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05. 賽の河原と貞子と祟る渓谷 |
side 『夢主1』死んではならぬ、こちらにきてはならぬと夢の中で言われた。 幽霊か。 オレは三途の川でも渡っていたのだろうか。 よくはわからないが一面が真っ白の空間で、遠くにきらきらと七つの光が川のようにきらめいていたような気がした。 朱い焔がチラリと視界に留まったが、近づくとこれまた「ダメだ」と言わんばかりに炎は激しく揺らめくので、どうやら天国には嫌われているらしいと、しかたないからその場で回れ右をして来た道のほうへと戻った。 それが正解だったらしく、意識が浮上するような感覚とともに自分のまぶたが押しあがり目玉が光を、耳が音をとらえていくのがわかった。 五感もすぐに戻ってきたが、指を動かそうにも一本も動かせないのに疑問が浮かぶ。 しかも胸が締め付けられるように苦しい。 息がしづらい。 首もまるで紐か何かで締め付けられているようだと ――目を開けてびっくりした。 目の前に貞子がいた。 その距離5cmほど。 かおがちけぇ。っても、髪がバサリとその顔を覆っているので見えるのは髪の頭部だけで、そのやたらと長い髪はオレにからみつくように目の前にたれている。 オレはあおむけの状態で、その上にうつぶせの女がのっている状態だ。 だからはじめ貞子と間違ったんだけど…。 ちゃっかり女は、オレより身長も体格もいい。 その上、超ロングヘアだ。 そんな女がオレの上に乗っていた。 それはそれは見事にオレに覆いかぶさるように。 はてさて。オレはなんでこんな花畑にいるのかな? そもそもここはどこだ。 なぜかしらんが見たことない花畑の中で、仰向けで倒れるオレ。 その上に貞子が見事におおいかぶさるようにうつ伏せで倒れている。 起き抜けざまに胸が締め付けられるような苦しさはこれか。 たとえ相手の胸筋が普通よりも豊富であろうと、最近あまり肉付きがないオレの皮下はすぐに骨だ。そりゃぁいたいわ。 しかもあまりに長い髪はいつのまにかオレの身体の下にまわっていて、どっさりと量もある髪は、そのままオレの首を絞める形になっている。 首の苦しさはこれか。 もう、まじで死ぬかとおもったわ。 あ、いや。死んだらもう楽になれるんだろうか。 老後にウハウハ生活するのを目標に生きてきたけど、いっそここで死んでもいいいいだろうか。 あー…、でもさっき三途の川でくんなって言われたからなぁ。 死んでも死なせてくれないかもしれない。 めんどいわ〜それ。 いやまて、ちゃんと死んでしまえば、現世には戻すこともできずさすがの冥府の番人といえど「きてしまったものはどうしようもない」と受け入れてくれはしないだろうか。 ああ、でもそうなると、親より早く死んだ罪とやらで死んでもまたしばらくはなにかしないといけないんだよな。 たとえば河で石積みとか、飢餓の刑だか、火あぶりの刑だとか。 あれ?そうだっけ? まぁいいや。とにかく死んだ後もそんな作業をしないといけないのは面倒だから、だったらこのまま生きたほうが楽だな。 好き勝手させてもらえるし。 そんなわけでとりあえず、指も動かないしで、しばらく必死に息だけをしていたら、貞子が起きなくて、二度目の「こっちきちゃだめだってばぁ!!」という焦った声を聞きいた。 |