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05. その覚悟は君が思うようなものではないけれど(上) |
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side リース じいちゃんの子育てに危機感を覚え始めていた俺は、原作を必死に思い出して肉体強化の術として『六式』を覚えようとしていた。 ここはあくまでワンピースの世界だから、他の漫画やアニメの術や魔法が使えるわけでもないし、自分は神様に愛されてオマケをもらえた人間でもないので、ここで自分を強化するには鍛えるか、悪魔の実を食べるぐらいしかできない。 悪魔の実は運がなければダメだ。 第一他の漫画のキャラの鍛え方って、ドラゴンボールの手足に重りをつけて界王星を走り回るぐらいしか覚えてない。 だから体を鍛えようと考えたのだが、鍛えるなんて面倒くさくてしょうがない。 重りってのはいい考えかもしれないけど、もっと手っ取り早く段階を踏める方法が好ましい。 度胸以外は鍛えていないこの5歳の子供の身体では、重りは負荷がかかりすぎる気がする。自分がやると逆に体を壊しそうだ。へたすると一部だけマッチョになってしまいそうでイヤだ。 もともと海賊にも海軍になる気もことさらないので、このまま鍛えるのさえやめようかとも思う。 けれどここは平和な日本ではない。じいちゃんもいるし…自分の身を守るためにはどうしても必要な気がするから、体を鍛えるにしてもこの世界のルールにのっとった方法で強くなる方法はないかと考えた。 そうしてたどり着いたのが『六式』だった。 ルフィとCP9の戦いやヘルメッポとコビーが使っていたのも漫画で見ているので、『六式』を使うことによりどんな現象が起こるのかは理解している。 しかしいざ一人で特訓しようにも完成した『六式』の図しかわからず、どうやってやればそれを身につけられるのかはさっぱりわからなかった。 だからといって、じいちゃんに直接「六式を教えて」とは言えるはずもない。 一番の理由としては、敵に自分の手の内を見せるのがイヤなこと。 二番目は、『六式』は海軍独自の特殊技であること。 ましてや海兵でもない自分がその稀な情報をさわり程度であれ知っているとなると、『六式』使いと戦うか、その戦闘シーンを少なからず一度は目にしていないとおかしい。 しかし自分は本当にただの子供だ。 悪魔の実も食べていないし、面倒ごとは嫌いで海軍も海賊もかかわりたくないと日々ぼやいては、家でのんびりとしている。そんなオレが『六式』を知っているのは常識的に考えておかしい。 そのせいでじいちゃんに変に勘ぐられるのも面倒だ。 しばらくは鍛えるのはなしか?どうしたものかと思っていると、ちょうどいいタイミングでじいちゃんから連絡があった。 「じいちゃんが電話なんて珍しい。どうかしまたか?」 『リース、お前船見たくないか?』 「……」 相変わらず突拍子もない人だ。 『おーいリース?』 「…おかけになった電話番号は現在使われておりません」 『ちょっ!!さっき「じいちゃんが電話なんて」ってでたじゃないか!!』 「この番号は現在使われておりません。もう一度番号をお確かめの上おかえなおしください」 ガチャ。 でんでん虫を切ってやりました。 じいちゃんに関する突発的な事柄でいいことがあったためしがないのだ。 エースなんかじいちゃんから電話と聞いた瞬間に、悲鳴を上げて家の外へと逃げ出している。 うむ。すさまじしモンキー・D・ガープの愛情表現。エースをあそこまで狂わすとは…。 とりあえずあの逃げっぷりを見て、じいちゃんに挑むぐらいの度胸をつけさせようとひそかに思った。 『そこからだと二ヶ月以上はかかる。ちょうどイーストブルーのそばを通るらしくてな』 オレが受話器を置いてからすぐに、案の定じいちゃんから電話がかかってきた。 しかたなく用件ぐらいは聞こうと、受話器をとって次は無言でいると、じいちゃんが慌てたようにいろいろと話してきた。 とにかく切られてたまるものかというじいちゃんの意地が微かに見えた気がした。 じいちゃんの話を要約すると、見聞を広げるため海軍の軍艦を見に造船場へいかないかということだった。 実際はじいちゃんがまた船を壊したので――これで何度目になるのかわからない――以前より頑丈な船を新しく注文しているらしく、今回はその様子を見に造船場に行く予定なのだとか。 その造船場は海軍本部から近いというから、きっとグランドラインのどこかだろう。 今回じいちゃんはいつものように海軍を抜け出すことはできないらしく、近場ということもあり直に現場に行くそうだ。 興味があるのなら、迎えをやったそれに乗って向こうに来いということだ。 来いとはいうが、どこか頼み込むようなそれに首をかしげる。 ひとりはさびしいのだろうか? 「オレなんかが海軍の船を見てもいいのですか?」 もしかすると海賊になるかもしれない子供に、そんな海軍の秘密をさらっと見せていいのだろうか? しかしじいちゃんはオレの危惧など気にもせずガハハハと笑った。 でんでん虫がじいちゃんを真似て笑ったが、これはこれで不気味で一瞬あがりかけた悲鳴を慌てて飲み込んで、顔だけをしかめるにとどめておく。 『なぁにリースだから問題なかろう!! それに自分は危なくないという人間ほど疑わしい奴はおらんが、お前は違うじゃろう!』 ドドン!!と効果音がつきそうなほど大きな声で、ぶわっはっはっはっはと笑う相手はそういって「なにせわしの孫じゃからのう!!」と何を根拠にか、物の見事に言い切った。 もともとこの世界の船には興味があった。 世界のほとんどを海がしめるこの世界では、たぶん元の世界よりもはるかに頑丈な船が作られ造船技術も進んでいるはずだ。 グランドラインをメインに航海する海軍本部の船は、グランドラインの狂った磁場や海王類を考慮して特殊な肯定が取られているだろう。 なにせ海軍船は海楼石を舟のそこに敷き詰めることで、カームベルトを突破するぐらいだ。 不思議があふれるこの世界は本当に興味深いことであふれているようだ。 それに船について学ぶのは、本や知識だけでは足りない。 『どうじゃ?くるか?』 「行ってもいいなら行きたいです。でもそこまで行くにはどうしたらいいんです?」 『そうかそうかきてくれるか、うんうん』 「?」 なんか嬉しそうに鼻をすする『豪快な』音が聞こえたのはこの際無視しよう。 結局、じいちゃんが言う迎えというのは、偶然イーストブルーから本部へ向かう海軍船が通るのでそれに乗れというものだった。 しかしそこからまた進路が変わるため何度か船を乗り継がなければいけない。 オレは距離と日数、はじめにのせてくれるだろう海軍船がどこをいつ頃通るかきちんとじいちゃんに聞き出し、受話器を置くと早速荷支度して、エースとルフィ、村長たちに船を見てくると留守を頼みフーシャ村を出た。 海軍船とはすでにじいちゃんが連絡していたらしく、すんなり乗せてもらえた。 そこまでいくのが大変で、商船をつかまえて、二度ほど船を乗り換えた。 海軍の人たちは気さくで、あのガープの孫と聞くとなんだか尊敬とか崇拝とかいろいろ混ざった視線で「がんばれよ」といわれた。 少し同情の眼差しが何人か分あったのはどうしてくれよう。 そうしてイーストブルーを越え、カームベルトを通過してやっとグランドラインに入り予定のうちの2週間がすぎた。 航海は順調で、運がいいのか海賊には会わなかった。 かわりにオレは、乗せてくれたお礼として彼らの手伝いを申し出たのだが、はじめはあのガープの孫に…とかよくわからないようで納得できる理由で、かなり遠慮された態度をとられていたのだがすぐに仲良くなれた。 船のみんなはいい人で、船の操り方を手伝いながら教わり、船長からは地図やログポースについて教わった。 「ありがとうございました」 「おう!気をつけていけよー!」 進路が変わるところで海軍が連絡を取ってくれた商船に乗り換える。 そこで船の人たちが手を振ってくれるのに、嬉しくなって手を振り替えしておく。 航海術というのも船によって変わるようで、これはこれで面白そうなので商船に移った後もいろいろ手伝いながら聞いて回った。 造船島に到着したのは、フーシャ村を出てちょうど二ヶ月と十日目のことだった。 商船や海軍船を何度乗り換えたかは、両手の指で数え切れなくなった。 造船所につくまでにはさすがに海賊とも出会った。 海賊には何度か遭遇したが、乗ってた船の能力者さんや海兵たちが一網打尽にしてました。 オレは傍観です。 たいがいは船室に逃げてましたが。 オレは傍観で…いたいところを、くるときは敵というのはくるものです。 そして巻き込まれるんですよ。 たまにオレが看板にいるとき突然攻撃がきて…ええ、攻撃がきたらよけますよ。もとい逃げます。 死にそうになったとき、じいちゃんへの恐怖を思い出して、こんなものたいしたことはないと自分に暗示をかけて逃げたとも!! ジャングルで鍛えられた目と足で、銃弾とか剣とかよけましたよ。 やればできるもんですね。でもオレだからわかるけど、これを普通死ぬ気のバカ力といいます。 むしろ死にそうでした!! だってよけたといっても怖くなってしゃがみこんだら運良く銃弾が頭の上を通過したとか、逃げようと勢いこんだらそのせいで逆に派手にこけてゴロゴロと床を転がればその後をなぜか剣の刃がザクザクザクッ!と追ってきたり!?脇すれすれで怖かったです!! さらには前後を海賊に阻まれたときもあって、どうしようかと思っていたら側で誰かが船から落ちた音が聞こえついそっちに興味が注がれて足をそちらへ向けたところで、今度は背後で悲鳴が聞こえて振り返るとなぜか自分をはさんでいた二人の海賊が自分たちの剣を刺し合って抱き合っていたり……ありえません!!!!! 船室へ逃げこもうとして勢いよく扉を開けたら背後にいた海賊の頭部にクリティカルヒットしたとか、走って逃げ回っていたら小さい身長のせいで誰かの急所に当たってしまったとか!!いやだ〜!!! どれもこれもイヤな思い出だけど、船の仲間は「さすがはガープの孫」とか言って、オレの危機というときにばかり周囲が盛り上がる。 なぜか中にはオレを見直したと言い、喝采までしてくれたり。 ってか人が死にそうになっているところを見て士気があがるってどれだけ変態よと思う。 オレ、ただ逃げてただけだのに? なぜに? とにもかくにも、いろんな海軍船に乗ったせいで、若干5歳にして、海兵のお友達がいっぱいできました。 っと、いうか…。”ガープの孫”として顔が知れ渡ってしまった気がする。 いやだな〜それ。 ++++++++++ 珍しくじいちゃんがオレ一人だけを呼び寄せ、連れてきてくれたのは造船場。 フーシャ村から二ヶ月以上もの道のりの先にある、グランドラインのどこかです。 「おう、やっときたなリース」 「ど」 「?」 「ど、どおがっだぁれすぅ〜…」 ついた早々ぐったりしたオレに、船着場で待っていたじいちゃんが米俵を担ぐように気力もすべてうせたオレを担いだ。 オレは担がれつつ乗せてくれた船に手を振ると、なされるがままでじいちゃんの肩でゆれていた。 その造船場はウォーターセブンとはまた別の場所のようで、よく海軍を相手にしているらしくいたるところに海軍のカモメマークがうろついていた。 通りすぎる人々がじいちゃんをみて挨拶をしたり、敬礼をしたりしている。 あぁ、本当にいやだ。 なんでこの人、こんなに目立つんだろ。 しかたないか。なにせロジャーとやりあった「英雄」だし。 でもこんなのが祖父だと、オレのささやかな人生計画がどんどんとち狂っていくのがわかる。 オレ…。 物凄く目立ってねぇ!? |