|
06. 幸運値数と鬱のハジマリ |
side 『夢主1』どうやら、オレと貞子(仮)の間で超振動が起きたらしい。 ・・・超振動の特性はなんだったか。 「なぁ、超振動ってなんだったか覚えてるか?」 「あなた、そんなこともしらないの?とんだ箱入りね」 「いや、箱入りとか関係ないから。ただのオレの記憶力のなさが原因だって」 そもそも日常ではめったに聞かないからな。 フォミクリーの研究資料を読んだ後はすっかりわすれていたわ。 前世の記憶を思い出してからは研究とか、論文とか、推理とか、そういう単語やらかたっくるしいうんちく論が大嫌いだったから、フォミクリー研究の資料はうざくて記憶から抹殺したほど。 むしろオレって第七譜術師だったんだな。はじめてしったよ。 「私たち第七譜術師どうしだと【超振動】ではなく、第七音素同士の干渉による【擬似超振動】ね。超振動に似てるもので、超振動とは違うけど同じように分解と構築を可能とするわ」 それで移動したのか。 たしかオレはいつものごとく太陽が出てきたので庭先でお昼寝していた。 そこへたまたま(なんで来ていたのかは知らない)地位をさかてに父に毎度会いに来ていた『ヴァンとかいう男』が通りかかって、屋根に上って様子をうかがっていた女が奇襲をかけたと。 某ちっちゃな名探偵の世界でいた怪盗キッドじゃないんだ・・・・・・さすがに空から襲撃者が来るとは屋敷のだれも思ってなかっただろうから、さぞ手薄だっただろう。 登るのが大変だったと言われ、それはさぞ見も物だったに違いないとか思った。 それにしても『ヴァンとかいうの』と打ち合いをしている間に寝ているオレに激突するとは、ずいぶん派手な痴話げんかだったようだ。 『ヴァンとかいうの』を襲った理由というのが、詳しくは言えなくて、私情だからだと言う。 詳しく言えない事情!? それってあれだろ。痴情のもつれ。 ふられたのか?それとも二股!? ああ、そりゃぁしかたないよな。きっと怒りのあげく脇目も振らず場所も考えず、怒りに身を任せてつっぱしっちゃたんだな。 ってか、あんな髭だるまでトゲトゲのゲジゲジが好きだなんて、恋はなんてて盲目。 とはいえ。 まぁ。人様の恋路なんて別にどうでもいいな。 ちょっと使用人さんの行方末が気になるけど…。 とりあえず今はどうすることもできないし。放置。 なにより今は、親より早死にしたとかで賽の河原で石積みをしなくて済んだことだけは喜ぶべきだろう。 わ〜い!生きてるってすばらしいね!(棒読み) 「疑似ってことは・・・モドキか」 「まぁ、まちがっては、いないわ。貴方(貴族)が言うとなんか違和感ある感じだけど…」 それこそどうでもいいんですよ。 あ〜でも言われるまですっかり忘れていたけど…これはあまり常識的じゃないから、へたすると下級層では知らない人間も多いんじゃないかとちょっと思ったりする。 たとえば譜術師などをやとう金もないような、学校なんてないだろうから読み書きが不得意な人間が多くいるそんな下層では。 それほどにはコアなネタだった気がする。 なにせ第七音素は発見されてそれほどたっていないいわば未知の音素で、扱えるものも少なく、ほとんどの第七譜術師はすぐに貴族やらのお抱えになるようなのだ。 まぁ、第七音素で扱える術はいまのところ治癒術だから、それはそれで当然かもしれない。 そういえばフォミクリー研究資料にもあったな。 たしかあの書物は第七音素に関する記述が多かったはず。 レプリカも第七音素の集合体らしいから、当然っちゃぁ当然だけど、そんな未知の力の塊に魂やら記憶が宿るわけないだろうというのが本音だ。 まぁ、オレがいいたいのはなにかというと、もしもあの実験が成功していたら、できるのは体だけじゃないのかねってこと。 たとえば写真たてがあったとしよう。だができたてのそれは、ただの写真たてというただの無機質で、使われるまでは【ただの物】にしかすぎない。 使う者がいてようやく思い出が刻まれ、【ただの物】は【思い出の写真を飾っておくもの】として存在が定まる。 でも残念。思い出ってのは、そんなに同じ姿形の物を作っても移すことはできないし、記憶を移植できたとしても“それ”はもう違うものだろ? きっとそれがわかったから、あの本の作者も途中で研究をやめたんじゃないかとは思うけど。 ぶっちゃけ、どうでもいい。 レプリカ?はい、大変ですね。オレはとにかくおうちでひきこもってるだけですからって感じです。 目の前にいたら?そんなもの決まっている。 こんにちわ。おげんきですか?ではこれで。っで、オワリだ。 オレはオレの道をいくだけ。 だって今の問題はそのレプリカがどうたらではなく、その本に幾度も出てきた第七音素と超振動についてなのだから。 【超振動】―――同一の音素振動数の干渉で、物質を分解、再構築。 超振動と第七音素は密接な関係にあり、第七音素拡大で規模拡大。 第七音素同士が干渉すると、超振動に似た現象が発生することもある。通称「擬似超振動」本物の威力の6割減。でも物質は完全に消滅する ――だったか。 「運が良かったなぁ〜オレたち」 「どこがよ。ここがどこかもわからないじゃない」 場所はオレのせいじゃヌェ。 だって再構築されなかったらどうするんのさ。 そもそも構築先が人が動けるほどの幅もなかったら、潰れてるよね? 足が欠けてたら?服だけ再構築できなかったら?頭と足が逆について再構築されたら? 身体の部分部分が別の場所で構築されたら?きっと突然腕だけとか顔がゴロリと空中から降ってくる…なんてグロテスク。その現場に立ち合わせた人は何と可哀そうなことか。 あるいは皮と中身が逆転しているかもしれない。それでも生きていたら最悪だ。 逆に魂が同じ肉体に戻ってくるとは限らないよね。 肉体だけ綺麗に再構築されて、記憶も魂も何もかも分解されたままとかね。 むしろオレと貞子(仮)が外見と精神が入れ替わっていたり、個々としてではなく肉が混ざって謎音物体Xとして再構築されなかった方がおかしいぐらいだ。 例え話なんて、あげればあげるほどでてくるからきりがないな。 考えれば考えるほど――、運がよすぎると思うわこれ。 ああ、つまり、あとで不幸が来るんですね。 この幸運はその前触れか。 だって、今生きてるのが不思議なくらいだし・・・。 お昼寝しているうちにオレ、運を全部使っちゃってね? やだ、なにそれ。 ・・・鬱だ。死のう。 あ、“あちら側”の門番がオレのこと拒否してるんだっけ? 自分の人生を自分で終わらせられないとかめんどくせー。 オレが門番倒してあの世に無理やり入るか、賽の河原やら窯ゆでにされつつで永遠と罪を償うべく働くか、現世で老後までもうちょっと頑張ってみるか、ナタリアの料理を食べてみようかな〜。なんて考えて「orz」ポーズでうなだれていたら、突然貞子(仮)が慌てだししおらしくシュンとした感じでオレに謝ってきた。 オレ、別にお前の言葉ごときで落ち込んでるわけじゃないから。 「ごめんなさい私のせいね」 「そうだな」 「…あなたの家族には申し訳ないことをしたわ。謝らなきゃ。バチカルまで送るわ」 「なにをだれにどう謝って、ここがどこかもわからずどうやってバチカルへ?」 家族、ねぇ。 どうせオレのこと心配してないでしょ。 そもそもオレって、彼らに家族扱いされたことないぞ。 むしろ生活サイクル違うから、めったに会わない両親の顔なんてあまり覚えてないのだが…。 ああ、家族ね、うん、どうでもいいよ。 むしろオレに謝れ。 謝ってもらってもいまこの瞬間オレはステキ生活から離されている事実は変わらないがな。 ああもうホームシックだチクショウめ。 オレの“何もしなくていいステキ生活”をまじ返せや。 あのままおうちで過ごしていたら、あの世の門番(らしいしゃべる炎)に嫌われてることを知らずにぬくぬく老後を過ごせたんだ。 ステキ生活から切り離され、野外に再構築。 なにももってない=食材ないです。 食材ない=料理もできない=死ねと? なのに死ぬこともできないとは・・・・・・・鬱だ。 「あなた、最低ね」 「は?」 まだまだ鬱をはじめたばかりのオレに、貞子(仮)が突然むっすとして話しかけてきた。 心よんだの? あ、違う話。そうですか。 「なんなの本当にあなた」 鬱ってたのがわるかったの!? あんれま〜。それなんてオレ様の胸にぐっさりなの。 とどめですか?トドメさそうって言ってるんですね。 やっぱり死ねってこと? ごめん無理らしいよ。 だから鬱ってるんだけど・・・ とりあえず 「なにが最低?」 「そんなこともわからないなんて!あなた、人の気持ち考えたことなんかないんでしょう!!貴族ってみんなそうなの。最低っ!!」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・WHAT?」 「意味の分からないこといってごまかすつもり?」 に〜ら〜ま〜れ〜た〜〜〜〜〜 英語通じないんだねこの世界。まぁ、知ってたけどさ。思わずね。 それよりも。 さっきのしおらしさはどこへ? なんて一瞬の変化。女の子って感情がころころ移るというらしいが、こういうもんだっけ?うちのメイドさんはみんなおだやかだけどなぁ。 この貞子(仮)って、怒ってばっかだな。 短気、うぜぇ。 むしろキンキン声が耳にさわって・・・ あ、頭いたくなってきたかも。 頭痛薬・・・そんなもんヌェー。 ああ、やっぱり運はもう使い果たしたんだ。これは不幸の始まりに違いない。 老後の平穏はもう無理だな。 はやくあの世の門番をなんとかして“あちら側”にいける方法を考えよう。 そういえば死を永遠の眠りっていうぐらいだから、眠るのもありか? これはきっと悪い夢で―― だめだ。 昼夜逆転してるオレには、今この暗闇は活動時間まっさかりだ。 目がさえてしょうがねェ。 「わからないなら教えてあげるわ」 「あ、ああ・・・ありがとう?」 「人の言葉に文句ばかり言って。人間として最低っていってるのよ。 好き勝手ばかりで命令ばかりして。 人間がみんなあなたの言うことを聞いて当然だとでも思っているの!?どうせ女だから好きにしていいとでも思ってるんでしょう!……っ!…さっきだって、起きがけにひとのこと……私がどれだけ我慢しているかわかってるの!傲慢!だから貴族なんて最低なのよ!!」 「へ?」 起きがけにその胸筋と髪によって殺されかけたオレに対する言葉がそれですか。 あげく貞子(仮)は自分自身を庇うように腕で己自身を抱きしめ、震えるように、涙こらえるようにしてうつむいた。 振るえる子羊のモノマネですか。悲劇のヒロインですか。 一度頭冷やしてきやがれ。 貴様の中でオレはどういういちについているのか、教えてほしいぐらいだね。聞きたくもないけど。 死にかけだったオレが三度目の門番の声を聞いたときには、オレの視界はぐにゃりと歪んでいてすでに意識がとびかけていた。 現世にひき留める門番の声がなければ、見事にあの世の入り口をくぐっていたはずだ。 首はしまってるは肺は潰れかけてるわ、息なんかできるわけもなく、きっと顔は土気色とか青白いとかの部類だったはずだ。 なのに目を覚ますなり早々に「どこ触ってるのよ!」と、死にかけのオレに向かって平手打ちしてくるし。 そういえばあれで口切った。 ってか、その謝罪がまだな気がする…。 いまさら謝罪されるのも微妙だし。「なんで私があなたにあやまらないといけないのよ!私の胸を触っていたくせに!」とかなるだろうし、何に謝罪してほしいか説明するのも面倒だからもういいけどさ。 普通は少し冷静になったら状況確認するよね?そうしたら下敷きになっている人間みたら、『不可抗力』って言葉うかぶよね? あのあと呼吸が戻るなり肺にいきなり空気が入ったから激しくせき込んだし。指一つ動かせない状態のまま結局三十分以上起き上がれなかったらから、さすがに胸やら尻やらを触っていたとかキスしてたとか、できないって気付くよね?え?だって三十分だよ。 むしろ自分が外に連れだしたせいで死にかけた病人そっちのけで、勝手に触られたと思い込んで自分の身を庇うように姫ポーズでプルプル震えて涙してるって――。 咳き込んでたんですよ?意識がもうろうとしていたんですよ?動けなかったんですよ、オレ。 動けないのは、意外と超振動モドキの分解の影響もあったのかもしれないと思うけど…。 どちらにせよオレは動けなかったし、死にかけていた。 そんな横では、とある妖怪アニメの幽霊族のゲのつく鬼○郎のごとき前髪の、某井戸の怪異貞○が…悲劇のヒロインだった。 今思い返してもすごい状況だね。 触られたとかファーストキスだったのに…というつぶやきを聞いたとき思わず耳を疑った。 だってオレはいっさい触ってないんだから。 起きがけのあの一瞬でそこまで妄想できるってすごいわ。 オレには無理そう。 でもさ。 オレ、悪くヌェよ。 超振動で飛ばされたのも私情を他人の家に持ち込んだあげく、手に屋敷に侵入したのが悪いし、目が覚めて指一本動けないオレの上に再構築されたのは超振動を起こしてくれただれかさんのせいであって、どこにもオレの過失はない。だってオレは庭で昼寝をしていて起きたら圧迫死しかかっていただけだ。 むしろ今までの会話のどこに、最低やら傲慢と言われなきゃいけない要素があるのだろう。 だれか教えてほしい。 だってオレは事実を言っただけで。 言われたことに、「ああ罪ビトの自覚あるんだなって」「じゃぁ策があるなら教えてほしいな」と――うなずいていただけだ。 それにこいつが自分で認めじゃないか。 【私のせいね】【あなたの家族には申し訳ないことをしたわ】と――。 だから頷いただけなのに。 それが悪いと言うなら、お前は間違ってると言いたい。 まさか…オレが奴の言葉を否定しているとか。いちゃもんつけているようにとられていたとは。 本当にそう思っているなら、さっきの言葉は前嘘か表面だけの物だろう。 ――前世のことわざのようなもので《謝れば警察はいらないと思っているのか?》だったか?――まさにあれ。 “自分のせい”なんて思ってないんじゃないかこいつ?だってさっきの会話からして、“本気で謝る気”も“自分がいけないことをした”という自覚もないということ。 ぬくぬく箱入りな公爵子息様の大ピンチ。 めんどくせぇのにからまれた。 ・・・・・・めんどい。しかも会話が成り立たないとか、あのまま死んでいた方が楽だった気がする。 欝だ。 目が覚めることのない眠りにつきたいです。 間違いなくもうオレの運はつきてるな。 「とにかく、あなたはおとなしくしていて!キムラスカまでちゃんと送るわ」 「オレはいい。好きなところに消えればいい。その服からして貞子は軍人だな。ならひとりで大丈夫だな」 「さだこ?私はティアよ。おかしな名前で呼ばないで!」 だったら初めから名乗れよ。 「それにオレのこと嫌いなんだろお前?」 「当然よ。だからなに?」 「・・・・・・」 ワォ。どんだけ自由なのこのひと。 「…それほど一緒にいたくないんだろ。さっきだって我慢してるって言ってたじゃないか。なら、いいよ。 おいていけばいい。オレは残る」 「勝手に行動しないでちょうだい!私にはあなたを送るというという責任があるの!」 「ないだろ別に」 お前が勝手にそれで正当化しているだけじゃん。 たぶんオレたちが超振動起こしてあの屋敷からいなくったのって、誘拐として処理が進むんじゃぁないかね。 だって侵入者とその家の息子が同時に消えたんだぜ。 当然、 「愉快な、誘拐犯?」 「っ!!!あなた!!いいかげんにしなさいよ!」 「オレがなにをした?」 「はぁ、これだから貴族のおぼっちゃんは」 はて?なんだ今の発言は。 貴族であることと何が今の発言は関係あるのだろか。 「もういいわ。あなたと話しているとこっちがおかしくなる。 とにかく大人しくしていて頂戴!」 「だから【責任ない】ってことにしておいていいから、送らなくていい」 みのがしちゃうぜ☆オレ。 誘拐犯扱いされたくなきゃ逃げた方がいいよ〜。 めんどうだし。 ――とか、思ってたけどね。 通じてなかったよ。 「え〜っと…自分から出頭しに行くの?」 「なっ!?あなた失礼ね!意味が分からないわ!それにせっかく送ってあげるって言ってるのに」 そこは意味わかろうよ。 別にあんたがどうなってもどうでもいいんだけどさ〜…そろそろオレにからむのやめてうれないかな。 そろそろね、無理やりにでも寝て、“不幸のハジマリ”なんて夢オチにしたいんだけどなぁ。 「オレは待つ」 「いつまでわがまま言う気!?そんな我儘に付き合ってる時間はないの!」 なんだろう?連れ出してやったのだから、送られる義務がテメェにはあるんだよ!と上から目線で言われたようなこの何とも言いがたい気分は。 王位には必要のない人間であろうと、さすがに貴族で王族であるかぎり【メンツ】と言うものがあるので、パッパラパーの息子とはいえ、たったひとりの跡継ぎが消えれば屋敷は大騒ぎで、必ず探しているはずだ。 オレを王につけるきがなくとも警備をかいくぐって浚われたとあれば、公爵家の面目たたないだろう。 できることならば、公爵家の人々にもひととしての心があって、それで一人の人間として両親が、我が子を心配して捜査隊をだしてくれていたら…恥ずかしながら嬉しい。だが、たぶんそれはないだろう。探す指示を出したとしてもそれは家のメンツのために決まっている。 まぁオレからしたら七年しか共にいなかったし、彼らとほとんど親子らしい何かをしたことはないが。 これは秘密だし、誰にも言う気はないが。 前世の影響かオレってやつは、恥ずかしいことに、親と呼べる存在が傍にいるだけで嬉しいらしい。 さびしがりや決定。 ――なぁ〜んて恥ずかしい話は今すぐ忘れろ。オレは忘れた。横にこの話しはおいておく。 どちらにせよこの場で待ってたほうがいいのは事実だろうから。 運がいいことにオレは、前世で野山で暮らしたという記憶があるようだ。あさったら記憶の奥底から出てきた。 七年の間、貴族のボンボンしていたが、料理と同じ要領でやれば、野宿もできる気がする。 食材なくても何とかなるさ! なら大丈夫だな。 外の世界はオレのみたことない危険な獣で溢れていると、ナタリアが言ってたが、生憎とあれだけ長時間騒いでる奴が目の前にいても図鑑にあったような生き物一匹もでてこない。 遠くに気配はするが、それがこの花園に来る気配はない。 多分ここにいた方が安全なはずだ。 知らない場所なら、がむしゃらに動かない方が安全だ。 動物というのはほとんどが夜行性らしく、それは魔物にも適用される。自然界のルールらしい。 なので、せめて明るいうちに動くべきだろうから、貞子(仮)がこの場を離れたいなら勝手にすっればいい。 オレは動くの面倒だから、迎え待つし。 だから送りもは不要だとつげれば――怒鳴られる。 はっきり言おう。 だれか耳栓くれ。 オレの静かなステキ生活を本気で返せ。 やるきもないし、基本オレは使用人任せで何もしないが、知識はあるのだ。知識は。 ただそれがこの世界の常識とどこまであてはまるかがわからない。 彼女が言うように貴族って我儘なんだろうか?父上のように寡黙じゃなくて?あ、ナタリアは随分おしゃべりだったな。 やっぱり女の子だからかな? でもここまで騒がしくないよな。いい子だし、なっちゃん。あ、まぁ…あの料理以外はね。 常識ってどこにあるんだ?なにぶんこちらでの記憶がまるっと十年分消えてるし、それ以降は小細工も清々堂々も面倒くさがって屋敷から半日以上離れた場所には出掛けてない。 家の者は放任主義なのか、知識を与えないようにしているのか。どちらかんなんてそんなことオレが知るはずもないが、オレに勉強をさせようとはしなかった。 オレが目覚めてから家庭教師を一度ごねて付き返してからは、そういう常識についてて学ばされた覚えさえない。 自分的にはやらなくていいのならと、興味ないものはとことん無視した。 はっきり言ってオレに常識期待されても困るがよくわからない。 ――かといって、そこまで細かい説明をしてオレはもの知らずだと、もうちょっと噛み砕いて優しい言葉でしゃべれと、この目の前の相手に乞うのもばかばかしい。 説明なんてめんどうだし、理解されて同情なんかされたら余計に億劫だし、このさい目の前の騒がしい奴もまるっと無視しようと決めた。 だって、お前間違いなくオレに不幸をもたらすんだろう? そんなことわかってるんだ。 もうさっきの再構成でオレの幸運値はつきたのだろうから。 やはりいままでの幸せすぎる生活の報いが返ってきたというところだろう。 もっと人のために生きていればよかった。 幸運と平穏がほしいな。 ---------- 注 釈 ---------- 注釈がほしいとコメントいただきましたので。 たまに注釈入れることにしました。 いろいろ勘違い続出中・・・・ 夢主1は「オレは悪くない」とは言うが、絶対に「自分が被害者だ」とは言わない。 ティアは、物凄くイタイ子です。あることないこと叫びます。 この段階でナタリアは、「昔を思い出して!」なんて言えないほどルークが弱っていると勘違い。 そのため《思い出して攻撃》はなくなり、すっかりルークとは仲良し。 むしろ夢主が、ナタリアの料理のまずさゆえにきれて、料理の話で熱弁。 そのうちナタリアの中から「大切な約束」は「ただの思い出のひとつ」になっていった感じです。 もちろん夢主は自分の居心地のいいように、厨房とナタリアだけはある程度うまく丸め込んでいます。 ガイのことは本当に殺せもしないし、殺気でひるむような小さな男と認定したので放置。 そのままナタリア料理より自分の身を守るためだけに、使用人として残している。 たぶんナタリアは、ガイと夢主のやり取りに慣れているので、夢主の殺気にも鈍感(←慣れゆえ)で平然としている。 周囲からみると病弱ルーク。 できることは料理だけ(実際はできてもやらないだけ)。 |