
|
08. すべてが違う(上) |
|
side リース ++ たまにはオレだって子供である ++ 事故からどれくらいたったか、どっかの誰かのせいで日付感覚がおかしい。 ずーーっと屋内にいたけど動けるようになったので、外に出始めてしばらく。 いまは髪の毛は黒いです。 そんでもって、すっかり海軍の奴らに毒されているのが悲しい。 とりあえずフーシャ村に帰りたい。 あそこには可愛い弟がナイフを持って奇襲を…じゃなくて、ただただ遊ぼうと「にーちゃん」と無邪気に寄ってくるのは大変な癒しである。 (ルフィがナイフなんか持って襲ってくるわけないから、落ち着こうオレ) さらにフーシャ村というのは、まさにオレの理想郷であり、願わくば骨をここに埋めたいとさえ思うほど平和な良き村だった。 そこでまったりと日々を過ごすなんて―――老後まで見据えたはずのオレのウハウハ人生計画。 じいちゃんによる過酷な愛情表現を抜かせば、それはまさに順調といっていいオレの楽園だった。 でも最近、それがおかしい。 オレの人生計画は狂ってきている。 なにせ太陽があるうちは体力作りという名目でマラソンさせられたり、ナイフもったり、刀もったり、銃について学んだり…あれ? されに気がつけば、右の死角を補うためとか何とかで、誰かしらに突然の奇襲を日々しかけられ、ナイフを常備していないと生きていないような状況だ。 あれ?なんだろう。 なぜか目から鼻水が……うん、本気で泣きたい。 たとえ今が大海賊時代だからといっても、いままでのオレの平穏な日々を壊さなくてもいいではないかと思う。 世の中には一生戦わない人間だっているのだから、自分もその仲間に入れてほしいものだ。 弱くてもいい。 強くなくてもいい。 ただ静かに生きたいだけなのに… 「だというのに、なんでその考え方一つできないのですか?」 「なに言うてるんじゃ。お前が『強くなりたいから鍛えてくれ』って言ったんじゃろ」 「・・・」 言ってねーです。 グランドラインに浮かぶW7(ウォーターセブン)とは異なるとある造船場にて、船が暴走して町を壊すなんて事件に巻き込まれてから約一年がたった―――。 オレの一年はハードだった。 半年間はリハビリ。残り半年はリハビリをかねた修行だ。 怪我の完治とリハビリに半年以上を費やし、なんとか身体機能は回復した。 髪の毛が一時期白くなったりしたけど、『いまは』何事もなかったように黒くなった。 しかし包帯が取れた後もオレの視界は狭いまま。寝込んでいる間に見た夢の通り、結局オレの右目はもう何も映すことがなくなった。 えぐれたわけではなく、白く濁ってしまってるだけ。 左目は船の破片が入ったとか何とかで、少し視力が下がったため、一年前にはしていなかった眼鏡をいまではしている。 右目はいかれ、顔や腕……は、みるも無残的な傷。 運良く目以外に障害や後遺症と呼べるものはなく、手足は普通に動くようにまでは回復したが、なんかついてないねオレ。 別にさ、ヒーローになりたかったわけでもないけど。 目があって、ここで死なれると後味が悪いので、それが嫌だっただけだし、とっさのことだからあんまり考えている余裕もなく体が動いちゃっただけ。 生きてるだけましだとは言われたけど。 なんか目玉を船に持っていかれた気がするのが釈然としない。 損した気分なんだけど。 もっというと…だってこのケガって、オレが活躍した証じゃん!? どう考えてもイヤだろ〜それ。 助けた人には感謝されちゃうし、周囲からはなんか尊敬の目で見られるし。 だから!あれはオレの力ではなく、火事場のバカ力という奇跡ですから! そこ!あがめないでください!! そんなわけで。以前より目立ってます。 顔の傷でも目立つし、事件のこととかでも目立つ…。 オレ…オレさ、本当にただ地味に暮らしたいだけなんだから。 そんなに見つめないでほしい。 むしろ忘れてください。 そこらへんの石だと思ってくれるとオレは幸せになれるんです!! あぁ、むじょー。とはこのことだろう。 実は一つ驚いていることがある。 傷のこと。 身体のあちこちを傷つけた怪我の痕。服で見えない部分はどうでもいいけど、常に人目にさらされる顔の方を見てもわかるが、かなり痕が薄くなっている。 普通の人なら無理だろうというぐらいには薄いし、治りも早い。 やはり若さゆえか。それとも信じたくはないが…最強遺伝子のなせる頑丈さゆえか。 前者がいいな。まだまっとうな人間的理由だから。 それでもその異常な回復力もさすがにメインのケガには効果を見せなかった。 顔の一部と服の下、体の右側を中心に火傷のような傷痕は広がっていて、さすがにそれは生涯消えないだろうと医者に言われた。 そこまではいいんだけどね。 問題はこの後だ。 医者には怪我をした経緯を伝えたところ、ため息を疲れた。 「さすがはあのガープの孫」 なんだそりゃ? 医者が言うには、普通はやっぱり致死量に与えする怪我だったそうで、一年足らずでピンピンしてるのも信じがたいそうだ。 それに加えて怪我の治りが早くて、怪我の痕も消えかかっているのもすべてじいちゃんそっくりだとか。 いやだ〜、なんだその遺伝子。 なくていいのに。 とりあえず愚痴っていたら、ため息をついてあきれられ 無茶のしすぎだと… 静かに言われた。 「無茶…したつもりはなかったんですがね〜」 あのときは本気で面倒だった。 でも見てしまって、目が合ってしまったのだからしかたない。 あのまま彼らが死んで、たたられたらどうしてくれるんだ!怖いじゃないか!! それにこんな傷、気にしてないよ。 自分としては傷痕など本当に気にもしていなかったし、逆に怪我を理由にこれでやっと静かに暮らせるとさえ思っていた。 ウキウキして完全復帰を待っていたのに…。 そうは問屋がおろさなかった。 半年後―――怪我も治り、復帰という意味でしっかりと動けるようになると、じいちゃんが動き出した。 もともとじいちゃんはオレを強くするために海軍につれてきたため、リハビリも終盤になるとオレに身体を鍛えるよう言ってきた。 右目が見えないのだから、見ることよりも気配で物を察知するよう注文つけられ、あるときは目隠しをして戦わされたりした。 今の俺じゃぁ、あってもなくてもあんまり変わらないんだけど。 修行をなんとか耐え抜いたというより、徐々に徐々に段階を上げているので、修行についていけてしまうオレが嫌だ。 修行――はじめのうちはまだよかった。 たとえ海軍式の鍛え方だといっても相手は実の祖父。 言葉でしっかりアドバイスしながら、オレへの労わりを交えた修行だったから。 でも日がたつつれ、それも最悪な方向へ向かった。 ぐうたらと日々を満喫したいオレには想像するだけで悲鳴ものだが、人によっては羨望と憧れの修行方法。 それはじいちゃんが集めてきたお偉方(=強い奴ら全般)の目の前で起こった。 「わしの孫のリースじゃ。強くなりたいらしくてわざわざ海軍に入りたいと言ってきたから連れてきたんじゃ。 お前たちどうせ暇じゃろ。空いてる時間にでもリースにつきあってくれんか?」 え?なにその真実が一つもない話。 ってか、どんだけ勝手に設定作ってるんだよ。 あんたの頭の中をまず解体してオレに中身をすべて見せてみろ!と一瞬殺意が沸いた。 本当にできるならそうしたい。 あのひとの脳みその中のオレがどんな奴に変換されているか見てみたいものだ。 しかも最悪なことに、何をどう勘違いしたのかわからないがオレが自分で強くなることを望んでいると信じ込んでいるじいちゃんは、中将連中目の前にありもしない尾びれをたんまりとつけてくれて。 あぁ、オレ、死んだな。 よかれと思ってやったのだろうが、じいちゃんや。 それはオレへの死刑宣告と同じだ――。 そのときオレは、どうしたらいいかなんて考える気力もなかった。 ただ一言言いたい。言えるのならばだ。 すっかり海軍本部に居ついているけど、オレ、リハビリ中でしかもただの子供です。 年齢なんか、永遠の幼稚園児クレヨンし●ちゃんと同じ5歳ですよ。 もう一度言いますが。 オレ、ただの子供です。 それも右側見えないようなハンデ負ったあげく日々だらけることにだけ努力し、まったくもって海軍になんか役に立たなそうな奴ですよ!! ましてや海賊相手には兵力にもなりませんから! なので海軍に推薦しないでください。たとえ海軍本部をうろついていても! もう、修行もいらないですから!! なのに、ひっぱりだされた先には、どっかのマフィアな帽子が似合いそうなボルサリーノさんと、濃い顔が素敵なサカズキさん、ヤギさんが相変わらずそばにいらっしゃるセンゴクさんまでいらっしゃいますよ。 熊耳帽子のお方とかどっからつれてきたの? ついでに微妙に見覚えのある中将とか大佐とか以下略…将来どこぞの大佐になるだろう方もいますよ。 って、おつるさん。あなたまで!? 貴方がいるなら、なぜか将来の大佐とかもいるのは納得できる…気がする。あくまで『気がする』だけだけどね!なんたってオレの勘はあたらないんだからさ。 他にもけっこう原作で重要な大御所達がっ・・・ズラリ!? あぁ、みなさんはじめまして。 そしてさようなら〜。 と、言えたらいいのに…。 無理だよね、うん。 それより、壁とお話してもいいでしょうか? 海軍本部といっても医療区域を出たことがなかったオレは彼らとは面識がない。 オレが彼らを知っているのは、原作でみていたから。 ここで知っていることがばれないようにしなければいけない…っが、そんなことよりもあまりに微妙でいて凄すぎる面子に、言葉も出ずびっくりしたままもう動けません。 青キジことクザンさんがいないのはきっと面倒といという理由で逃げたのだろう。 なんてうらやましい。 それはいいとして… なんでだよ!なんでいるんだよあんたら!! みんな、そんな孫を見るようなやさしい顔してもだめですよ。 オレのウハウハでまったり人生を奪いに来たのはわかっているんで…… じいちゃんは嫌な予感しかしないオレの肩を叩き、集まったお偉方(あと暇人も含む)に向け、ついにこの凄い展開の理由を話し始めた。 あ、オレ、なんか聞きたくないなぁ。 もちろんじいちゃんにオレの心の訴えが聞こえるはずもない。 「暇な時に鍛えてやってくれ」 ハイ。ありえないです〜。 ++++++++++ そんなわけでリハビリ終了から約半年、ことあるごとに変態に迫られています。 相手はどこかの戦闘民族か!?とツッコミたくなるほどの戦闘狂な方々だから、たぶん憂さ晴らしですよ間違いなく! 「鍛えてやって」というあのじいちゃんの発言が、なぜか…というかたぶん故意的に、いろんなところに広がってしまい、海軍本部だというのにも関わらず悪いことをした要人のように暗殺者よろしく日々殺気立った変な人に命を狙われるようになりました。 おかげで足は速くなりましたよ。 まぁ、まだまだ―――たぶんずっと無理だ。何せ、オレは一般人だから―――『剃』とか『月歩』なんて六式は使えないけどさ。 とりあえずは鍛えてはいるけど、六式の修行をしている日まもなく、体力と剣捌きだけ上達しているこの頃。 あくまで『さばき』であって、剣術としてはさっぱりです。 迫ってきたものをさばくことはできてもね、それに応対する力はまったくないです。 だって、オレ、五歳。 でも訓練の効果は少なからずあったのだろう。 最近では五感が異常に発達し、ほとんど目で見ずに物を認識できるようになった。 右目負傷したからって、なんでみんな死角ばかり狙ってくるのか……おかげで五歳児にして、ちょっとオレは人の道をそれた気がする。 オレはただの人でいたい! でもね。そろそろオレも限界なわけで・・・。 なに、このむさい空間。女子率が低すぎだぁ!! そんなわけであの事故から一年、完全復活を遂げたオレはついにこの海軍本部という砦から逃亡をはかることに決めた。 オレはフーシャ村に帰るんだぁー!!! さぁ、いざ敵陣へなぐりこみだ! 「帰りたい!!」 「いいぞ」 死を覚悟していたものの、実際のところあっさり許可が下りた。 なんたってオレ5歳ですし、「じいちゃ〜ん!!もう限界だっ!!エースやルフィに会いたいよぉ〜!マキノさんのおいしいご飯が食べたいですぅ〜」そろそろホームシックだったもので泣きながら訴えました。 嘘泣き?いやいや、本気マジ泣きでした。 たぶん鼻水でてたかも。それぐらい本気で泣いてました。 だって本当に帰りたいんだから仕方ないだろう!! じいちゃんもちょうど休暇をもぎ取っていたらしく、フーシャ村への許可はなぜかみんなに微笑ましいぐらいの優しい笑顔で持って許可していただいた。 安息の地(使い方間違ってる?オレの中ではあっているので問題ない)に帰りたくて帰りたくてしょうがなかったこと。ついでにこの地獄の空間から出れること、命の危険を回避したこと。そしてなにより帰れる嬉しさで涙と鼻水が止まらず、ずっとウォンウォン泣いていた。 「うわ〜ん!!もうおうち帰るぅ〜!!」 え?中身20歳すぎのおっさんがなにをしてるかって? だって、あの黄猿ボルサリーノとか、おつるさんさんとか、じいちゃんとか…!!!あんな奴らが毎日に奇襲かけてくるんだよ!とくにボルサリーノさん!!なんで?なんであの人はやたらとオレをかまうの!? 死ぬから! もうやだ。命が危ない。とくにオレの! この世界がどれだけ命のやり取りがすぐ側なのかは知っていたけど、なにもオレでそれを実践しないでほしい。 いや、おつるさんはね。戦った後、お菓子をくれるんだよ。 でも…怖いんだよこの人たち!!容赦ないし! しかも他の海軍の皆さんも八つ当たりと可否待つ無事に奇襲を…。 そりゃぁ、家にも帰りたくなるというもの。 そのまま帰郷準備をするため、オレはじいちゃんに米俵のように担がれ運ばれた。 その間「おうち帰えるぅ」と連呼していたら、道行く人が「ホームシックかぁ〜あいつもちゃんと子供だったんだなぁ」というような、なんともいえない生暖かい目で見送られた。 何度もいうけどオレ5歳よ!!精神年齢は別としてもさ! なのに家族と無理やり引き離された挙句、1年もあえないんだよ!?そりゃぁ泣くべ。 …まぁ、本当の理由は違うけどさ。 オレ、そろそろ自分の命の危機感を感じたのが最もな理由でして。 帰れることが決まるとさっそくエースとルフィにと、海軍本部名物の『正義』印入り焼きせんべいを土産に、オレは途中まで乗せてくれるらしい海軍船に乗り込んですっかり浮かれていた。 「おうちまだですかぁ〜」 これでやっと帰れると。 これでオレは命を取り留めた!! でも、うっかり忘れていたんだ。 ここがどこか。 海軍本部がどこにあるか考えてみてほしい。 たとえカームベルトを通過したとしても、フーシャ村のあるドーン島まで何日もかかる場所であることを…。 オレは出航してから数日後、このまますぐに弟たちに会えないことに気付くまで、「フーシャ村はまだかな?」と子供のように船の上ではしゃいでいた。 実際外見がお子様なため、船の船員や海兵の皆さんには年相応に見えたのだろう。 たくさん飴や優しい言葉をもらい、なぜか必要以上にみなさん人の頭をなでたり手をつないだり…スキンシップが激しかった。 もちろん一番激しいのは案の定じいちゃんで、あのヒゲによる頬ずりは相変わらず痛かった。 っで、ここでもあの人、またやってくれたわけですよ。 「わしが鍛えてるからな。こいつは強いぞ。なんたってリースはワシの孫じゃからな!」 ぶっはっはっはっは!! って、そこ!笑っている場合じゃねー!あんた、なにけしかけてんだよ!! 船の上で暇なことも合わさり、闘争心をかきたてられた一部の海兵さんにより、結局船の上でも相変わらず奇襲を受ける羽目になった。 訓練?なにそれです。 あれは訓練とは言わず、襲撃や暗殺。相手の憂さ晴らしといっていいものだ。 だって大概、予告もなくしかけてくるんだから、間違いなく「手にとって教えますよ」的な修行じゃない。 この変態どもめが!! あぁ、本当に長い。 長い1ヶ月(と少し)の航海だった。 ちなみにフーシャ村までの順調な航海(でも一ヶ月もかかる)で、なかなか目的地に着かないのを知った瞬間オレは絶望したさ。 しばらく割り当てられた部屋の隅で壁とお友達になっていたのはしかたがないだろう。 【追伸】 オレ、船倉で見知らぬお子様とお友達になりました。 エースと同じくらいの女の子。 あれ?そういえば、あの子どうやってこの船に乗ったんだろう?ここ海軍の船なのに。 まぁ、いいか。 「ねぇ、じいちゃん。あの船、オレ以外にも子供がいたんですね。 オレ名前聞くの忘れちゃって、後であそこの海兵さんに聞いといてもらえますか?」 上陸後、手を振って見送ってくれたあのこのことを思い出した。 話を聞いてくれたお礼を言いたいのだというと、じいちゃんが真っ青な顔をしてオレを近くの病院へと担ぎ込んだ。 ハ?なにこの扱い? 「あそこに子供はお前だけだ!!」 「……」 えーっと…どういうこと? 密航者とかではなくて? あ、首をふられた。「ありえない」だってさ。 それじゃぁ――・・・・・あの子は・・・ 「……」 「…え?まじですか?」 コクリ 「……」 「…うそはいけませんよ嘘は。ふぅ〜うっかり騙されるところでした」 「そうきたかっ!?」 「あぁ、ほらやっぱり嘘なんですよ。あせらせないで下さい」 「……いやいや、まじじゃし」 「……ほんとにほんとですか?」 「わしは嘘はいわん」 「…」 「……」 「……」 「…ぎ」 「ぎ?」 「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」 お友達怖い。お友達怖い。おともだちこわい。おともだちこわいおともだちこわいおともだちこわいおともだちこわいおともだちこわいおともだちこわいおともだ…… 暗転。 |