地味にひそかに穏やかに・改
〜 O NE PIECE 夢 〜



01. ある日終わった人生と誕生





<side リース>





 ソンナバカナト ナンドオモッタコトカ―――





 いつもと同じように空を見上げていた。
地球の大都会の空は排気ガスとかで曇りまくっているのだという話をよく耳にする。
田舎に行くと澄んだ空気がひろがり、青い空が見える。
そういえば、自分も昔、祖母の住む田舎にいったとき、青い空を見たナとかのんびり考えていた。

 開け放たれた部屋の窓からは、すがすがしい風が吹いている。
ここから見える空は青いけど、それでもここの空は灰色らしい。

「ってか、あれ何?昼間に流れ星?」

 空を見上げているのがいつの間にか癖になっていたから、空の異変にはすぐに気付いた。
太陽も昇っている青い空には白い月さえ見えない。
だというのに、キラリと空に光る点がひとつ。
しばらく見ていたら、その正体が明らかになっていく。
それはつまりヒカリが動いているということで…

「はぁ!?なんだよあれ!?」

思わず手にしていた雑誌が、オレの手から落ちた。

窓の外にあったのは、銀色に光り輝く球体金属
通称円盤と呼ばれるものだったわけで。

それにはさすがに驚いた。
本気で驚いた。

だって予想外すぎだろ円盤なんて。
はじめのうちなど、言葉が出なくて呆然と口をあけたまま閉じられなくなったほどだ。

普通は驚くよね?
たぶん飛行機が民家に向かって近づいてくるだけでも普通の人なら驚くと思うけど、それが円盤だといわれたら余計にびっくりするというもの。

そう。
向かって来るんだ。

 あまりのことに頭が働かなくて、ただただ呆然とそれを見ていることしかできなかったオレは悪くないと思う。

 銀色のキラキラ。
キュインキュインと、いかにもテレビで出てきそうな音を立てて、それがまっすぐこちらへ向かってきて……



一瞬後 ――― オレの視界は白一色に染まった。



 最後の瞬間、すべてが白で埋め尽くされる寸前に、偶然視界に入ったのは週間で発売されている少年マンガ雑誌の一シーンだった。
風にあおられめくれたページは、青い海を舞台にした海賊たちの物語――


ONE PIECE - ワンピース -


 意識が途切れる寸前。
オレが思ったことはただひとつ。

「まだ今週の読んでなかったのに…」

そして世界は巨大な銀のなにかと白で終わる。










 終わったと思った。
なにせオレの記憶のままでいうなら、円盤の軌道は間違いなくオレの部屋を直撃しただろう。
なのに意識が続いている。
しかもこれはどうしたものか。
目の前にはひげ。

そしてオレは――


目を開けたら小さな赤ん坊になっていた。



 え? なにこれ?
もしかしてあのままオレは死んだのか?


それより――


「あぶぅ〜(なんだこのヒゲ親父は!!!)」

目を開けたら、そこにはおっさん。
びびるから!ふつう、びびるからぁ!!!

ちょ、近い!
近すぎるよ!!
ぎゃー!!さっきより近くなった!

ヒゲのおっさんの顔が〜〜〜〜〜!!!


 あまりの近さと、顔の濃さに、オレが赤ん坊だということよりも強烈だったため驚いたのだが、 いかんせん赤ん坊の身体は自由に動かすことができず、オレはさらにパニックになって大声で泣くこととなった。
赤ん坊だからか、動けない苛立ちも顔が近いという恐怖もすべて泣くことに変換された。
しばらく泣き続けてようやく落ち着いたところで、ようやく周囲を見回すゆとりができた。
 それにしてもそろそろいい加減にしてほしい。
自分が赤ん坊であるからには、一番初めに目にするものは自分を見守る母親でないとおかしいだろう。
なのにヒゲヅラ。
これは生まれたばかりの子供の心臓にはきつい。

 しかもこのヒゲ親父、よくよく見れば、なんかみたことがある顔だ。

 ――なんとなく。
本当になんとなくだけど、某漫画のキャラに似ている気がする。
さっきオレが意識を失う瞬間にみた雑誌の一ページに描かれていた顔をそのまま実写にして、本物の人間にしたらこんな感じだと思わせるような・・・。
たぶんこの目の前の人を漫画風なキャラに描くと"まんま"じゃないかと思える程、雰囲気から何までそっくりだった。

そう、そっくりすぎる。

この顔はどうみてもオレの『大好きなキャラの、そのお祖父様』の“かの海軍中将”にしかみえない。
でもそれだとおかしい。
“かの海軍中将”は現実でいるはずがないのだから。
なぜならば、あれはマンガの―――

「あぶぶぅ〜(あのぉ、あなたは)」
「おおっ!!みたか!こっちをみて笑いおったわいっ!!」

 ヒゲ親父大誤解。
話が通じません。
ってか、今のは誰に言ってんだ?間違いなくオレじゃないよな。

それより
いい加減スリスリやめれ〜!!

マジデいたいからぁ!

 そうツッコミたくなったが、目の前のヒゲへ向けた疑問の答えは予想外のところから意外と早く出た。
それに驚いて、やめろと叫ぶタイミングをのがした。

側でクスリと笑う声がしたのだ。

 やわらかい女性の声だ。
この状況からして、もしかすると自分の母となる人物かもしれないと思って視線をめぐらす。
そこでヒゲの後ろにベッドらしきものがあるのに気付いた。
どうやらそこにいるらしいが、ヒゲ親父が邪魔でまったくみえない。
でも間違いなく、もう一人部屋の中に誰かいるようだ。
なら、やることはひとつ。

「あ、ぶぅ〜。きゃ!きゃぁ〜(た、たのむそこのひと!こいつをとめてくれ!!)」

 訴えかけるが、やはり口から出るのは赤ちゃん言葉だけ。
しかも相手からはくすぐったそうに笑っているように見えるらしく、目の前のヒゲヅラはだれ〜んと眉をたらして、鼻の下まで伸ばしている。
奥からは仲良しねと女性の笑い声。

「う〜んやわらかいのう!!」

オレは痛いです!!

 ガハハと豪快に笑いながら、少し年のいった大男が頬擦りをしてくれる。

ヒィ〜〜〜〜!!!!
ヒゲがジョリジョリと痛かった。
 いい加減にしてほしいんだけど!
 でもやっぱり体は自由に動かせないし、言葉も赤ちゃん言語しか出てこない。
意識はジャンプを読む寸前まで高校2年生だったせいか、赤ん坊の身体は余計に自分の体とは別物の様に勝手が悪い。

なぜか本当に赤ん坊になってしまったらしいと、今になってやっと実感がわいてくる。



 っと、いうわけで。
もうこの際、赤ん坊になった事はなんとか認めよう。
原因は間違いなくあのUFOだろうことは明白だから。





 それはともかく、


ガープさん。
…痛いんですけど!!


 そう、目の前にいるのは、かなり若いけど、どこからどうみてもあの漫画にでてくる主人公の祖父 モンキー・D・ガープそのものだった。
ガープといえば、あれである。

"ワンピース"

 つまりここはオレが今まさに読もうとしていたあの【ONE PIECE】の世界ということで。
そう考えて諦めてしまったほうが、いまのオレには都合がいい。
しかもガープさんの腕に抱かれているという事は、オレは彼の孫か子供にあたる立場にいるに違いない。

ぞくにいう――転生。
あるいは憑依か…。どちらにせよこの状態は勘弁してほしい。

そろそろほっぺが赤くなってるって!ぜったいさ。

 でもなんで【ONE PIECE】なんだろう?
まぁ、他の作品より遥かに嬉しいけど。
もしかして意識が途切れる寸前までジャンプを持ってたから?
それじゃぁ、【ONE PIECE】以外の世界に行く可能性もあったんだろうなぁ。
でも最後の瞬間に強く思っていたことに影響されたんなら、オレが【ONE PIECE】の中にいるのも頷ける。
これで原作の続きがわかるよ。しかもリアルで!……って、ちょっとまて。

それはつまり、オレが主人公?

 だって目の前にはガープ。ガープの腕の中には赤ん坊のオレ。
たしか血の繋がったガープの孫はルフィだけのはず。
ん?それじゃぁ、オレはルフィか?それともエースか?もしかするとドラゴンだったり?
いやいやまて、落ち着け自分。
いくら原作より若いからといってもこの顔はどうみても子供を生むにしては年がいきすぎてる。
それすなわち。

オレ、ルフィ?

 やべぇ、それはやばい。
 オレが介入することで、原作と同じようにはいかず、違う未来を歩み始めるかもしれない。
それじゃぁ、原作の続きを知りたいオレとしてはだめなわけで。
それ以前にあんな死線ばっかりくぐりたくねー!!
平凡日本人高校生なオレには人外魔境の戦いは無理です!
 どうしようと思って、とりあえず逃げ出してみようと思ったが、所詮赤ん坊。
首も定まっていないためか、首を傾げようとして逆に体ごとひっくり返りそうになる。

「ぅあ」
 転がったもののうまくガープの腕の中だけすんだが、どうやらその子供らしい態度に彼のハートに火がついたらしい。

りーぃぃぃすぅぅぅぅぅぅ!!!!
「ぶっ!!!」

 ギャァーという悲鳴はつぶれたぶうぶうクッションのような情けない声にしかならず、頬がいままで以上に頬摺りさせられる。
ヒエー!ご勘弁を!!ひりひりする!!


 ………え?

あれ?そういえば今、変な言葉が聞こえた気がしたけど…


「みろ“リース”。じいちゃんじゃぞー!!」
「にゃっ!?(えぇ!?)」


 ……そうして天井に今にも着きそうなほど物凄く高いタカイタカイをさせられている間、オレは恐怖よりも今の発言に呆然としていた。
ありていにいおう。



 “リース”って…



 だれぇっ!!!








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