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06. 極めつけが |
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最近は何事もなく中学生活を過ごしていたんだけどねぇ。 「ねぇ。また風邪をひいて学校を休みたいのかな?」 目の前でビクリと肩を震わして正座している銀色に、オレはニッコリと笑う。 九代目、あのやろう。 ついに騒がしさをこの平穏な時間に連れてきやがった。 :: side 沢田綱吉 :: オレはダメツナ。ではないにしても完全な優等生でもないわけで。 パシリにされないまでも掃除を押し付けられることは多々ある。 優しい綱吉君ならやってくれるだろ?って、ことだろう。 まぁ、これといって中学生生活なんて、特にやることもないので、別にかまわないのだが。 おしつけられてもかまいはしないのだが。 かまいは、しないのだが。 “コレ”に関しては、どうしようもないほど、超直感が警戒音を鳴らすわけで―― 水の入ったバケツをもってモップを手にして廊下を陽気に歩いていれば、中学校には不釣り合いな煙草のにおいがどこからともなくして思わず顔をしかめた。 無意識に匂いをたどってしまうのは・・・たぶんその発生源を探そうとする人間の本能のようなもの。 そこで見たのは、窓。 匂いは窓の外からだった。 そのまま窓の外へと顔を覗かせれば、校舎に寄りかかって煙草をふかす銀髪の少年が目に入った。 瞬間、もうそれは無意識に―― 「未成年がタバコなんか吸っちゃダメだよ」 手にしていたバケツを通著なくヒックリ返してやった。 それのせいでザバーっと水が銀髪の少年いかかるがしったことではない。 むしろザマァとさえ思える。 前世から数えれば幾年か。 その積年の恨みが張らせたようで少しだけ気分がスッとしたし、 ぬれねずみになった奴をみれば腹の底から笑いたくなるが、それを絶対に表に出さずに、ニコニコと“なにもわかりません”とばかりに笑いかけてやる。 「てめぇ!」 「みたことないけど・・・君、制服を着てるってことはうちの学校の奴でしょ?中学生がだめだよ」 ギロリと、マフィアもおびえる恐ろしい睨みをもらったが、オレは三階の廊下であることをいいことにそのまま“なにも”気付かないふりをして手を振って窓から引っ込む。 そもそもオレは正論しか言ってない。 そのあとは、窓から侵入とか。 後を追われるのも嫌で、超直感をフルに使って人の気配をよけて全力疾走して教室に戻った。 ああ、みごとに“むかしのまま”でしたね、彼。 彼に睨まれるなんていったい何十年ぶりだろうか。 あまりに懐かしい光景すぎて、ひそかに噴出しそうになったのは秘密だ。 ほら、彼って本当に忠犬だったから、オレがあいつのダイナマイトを消す事件後は一度も睨まれたことはなかったもんねぇ。 それにしても誰だ。オレの平穏を壊そうとしているのは? オレは本当に今回の人生ではマフィアにかかわる気は微塵もないわけで。 ま、“そんなの”誰がやったなんて決まってるけどねぇ。 「あの狸爺バカなの?」 せっかくリボーンをファーストエディションで突き返えすことで、継承拒否を“穏便に”告げてあげたのに。 なに? つまりあのひと、オレにケンカ売ってんのかなぁ。 オレが買ったら、簡単にボンゴレはつぶれるけどね。 まぁ、だからといってそんな“こっちへこい”とばかりの誘いのごとき挑発にはのらないよ。 喧嘩さえ買う気なんかないんだからさ。 本当に九代目ってこりないよねぇ。 でも十代目・・・なりたくないんだよなぁ。 あ。そっか! “今回”は、獄寺君のボスに認定されなければいいわけだ。 そうすれば十代目ってついてこなくなるよね彼? 幻滅してくれないかなぁ。 ******** 獄寺君はずぶぬれのままで怒りもあらわに教室に入って――― は、こなかった。 結局、ずぶぬれになったせいで、職員室に行ったところ一回家に帰されたらしく、結局彼がクラスメートたちに紹介されたのは翌日のことだった。 ッチ。どうせならそのままイタリアへ帰郷フラグが立てばよかったのに。 なんで翌日に律儀に登校するかなぁ。 もちろん彼は、オレの顔を見るなり「テメェ!!昨日の」と怒鳴ったあげく、胸倉をつかんできましたよ。 先生にとがめられ、舌打ちをした、思いっきりオレを突き放すと、八つ当たりに机を蹴り飛ばしてきたけどね。 「君、転校生だったんだね。 ところで・・・えーっと。 オレ、なんで呼ばれたのかな?」 っで。放課後、裏庭に呼ばれました。 「リボーンさん。あいつを倒せば俺が十代目になれるんですよね!」 「ああ、そうだぞ」 「お前が十代目だなんて俺はしんじな・・・!!!!!」 ズボッ!!!! ハイ。信じなくても結構です。ついでにいうとなりたいのならなれば?十代目。 オレ、興味ないですし。 突如空いた穴に落ちた銀色の少年に、合掌をする。ま、すでに穴の底の彼が見えるはずもないけど。 煙草をくわえ、睨みつけながらこちらに指をさし、あげく手にはダイナマイトを用意し、今にも罵声と共にこちらに攻撃を仕掛けようとした彼は、なぜか突如空いた 巨大なクレーターに飲み込まれてしまった。 罵声の代わりに彼の口から悲鳴が漏れていたが、その間の煙草はどうなっているのだろう? みなくてもわかる。 穴の深さはけっこうあって、オレが手を伸ばしても届かない深さだ。 中には水がたっぷりはいっているんだ。 大丈夫。ダイナマイトはちゃんと今頃沈静化してるよ。 水がなかったら打撲じゃすまなかったかもね。 え?安否を気にしないのかって? どうせ彼のことだから死にはしないだろうし。むしろこんなことで死ぬようじゃ・・・ねぇ。この先の未来、どうやってオレとマフィアやってたのか疑っちゃうよ。 そうなったら、“未来”における全オレの敵は弱いってことで、そいつらに負けたお前はさらに弱いってことで。お前事“未来のすべて”を鼻でわらっちゃうよオレ? そもそも死ぬわけないじゃん。ちゃんと計算済みだよ。 っていうか、オレが堀ったんだから、穴の内容を知ってるのは当然じゃん。 いつ掘ったかって?昨日の夜だよ。寝る前に、ちょこっと死ぬ気になって掘ったけど。それがなに? まぁ、リボーンにはみつかったよ。窓からスコップ片手にぬけだそうとしたら、起きてきたリボーンに銃をむけられて「どこいくきだ」って言われた。 「やだなぁ、もうお子様寝る時間だよ」とオレは笑顔で対抗。そのままリボーンの銃弾を避け、ガムテープで彼を壁にはりつけにしてきた。 その後に、掘った。 未来の記憶があるっていうのはいいね。さらに超直感が細かい修正を教えてくれるので、場所も時間も想定済みというわけだ。 っと、いうわけで。 「わー転校生君が穴におこっちゃった!先生を呼ばなきゃ!!」 オレはさもあわてたように声を上げると、そのままその場を去った。 バシャバシャという水音と「なんだこれは!!」という大声が穴から聞こえてくるが、わざわざ優しさを印象付けるように「大丈夫?」なんて覗いて声をかけようとは思わない。 だってオレは彼に幻滅してほしいのだから。 死ぬ気で――十代目となるきっかけなんかつくらせない! 困った様子で先生を呼びに行くことにして立ち上がる。 「待っててね銀髪君!いま、先生呼んでくるから!」 とはいうが、まったくもって呼ぶ気もなければ、助けてやるつもりもない。 しばらくそこで頭を冷やしてろ。 オレのことそうやって幻滅すればいい。 そもそも頭がいい彼なら今までの会話で気づいただろう。 オレが同じクラスになった彼の名前をまだ覚えていないことに。 だってオレはまだ一度も彼の名を読んでない。 もちろん知らないはずもないが、そこは減点の対象にしてもらうための方便だと思ってくれればいい。演技だよ。あたりまえだろ。 クルリと穴に背をむけて。 あわてる気もなく、ゆっくり歩き出す。 背後の穴から獄寺君によるイタリア語のフランクな罵声が聞こえたが、オレのせいじゃないですよ。 勝手に落ちたのはそっちでしょう? そもそもオレが堀田という証拠はどこにあるんです? 走っている途中にあった木の枝のところにいたリボーンが顔をひきつらせてオレをみつめてきた。 「綱吉、おまえ・・・」 「大変だね。 たまたま地盤沈下がおきるんなんて」 のちの調査の結果、地下水がいつもよりかさを増して、その影響で水が岩盤にしみこんで土が柔らかくなったことで空いた穴とをもろくして、あげくぼこっと穴が開いたらしい。 へぇ。 それは大変だ。 よく銀髪の転校生君は無事だったねぇ。 彼は初日から水をかぶり、二日目には突発的な地盤地下に巻き込まれまたずぶぬれになり、そのまま風邪をひき、熱を出したらしい。 転校のために引っ越したばかりで風邪薬もなかっただろう。 さらには一人暮らし。 彼は病院に行っただろうか?市販の薬ぐらい手に入れられただろうか? そんなわけで、獄寺隼人。 転校から三日目。 本日も彼はおやすみである。 それが6月25日から27日の、些細な出来事である。 っが、しかし。 29日におきたとある事件を目撃した銀色が、目を輝かせてオレを「十代目」と呼ぶようになるのはもう少し先の話。 【オマケ】 「おみそれしました!あなたのようなすばらしいひとこそ十代目にふさわ・・・」 「日本語上手だね転校生。 なら、オレさっき『オレをボンゴレに巻き込まないで』って言った意味、わかるよね? それともあれかな?風邪をひくとみんな頭が働かなくなるっていうけど・・・。おかしいね?もう君、風は治ったはずだよね。 ならなんで日本語が通じないのかな? そっか。君は物好きなんだね転校生。馬鹿になりたかったからそうやってバカのふりをするんだね」 「へぇー獄寺ってやっぱ頭いいのな。イタリアからの帰国子女でも日本語ペラペラだもんな」 「ちょっと山本もうるさい。あと転校生、君はオレを十代目と呼ばないでくれる? あと、オレ、誰にも何もしてないから。二人とも勝手にオレのこと認めないでくれる?」 「す、すいませんジュウダ・・・」 「呼ばないでって“今”言ったよね?」 「アハハ。ツナはすげーのな」と、のんきに笑ってるバカを横に、オレは銀色の風邪っぴき転校生を正座させた。 「ねぇ。また風邪をひいて学校を休みたいのかな?」 なにがどうしてこうなった? |