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02. あの空と同じ色だから |
紺色の髪は、とてもきれいじゃった。 空の様に青い瞳は、いつも優しかった。 だというのに、伸ばされた暖かい手はもうどこにもないのだと思うと・・・ いまさら “あちら” に帰りたいとは思わない。 “あちら” で自分は好きなことを貫き通し、満足して死んだのだから。 悔いなどあるはずもない。 けれどたまにだ。 たま〜に。 “ココ” は、異世界なのだと思い知らされて...懐かしくなるのだ。 それだけだ。 :: side 爺さん :: なぜ死んだ自分がここにいるのか。 なぜ前世の 〈爺〉 としての記憶があるのか。 それとも自分は、本当はまだ生きていて死んでいないのではないか? ただ夢を見ているだけなのではないか? 立ち止まってしまえば、誰かに聞かずにはいられないような問いがあふれ出てくる。 自分では知りようがないから、わからないから...思いつく言葉の羅列。 それでも死んだという感覚は魂に深く刻みついているし、誰に聞いてもわからないという答えが返ってくるのは明白だった。 この問いに答えられるとしたら、せいぜいが全知全能の神ぐらいだろう。 『本当に後悔はないんじゃよ』 今の両親は大好きだ。 少し他とは違って、あきらかに変な子供であろう自分にも優しく、ときには厳しく...。 わしにとっては二度目の人生だ。 だからといってヒーローを気取るような馬鹿な真似などせず、ゆっくりと、この新しい両親らとともに穏やかな生活をしたいとそう暮らしていた。 魂には深く、深く、己がいままで生きてきた前世の記憶が色濃く残っている。 そのせいで口調や性格まで爺のママであったが、それでもかわまず両親はわしをかわいがってくれた。 だからこそ赤ん坊からやり直すのは予想外だったが、これこそが本当の老後と思って、新しいすべてを受け入れよう。 そ思っていた。 ただ―― そんな小さな夢もすぐに壊れてしまうとは思いもよらなかったが。 一瞬で奪われた大切なもの。 優しい両親は、事故で突然死んでしまった。 ゆえに、思い出すのだ。 亡くした物を思い出し、失くした物を思い出す。 それにひきずられるように、前世の記憶がふとした拍子に暴れだす。 自分が思いのほか傷つき、さびしいのだ――と、気付いたのは、いつだったか。 〈前世の自分〉 は否定する。 “ここ” は違う。 自分がいた場所とは常識も価値観も違う別の世界だと――。 思い出した記憶に苦笑を浮かべて―― “エイリ” は『本当に悔いはないんじゃがのう』ともう一度呟いた。 だから困るというのに。 見上げた空は、相変わらず父の瞳のように青い。 丘から見渡せる海は、母の髪の色。その腕に抱かれたひとときを思い出させる包容力があり、深い色をしている よく、空は繋がっているというが・・・ 世界を越えてまで同じとは限らないだろう。 それでも「まぁ、いいか」と思う。 『ふむ。ならば魂は時空やら次元を超えられるのかもしれぬのう』 自分が死して生まれ変わったなら、本当に魂は回っているのかもしれない。 それは世界さえも越えることはあるかもしれない。 ならば、またいつか “こちら” の母と父ともいずこか出会えるのかも知れない。 『いずれ、また・・・なぁ〜んての』 海の見渡せる丘の上で子供が一人。 両親譲りの空の色をとじこめた青の瞳が、不思議そうに空を見上げていた。 |