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01. はじまりは終わらない |
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:: side 転生ジョット :: 最後に見たのは、どこまでも青い、蒼い、あおい・・・大空。 死んだら天国にいけるとか、地獄にいくとか。 そんなのは本当に死んでみないとわからない。 もしかすると『死』というのは、この世で最も非現実的なことの象徴なのかもしれない。 東洋人ではない私は、輪廻転生という感覚がよくわからない。 br> だから、死んだらそこで終わると思っていた。 例え本当に魂が生まれ変わっているのだとしても、“私”という人間の記憶を消して新しく生まれるのだから、間違いなくオワリのはずだ。 私の死は、それほど問題ではない。 わかっていたことであったし、“ジョット”と呼ばれた人生の記憶はボンゴレリングに刻まれているのだから。 これから未来を切り開いて行くだろう後継者達のことは任せられる。 死の間際、仲間との永遠の別れを告げ、“私”という存在をのみこもうと近づく闇を待った。 しかし――― 受け入れたはずのソレは、私に関しては訪れなかった。 来るであろう闇と世界の終わりはなく、私は“私”のまま再び目を開けた。 ********** 「まぁまぁ、が目を開けたわよぉ!」 もう覚えてもいない優しい母の姿を思い出す、優しい微笑を讃えた人がいた。 自分は死んだのではなかっただろうか? 目を開けたら、すべてのものが大きく見えて―――超直感が働いた。 自分の今の姿は赤ん坊だ。 誰かの手を借りなければ動くことも排泄もできない。そんな何もできない小さな生き物。 どうやら自分は、“私”のまま生まれ変わってしまったらしい。 死んだらそこで終わりと思っていた自分だ。 もしそれが“私”でなければすぐには理解できなかっただろうし、信じられずにいただろう。 しかし“私”には生前からあった予知能力にも近い超直感が、そうであるとつげ納得させられた。 ここでも超直感が働くのかと思いつつ、苦笑もできず体も自分の思い通りに動かないことに、「さて、どうしようか」と思う。 ふと視線をあげるとワイワイと騒いでいる二人組みが、コチラを挟んで何か楽しげに言い合っている。 どうやらこれが自分の新しい母と父らしいと気付き、嬉しくなった。 周囲にはいつも仲間がいた。 けれど生まれた瞬間や、母や父の姿はもう覚えてなくて、生まれた自分を喜んでくれる二人に嬉しくて嬉しくてしょうがなくなった。 「ほぉら。ママですよ〜」 「ナナァ〜。こいつは家康だろ?」 「だーめ。この子はよ。だってつっくんはアナタとお揃いで昔の偉い人の名前じゃない? この子が家康なら、私だけ仲間はずれでしょう。そんなのイヤよ」 だから。 「この子は私の“奈々”という名前の『奈』をとって『』。 あだなは『』っていうの。 お兄ちゃんが『綱吉』で『ツナ』だから、二人合わせるとちょうどいいでしょう。 だから『家康』じゃなくて、この子は『』よ」 ステキでしょう そう、微笑むひとに押されて、 困ったようだった父もやがてそれに納得したように頷いた。 と、とりあえずセーフ。 二人の論争に密かに焦ったものだ。 前世の“私”は、ジョットという名であったが、友に誘われそのまま日本に移り名を“澤田家康”と改めた。 もしここで家康なんて名前をもらってしまえば、私は“私”のままだ。 変わることもなく。昔ばかりを懐かしみ、きっと昔と今を比べて暮らしただろう。 家康のままでは、私はこの新しい世から浮いてしまう。 ――そう思った。 これもまた超直感のなせる業なのかもしれないが、昔とは違う名前にほっとする。 優しい母からもらった・・・新しい名前。 そうして“私”は、“”となって新しい生に迎えられた。 優しい腕に抱き上げられたとき、自分が寝ていたベビーベットの上に、まだ小さな温もりがいるのに気付いた。 「よぉーく見ろ。こいつはお前の兄ちゃんだぞぉ。綱吉ってんだ」 「あらあら。さすがは双子ね。やっぱりわかるのねぇ」 抱き上げられた腕の中から、まだ目も開けていない兄に手を伸ばす。 あぁ、ずっと側に感じていた温もりは子のこのものだったのだと―― 父と母が兄の側に私を戻してくれたとき、なんとか動く手のさきっぽだけ。 それで双子の兄だという赤ん坊のもみじのような手を握った。 うれしい うれしい うれしい ちいさいのにそれ以上にぬくもりは温かかった。 これなら転生するのも悪くないと思えた。 例え今の私のように前世の記憶がなくとも、この温もりがそばにあるならそれに越したことはないきがした。 ――あったかい・・・ 生まれてきてくれて、ありがとう―― |