赤 色 逃 避 行
- 伝 説 で い こ う ! -



10.青と黄色を混ぜたら緑になる
『』・・・普通の人には聞こえなかったり理解できない会話。テレパスやポケモンの声など。
≪≫・・・夢主による筆談。









side 主人公








「こんにちわ〜。レッドさんいらっしゃいますかぁ〜」

 レッドさん家にお世話になってから一ヶ月ぐらい。
ある日、家の扉がコンコンとノックされた。
それに不思議に思って首をかしげる。



 結局、はったもんだのすえ、オレはやはりというべきか、町でレッドさんの家にやっかいになっています。
まずはオレのせいでたおれてしまったゴールドの治療という名目だったのが、気付いたらレッドさんの家の留守をあづかる羽目となった。
というか、この世界ではオレはポケモンにおそわれないので、ちゃんと日課である博士の家に連絡するのも忘れず、最近では自ら博士の家に間で遊びに行くようになった。
うむ。人間でなければ、オレも随分この世界になじめた気がする。

 レッドさんには家族がいないらしく、レッドさんはオレを本当の兄弟のように扱ってくれるのが、申し訳なさとくすぐったさでうめつくされそうだ。
おかげで周囲の認識は、オレは生き別れたレッドさんの身内ということになっているようだ。


 さて。本題に入ろうか。
 町に降りたのはいいが、オレの行動範囲はとことん狭く、オーキド博士の家とレッドさんの家の往復しかしていない。
まぁ、しょせんコミュ障ですし。

 そんなオレを尋ねてくる人もなく、このマサラで知り合いはまだいない。
数少ない知り合いなのは、レッドさんとゴールドくらい。
だけどゴールドに連絡を取ると、必ずレッドさんがでて、会話にならない。
しかも山には入るなといわれているのでおとなしくしているので、向こうから来てもらうしかない。
現にオレって方向音痴だから、それはしょうがないなと了承したんだ。
でもレッドさんは一人暮らしで、オレのように母さんが家にいるでもない。
騒がしい伯母一家がどこかにいるわけでもない。
似て非なる世界。
やっぱり親しい人がいないのは寂しい。
だから唯一の知り合いでありほっとする存在であるゴールドに、なんとはなしに電話越しに会いたいな〜と言ったら、どうもレッドさんがゴールドをひきとめているらしく離してくれないとか泣き言をいわれてしまった。
こっちのオーキド博士やグリーンとは会ったこともあるけど、やっぱり数日一緒に過ごすとみんなオレに出歩くなという。

だからマサラでも交流はなく、どうしようもないほど平和で怠惰なヒコモリ生活をエンジョイしていた。

 そんなオレの元。もといレッド邸に来訪者が訪れた。

くんピンチだ!逃げよう!!』
『大丈夫だよレッド・・・じゃなくて。もう変身したし。ボク、今日はピカチュウでいるからさ』
『そういう問題じゃないんだ〜!!』

 ノックと共にフワフワとミュウの姿で宙に浮いていたくんが、ポォっと光に包まれたかと思ったときにはもうピカチュウの姿になっていた。
クルリと空中で回転してバランスをと問えてトンと本のわずかな音だけを立てて床に着地する。
オレが言いたいことをわかってるくせに、ニヤニヤと笑みを浮かべながら違う言葉を返してきて、そのままテッテッテとオレの肩に飛び乗って、早く扉を開けろとシッポでうながしてくる。

「すみませんレッドさん。どうか話を聞いてもらえませんか」


『ほら。呼んでるよ“レッド”』
『ここのレッドはオレじゃない!!そ、そもそも・・・お、オレが人見知りだとしってるくせに〜!!!』
『君の場合は人見知りの領域を超えてもう人間恐怖症じゃない。リハビリだとでも思っていってきなよ』

オレは声が出ないから、客が着たら居留守を使うか、直に扉を開けなければいけない。
この世界でこんな可愛い声をした知り合いはいない。
つまりそれはこの扉の向こうにいるのは知らないひとということ。

無理だ。
怖い。

『ほらレッド』
『ひぃ〜!!』

 オレがひっしにはしらにしがみついて踏ん張るのだが、くんオハコのサイコキネシスがオレを無理やり扉へ動かせる。
しかもくんってば、中に人がいることを証明するように、さっきから「ピッピカチュ!」「ピッカー」とかしっかり外に聞こえるようにピカチュウの声を発してくれている。
さらには視線だけでテーブルの上においてあったオレの赤い帽子を浮かして、オレの頭にかぶせてきた。
これはなにがんでも「いけ」ということか!?

この裏切りものめ!!

「あのぉ、レッドさん?」
「もう!レッドのやつなにやってるのよ!いるのはわかってるんだから早く出てきなさい!!可愛い女の子が二人も外で待ちぼうけくらってるのよ!」


『ひぃ〜!!!!ま、また、声が増えた!!お、女の子の声がぁ〜〜〜〜〜!!!!!何人?何人いるのぉっ!?』

 オレにとって複数形の女子ほど怖いものはない。
だけど壁やら柱やらテーブルにしがみつくも、あっけなくくんの「ピッカ、チュウ!」という一声で電撃が飛んでくるわ、サイコキネシスで引き離されるわ・・・結果。

ガチャリ。

オレの手は、オレの意思とは関係なく玄関の扉を開けた。

扉特有のきしむような音を立てることなく扉はスぅーっとひらく。

「ちょっとぉレッド!シロガネ山からマサラに帰ってきたならそう言いなさいよね!!わたしもイエローも待ってたのよ!」
「あ、あのレッドさん。お、お久しぶりです。そ、その・・・チュチュがピカに会いたがって・・・えっと、その・・・ぼ、ぼくもレッドさんにお話が・・・・・」

扉の向こう。
そこにいいたのは――

 男の子の格好をしている黄色の髪をポニーテールにした女の子。
そして黒いワンピースに亜麻色の髪を長く伸ばした気の強そうな女の子。

 一人はなにか言いたいのにいえないといた感じでこまったように視線を合わせない。
もうひとりは扉をあけたとたん勢いよく怒鳴り込んできた。

オレの心臓はもちそうもありません。
思わずあまりの怖さに意識が飛びかけた。

「あら?レッド・・・じゃない?」
「え!?そんな!?」

扉を開けた瞬間、突然知らない人に胸倉つかまれ罵倒され、ガクガクとゆさぶられ、オレの小鳥のような心臓は恐怖に大きく跳ねた。
オレはその恐怖が一気に限界に達したのと、激しく揺さぶられたせいで、気がつくと目の前が真っ暗になっていた。
あっけなく意識を手放す寸前、くんの呆れた様なため息と、驚くような二人の女の子の声が耳に付いた。





**********





 目を覚ましたオレが最初にみたのは、大地を思わせる茶色の髪。すげートゲトゲした毛だと。まぁ、それが第一印象である。
そして次に視界に入ったのは、目に優しい癒しの色――緑色。
黒にも見える深い緑の服。

あぁ、いつも“あいつ”が着てる服に似てる。

グリーンかな。
グリーンってば過保護だからなぁ。そういえばリザードン、グリーンに返さなきゃ・・・。

 まだふわふわした感じで、いまいち夢を見ている気がする。
そのまま、ベッド脇にある椅子に腰掛けて本を読む相手に手を伸ばす。

『おはよう。グリーン』

 声の出ないオレはいつものようにクイっとグリーンの服の裾を軽くひっぱる。
そこで振り返ったトゲトゲとした茶色の髪の少年。
鮮やかな緑の瞳は驚いたようにこちらを見てきて――。

「あ、ああ。起きたのか。ブルーのやつはやりすぎだな。
気分がいいようだったら、隣の部屋にイエローとブルーを待たせてあるから」
『え・・・ブルーとイエローって・・だれ?』
「こんなことしてレッドから電話あったらどうしてくれるつもりなんだか。あいつお前のこと可愛がってるから、怒り狂ってブルーに突撃しかねない」

 知らない単語の羅列。
“レッド”はオレなのに、まるでその名前はオレのものじゃないみたいで・・・。

『ああ、そうだった』

そのとおり。オレはレッドだけど、今のオレは“レッド”じゃないんだった。
疑問から発展し導き出されたそれに、すぐさま寝起きでぼけていた頭が回転を始める。
同時にふっとんでいたピースが音を立ててうまっていく。

オレは、今、『)』だ。

 そういえば一ヶ月以上前に【ポケスペ】の世界にきたんだっけ。
じゃぁ、目の前にいるグリーンは・・・オレの幼馴染みじゃない、別のグリーン。
 ようやく頭がはっきりしてきて、自分が寝ている周囲を見回し、ここがオレの家でも、こちらのレッドさんの家でもないのに気付く。

「オーキド研究所だ。ブルーたちが倒れたお前を運んできたんだ」

 ちょうど俺が帰ってきてるところでよかったな。
グリーンはオレの頭をわしわしとなぜて、小さな子供を安心させるような笑顔を見せて席を離れた。








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べつにブルーとイエローが超融合して、グリーンになったとかではないよw








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