しそうにオレを見ていた。 あのプニプニした肌は面白いぐらい柔らかくて、ガープさんとは似てない顔立ちがさらに愛くるしくて。 頭を触ってもいいだろうかと… お邪魔虫を払ったあとわしわしと撫でてみた。 ネコのように目を細める仕草や、くすぐったそうな笑顔は、無邪気そうで凄く可愛かった。 それからもいろいろあって、結局その子供の話を聞くこととなった。 しごとは…まぁいいや。 めんどくさいし。 「オレを強くする訓練という名目の地獄から逃亡してきたところです」 しんみりとした顔で話すのは、ガープさんのお孫さん。 やたらとぬいぐるみみたいでかまいたくなるけど、たぶん男。 訓練?そういえばはじめのうちはそれをやれとかガープさんが言っていた気もするけど。 将校以上にしか言ってなかったような。 なのに毎日奇襲を受けている? 攻撃されたから、自分の命を守るために逃げようとしてもダメで、よけていたわけじゃなく体重が軽すぎて吹っ飛ばされるのか…。 やっぱこども… って、あぁ! 訓練とか紀州ってあれか。 ファンとか、女性陣とか…。 この子には訓練だと思われてたのか。だから攻撃してきてたんだな。罠とか罠とか…。 ふと視線を感じて思い出からもどると、これで本当に目が見えていないのかと思うほどまっすぐにこっちをみていた。 それがあまりにまっすぐすぎて、逆に少し怖いなと思った。 もしかして俺の言葉を待ってる? 「逃げてきたって。まぁ、たしかに凄いよね、君の訓練につきあってるひとたち」 やっぱり子供だなぁ。 大人の言葉一つでガッツポーズまで喜んだり、すぐに落ち込んだり。 それにしても大将に遊んでもらってるという事は、彼らの弟子に当たるのだろうか? そりゃすげー。 だけどそのまま階級でもつけられたら、この子も可愛そうに。 きっとオレのように仕事をおしつけられるんだろうな。 海軍に入ったら一度はお会いしたいナンバー1〜3は普通にこの子供にメロメロ。 あんなステキな大将たちのフルコース。 愛されてるなぁと思っていたら、物凄く顔をしかめられた。 あれ?そう思っていると 「あなたと会うのは初めてですよね。 だからこの際はっきりいいますが、大将やら中将やら、悪魔の実の戦闘実験でもされているような気分でしたよ。 地獄です。地獄。あなたも上の地位にいるのなら部下には容赦してあげたほうがいいですよ」 経験者は語るって…この子が言うとなんでここまでリアルになるんだろう。 この子は、苦労しそー。 「やるならせめて普通の海兵の訓練に参加したいです。 だからといって自分から訓練してくれともしたいとも、オレが言うわけないですけど」 普通の海兵って…。六式もなくすでに大将相手にできる時点でそりゃぁ無理だろうと思った。 それに相手もさすがに手加減しているだろうと思ったら… 血の気が引いた。 「ふつうにもてる力惜しみもなく使ってきますから。とくにボルサリーノさんとかおつるさんとかじいちゃんとかじいちゃんとかじいちゃんとかじいちゃんとかじいちゃんとか」 あんた達おとなげげないよ。お子様に何してくれてんの。 ため息が出そうになった。 それにしても…ガープさんが何人かいた気がする。 随分うらまれてるなぁ〜。 そこで相手がいまだブツブツと文句をいてるのに気付き、 「休み…たいの?それなら人が来ないとっておきの場所教えてあげようか?」 苦労してるからたまには休日とってもいいんじゃねとか思ったし。 ガープさんがいうには、この子供は強くなるために海軍に来たとか…そんな人間が、まさかなと思ってジョークのつもりで言ってみたら。 「ほんとうですか!!」 『休み』という単語に、予想以上のくいつきを見せた。 そのとたんガバッ!と顔を上げて、いままでみたこともないほどキラキラとした期待のまなざしで、ずずいと近寄ってきた。 やめろ〜。 俺にはま、まぶしすぎる〜! 「あ、あぁ」 「さすがクザンさん!!サボリのプロだけはありますね!!約束ですよ!」 プロ…ってそれ。 まぁいいや。 それ以前に、俺の名前…知らなかったんじゃ……。 なんで知ってんの? 「オレも弟とこのあいだ約束事したんですよ!小さくてかわいい奴なんですよコレが。 そういえば…村にはあんあんまり子供っていなかったからオレ友達いないなぁ。 クザンさんだってお友達とかと約束するでしょう?そういうの守るでしょう? オレも約束って大事だと思うんですよ。 だからいつも死んでたまるか!と思うわけです。 だからぜひ!オレがこれ以上死線を彷徨わないように、じいちゃんにあおられてた海兵を何とかしてください! そしてあわよくばお昼寝ポイントも教えていただけると…」 長い…。 途中うっかり眠気に襲われたが、そこはそれ… 寝ているようにはみせなかった!(目を開いたまま寝た) それにしても変な子供だ。 会ったことも名乗ったこともなかったのに、名前を呼ばれ、なんか俺の秘密情報ギリギリまで言い当てた。 『友達』『約束』ね…。 “こどもはオハラを思い出す” そうおもっていたけど、それ以上だ。 無理やり記憶の中から呼び起こされた。 無意識なのか本当に知っているのか、なんか後者のような気がするけど、鋭いところをついてくる。 こんな…こんな5,6歳の子供に。 「お前、ほんと変」 なんとなく無邪気さの向こう側に、俺では想像もしえないような企みがあるような… いやいや、なんというか。物凄く動きたくない。やるきない。のんびりしたい〜みたいな念を感じるが。 どっちが本当なんだろう。 …楽したいから頑張る! この子供の考えはそれですべて納得できそうな気がして、これ以上、深く考えるのを放棄した。 ただでさえ、目の前の相手は今とてつもなくテンションが高い。 これはつっつくとよけいな何かを出そうだ。 やっかいごとは回避しなければ!!俺あぶない! そもそもこの異常なテンションの理由も凄い。 ガープさんに向け聞いてみたい。あんたたち何してきたの?といいたくなるようなものなのだ。 気持ちはわからなくもないその理由――「人がいない場所」の話をしただけで、なぜここまで…。 目から涙までこぼしてるし。 そうして彼の口からはどんだけよ?と思うほど長い愚痴がこぼれた。 その愚痴を聞いていて、なぜオレのことを?と聞こうとしていたことさえ、今頃だな。とかどうでもよくなってしまった。 「じいちゃん達にききましたから」という普通な発言が、決してかえってこなそうだ。 きっとまた愚痴が始まるんだろう。 それは勘弁してほしい。 「…というわけで、後でのろわれたらイヤだなって思って人を蹴り飛ばしました! ……があって、それで必死で逃げてたんです!いたいけなご、じゃなかった6歳児にひどいと思いませんか?」 だからって、何もやってきた海兵を返り討ちにするために、串刺しにせんでも…あぁ、最近はトリモチだったか? 最近科学班が喜んで新しい武器や兵器の開発を始めたのは…間違いなく感化されたか。 あまり考えたくないな。 「その時、オレは逃げ足を早くしようと心に誓いました!!」 “強くなりたい”ならわかるけど。 “足が速くなりたい”っていう決意はどこからくるんだ? 「あしをはやくさせるぞー!!」って、なんか物凄く変なところで燃えてるし…足ねぇ。 とりあえず無事でよかったんじゃない。 ・・・あれ? この話を聞いていると、どうもガープさんの話とも、この子にあこがれていた海兵の話ともちがくないか? 「つまり君はあれか?やる気ないのにどこいっても群れてきていやだと・・・」 「はい!話がやっと通じたのはあなたが初めてです!」 あのガープの血を引いた孫。 船の事故から人を救った小さな英雄。 大将たちと渡り合う力の持ち主…。 そう呼ばれていた子供は、 「好きな事は寝ることと料理と日々ぼけぼけしてることです!!」 と言い切った。 こいつ、いいなと思った瞬間だった。 即大将がついたのもいまなら頷けるきがした。 本人はわかっていないが戦闘能力があるし、彼なら自分達が本気で攻撃してもなんとかしてくれそう。 会話の合間に見える不可解な言葉や、その銀と黒の瞳はすべてかわすんじゃないかという感覚がわきあがる。 ――大丈夫。 すえてを受け入れてくれそうな、そんな暖かさのある子供。 能力者である俺達にさえ普通に『相手をしてくれる』。変――そんな言葉が一番あいそうな子供。 それにどうもかまいたくなるのだ。 はじめのときは面倒だった。 そのあとは、強くなりたいらしいという話を聞いて、ガープの孫だから試験もなくさらっと海軍に入れて、ガープさんを利用して大将やオレたちが呼ばれたのだと思った。 傲慢な子供の願い。 だから会ったら立場とかわかってないくせに命令されそうで、きっと腹が立っただろうし、そのいらだちをどうこうするのも面倒だ。 会うのも話すのも、訓練に付き合うのもめんどうだ。 なら会わなければいい。 そう考えていた。 だけど偶然あった。 実際は予想のどれも違っていた。 ふてぶてしさは微塵もなく、むしろどこにでもいそうな弱そうなこどもは逃げ惑っていた。 あれほど人々の間でもちあげられていた小さな英雄は、ただの子供で…。 それも極度のやるきのない…自分ととことん気が合いそうな子供だった。 「そういう(じじくさい)の、嫌いじゃないよ」 むしろ自分の好みだ。 「じゃぁおしえてくれるんですか!?」 「かわりにおれのことも黙っててね」 「よろこんで!」 ものすごくまぶしくも無邪気な笑顔で笑う相手に、「これからやりかえしてやろうぜ」というふうににやっと笑い返して、二人で手を組んだ。 俺の笑い方がへんだったのか、一瞬こっちを驚いたような表情で見た後―― ニヤリ いたずらをなしとげる子供のそれではなく、共犯者――それも戦ですべてをはあくしていて敵や仲間をすべて自分の手のひらの上で転がしている知将のようなきらめきをのせていて。 あれは大人が見せる笑みだと思った。 ゾクリと悪寒がした。 「うわぁ〜。なんかやばそうなのと仲良くなっちゃったきがするなぁ」 昼寝場所に、わなとかしかけられないといいなぁ〜。 「大将連中とあのこは敵にしたくないな。うん、気をつけよう」 でも嫌いじゃないんだよね〜。 彼の存在は『彼だから』その言葉ですべて終わってしまう。 不思議な魅力ある子供は、将来何処まで伸びて、どこまでだらけるだろうか。 「楽しみだ」 ++++++++++ 俺とガープさんの孫との間で同盟ができた。 その日も盾となるべき戦桃丸がいなかったせいか、リースはひょっこりと俺のもとへと現れた。 こどもながら惚れ惚れするような、舞のような一連の流れ。 それにあの子のファンは頬を染めて、ペンと色紙をもっておいかけている。 ときにはチマチマとした小動物のようで、可愛くコテンと首をかしげられると、癒しを求めて海兵たち(女子率が高い)が子供に群がろうと手を伸ばす。 けれどそれをいち早く察知したあの子供は、罠がはってある方へと誘いこんで彼らを一網打尽にする。 罠から開放された人たちは、「さすがはガープ中将の孫」といってさらに闘志を燃やすことさえ知らず。 黄猿ボルサリーノさんがあのふくよかな子供をよく抱えているのを見る限り、たしかにやわらかそうなほっぺだなとは思う。 さわりたい。なでくりまわしたいともだえる女性陣は、よほどこの海軍という殺伐とした雰囲気にあてられてしまっているようだ。 まぁ、女性陣もいかついのが多いからなぁ、ここは。 なんたってのおつるさんでさえ、あの子供を可愛がっているようで、よくお菓子を上げているのを目撃する。 あれってさ、間違いなく餌付けだよね? ねぇ? 「ほどほどにな」 「でもあっちからくるんですよ。殺気ふりまいて」 「ありゃぁ、殺気とはちがうだろ」 「え?違うんです?」 「……」 気配に敏感だとは聞いていたが、敏感すぎだろう、おい。 まぁ、あれだけギラギラしてたら…殺気といってもいいか。 それにしても数少ない女性陣を手玉に取るとは…やるな。 うらやましい。 ++++++++++ 最近は避ける必要がないとわかってからは、同盟の相手リースとは仲がよい。 偶然にもリースがいても俺がどこかに逃げる必要がないので楽だ。 そこにいたから「よぉ」と手を振れば、同士であるリースは嬉しそうに笑ってついてきた。 あぁ。女子が言っていたのもわかるきがする。 これはかわいいな。 でっかい犬みたいだ。 むかしのガープさんと同じ色のかみをわしゃわしゃとなでると、思っていた以上にやわらかくてやめられなくなる。 髪の色以外は何も似ていないようで、髪質は母親似なのだろうか?のばしはじめたそれはサラサラで、体格も性格もとことんあの人とは間逆。 子供だからさわりここちがいいだけですよ。と言われたが、コレはなくすのは惜しいなと思ってしまう。 子供の中でも更に小さそうな体。 この様子からみても本人の言うとおり、あまりガープさんのような筋肉質にはならなそうだ。 性格もあそこまで豪快ではなく、むしろ地味を好む見事な庶民派だ。 よくこんな生き物がガープさんから生まれるなと思ってしまう。 似てないなぁ〜。 わしわしわしとなでていたら、突如背後から殺気が… 「わしがあんなことすると殴るのに!!」 なぜじゃぁ!とガープさんの絶叫が響いた。 「だってじいちゃんの手、痛いんですよ。むしろつぶれる。圧死するから。 これ以上つぶれて将来身長が伸びなかったらどうしてくれるんです?豆って呼ばれたら…オレ、生きていけません」 な〜んて呟きがボソリと腕の下で聞こえた。 どんだけ力強いんだよあの人…と、改めて思った。 まぁ、そんなわけで。我が【だる〜ん同盟】同士は、すかっかり俺になついちまった。 そりゃぁ同士だし。 おかげで俺はガープさんに始終にらまれる羽目に…。 いやね。わからなくもないよ。 けどリースが、『いろいろだるいよ。だらけるの最高!大好き』好きなのって、昔からでしょう? 俺のせいで彼がやる気なくしたなんて、絶対ないと思う。 気付いてやんなんさいよ、最初からだよガープさん。 「クザン!お前、わしの孫に何をしたぁっ!!」 ワシを避けている!なのにこうしてお前になついている!!なにもしてないくせに! お前のせいだ! と、腕の中にいるリースをみて、俺に嫉妬しているガープさんが怒鳴り込んできたが。 「そんなのしりませんよ」 「いいもん!わしなんかちょーくだけた口調で話しかけてくれるもん」 「もんとかやめてください。キモチワルイですよガープさん」 そういえばリースはキレルと口が悪くなるとか。 それってつまり… 親しい話し方ではなくて――。 どんだけリースをキレさせてるんですかあんた・・・。 お前も大変だな。 つい自分の背後でフシューとけを逆立て散るリースに視線を向けてしまった。 だんだんとガープさんの嫉妬攻撃と、リースにじゃれ付かれるのに慣れてきた頃。 唯一の理解者だからか、側にくっついて無邪気なお子様は、借りてきたネコのように大人しい。 わしわしわしわし… 頭をなぜるとやっぱり嬉しそうで、さらに猫みたいに目を細めて笑う。 まるっこくて、無邪気で…。 ふと、思った。 この子はいった誰に似ているのだろうかと? だって―― 「これは間違いなく将来は美人になるだろ」 なぁ、そうおもわね? 誰に問うわけでもなくなんと呟いただけのそれに、 「おまえにはやらん!!」 殺気混じりの返答がきた。 ってか、どうしてこういうタイミングであなたがいるかね? 「いつからいたのガープさん」 「今じゃ!!」 うわ。タイミングよすぎ… とりあえずリースには飴をやって、この場から遠ざけておいた。 【後日談】 最近の日課であるクザンのもとへリースが遊びに行くと、さっそく子供相手にしてくれるような態度にリースは喜んでいた。 そこへ祖父が現れ、グラウンドにいっとけと言われ、外に出ると遠くで爆発音がした。 ピクリとリースの顔が引きつり、それに伴い殺気があふれ出た。 しかし彼は一瞬で殺気を抑えると、センゴクの怒鳴り声と祖父の罵声と氷の凍るような音を無視した。 後で黒焦げになっていた同士のもとに水を届け、身体の冷えたと呟いた祖父には……。 |