影と咲く陽だまりの奏
-HUNTER×HUNTER-



03. その暖かい手に救われていた





両親が死んだあと、自分をひきとったのは、母と同じ髪色をした青年。
泣き虫な彼は、滝のように涙を流し、鼻水をたらしてわしの前に現れた。

みていられないほどなさけない顔のくせに、それでもあやつが伸ばした手はとても暖かった。

そのあたたかさに、その手をとった。








:: side 爺さん ::








。そっちじゃないぞ」

やさしく笑いながら手を伸ばしてくれのは、両親じゃない。
あの優しい二人は、自分が歩けるようになると事故で死んでしまった。
まだうまく話もできず、1、2歳の子供が料理などできるはずもなく、生きていくすべを失った時、母の従弟だという青年 ツバキ・コンセ に引き取られた。

この世界はどうやら生前に孫が読んでいた漫画のような世界で、弱肉強食の世界だった。
弱いものは生きていけない。
だからハンターという職業がある。
そんな世界。

電気も通っていてネットも携帯もゲームももといた世界と同じようにあるのに、すぐ側の森にさえ見たこともない動物が牙を剥いていて、 魔法使いじみたハンターたちが世界を駆け巡っている。

冒険者や研究者、考古学者、料理家...それらの職業にかかわらず、ハンターとは優遇されるらしく、さらに資格を持つものたちがハンターとよばれているらしい。
ひきとられるとき家から持ってきた絵本にさえハンターが猛獣を狩ったり、財宝を見つけたりしているものばかりだった。

自分を拾ってくれたツバキもまたハンターだった。
けれど強くなければ生き延びられない世界で、ツバキは、ハンターには似合わないほど優しく、涙もろくほだされやすい男だった。

それでも優しい彼もまたこの世界で生きるハンターらしく、困っているもの誰にでも手を差し伸べるわけでもないし、何かを殺せないというわけではなかった。
強くはないのだろうが、武器を武器として振るうことにためらいはない。

それが自分を拾い7歳まで育てたハンターだった。


ちなみに自分でも良くわかっていたのだが、わしは相当の方向音痴らしい。
おかげで幾度もツバキとはぐれた。

方向音痴というよりは、前の世界との違いに驚かされてついあちこち見に行ってしまう...悪い癖が生まれ変わってから定着してしまった。
その際にやたらといろんなものに襲われたり巻き込まれたりしたが、なぜか無傷ですんだ。
更に、迷子になりやすい自分のために、ツバキは迷子札なるものをつくってくれた。

『これでは中だけじゃなく、痴呆になって彷徨う老人にでもなった気分だのう』

生前は最後までボケなかったというのに。

そうつぶやいたら、真剣な顔で、迷子を捜すこちらの身になってくれと目に涙をためた状態でさとされた。

「これは最終手段なんだからな。すぐ迷子になるお前のためを思ってなんだ。 いいか。ここに俺の携帯番号書いたからなくすなよ。なくしたらお前のこと迎えにいけなくなっちまうんだからな」

もう家族を亡くしたくないんだとまで言われては頷くしかなった。

『わかった』


ツバキにも話すつもりはなかったが、ひきとらてすぐに子供らしいふりというのが演技だとばれてしまった。
さすがハンター。
細かいことに気付く。
それがきっかけで、わしは素のままの爺くさい態度でいることとなったわけじゃな。


そもそも、わしが普通の子供であるわけがないのだ。
なまじ98年も前だと、子供がどれくらいの速さで成長するのか良くわからなかったのだ。
そのせいで3歳の頃には、すべてツバキに話していた。
98歳で死んで、自分の世界とは違うこの世界に転生したこともすべてだ。

自分の身に振りかかたことであるのに、ばかげた話だとは自分でも思っていた。
しかしツバキは子供の妄想とは思わず、最後までわしの話を聞いてくれた。

こうやってまっすぐ目を見て話す人間は好きだ。
ツバキは人の目をよく見る。目を見て、その人が嘘をついているかついていないか判断するのが得意だ。
長い間ハンターをしているせいで人を見る目だけはあると言っていた。
わしもその言葉を信じた。

だからすべてを話すし、気がついたら遠慮をしなくていい関係になっていた。
口調もいつのまにかこどもらしいものじゃなく、慣れ親しんだままの前世の口調のそれだ。
こどもらしくないとはよく言われるが、ツバキは「はそっちのほうがらしい」といってくれるので直す気もない。

そうやって・コンセと、ツバキ・コンセは、ともに暮らし、旅をして世界中を回った。



旅していたあるとき。あれはわしが五歳になった時じゃったか。
体から煙のようなものを出している者にあった。
不思議に思ってついていくと、見えない力で吹き飛ばされた。
その後、ツバキに救出され、あの煙は何だと聞くと、彼はひどく驚いていた。

。年の功でお前がどんなに頭がよくとも絶対からだから湯気が出てる人の後を追うな」
『なぜじゃ?』
「そういうひとは怖い人なんだよ」
『じゃがのう。たまにツバキからもでている』
「あちゃー...。そこまで見えてるのってば、本当に規格外だな」

「じゃぁ、はっきりおう。
お前があの煙に興味を持って近づくと、悪いことがおきるんだよ。
たとえば森で盗賊に教われただろ?
あのときお前の周りの全員があのゆげをだしていたんだ。っで、お前が無意識に近づくとそいつらが血まみれになるという怪奇現象が起きる。
いまだって、相手が大きかったから逆にお前がふっとんだろう?」

このときはどういことなのか、言っていることはよくわからなかったが、どうも自分は “煙を出す人” と相性が悪いということだけはわかった。
後々、それが「オーラ」というものだと知るのは随分と先のこと。

「とにかく。あんまり俺から離れるなよ」
『うん』

“煙を出す人” は意識してよくよく目を凝らすと、あちこちにたくさんいた。
だから極端に一人にならないよう気をつけていたのだが・・・
不運というのは時に予想しないところから来るものだ。








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