目指せ!未来の回避!
- 家庭教師ヒットマン REBORN!! -



03. うつりかわる空模様





:: side リボーン ::





 ボンゴレ九代目ティモッティモに頼まれ、十代目候補となる沢田綱吉を鍛えてほしいということだった。
噂ではまったくマフィアのことさえ知らない一般人で、死ぬ気の炎さえ出したことが一度もないという。

「なぜそいつなんだ?」
「ふふ。なぜだろうね。わたしの勘がねあの子しかいないと囁くんだよ。これをのがしたらいけないと思ってしまってね」
「超直感か」

ボンゴレの血に宿る脅威の直感力。
その言葉に、乗り気じゃないが“トゥリニセッテ”が関わっている限り仕方がないと、ティモッティモの依頼を受けるしかなかった。

ふとこいつには実の息子がいたことを思い出し

「ザンザスはどうした?」

ティモッティモからの返答はなかった。
憂いがちにうせられた目が全てを語っている。
それゆえに、この話についてはこれで終わりだと、あれ以上のことを尋ねることはできなかった。
オレはボルサリーノを目深まで下げると、いってくるとだけ告げて日本へ向かった。





 依頼人は、ボンゴレ門外顧問“沢田家光”の一人息子。

「ん〜。これもゴミだな」

 家光の妻、奈々はほんわかとした天然。
その息子、綱吉は、奈々の息子といった感じでおっとりした感じの奴だった。
最近の子供にしては少し落ち着いているようにも見えるが、ただほんわかしてマイペースなだけともとれる。頭に関しては可もなく不可もなく、性格は・・・少しばかりやる気はないようだが、これといって特徴のない平凡な子供だった。
そんな綱吉と奈々の二人がそろうと、なんとなく空気がまったりとして背景に花が飛ぶ。
あのふわふわっとした二人なら、『綱吉にやる気を出させるためにきた家庭教師』とでもいえば疑うことなく自分を雇うだろう。
そう考え、すぐにでも潜り込むべく、沢田家のポストに、家庭教師の広告を入れた。
しかしそれを取ったのは、母親の方ではなくターゲットたる綱吉だった。
そういえばこの三日間様子を疑っていた限り、奈々の方がポストを開くことは一度もしなかったのを思い出す。
オレとしたことがうっかりしていたようだ。
綱吉は気にもせずにおれの作ったチラシを他のチラシと一緒くたにすると、そのまま室内に入ってしまった。
どうやらあの後、反応がなかったことから、奈々も綱吉もあのチラシには気付かなかったようだ。


「おじさ〜ん、リンゴくださいな」

 チラシをいれたその日の放課後、綱吉はリンゴを買っていた。
奈々に頼まれたのだろう。
個数までは分からなかったが、それなりの数を買ったようで、あとで届けるという約束をしていた。
それから綱吉をおいかけ、あいつが家に帰ったタイミングをはかり、家に勝手に上がらせてもらった。
あんなおっとりとしている二人だから、オレがおしかければ断ることもできないだろう。
もし綱吉が騒ぐそぶりを見せたら銃を向ければいい。
普通の一般人はそれですぐに静かになるものだ。
しかし、銃を出すことはできなかった。

 勝手に家に入った。
母親の方は少し驚いた風だったが、すぐに持ち前の天然さでオレのことをスルーした。
綱吉は、ただ笑っていた。
その瞳があまりに優しげで、突然はいってきたにも関わらず怒鳴るでもなく、オレが赤ん坊であることさえ気にもしていない風だった。
 オレは呪われた赤ん坊。
ゆえに普通の赤ん坊と違って、この姿でしっかりと首も据わっていて、口達者に話すし、二本の足で立って歩くこともできる。
オレたちアルコバレーノをみたとき、ひとは驚愕の表情を浮かべる。
不気味な赤ん坊だと気味悪がるか、変なものを見るような目でみるのだ。
あるいはただの赤ん坊としてオレたちを扱う者にわかれる。
裏の世界で生きるものたちは、アルコバレーノを、凄い腕を持つ赤ん坊のヒットマンとみているものもいる。

奇異、畏怖、恐怖、脅威、敬意、羨望、憧憬・・・。

アルコバレーノに向けられるのは常にそれらのみ。
 しかし、そのどれもそれがこの沢田綱吉にはなかった。
母親の奈々は、オレをただの赤ん坊と認識した。
沢田綱吉だけが・・・そのままのすべてを受け入れた。
赤ん坊扱いはするが、そこに本当の意味で赤ん坊扱いしていないのだ。
まるでただの赤ん坊でないことが“わかっている”かのように、慈愛の笑みを浮かべ、それでもあえて赤ん坊の身体を気遣う――いままでにない感覚に、銃など向けるべきでないと思わせられる。
赤ん坊たるオレを前にしても一度もその瞳は揺らがなかった。
普通の子ども扱いをして足を拭いたりするのに、なぜかさからえないのは、その穏やかすぎる深い色の瞳ゆえだろう。

・・・ルーチェを思い出す。
大空の意思を宿す強い瞳。
けれど綱吉は、そこにすべてを包み込むような穏やかさが加えられている。

幼い外見には不釣合いな穏やかさにほだされそうになる。
あまりにその大空の気質が心地よくて、オレがその腕の中に抱かれているというに、なぜかこっちが守ってやらなくてはいけない気がしてしまった。

 オレをオレとして認めてくれている。
なのにその腕で包み込んで、呪われたこの身に暖かさをくれる。

これ以上の言葉は浮かばないほど、沢田綱吉は“違う”。
あぁ、ティモッティモの勘はやはりあたっていたようだと思わず納得させられる。


――大空の気質。

すべてをありのままうけいれ、包容する大空こというのは、こういうのをいうのだろうとさえ思えた。

 一度その暖かさを知ってしまったら、もう、どうしても手を出すことはできそうになかった。
さすがはボンゴレの大空だ。
ハンパない。





 この大空なら、次期後継にふさわしい。
優しすぎる気もするが、そこはオレたちが守ろうと――舌打ちをしながら誓いを立てた。



っが、しかし。


「むー!!!」
「言っただろう?おうちまで送ってあげるって。途中まで一緒にいこうね〜ってさ」

 世の中そんなに甘くはなかった。
最後の最後まで、天然らしいほんわかとした笑顔や、穏やで暖かな雰囲気のまま、は、オレをガムテで縛り上げた挙句、レオンごと箱に詰めやがった。
あの笑顔に騙されたと気づいたときには遅く・・・

オレの意識はそこでブラックアウトした。

まさか綱吉が買ったリンゴが、オレをつめるためのものだったなんて。
いったい、この世界の中の誰が想像できるだろうか?



――何も知らないはずのチワワが、実はすべてを知っている賢者だと知った。





 ちなみに。

 目覚めたとき、オレは仮死状態で冷凍保存されていたらしい。
だれがふれてもどんな熱や機材でもその氷は溶けず、現ボンゴレボスが触れてはじめて氷は解けたとかで。
おいおいおい。
まさかと思うが、そのときの氷って・・・・・・いや。あってほしくないし、ありえない。あるはずない。
『死ぬ気の炎』も知らないはずのこどもが、初代のあれを使えるとか。

「・・・・・・」

あってくれるなとオレは思わず心の中で神に願っていた。
この身がのろいにかけられる以前から神など信じたこともなく、赤ん坊になってからは余計に神などいないと、怨む気持ちはあってもすがったことはなかった。 そのオレが、思わず神に祈った。
どうかもうあのこどもと二度とかかわりがないようにと。










 それからイタリアの某マフィアの本宅にて――

「なぁ、ティモッティモ。“アレ”はなんだ?」
「う〜ん。おかしいね。本当にあの子は何も知らないはずだったんだけど・・・」
「いや、間違いなくあいつは知ってるゾ。それも全部。
じゃなかったらどうやってオレをボンゴレの本部宛に送り届けられる?
オレがイタリアから来たことも知っていたしな。何者だ?」
「・・・ははは。恐るべきはボンゴレの超直感・・・かな?」

「この任、降りたいんだが・・・・・・」

「おやおや。さすがのアルコバレーノが逃げるのかい?」
「・・・・・・」

 穏やかな性格で有名なボンゴレ九代目ティモッティモの笑顔をみて、とある一流ヒットマンは顔をひきつらせた。
そのとき黄色のアルコバレーノは思ったそうな。

ボンゴレの笑顔は、全員狸だと――。















【オマケ】

恐怖を知った日。
アサリのくせに狸だなんて・・・なんて奴らだ。








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