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05. フラグという旗があるなら引っこ抜け |
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:: side 沢田綱吉 :: リボーンがきてからはじめて死ぬ気弾をくらったなぁ〜と、教室の窓からのんびり外を見ながら思い出す。 いま、思い返してもオレの人生って普通じゃなさすぎたね。 楽しかったけどさ。 思わず、可笑しくて、クスクスと笑ってしまった。 それに京子ちゃんが相変わらずのキラキラした瞳を向けてくる。 「おはよう沢田君。いつもより楽しそうだね。なにかあった?」 「おはよう笹川さん。ちょっとね。思い出し笑いかな」 「おもしろいことならわたしも誘ってね!沢田君の話、いつも楽しくなっちゃうもの。わたし、大好き。 あ、ごめん花がよんでる。またね」 「うん。わかった」 なにげない会話を軽く交わして分かれる。 すぐに彼女は黒川花などの別のグループの下へ歩いていき、楽しそうに話し出す。 これが今回のオレと京子ちゃんの関係。 極普通のクラスメートである。 今回は死ぬ気なパンツでの告白タイムはない。 なぜならオレが絶対にリボーンの銃にあたらないから。 それに京子ちゃんとぐらい普通にしゃべれる。 以前のように勇気がないとか、死ぬきだったできたかも・・・とかない。 なにせ腹黒狸どもを相手に仕事をしていたからね。 こんな中学時代なんか、話術だけでもどうとでもなるんだ。 しかもリボーンは初日からイタリアに返品されちゃったからね。 ないんだよ。フラグとなる要因がさ。 「普通っていいね〜」 オレはのんびりした学生という幼い者たちが無邪気に集うこの学びに、流れる空気になんだか胸が温かくなってほんわかしてくる。 そのまま再び視線を窓の外にもどす。 過去のオレを象徴する青い空が目に入った。 その空に浮かぶ雲を見ながら、今はまだ学生をしているオレの雲を想像する。 このまま懐かしい過去に想いをはせようか。 そうオレが思ったとき―― 「おい、沢田綱吉!!部長がお呼びだ!いますぐ、体育館に来い!!」 扉が勢いよく開かれた。 「・・・・・・えーっと。あの・・・」 だれ? ********** 「・・・・・・」 ねぇ、オレ。『普通』っていいよね〜って言っただけだよね。 ただ、過去を思い返してただけだよね。 ねぇ 「なんでオレこんなところにいるんだっけ?」 わからなくなって思わず首をかしげる。 答えるものはいない。 かわりに返ってきたのは、騒がしい声。 「おい沢田綱吉!!笹川京子にくっついている害虫め!!」 「いや。害虫は君で・・・」 「笹川に、ちょっと優しくして貰ってるからって図に乗るな!!そんな奴はこの俺様が成敗してくれるわ!!商品は、笹川京子!」 「図に乗ってるのはあなたじゃ・・・」 人の言葉を一切聞かず、しかもオレの言葉をことごとく途切れさせたくれた相手に内心「どうしてやろうかこのクソやろう」とか思ってしまったけど、顔には出さない。 「勝負は、どちらかが一本取るまでだ!!」 しっかり剣道着に身を包んだそいつは、ビシッ!とオレに竹刀をむけて、相変わらず勝手なことを言っている。 ん〜。どうしようかな〜。と、とりあえずへにゃりとき弱そうな笑顔で困ったかんじをアピールしてみる。 そのままチラリと床においてある竹刀を見て、なぜ誰も突っ込みを入れないんだろうとさらに首をかしげる。 目の前には京子ちゃんにつきまとうストーカーもとい持田先輩。 オレの前には、部員が数人係で持ち上げないと持ち上がらないあからさまな竹刀。 場所は体育館。 日常から外れた“決闘”なんて戯言に、学年問わずたくさんの野次馬達が感染に来ていて―― ああ、いいや。 考えるのが面倒だ。 「さぁ、竹刀を取れ沢田!!」 うるさいなぁ。 せっかく普通と平穏と学生生活を、『前世』を肴にまったり楽しんでいたのに。 いいよ。それほど望むなら―― 「一本・・・ですか。わかりました。一本といわず、百本でもなんぼんでも取って差し上げましょう」 ボソリと呟いたソレは、騒ぐ周囲の歓声に飲まれて誰にも届かない。 オレは目の前に置かれた竹刀を拾う。 二人がかりで運ばれてきたそれを何事もなく軽くふることなんて朝飯前。 オレはいつもと同じニコニコとした笑顔で「竹刀って軽いんだね〜」と、相手をあおるようにけしかける。 すると案の定、ギョッとしたようにオレをみたあと、また持田先輩が何かを騒いだり、周囲の剣道部員をにらみつけたりしている。 あーあ。彼らは何も悪くないのに。 ちゃんと錘ははいっているしね。 でも悪くないとは一概には言えないよね。へたすれば大事故煮が起こりかねないような竹刀を作ったんだから。 君たちも同罪でしょう。 この竹刀は凶器。 たしかにしこみがはいっている分あからさまに重い。 こんなもので「面」を成功させてしまえば、相手は死ぬか重症ぐらいおうだろうと思うんだけど、それさえ持田先輩たちの頭にはないようだ。 なんて思慮が浅い。 浅はかにも程がある。 この竹刀はうっかりすれば、普通の偶然で起こりうる怪我を負う頻度より少なく、それもたった一撃で人殺しになってしまうかもしれないしろものなのに。 そんなこと彼らはこれっぽっちも思いはしないのだろう。 まぁ、それもしょうがないかな。 なにせこの町は雲雀恭弥という暴力ですべてを支配する暴君がいるんだし。 だけど、だからこそ。 この茶番を茶番で終わらせなくてはいけない。 だから「殺し」はダメだ。 けっして相手に怪我を負わせないように力をおさえないと。 可能ならば、剣術ではなく剣道の形を取るべきだろう。 それに関しては実のところたいしたことはない。 前世で剣道・・・というか暗殺系の剣術使いとかなりの頻度で訓練していたし、バジルくんにはれっきとした剣道の知識も教えてもらった。 遠くから、リボーンの視線を感じる。 だけど今回は前世とは違って打ってくる気配はない。 なのでオレは加減を誤って殺してしまうことがないように、敵を前にしたときと同じように一度目を閉じ深呼吸をする。 竹刀は両手で持っているけどだらりとたれたまま、これは始める前の精神統一。 山本やスクアーロをみているうちに、つい模倣していたらしい。 いけないいけない。オレは剣士じゃないのにね。 でもこれで随分落ち着いた。 さっきより頭もスッキリしている。 さぁ、運動もテストもすべてが普通な草食動物沢田綱吉なら、どうすべきか。 オレは呼吸をとととのえると、今度こそ剣道の構えを取る。 それに持田先輩は「お?」と少し顔をしかめたが、「あ、あの。よくわからないんですけど」と戸惑って見せるオレに、説明もなにもなしで、すぐに試合開始の試合開始の図を出させ、先手必勝とばかりに迫ってきた。 おいおいおいぃ!! 例え周囲の歓声でオレの声が聞こえないとはいえ、無視するなよ。 オレが前世道理無知だったらどうするんだよ。 そもそもさ、あからさまに剣道部っていう戦いなれた奴VS剣道なんて一度もしたことなさそうな沢田綱吉と戦わせる自体可笑しいだろ。 普通は・・・そう、だよね? え?もしかして並盛じゃぁ、そのぐらいのことは普通のなの? 本気で本気で、もしかしなくとも弱肉強食の実力(もとい暴力)の世界ですか!? 常識はどこ!!! っというか、どこからでもいいから、だれか現状について本気でつっこんでー!!! この現状にだんだん頭痛を覚え、オレは必死で逃げる演技をしつつも、この猪のような男にあきれ果てていた。 体育館中を走り回りながら逃げる。 しないで防御してもいいけど、それで一点だが何点だが奪われる可能性もある。 なので一度でも竹刀が交わることが内容に、お得意の超直感と運動神経でもってギリギリを計算して交わす。 そのまま持田先輩を観察するだけのゆとりが、今回はある。 ちらっとみただけだが、もうこれはだめだ。 ただの学生ってこんなもんなのかと、逃げ回るオレに怒り狂って顔を真っ赤に染めている相手をみて思う。 なによりこれはもう試合ではなく、あんたがオレを殴りたいだけだろうとか思わずにはいられない。 「先輩。相手の力量の差には気付くべきですよ。たとえ『試合』という名のままごとでしかないとしても」 オレとあなたの力量差。 それは経験から来るもの。 そしてオレは実力を隠している。 少しでも武術をかじっているものなら、オレがあの重い竹刀を軽々と持っていること、そして普通の市内でも持つかのように体育館中を走り回っていること。あの始めの構え。 それで気付くだろう。 オレがこの普段の笑顔ノン下に“なにか”を、実力を隠していると――。 気付いていたら動けるはずがないのにね。 それになにより、そんなルールにのっとた試合なんてものだけじゃ、ひとを守る動作にもなりはしない。 傷つける覚悟さえ中途半端で生まれるはずもない。 覚悟――。 そう、覚悟が必要だ。 すべて行動には責任が伴うのだから。 「わー!!なんかよくわかんないけどごめんなさーい!!」 オレはこの世界の沢田綱吉らしく、本気で困ったように叫びつつ、せまりくる相手を怖がるように目を閉じ、その場にしゃがみこむように頭を抱える。 っが、相手は突然オレが止まったものだからすぐ背後にいた彼は急には止まれず、床にうずくまるようなオレにひっかかってずべーっと盛大に顔面からこけた。 オレはまだ怖くて何も見えないとばかりにその不快な音に「ひぃ!!」っと大げさなまでに驚いてみせ、その衝動で立ち上がる振りをして、持田先輩の足に躓いて転けた。 躓いた衝撃で、オレが手にしていた竹刀がふっとび、微妙に意識があった持田先輩の顔面にドゴッ!と派手な音を立てて突き刺さる。 そのせいで防具のヒモがちぎれ、持田先輩の顔があらわになる。 防具をなくした彼は、顔面スラインディングという恥ずかしい光景を周囲に見せてしまったことで、その失態をオレのせいだといわんばかりに八つ当たりぎみに、般若の形相でオレを睨み、起き上がろうとしていた。 っが、しかし。不運にも偶然が重なり、こけて宙を舞っていたオレの身体が彼を押しつぶしてしまった。 これまた偶然にもでていたオレの肘。 「ぐぇっ!!」 「え?」 そして偶然がたまたまいくつも重なった結果、オレはしょせんエルボーなるものを彼に食らわしていた。 もちろん防具の上だし、手加減はしているので、彼の内臓が破けたり死ぬこともない。 見事な肘鉄をくらった持田先輩は、結局そのまま起き上がることなく気絶した。 持田先輩が地面と熱烈キスを交わすべく倒れてから、この間、およそ30秒以内に起こった出来事である。 「え!?ど、どうしたんですか先輩!?ってか、ご、ごめんさいふんじゃって!」 オレはなにがおこったのかわけがわからないとばかりに、慌てて彼の上からおり、オロオロとこのあとどうしたら言いかたずねるように周囲へ視線を向ける。 そこでふと彼の頭部が目に入った(ふり)をして――。 そぉ〜っと遠慮するように近づきつつ ブチ。 一本だけ毛を引っこ抜いてみる。 「あ、あの・・・一本です。だからあの、オレの勝ちってことで、この試合はおわりにしてください。 そ、それと・・あの・・・。 その。先輩に何があったかわからないんですけど、その・・保健室に連れて行ってあげてください! たぶんオレがぶつかっちゃってそれで頭でも打っちゃったんだと思うんです!だから!!」 無知で人畜無害な草食動物よろしく、側で呆然としたまま動けなくなっていた審判役の生徒に、持田先輩の毛を手渡す。 沢田綱吉は“しらない”から、とにかく『一本』抜いたのだと――そう思わせるために。 そのまま必死な様子で先輩を援護する。 「え、あー・・・えーっと」 「だって一本・・・」 「た、たしかにそうだけど」 「じゃぁ、いそいでください!本当に頭をうってたら大変じゃないですか!あの、先輩にはぶつかってごめんなさいって」 背の低い子から受ける――本当に困った。心配しています――という必死の形相は、けっこう胸に来るものだ。 オレは前世野経験でソレを身にしみて理解しているので、普段の沢田綱吉のイメージを壊さないよう懇願する。 別に奴をかばいたいとも哀れみも微塵もない。 だけどこのような場合に、たかだかと勝ったことをあけすけに自慢するように宣言したり、彼の悪口を言ってしまってはだめなのだ。 それでは今はよくとも、後々オレの印象が悪くなった場合、オレが善良ないい奴だとは誰も思わないままではいざというときかばってくれるものなどいなくなる。 なにせ沢田綱吉は、“無理やりわけのわからないことをさせられた被害者”なのだから。 ここでオレが持田先輩を倒したということで、彼が被害者となってしまっては困るのだ。 彼には純粋な沢田綱吉をはめた“悪”になってもらわなくはいけない。 そうでなくては、こういったやからは何度もオレに絡んでくるに違いないのだから。 少しはきゅうをすえるひつようがあった。 そうすれば少しは思慮深くもなるだろう。 なにせオレは、だれよりも平凡を望んでいるのだから。 これ以上、人の話を聞かないような被害妄想はなはだしいストーカー野郎などにまとわりつかれたらうっとうしくてしょうがない。 だからこれが正解。 オレが被害者でいるためと、周囲からの同情をえて、さらにはオレという存在に対する高感度を下げないためには、状況がわかっていないものの彼を助けるという好意が必要だった。 これだけ野次馬がいるのだ。 十分効果はあっただろう。 オレの必死の演技(コトバ)が通じたのか、審判はたしかに「いっぽん。勝者沢田!」そう宣言すると、そくさくと撤退を始めた。 もちろん首相たる持田氏をきちんと拾って。 オレはそんな彼らにほっと息をつく。 ついでにまだ残っている周囲に聞こえるように、最後の賽をなげる。 「ふぅ〜。よかったぁ。これで持田先輩大丈夫だね」 オレの言葉に周囲に居た生徒達が「お前ってどこまでお人よしなんだ」とか「よくやったぞ沢田!!あいつに勝つなんて!」「沢田君なんて優しいの」とか・・・想像道理くいついてきた。 そんな幼い魚たちの声が波紋のように広がり、オレをたたえる声と持田批判の声が上がりだす。 それにオレはやはり奴を弁護しつつ、困ったように「なんで挑まれたのかもわかんなかったんだけどね」とか「剣道ってルールしらなくて」とか・・・苦笑を浮かべて告げる。 うん。オレの評判は上場だ。 さすがに古狸どもとの腹の探り合いに比べると、みんな、純粋でなんて可愛い子たちなんだろうと思わず笑みがこぼれた。 「みんな、ありがとう」 きみたちの純粋さはオレの癒しです。 毛一本で、大量に釣れたそんな日。 【オマケ】 困った顔をしつつも自分に暴力を振るおうとした相手を必死でかばう綱吉。 そしてその最後に見せた笑顔に、その場にいた全員の空気が一気に和む。 オレを気遣ってくれてありがとう。 オレは大丈夫だから。 心から嬉しいといわんばかりの柔らかい微笑みは、一瞬ひどく大人びてもみえ―― そのときむけられた笑顔に、全員が誤解をした。 (あんな笑顔を見せられちゃぁ。なにもいえねー) (持田には言いたいことが山ほどあるのに・・・沢田君がダメって言うからいえないわ) (勝手にひっぱって勝手に挑んで・・・沢田のやつなんだってあんなやつに巻き込まれたんだか。かわいそうに) とかとか。 互いの心情を彼らが知りわかりあうことはない。 そのときリボーンは柱の影でボルサリーノを目深まで下げたあと、その場から隠れるように姿を消した。 その顔が死人もビックリといわんばかりに真っ青になっていたのをしるは――― 「あらら。そこまでおびえなくてもいいと思うのに」 ひどいなぁ〜。 綱吉は生徒達にもみくちゃにされながら、消えた気配にニヤリと口端を持ち上げた。 |