その花は桃色ですか?



06 姫様が姫様過ぎて警察沙汰に!?





俺の名は笠松幸男。
この世界に生まれる前の名をレイヴン。またはシュヴァーン・オルトレイン。はたまたもっと前を知ってる人になら、ダミュロン・アトマイスといえばわかる者にはわかるだろう。

前世の終わり付近は、基本てきに"レイヴン"として過ごしてたから、おっさんてきには緩めの口調なのは、ゆるしてね。
死ぬときのことだったわね。
俺様はね、眠いなぁと思って目を閉じ、そしてその眠気から目が覚めたらそのまま赤ん坊として生まれていたの。
たぶんいつもとは違う感覚の眠りだったし、もういい年だったから、あれは目覚めることが眠りだと本能的に感じていたんだけど。
瞬きしたら赤ん坊になってたなんて。
驚きったらない。

まぁ、何度か死んだような身としては、また死ねなかった程度の感覚だったのだけれども。

今度のは死体として生き返ったわけでも、精霊になったわけでもなく。別の誰かとして生まれ変わったみたいだから前のゾンビのようなあれよりましよね。
弱いウン十歳まで生きて、その後は精霊にまでなったおっさんとしては、お母様の母乳やらおむつ変えだけはもう口に表わしようがないほどの羞恥の日々だったけれども。

そうして生まれてからの赤ん坊時代は、周囲を見て、情報をひたすら収集することに力を注いだ。
その結果、案外はやくに、ここがテルカ・リュミレースとは文かも価値観もなにもかもが違う別世界であると知った。
自分を取り囲む優しい家族を見ていれば、この世界ではレイヴンのようなおちゃらけたキャラでいる必要性も感じられず、また人形のようなシュヴァーンでいるのも合わないし、この温かい家族からは普通の温もりのようなものしか求められていない気がして、どちらの鳥でいるのもやめた。
キャラを作る気はもうとうないが、生まれ変わったのだからと、死んだはずのダミュロンのことを思い出しつつ(たまにどちらかの鳥っぽさが出てしまうのはもう素だ)それを笠松幸男にあてはめた。
どちらかでいないといけない。前世では場所によって求められた態度が違ったが、今世ではそれは必要がないので、つかい分けているというよりすべてを混ぜて今の笠松幸男ができあがっているといってもいい。

そんな俺が中学生の時のこと。








 -- side 笠松幸男 --








笠「なんでお前がここにいるんだよ!!」

中学二年。春。
はいってきた新入生を見て、思わず頭を抱えた。

幼馴染みのひとり瀬戸健太郎だ。
彼の前世は、なんとあのユーリ・ローウェル。

出会ったばかりの彼は、まだ健太郎も小学校2年生だった。その頃の健太郎は、勉強嫌いだし喧嘩っぱやいしで、覚えていないのに前世でのユーリの所業をそのままひきついだ悪ガキだった。
なお、勉強嫌いなのは今もである。
健太郎が記憶を思い出したのは、転生していたエステリーゼ様(この世界の名前は別にあるが今はまだ"前"の呼び方で呼ばせてもらう)と接触したことで、一気に前世を思い出したという。

彼の場合は、俺やエステルとは異なる記憶の継承の仕方で、エステルと接触したことで、前世のことを記憶として蘇らした。
ただしその段階での記憶にはにおいや味、触感といった五感はないが感情が伴っていたらしい。
そのためまるまる前世の人格というわけではなく、健太郎としての自我は残ったまま、記憶を引き継いだ形で前世を持っているのだ。
はっきりしすぎた記憶のリアルさに、なおかつ記憶を思い出したのが小学校低学年という普通の子供ならまだ物事の善悪の判断が憑かず完全な個性が出来上がる前であるため、前世の記憶に若干影響を受けた性格になったものの、彼が瀬戸健太郎であるのは変わらない。

その健太郎が、今年の新入生として、俺のいる中学校に入学してきた。
顔をひきつらせて逃げ腰の健太郎を捕まえ、ボサボサの髪をつかむようにかき混ぜて前髪をもちあげて視線を合わす。

あ゛ぁ?なんだよ。その額のほくろ押すぞ。
そう視線で脅せば、ヒィっと悲鳴が上がる。
それでもあのユーリ・ローウェルか。

笠「俺は "あのこ" を守れと言ったはずが?」
瀬「ゆ、ゆき、待て!こ、これには事情が。不可抗力だったんだよ!」
笠「お前の学区は "あのこ" と一緒じゃなかったのかよ!」
瀬「ま、まてユキ!ほら、落ち着いて。そのグーはやめよう!な!俺だって知らなかったんだって!ユキより "あのこ" の家の方が俺ん家から近いから、てっきり同じ中学だとばかり思ってたんだよ!そうしたら俺やあんたが別じゃなくて、 "あのこ" の家だけが別の中学範囲だったんだって!」

この俺たちが言っている "あのこ" こそ、エステリーゼ様の今世であり、俺の幼馴染み1号だ。

"あのこ"は、エステリーゼ・シデス・ヒラッセインの名をもつ、桃色の花のような姫を前世に持つ人物である。
そして現在、今世でも相も変わらず花の様にふんわりとしていて、穏やかで、お人よしで・・・。

ぶっちゃけていうと、エステリーゼ様はエステリーゼ様のままなのだ。

なぜ前世の性格のままなのかというと、なぜなら今の人格というものが "あのこ" の場合存在しないのだ。

"あのこ" の現状は、容姿がまったく前世と同じというわけでもなければ、俺と同じような継続型の転生でもない。 記憶を思い出した覚醒型だ。

"あのこ" が記憶を思い出したのは、なんと物心つく前の赤ん坊の時期だ。 しかも五感や感情すべてを含んだ状態の記憶継承。
しかし彼女自身は死んだ記憶があるので、自分自身はエステリーゼではないと理解しているというやっかいな状況である。
"あのこ" からしてみると、エステリーゼの知識はすべて持っているが別人である感覚―――健太郎の記憶を思い出したそれとも俺の様に継続型とも違うその感覚は、言葉で表すのなら“エステリーゼのクローンとして生まれた”というものに近いのかもしれない。

彼女は、俺のように目閉じた後からそのまま感覚が続いているわけはない。
真っ白な器にエステリーゼという感覚と記憶が、人格が出来上がる前にはいってしまい、自分はエステリーゼ本人ではないと理解していても、エステリーゼらしい立居振舞しか知らず、できないのだ。
"あのこ" は自我ができる前に思考することができ、たとえ異世界のものであれ人ひとりの一生分の知識と言動を知っている。
そのため、エステリーゼとは違う "あのこ" 自身の、自分自身を新しく作り上げている最中なのだ。
健太郎のように、すでに瀬戸健太郎としての人格が出来上がって知識が追加されて、性格や言動などに以前の自分の影響を若干なりとも受けるのと違い、 "あのこ" はエステリーゼという存在を基盤にこの世界を生きるしかない。

何が言いたいかと言うと。
あのお人よしが人の姿を取って歩いているようなエステリーゼ様と同じ性格のっほんわかした子。しかも危機感や警戒心というものが、半端なく0に近いレベルでしか持ち合わせてなくて、この世界の常識を教えないとまったくしらない。
そんな小学生を歩かせてみろ。
小学生なんて外見では、まだ性別はっきりしないのに、あの花畑で笑っているのが似合いそうなあの雰囲気。
しかも似合うからという理由で、よく水色や桃色の服を着せられている。
あげく最近のこどものランドセルは男女差がなくカラフルで、中学なんてそれこそ鞄は男女共通。
ついてないことをいうなら、彼女のいった中学はジャージ登校可である。

はっきり言おう。

やばい。
間違いなくこれはやばい。
ヤバイ未来しか浮かばない。



誘拐されたらどうしよう。



笠「しらないひとにホイホイついていっちゃうんだぞ!貴様、どう責任を取るつもりだ!!」
瀬「落ち着けってユキ。白鳥が混ざってんぞ!!そもそも "あのこ" 自身が、ユキも俺も側にいなくても大丈夫なようにしないとダメですよね。もっとこの世界に慣れて見せます!がんばります!って言ったんだぞ。そ、それにエステルなら、城を飛び出ても一人暮らしやって行けたじゃんハルルで!俺ばっかせめられても困るというか」
笠「バカかお前は。 "あのこ" が『俺』と出会ったあとも何度誘拐されてると思ってるんだ」
瀬「いや、 "あのこ" ならエステルの技で敵をコテンパンにするだろ」
笠「それで警察沙汰になったらどうするんだ!!犯人の命が危ない!!」

なにせエステリーゼ様は、お姫様とはいえ、外に出ることができないがため、騎士からしか教育を受けられず、結果引退済みの騎士を師と仰ぎ、本格的な剣技を見につけた――"戦える"お姫様である。
その技は、城の中でぬくぬくしているだけの姫にはあるまじき殺傷力をもち、貴族のたしなみというようなお遊びのレベルのそれではない。しかもあの旅のおかげで腕を磨いた彼女は、魔物にも物おじしないばかりか、倒してしまうほど。
ぶっちゃけ、肉体ピーク時の彼女は、たかが騎士部隊ぐらいはるかに上回る実力者にまでなっていた。
つまるところ、彼女は手加減ということを知らない。
敵を”斬れる”とは、"そう"いうことだ。


俺の推測は当たってほしくない具合で的中し、入学してまもなく、彼女は攫われた。
なにかあったときように必ず形態はつながるようにしておけと口を酸っぱくして言われているはずの彼女に、連絡がつかなかったのがことの発端だ。
学校の帰り道、門限を超えてもかえって来ない我が子に焦ったあの子のご両親から、幼馴染である俺と健太郎の家に連絡が来た。
なんとか探し出した先には――


瀬「無事かエステル!!!」

武器になりそうなものを手にとびこんだ。
そこはあの子の通学路をよく使うとある大学生の部屋で・・・。

エ「どうしましょうケンタロー、ユキさん!」

襲われそうになったというあの子は、その勢いのままに投げ飛ばしてしまったらしく、大学生は障子からお尻を突き出す形で気絶していた。
上半身は障子の向こう側で完全にのびていた。

エ「すぐにみんなみたいに、受け身をとるものだとばかり思っていて」

白色の服に桃色な桜の花をあしらった模様の入ったワンピースのように丈の長いTシャツの裾を握り、ショボリと落ち込む様に、無事だったことにひとまず安堵する。



結論。
その後、あのこと手合わせしたところ、この俺様でさえコテンパンにされてしまった。

どうしてそんなに強いんだよという健太郎の突込みに、あのこは不思議そうに首をかしげて「女子のたしなみとして護身術は必要と、ジュディスが」とのこと。

笠「ジュディスちゃん・・・」
瀬「じゅでぃ・・・」

思わずおっさんは顔が引きつったよ。
健太郎の目は遠くを見るように死んでいた。

そうすると、もうわかるよね。
おっさん、いや悪い。俺こと笠松雪男と、セト健太郎は、あの子より弱いままでいていいはずがない!っと、二人で剣道とカラテをはじめた。
ただし、剣道は瀬戸には不向きだった。
あいつすぐに市内を投げ飛ばそうとしたり、無意識に刀を投げていた前世の癖が発動しかかる。
型にはまるタイプじゃないと改めて思いしらされた。
なお、あのこにはフェイシングが向いているんじゃないかとおもったが、どうやらあそこまで細いと逆に力を籠めづらいと言っていた。

出会ってから俺たちは、チャンバラごっこと称してよく、前世のまねごとをしたが、いまでもなお俺たちはあのお姫さんに勝てたためしがない。






――――そして俺にとっては、中学最後の年。
なんとなくやりはじめたバスケの全中にて、リタ・モルディオだった人物と再会することとなる。

まぁ、それはまた別の機会に話すとしよう。










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うわーん(ノД`)・゜・。
ごめんよぉ!
端折った話になってすみません!
主人公の桃色の彼女の主体を最後まで隠し通して話を進めるのってすごいムズイですね(遠い目)
誘拐事件とかいろいろネタは浮かんでたんだけど、うまく文章が浮かばなくて挫折
orz

やはりこの話は、連載にすべきではなかったか・・・(汗)
単発でSSで終わらせておけばよかったかもしれません。
次はもうちょっと中身のある話が書きたいです。
もうちょい次はがんばりマス><