崎穹識の日常
- 復 活 × 零 崎 -



03. お子様は君の斜め裏側を歩く





 


―― side 沢田綱吉





 


 その日は何かの予感がしていた。というより、ポストに“それ”は入っていて。
ここから始まるんだなと、思わず笑みがこぼれた。

――お子様を次世代のリーダーに。

 その紙にしても、紙をポストにいれた人物自体も、はじめからつっこみどころが満載だった。
だけど母さんは平然とそれを受け止めていて、オレはというと、どんなやつがくるのだろうとワクワクしていた。

 黄色のアルコバレーノ、リボーン。

 オレを〔裏社会〕の代表ともいえるマフィアのトップ“ボンゴレ”の十代目ボスにさせるために、九代目が派遣してくるという。
 “ボンゴレ”はオレが【裏世界】の殺人鬼であることを知らない。
もちろん沢田の家族にもばらしていない。
知っているのは一般人『沢田綱吉』ではなく、殺人鬼である『零崎穹識』の“かぞく”とその仲間たちだけ。
だからオレは普通の一般人という地位を保ちながら、【裏世界】に片足を突っ込んでいる。



 オレは《零崎》。
殺すことをためらわない――生粋の殺人鬼。



 この世界はおおまかにわけて、四つに分けられる。

一般人の住む【表世界】
玖渚機関の支配する【権力の世界】
四神一鏡の支配する【財力の世界】
そして“殺し名”や“呪い名”の支配する【暴力の世界】


 “殺し名”は『戦って殺す―戦闘集団』で殺し名七名からなる。

序列一位《匂宮雑技団》
序列二位《闇口衆》
序列三位《零崎一賊》
序列四位《薄野武隊》
序列五位《墓森司令塔》
序列六位《天吹正規庁》
序列七位《石凪調査室》


そして“呪い名”は『戦わずに殺す―非戦闘集団』。

序列一位《時宮病院》
序列二位《罪口商会》
序列三位《奇野師団》
序列四位《拭森動物園》
序列五位《死吹製作所》
序列六位《咎凪党》

以上が六名が“呪い名”となる。


 “殺し名”“呪い名”は互いが対になる存在だが、《零崎一賊》のみ対になる“呪い名”がいない。

 《零崎一賊》は理由なく殺しを行う。
そこにあるのは、血縁ではなく、殺した相手の血――流血によって繋がる殺人鬼という集団。
かれらにとって殺しは、感情もなにも伴うことはなく、彼らが人を殺す好意そのものが彼らの呼吸に等しい。

零崎として素質のある者は、一度“零崎”として目覚めてしまえば、たとえいままで体を動かすのが得意でなかったとしても、鍛えていなくとも、すぐに“二つ名”がつくほどの脅威を見せる。
“零崎”とはどう足掻いても覆すことのできない本質。
ゆえに“殺す”ことに、腕力がともなくとも体が考えるより先に動く。

それが――《零崎一賊》。



 オレはその殺人鬼、零崎の一人。
《一賊》名を、零崎穹識(ゼロサキソラシキ)。

 けれどオレは一人では中途半端な零崎で、オレは片割れの少女がいないと何事もうまくいかない。
ゆえにオレは双子の零崎。
二人でようやくひとりになれる、そんな変わった殺人鬼。
 四歳ごろのとき街中で《零崎》としてはじめて目覚めたとき、オレは風船の紐でそばにいた人を殺した。
だれもオレがやったと気づかなかった殺人。
オレもなにも思わなかった。
ただ母さんが壊れてしまいそうだったから、これはいけないことだと、このどうしようもない殺人衝動を必死に抑えた。
しかし“零崎”という殺人衝動を抑えることは、本質、つまり“オレ自身”をおさるということで、その日以降なにをやっても物事がうまくいかなくなった。
得意だった運動も失敗ばかり、いろんなところでドジをふむ。
そんなときに出会ったのが、もうひとりの零崎の女の子。
“おさえる”せいで生まれたオレの欠点を補うように、彼女が常に支えてくれた。
それが零崎緋織(ゼロサキヒオリ)。彼女がオレの半身たるゆえん。


「だけど家族はもちろんボンゴレもオレが『零崎』だって知らないんだよね〜。
今度来るリボーンってひとはどこまで【裏世界】のことを知ってるんだろう?」

 知られないように隠してきたというのもある。
なにより“押さえ癖”があるオレも緋織もめったに“零崎(殺し)”をしないから――。
まぁ、情報通の友人たちや、過保護な《零崎一賊》によりどうもオレと緋織の存在はかなり情報が消されているらしいので、【表】に属するたかだかマフィアのヒットマンが、『沢田綱吉』が【裏】に属する人間であることなど知るはずもないのだろうけど。


 情報通の友人によると、オレのためにきてくれるというその家庭教師さんは、もみあげについては禁句だそうだ。
オレのもとに家庭教師として赴任してくるのは、〔裏社会〕でも有名なヒットマンである赤ん坊。
彼は世界の柱の一角をになうため、それによって呪われ、姿を赤ん坊にされた七人(正確には八人)の一人。
ある程度の情報は知り合いからもらっていたからわかっていたけど、実物を見ないと人間性やオレとの相性まで分かるわけない。





「チャオッス」

 母さんと話している最中、聞こえた高い声に笑みがこぼれる。
はじめまして。
そしてよろしく。
オレもできるだけ抑えるけど、オレに殺されないように頑張ってね――

オレの家庭教師さま。










(あれ?赤ん坊がなんでいるの?)
(オレはお前の家庭教師だゾ)
(あらあら〜あなたがリボーンくんね。ツゥくんをよろしくね)
(あ〜外国の子なんだね。とりあえず土足はちょっと・・・)



人に教える前に まずは 自分から、他国の文化を学ぶべきだと思うよ

とりあえず――ドンマイ








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